第107話 俺、異世界で師匠にワインをチラつかせる
そこそこ師匠の家に長居していたようで、窓から部屋を照らしていた太陽光もすっかり消えていて、窓から見える風景も俺たちが師匠の家に来た時に比べ様子がガラリと変わっていた。
暗くなった町を照らすために街灯が灯っているし、家の明かりが窓からこぼれていたり、通りを歩く人の数も減っている。
そろそろ晩御飯を食べる時間としてもちょうどいいはず・・・そうと決まれば師匠も晩御飯に誘って宿屋に行こう。
うまいこと師匠もシスティのおかげで外出用の服装になっているので、気兼ねなく誘える。
まぁ着替えていなくてもエリンによるお着替えタイムが発生するから、結局はどちらだったとしても宿屋に来ることは確定なんだけどな。
あと・・・今回は師匠用にお酒も購入していたりもする。
これをチラつかせれば師匠は来ざる得ないだろう、ただ見た目で判断するのならば・・・飲酒したらダメだろ。
俺もそういう意味では同じ扱いにはなるんだけど・・・。
宿屋に向かう前に覚えた魔法のことを師匠に言っておかないと後々面倒くさいことになりかねないし、それに最上級魔法ともなればどんなことが起こるか分からない・・・なんというか毎回テキストの説明がふわっとしていて、説明書としてはなんともお粗末。
でもそんなテキストが結構気に入っている俺がいるのもまた事実なんだよな・・・。
師匠は銀貨を自分のストレージに収容したようで、先ほどまで握りしめていたはずの右手が開かれている。
師匠にデスサイズを取得したことそれとこの後一緒にご飯を食べに行こうと誘った、もちろん師匠のために買った酒のことも伝えた。
「師匠、デスサイズっていう魔法を覚えたので、師匠さえ良ければ明日俺の練習についてきてくれませんか?」
「・・・・・・僕の聞き間違いかな。最上級魔法のデスサイズを覚えたって言ったかい?」
「はい、なんか絵本を読んでいたら覚えたんで早速試してみたいので明日ついてきてくれませんか?」
「ははは、あはははは!!さすがは僕の弟子だね、まさか最上級魔法を絵本から覚えるなんてね、いいとも明日僕もついて行こうじゃないか!!」
「ありがとうございます、師匠!それと今日ご飯おごるので、一緒に宿屋に行きませんか?師匠のためにこんなものも用意してみたのですが?」
俺はそう言いながら、エストーゲンワインの白と赤それぞれ1本ずつストレージから取り出して師匠に見せた。
エストーゲンワイン、エルフ領地のブドウを用いて作られた赤ワイン。熟成具合のよって味わいと価値が跳ね上がっていく代物。
今回購入したワインは銀貨8枚、これを買った酒屋の店員さんが言うには2年物で値段と味がちょうどいい感じらしく、ワインの中でもコスパがかなり良いらしい。
元の世界の時に飲んでいた酒はビール、酎ハイ、日本酒ぐらいしか嗜むことがなかったためワイン自体はあまり飲んだことがない。
そういやこのワインはエリンがいなければ買うことが出来なかった・・・そりゃそうだよな、俺だって少女と呼べるような年端もいかない子がひとりで酒を買いに来たら、親御さんを探すし本当にひとりだったらお断りする。
ストレージから取り出したワインを見た師匠は背もたれにしている布団から離れるとすぐにこっちに向かって移動してきた。
部屋の中ということもあり、そこまで広くはないにしろ・・・まさか四足歩行でこっちに来るとは思いもしなかった。
そして俺から奪った赤ワイン、白ワインをそれぞれに左右1本ずつ抱きかかえると、交互に頬ずりをし始めた。
このまま待っていてもいいのだが、それだと晩御飯を食べる時間が遅くなってしまう・・・システィは特に様子は変わっていないが、エリンの方はさすがにお腹が空いてきたのか、左手でお腹を触っている。
俺は師匠が抱きかかえているワインを強引にストレージに収容した、さっきまで頬ずりしていたワインが急に無くなったことにより、師匠は傾いてそのまま倒れそうになっていた。
「それじゃ、師匠これが飲みたいのならば晩御飯食べに行きましょう!」
「あー、分かったよ。それにわざわざそんなものを用意するってことはどうしても僕に来て欲しいってことだろ?」
「・・・・・・まぁそれは行ってからのお楽しみってことで」
師匠にそう答えると、俺はエリンとシスティに帰る準備をするように言うともうふたりとも準備が完了しているらしく、エリンについてはもう外に出るために移動を開始していた。
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