第104話 俺、異世界で絵本に夢中のシスティを見る
部屋を入るとシスティの報告通り顔がテカテカになって満足している師匠の姿が見えた。
それ以外に例えようがなかったのだが、それでもうちのシスティはちゃんと理解してくれたようで安心した。
俺は師匠の無理な頼みを聞いてくれたシスティに労いの言葉を述べつつ、師匠からどんなことを頼まれたかを聞いてみた。
「おつかれさん、システィ。それで嫌なことはされなかったか?」
「頭を取ってただそのまま座っていただけで特には何もありませんでした」
「・・・・・・えっ、それだけ・・・本当に?」
「本当にそれだけでした、お嬢様」
システィの言う事だから本当にそれだけだったのだろう・・・ただそれだけであれほどテカテカ顔になるものなのだろうか。
俺が言うのもあれだが師匠も大概ややこしい性格しているしな、俺と同じように興味があるモノに対しては全力な師匠とは思えないな。
まぁあとで細かく聞いてみることにしよう、システィは普通だと思っていても俺からしたらアウトなやつもあるだろう。
それよりもシスティは俺が持ってきた絵本の方が気になったらしく、それが何か質問してきた。
「お嬢様、その本はなんでしょうか?とても大事そうに持っていらっしゃるので・・・」
「これはな絵本といって文章に絵がついた主に子供向けの本なんだけど、この絵に描かれているふたりがどうも気になってな」
俺はシスティに見やすいように彼女の正面に絵本を床に置くと、システィも俺と同じように表紙に描かれている女の子とメイドのことが気になるのか、すぐにページをめくり絵本を読み始めた。
絵本の世界に入り込んだかのように集中して読んでいるシスティの隣に移動すると、俺ももう一度読むことにした。
やはり何度見てもこのふたりがアスティナとシスティをモチーフにしているようにか思えない。
俺たちが夢中になって絵本を読んでいるのが気になったのか、いつの間にか俺の背後から顔覗かせながら絵本と見ている。
スッと移動してきたから途中まで全く気づかなかった・・・これはなかなか心臓に負担をかける行為だ。なぜなら見慣れているとはいえ、ちょっと首を傾けるだけで双方の頭をぶつけてしまうぐらいの距離までエリンが近づいている、エリンに見とれてしまったのか、気づけば絵本を無視してエリンの顔を観察していた。
まつ毛結構長いな・・・肌もきめ細やか、それになんかいい匂いまでする・・・ウォッシュで洗浄したからというだけではないような・・・やっぱり近くで見ると髪の毛がギシギシしている、ウォッシュもかける範囲を指定できるように練習しておくか。
頭の中で思っていただけのはずが、気づいた時にはエリンの髪の毛を触っていた。
急に髪の毛を触られたエリンは絵本から目を離し、目だけをこっちに向け俺の様子をチラッと確認するとまた絵本を読みだした。
自分自身の好奇心が抑えられなくなったのか俺は絵本にすぐに戻らず、今度は隣にいるシスティの顔を観察し始める。
システィもまつ毛なが・・・瞳の色もサファイアみたいで綺麗だな、そして最後に褐色の肌が何とも言えない妖艶さを醸し出している・・・つまり何が言いたいかというとエロくね・・・うちのメイドさん。
アスティナの瞳はルビーのように紅く、エリンの瞳はエメラルド、そしてシスティがサファイア・・・そして師匠はアメシスト。
それにしてもここだけでも全員髪の色も瞳の色、肌の色と多種多様な人種が揃っているな、あっちの世界では一生こんな経験をすることはなかっただろう。
あの時エリンに会えたことは本当に幸運だった、彼女がいなければ、みんなに会うことも・・・それにシスティにまた会うことも出来なかったはずだ。
無意識に俺は彼女への感謝の言葉をこぼしていた。
「エリン・・・本当にありがとうな」
「えっ・・・なに?いきなりアスティナから感謝されるとなんか気持ち悪いんだけど・・・」
「あっ・・・・・・何でもない、き、聞き間違いじゃないか・・・俺なんもいってないし!!」
「ほんとう~?その割には顔が真っ赤になってるわよ、ア・ス・ティ・ナ・ちゃん♪」
エリンに指摘された俺は顔が真っ赤になっていることを隠すために体育座りをすると、そこからすぐに体を丸め顔を埋めた。
そんな俺の様子を見たエリンはここぞとばかりにちょっかいを出してきた。
隣では黙々と絵本を読み続けるシスティがいた。
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