第101話 俺、異世界で師匠にシスティを紹介するその2
あれからエリンが正常に戻るまで10分近くかかった、やはり彼女の紹介はインパクト絶大なようだ。
システィの頭部設置は前回よりもスムーズになっていて、前みたいに馴染ませるように首を動かすこともなくスポンと綺麗に収まっていた。
エリンの様子も問題なさそうだし、そろそろシスティに説明していくことにした。
「そういうわけだから、システィ。彼女の名前はイクストリアだけど、俺は師匠と呼んでいるってわけだ」
「そうでしたか・・・イクストリア様、申し訳ございませんでした」
俺が彼女を師匠と呼んでいる理由を聞いたシスティは師匠に向けて頭を下げ、そう謝っていた。
師匠は全然気にする様子もなく「いいよ、いいよ。そんなこと」と言っていたのだが・・・その直後システィの両肩を左右の手で動けないように抑え込んだ。
「システィ、僕は頭部が取れる種族と会ったことがなくてね。なのでまた調べ・・・見せてくれると嬉しいんだけど!!」
「・・・あの、お嬢様。イクストリア様がこう仰っておりますが・・・どういたしましょう?」
彼女は俺にどうすればいいのか聞いてくれたのだが、その聞き方がちょっとだけ怖かった。
ホラー映画とかでよく見るあれにそっくりだった・・・それは身体は一切こっちを向かず、フクロウのように顔だけがこっちを向いたからだ。
「あー、システィ・・・すまないが師匠が満足するまで相手をしてあげて欲しい。そのうち顔がテカテカし始めるから・・・そうなったら満足した証拠だからさ、それまでつきあってあげてくれ」
「さようでございますか・・・。お嬢様からも許可を頂きましたので、何なりとお申し付けくださいませ、イクストリア様」
「本当かい?何なりとってことは何を頼んでもいいんだよね?そういうことだよね?じゃーまずは!!」
「あー、師匠・・・何でもとはいっても限度はあるので、度が過ぎた場合は今後一切師匠には会わせませんので、そこのところよろしくお願いします」
俺の言葉を聞いた師匠はこっちを見るや否や冗談だろという雰囲気を出してきたが、両腕でバツ印をしながら全力で首を横に振った。
それを見て俺が本気で言っていることに気づいた師匠は一言「はい・・・」と返事をしてくれた。
「そういうことだから、システィも何か師匠に嫌なことをさせられそうになったらすぐに俺に言うように!」
「分かりました、お嬢様。何かあればすぐにお伝えいたします」
彼女はまたフクロウのようにこっちを向きながらそう返事をしてくれたのだが・・・彼女の持ちネタなのだろうか・・・絶対わざとやってるだろ、それ。
やっといつものエリンに戻ったのにこれではまたパニック状態に逆戻りするんじゃないかと、心配しながら彼女の方を見てみるとエリンも師匠と同じように目をキラキラさせながら、興味津々な様子でシスティによるフクロウの真似を観察している。
頭部が取れるのはダメなようだが首が180度回るのは彼女の中では別に怖いことではないらしい。
さて、それじゃ師匠が満足するまでの時間を潰すためにいつものように本をひたすら読み漁ることにしよう。
俺は立ち上がって3人に本を読むために向こうに移動することを伝えると、エリンも本が読みたいらしく俺と一緒についてきた。
それから2時間ほど俺とエリンは本棚から自分が読みたいものを探してはそれを手に取り読み漁ることになる。
まぁ実際2時間程度では全然数を読むことは出来ない、それはそうだ俺は速読が出来る訳でもないし、ましてや魔法書のようにページをめくっただけで頭に入ってくるということも無い。
小説のような活字ばっかなのも嫌いではないが・・・漫画が読みたいという衝動に駆られてしまう。
どうしても漫画が読みたいと思った俺がこの2時間を有意義に使うため編み出した方法がある・・・それは子供向けの絵本を読むことだった。
漫画みたいに細かく絵が描かれていたり、吹き出しがあったりするわけではないがそれでも、いまの俺には絵と文章がセットで存在することが何よりも嬉しかった。
それに絵本を読めばこの世界でのルールやマナー、善悪といったことも多少分かるのではないだろうか。
前にいた世界でも子供向け絵本だからといってなめてかかると、結構泣けたり、考えさせられるようなストーリーがあった気がする。そんな安直な理由ではあったがこの発想は案外悪くはなかった。
なぜならこの発想があったからこそ、俺は今後ずっとお世話になる最上級魔法を取得することが出来た。
この時の俺はまだその覚えた魔法がそれほど重要なものになるとは思いもしなかった。
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