第100話 俺、異世界で師匠にシスティを紹介するその1
俺たちは師匠のあとについて行き本屋に入ると私室として使っている部屋に案内された。
前回部屋に入った時は布団が敷かれたままで周りに大量に本が積まれ、その本が寝転がったままで取れるように配置されていたが、それが見事に整理整頓されていて、布団は畳まれているし、大量にあった本にいたっては存在すら消えている。
髪がボサボサであったり、俺やエリンが来なければ一日中寝間着であるネグリジェでそのままゴロゴロ過ごしていたりなど実に怠惰な性格をしている。
着替えるにしても黒いワンピースを着るだけなのだが、それすら面倒だと着替えないズボラな師匠が部屋を綺麗にしていることが信じられなかった。
ただ整理整頓した師匠の部屋はイスもテーブルもない、本当に寝るためだけの場所になったかのように簡素な部屋になっていた。
師匠は俺たちに適当に座るように言うと畳まれた布団に背を預けるように座った。
俺たちも師匠に追随するように座ると師匠は俺の方を見ながら「さぁ、僕の弟子・・・早速で悪いけど、あれについて説明してもらおうか?」とまだ警戒を完全には解いていない様子で聞いてきた。
いつものらりくらりしている師匠とは思えないほどに少し強めの声だったことに俺は驚きを隠せずにいた。
それほどにシスティという存在が危険だと彼女は認識しているということだ。
俺は呼吸を整えるために深呼吸をしてから、師匠の質問に答えることにした。
「師匠・・・彼女、システィは【アスティナを守護する者】が進化した姿で、俺のメイド兼護衛です」
それをかわきりに種族がデュラハンであることや召喚制限も無くなったことなどを説明した。
俺の説明を聞いた師匠はとりあえずは納得してくれたのか、警戒態勢を解いてくれたようで先ほどまでピリピリしていた彼女の雰囲気が消えていた。
「なるほど・・・まさか能力が進化するなんてね・・・本当に僕の弟子は毎回驚かしてくれるよ・・・それにデュラハンか・・・」
「師匠、能力が進化することがそんなにめずらしいことなのでしょうか?」
「あぁ、僕はそういう事例をこの眼で実際に一度も見たことがない。前にセンチネルが見せてくれた文献にそんな感じのことが書かれていたぐらいしか知らないよ」
「それって・・・500年前に起きた大戦のやつですか、師匠!?」
「そうだよ、なんだ君もあれを読んだことがあるんだね」
師匠はそう言うとセンチネルが調べて集めている500年前の文献は他にも色々あるらしく、俺が読んだものと師匠が読んだものはまた違う文献らしい、また今度センチネルのとこに行った時にでも読ませてもらおう。
そんなことを思っている俺の横で次はエリンがシスティに何か質問しようとしている。
「ねぇシスティ、そのデュラハン・・・という種族はどういうものなの、例えばわたしの種族フォレストエルフは森に友人と呼ばれるほど、森について詳しかったりするんだけど?」
「モリニ・・・クワシイ・・・・・・デスカ、ソウデスカ」
「アスティナ・・・何か言った?」
「いいえ、何も言っていません。システィ・・・例の紹介方法を許可する!!」
「はい、お嬢様。それではエリン、シショウ様・・・デュラハンとはこういう種族です」
システィはそう言葉を告げると、センチネルたちに見せた時のように自分の頭を両手でがっちり掴むと勢いよく引っこ抜いた。
その後のエリンの反応については言うまでもなく、この阿鼻叫喚地獄絵図のようなパニック状態が懐かしいと思えるほど同じ光景がそこにはあった。
師匠はパニックになるエリンとは逆にシスティの身体の構成が気になるのか、近づき色々な角度で彼女をじっくりと観察し「ほぉほぉ、ふむふむ」と目を輝かせながらひとり頷いている。
その師匠の興味津々な姿も気になったがそれともう一つ気になることがあった、それはシスティがシショウ様と言ったことだ・・・まさかとは思うがシスティは師匠の名前をシショウと勘違いしているのではないのだろうか。
もしそうなら、あとでシスティに師匠の名前がイクストリアであること、俺がどうして彼女のことを師匠と呼んでいるのかを伝えておこう。
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