お茶会に行こう 4
お父様の謎な発言から数日後、長女のイザベラと私は王宮に連れてこられた。
どうやらここで名家のご子息、ご息女だけを集めたガーデンパーティーが行われるらしい。
めちゃくちゃ美味しいお菓子がたくさんあると言ったお姉さまの言葉を信じて参加したがどれもいまいちだった。
お姉さまも去年まではおいしかったのにと言っている。
さらに参加者のご息女の中にも微妙な顔をする子達もいて、よくみると私の商会の会員家族だったので納得である。
そりゃ、仕方ないでしょう。
食べることにも飽きてしまい、そうそうに人間観察をしていると後ろから激突され転倒してしまった。
顔面強打して、痛む額を押さえていると元凶が不機嫌そうな声を出した。
「お前が受け止めないせいで俺に傷ついたじゃねーか。」
右手をヒラヒラさせて当たり屋の如き形相で言う。
「どういうことでしょう?」
訳がわからず聞き返すが、なんの説明もなく不機嫌そうに眉を寄せ。
「謝れ、謝罪だ。それとも打ち首がいいか?」
ニヤリと笑って恐ろしいことをいう少年は得意気だ。
意味がわからずポカンとしていると侍女らしき人が飛んできて目の前のご子息さまの首根っこを捕まえる。
げっと声を漏らした彼はあろうことか私の左手首を捕まえる。
「男が女の子を傷物にして、打ち首とは情けない。」
「でも、こいつが俺の邪魔をするから。」
「言い訳は結構です。」
厳しい侍女さんだな。
俺様ご子息が今にも泣きそうだ。
「でも、」
「それも彼女は何も悪くないではありませんか。」
今度は優しく諭す。
ご子息はうつむき弱々しい声で反論する。
「俺の逃げ道にいたのが罪だ。」
「それで打ち首とは、避けられなかったのは悪くないのですか?広間にはたくさんの人がいることくらい知ってるおられたでしょう?」
「わかっていた。」
納得いかないのか渋るご子息。
それでも理不尽な物言いだとは思うようで肩が左右に揺れ始める。
イヤイヤ期の子どもってこんな感じなのかな?とか思っていると、厳しい侍女さんは優しく微笑んでご子息を導く。
「では、まず最初にすることは?」
「すまなかった。」
二人の芝居のような流れるセリフに置いてけぼりになっていると男の子はキレイなお辞儀とともに謝ってくれた。
大丈夫と言おうとしたが声がでない。
すると突然、頭に激痛が走りそのまま意識を手放した。
どうやらの額を強打したことにより遅れて痛みがやってきたようだ。
朦朧とする意識の中で確認した手のひらに赤い滑りを感じた。
今日はやたらと騒がしい1日のようだな。
まどろみはいつも優しい揺りかご。
どんなに深い闇夜でも安心させてくれる。
まだ起きてはいけないよ。
心と身体が離れてしまうから。
君が君であるために必要なことだから。
太陽が沈む。
月が出る。
月が沈む。
太陽が出る。
さぁ、時間は過ぎた。
そろそろ起きよう。
女神の祝福に歓喜しよう。
自分が自分足らしめるものを手にすることができたかい?
誰かが優しく微笑んだ気がしたが、誰だったか忘れてしまった。