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勇者の日誌  作者: Yuupon
第一章 旅立ち
6/25

06 (勇者日誌)

 



 四十一日目

 ゴルドの街を見て回ったけど活気が凄い。

 街自体が荒くれの街みたいなイメージ。全体的に押しが強かった。

 歩いてるだけで露天商の人にめっちゃ呼び掛けられるし。

 戦士のおっさんが言ってた賭博場にも行ってみたけど臨時休業してた。

 残念だが、仕方ない。

 



 四十二日目

 街中で、この前俺を助けてくれた女神様に会った。

 思わず「女神様!」って言ったらめちゃ怒られたわ。

 女神じゃなくてアーシアと呼べ、と言われた。

 そのあと何故か質問攻めにされた。

 何で私を女神、と……? とか不可解な表情を浮かべてた。

 多分、女神ってあだ名を付けた理由がわからなかったのだろうか?

 何でってそりゃあ対応が「女神だからですよ」と答えたら驚かれた。

 というか、アーシアさん美人だわ。

 怪訝そうな顔とか、困惑した顔も絵になるから美人って得だよな。

 


 

 四十三日目

 この街にもカルロスの酒場があるらしい。

 どこにでもあるなこの酒場。

 それは置いといて今日は街の外に狩りに行った。

 毒を受けたらキュア、ダメージを受けたらヒール。

 うん、かなり安定してた。

 とはいえまだ三体を相手するのは難しいな。

 戦闘中に一発は重いのくらってしまう。

 ツノウルフのタックルとか普通に貫通するし。

 いてーんだよな、あれ。

 

 


 四十四日目

 狩りからの帰宅途中、女神様もとい、アーシアさんとエンカウントすることが出来た!

 普通に嬉しい。

 ただ、アーシアさんの表情がなんか優れなかったので、公園に行って愚痴を聞くことになった。

「あなたになら言っても良いか……」

 と言って彼女が切り出したのはこんな話だ。

 何でも、アーシアさんの同僚が次々行方不明になってるらしい。恐らく魔王の手によるものだとか。

 確かアーシアさんは魔法使いだったよな。同僚が行方不明、確かに心配な話だ。

 いつか自分もそうなるかもしれないと、呟いていた。

 ……魔王、魔王かぁ。

 とりあえず安心させるために魔王は勇者が必ず倒す、って話をした。

 実際、イケメン勇者が各地で頑張ってるみたいだしな。

 とにかく最後にはお礼を言うくらいには落ち着いてくれたので良かった。

 魔王討伐、任せたぞイケメン勇者。




 四十五日目

 意を決してカルロスの酒場に入ってみた。

 臨時のパーティ募集や討伐の依頼がめちゃ貼られてたわ。

 試しにゴーレムって魔物の討伐依頼を受けてみた。

 ゴルドの街の南にある岩石地帯に住んでいるらしい。

 実際行って、挑んでみたけどアホみたいに硬かった。

 そもそもゴーレムが石とかのかたまりで出来た巨人みたいなやつで、まともに刃が通らんのよ。

 おまけにパンチ一発で宙を舞うほどの攻撃力。

 いや、意識飛ぶかと思ったわ。

 それでも何とか隙間に剣を差し込んだり、目とか口の中に突っ込んだりして、更に火炎斬りを重ねてやっと倒した。

 一体だったから良かったけど、二体以上居たら死んでたな。

 俺も少しずつ強くなってるつもりだけど、油断出来ん。

 一体の割に報酬が美味かったし、明日も酒場で依頼を受けよう。




 四十五日目

 カルロスの酒場でゴーレム二体の討伐があったので受けた。

 昨日で一体討伐の勝手はわかったし、一体ずつ倒せばかなり美味しい依頼だと考えたからだ。

 まさか同じ場所に居るとは思ってなかったけどな!

 いや、笑えないんだけど。

 とりあえず逃げようとしたけど回り込まれたので戦った。

 死ぬかと思った。マジで死ぬかと思った。

 ゴーレムに挟まれて、同時にパンチされた時に咄嗟にしゃがまなかったら死んでた。

 なんか、運良くお互いのパンチが突き刺さったみたいでダブルノックダウンしてくれて助かった。



 

 四十六日目

 ゴーレム討伐で金があったので今日はお休みにした。

 思い返せば良くここまで来れたな。

 ニートだった俺に言ったら絶対信じないぞ。

 生活も安定してきたし、人と喋れるようになってきた。

 ……今はふらふら旅してるけど、そのうち安住の地を見つけたらそこで根を張らないとな。

 人々が優しくて、それなりに都会で、楽に稼げる土地がいい。

 良し、今後の目標はそれでいこう。

 住みたい街探しだ。

 そうと決まればもう少し金を稼いで、アイテムを揃えて次の街に行こう。

 それとどこに行くかも決めないとな。

 楽しみだ。



 四十七日目

 ここいらの土地について調べてみた。

 今、俺が居るのがルッカリア大陸。

 ルッカ王国を始めとして、いくつかの街が存在する大陸だ。

 他の大陸に行くには最北端の街ノーランドか、最南端の街サーランドに行く必要がある。

 とりま、距離的にノーランドが近いのでそっちを目指すつもりだ。

 その前にもう少し金稼ぎしなきゃな。

 



 四十八日目

 カルロスの酒場に行ったら騒ぎが起きてた。

 何事かと思ったら、緊急クエストが発令されたらしい。

 それもゴルドの街の地下に幽閉されていた凶悪な魔物が逃げてしまったとか。

 しかも小さな女の子が一人で戦いに行ってしまったらしい。

 とはいえだ。

 沢山冒険者いるし、誰か行くやろと思って店を出ようとしたら、なんか店主に声をかけられた。

「……行くのか?」

 無言で出ようとしただけなのに、俺が助けに行こうとしてると勘違いされたらしい。

 慌てて釈明しようとしたけど駄目だった。

 うおおおお! と酒場全体が盛り上がってしまい、お前だけに任せておけるか! と全員で行くことになったのだ。

 こうなっては一人だけ帰るのは無理だった。同調圧力って怖い。

 んで、現場。閉鎖中の賭博場に着くとその化け物がいた。

 真っ黒い身体の獣だった。鋭く長い尻尾を生やした、二足歩行の獣。

 素早い動きで爪や、尻尾で攻撃してくるやつ。

 その化け物と、ボロボロの武闘家ちゃんが戦ってた。

 いや、何でここにいるし。

 脚を使って、素早い身のこなしで紙一重で攻撃を回避して、隙を見て回し蹴りをしていたが、化け物もまた避ける。

 だが、武闘家ちゃんもかなり限界近かったのだろう。

 よろめいたところをすんでの所で助けられた。

 そこに他の冒険者が雪崩れ込んで、戦い始めたので俺は武闘家の怪我を回復させることに。

 いや、よく頑張ったと思う。

 一人で援軍が来るまで持ち堪えたのは立派だし、凄い。

 んで、敵もかなり弱り始めてるしあとは任せろー、と前線に向かおうとしたら武闘家に止められた。

「……お願い、一緒に戦わせてください。私も、戦いたいんです」

 バーサーカーかな?

 まぁ、断る理由も無いしよろしくって言ったら嬉しそうに立ち上がってた。

 前線もかなり疲弊してたし、交代して俺と武闘家で連携して戦った。

 化け物もかなりダメージがあったが、動きは素早い。一人ならヤバかったが、二人いたから余裕だった。

 どっちかが攻撃を防いで、どっちかが殴るだけのお仕事だ。

 最後は武闘家が青いオーラを拳に纏わせて、トドメを刺してた。

 そのあと武闘家がバッタリ倒れたからビビったけど、疲労が原因だったようで良かった。

 とりあえず武闘家は俺の泊まってる宿で一室追加で借りて、そこに寝かせた。

 



 四十九日目

 昨日の魔物。

 どうやらイケメン勇者が討伐した悪魔が育てていた実験体の魔物らしい。

 今までは定期的に餌が与えられていたが、前任者が倒されたことで存在を知るものが居なくなり、放置された結果飢えて自ら檻を破ったとか。

 極限まで飢えてあの動きと考えると、満腹ならどんだけ強いんだよあの魔物。

 何にせよ討伐出来たから良いけど。

 それと何故か、アーシアさんが訪ねてきてお礼を言われた。

 あれを逃したらとんでもないことになるところだったとか。

 相変わらず優しい人だぜ。

 あ、そうそう、武闘家も今回は無事に目覚めた。




 五十日目

 俺の旅に武闘家が付いてくることになった。

 彼女曰く、仲間として認めてもらえなくてもついて行きますとのこと。二日前の戦闘を見る限り、振り払える気がせん。

 ……どうしてこうなった。







 

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