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勇者の日誌  作者: Yuupon
第二章 目覚め
18/25

18(武闘家日記)

 




 九十六日目

 トンカー城に呼び出されていた勇者が帰ってきて、色々お話をしてくれました。

 先日の白髭のお爺さんな魔物ーーなんと魔王軍幹部だったそうです。

 魔道老ゼメス、という名前で火と闇の魔法を得意とする魔物だとか。

 確かに前回戦った時も様々な魔法を行使していました。

 炎系魔法のフレア、メガフレア、ギガフレア。

 闇系魔法のダーク、マダーク、ダークネス。

 最後のビームは分かりませんが、恐らくは闇系魔法の何か……。

 どうやって倒せばいいのか見当がつきません。

 ……オーラを纏ったところで軽減は出来ますが、ダメージは入りますからね。

 むやみに突っ込むのも愚策だし……仮に届いてもテレポートで逃げられる。

 王様直々の依頼ですし、討てるものなら討ちたいですがどうすれば……。




 九十七日目

 ゼメルを倒すために、魔法が使えなくなる薬。

 魔法殺しを使おうというアイデアが出たところまでは良かったのですが、うぅ。

 材料にまどうじょのなみだ、ですか。

 あんなに可愛いのを、倒さなくてはならないのでしょうか。

 魔物なのは分かってるんですけど、ちょっと踏ん切りがつきません。




 九十八日目

 勇者のアイデアで無事、まどうじょの涙を入手しました。

 オニオンスープ、美味しかったです。




 九十九日目

 先日の戦いで目覚めた、オーラを形にする力。

 一日かけて試しましたが、今の私ではまだ盾以外のものを形成することは出来ないようです。

 剣とか、球体とかイメージしやすいものを作ろうとしてもどうも霧散するんですよね。 

 代わりに、盾は色んなことが出来るのが分かりました。

 例えば攻撃を防ぐ、盾自体を投げる、盾を大きくする、小さくする。

 それなりにオーラを消費しますが、盾で攻撃を防げばダメージを完全にカット出来ます。

 私だけを護るんじゃなくて、他の誰かを護れる力。

 早く使いこなせるよう、頑張りましょう。




 百日目

 いつ魔物の軍勢が攻めてくるか分からない以上、体力は残さなければなりません。

 そろそろ、がっつりと修行したいんですけどね。

 


 百一日目

 ついに来た、魔物の軍勢。

 ただその中に、魔道老ゼメスの姿はありませんでした。

 とはいえ、見過ごすわけにはいきません。

 波のように押し寄せる魔物を兵士達や、有志の冒険者達と協力して戦って。

 誰かを護るための盾を使って、魔物の攻撃から守って。

 時にはオーラを纏って、拳を振りぬく。

 誰かを助ける為に拳を振るう、誰かを護るために盾を構える。

 やりたいことが出来たからか、いつも以上に身体が軽やかに動いた、と思います。

 ただ予想外だったのは、やはり数ですね。

 魔物の数が多い。倒しても倒してもキリが無い。

 途中からオーラを温存して戦って、それでも使わざるを得ないタイミングで使うことを繰り返して。

 文字通り、死力を尽くしました。

 一匹でも多くの魔物を倒し、一人でも多くの人を生かす。

 そうしてやっと、やっと魔物の数が減ってきた時に、それが現れました。

 ーーーー魔道老ゼメス。

 ……恐らくは、これは相手の作戦だったのでしょう。

 魔物をけしかけて、私達や兵士を消耗させ、あと少しで魔物を倒しきれるような、そんな希望を持ち始めた時に現れる。

 ----文字通りの絶望として。

 正直、この段階で私は消耗しきっていました。

 いや、私一人ではありません。アーシアさんも、兵士さんも、皆が限界に達しようとしていて、そんな時に現れたゼメスは絶望を感じさせるには十分な存在でした。

 そして、私達が何より絶望したのが、ゼメスが現れた位置です。

 前回は地面に降り立っていたゼメスが、宙に浮いていたのです。

 前回。勇者に斬られたことで近づかれるのを嫌がったのでしょう。

 ですがこれは私達にとっては大きな問題でしたーー何せ、近づくことが出来ません。

 これでは、必殺の策として用意した魔法殺しの薬が使えない。

 死戦。今ここで戦うのは死を覚悟する必要がありました。

 ……少なくとも私を含む、殆どの人にとっては。

 実際、ゼメスが放った一発の巨大な火の球を防ぐだけで、アーシアさんは全魔力を使わされ、私のオーラも全部使い切ってしまいました。

 体に力が入らなくて、倒れこんで、見ているしか出来なくなって。

 対して、魔道老ゼメスは笑っていました。勝利を確信していたのでしょう。

 そして勇者をいたぶるように狙いを付けて攻撃を始めました。

 降り注ぐ、大量の炎と闇。それを勇者は避けていました。

 更に密度が増して、何度か勇者に攻撃が直撃するのが見えました。

 勇者は不思議なほどに反撃をせずに堪えていました。

 今思えば、魔法殺しが使えないと分かった時から、勇者はそれを狙っていたのでしょう。

 ……ゼメスは対策を講じてくる敵です。

 ゆえに、一度見せた技は対策するし、危なくなればテレポートで逃げてしまう。

 だからこそ、魔法薬が使えないなら勇者は耐えて、待っていたのです。

 空から、極大の豪火球が地表目掛けて降ってきた瞬間。

 ゼメスから勇者が完全に見えなくなるーーーーその瞬間を。

 その瞬間のことは、私は生涯忘れることは無いでしょう。

 全てを飲み込むような獄炎を前に、勇者は初めて、剣を構えました。

 刀身が黒く染まり、続いてバチバチと赤い光が、周囲で弾けて。

 その剣を、振りぬいた瞬間、極大の黒い光が放たれて。

 一瞬で獄炎を貫いた黒の光が、ゼメスを飲み込み、奔流を天へと伸ばしていった。

 目を疑う光景でした。

 あの力が何なのかは分かりません。闇を凝縮したような、おどろおどろしい。でも、不思議と嫌な感じはしない。よく分からない、力。

 勇者は、一体何者なんでしょうか?

 



 百二日目

 戦いの結末をまとめます。

 魔道老ゼメスは、捕らえました。地面に墜落し、意識を失っていた魔物を捕らえるのは容易でした。

 今は魔法を発動できなくする牢屋に閉じ込められているはずです。

 勇者は、病院に居ます。

 昨日、あの不思議な力を使った勇者は力つきたように地面に倒れていました。

 あれだけの力を行使したのだから仕方のない話かもしれません。

 



 百三日目

 ゼメスを捕らえたからか、魔物が攻めてくる様子はありません。

 指導者を奪取するつもりはないということでしょうか。

 私達を消耗させるためだけに魔物を戦場に投入するようなやつですから、人望はないかもしれません。




 百四日目

「あの後、何があったんだ?」

 目を覚ましていた勇者が開口一番そんなことを言い出したので、説明をしました。 

 どうやら記憶が混乱しているみたいです。

 長居はやめて、ほどほどに帰りました。

 



 百五日目

 あの力は何だったのか、尋ねても勇者は答えてくれません。

 話しづらい力なのでしょう。あんな力ですから、嫌な思い出があるのかもしれません。

 ……こればかりは仕方ないので、本人が教えてくれるまで待とうと思います。


 それと、病室を出てから久々に修行をしました。

 やっぱり、修行はサイコー、です。

 あの戦いを乗り越えたからか、オーラ量も少し増えた気がします。

 それと修行してると街の兵士さんが最近、挨拶してくれるようになって嬉しいです。

 あ、そうそう。

 明日、街をあげて宴をするそうです。

 魔物に勝利したことを祝うそうで、私達も是非参加してくれと言われました。




 百六日目

 (読めない文字が書かれている)





 百七日目

 頭が、頭が痛いです。

 何ですかこれ、マジでやばいです。

 二日酔いってこんなにつらいものなんですか。

 文字を書くだけで吐き気が、うぅ。




 百八日目 

 ゼメス討伐の報酬として王様から装備が与えられました。

 これ韋駄天のグローブと、疾風の装束、ですよね。

 どちらも装備した者の素早さを高めてくれる装備。

 大事にしましょう。

 それとアーシアさんが正式に勇者の仲間になりました。

 これからは三人旅、ですね。





 百九日目

 三人で次の目的地について話し合いました。

 ユグノーシアーーーードドランド大陸の北にある温泉街。

 ドドラ火山が近くにあり、より危険な魔物が出るという話を聞いたことがあります。

 良いですね、新たな装備が手に入ったことですし、ワクワクします。





 百十日目

 出発の日になりました。

 沢山の人が見送りに来てくれて嬉しかったです。

 何にせよ久々の冒険、楽しんできましょう!








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― 新着の感想 ―
[一言] 今までに読んだことのない形の小説でしたがとても面白いです! これからも楽しみにしています!
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