15(勇者日誌)
九十一日目
トンカー王国を出て北西の森に向かった。
道中での目立つイベントとしてはブルーゴーレムに襲われた。
事前の調査通りゴーレムより小さかったが、動きが速い。
例のごとく剣で攻撃しても弾かれる硬さがあるので、倒すには以前のように隙間に剣をねじ込んでやる必要があるが、小さいからねじこみづらい。
ぶっちゃけ、ゴーレムより強いと思う。
おまけに氷魔法への耐性もあるみたいで、アーシアさんが凍らせてもすぐに脱出してた。
直後にアーシアさんのフレアで燃やされてたけど。
あとはかおまじんに出会った。
名前に恥じず、首から上しかない魔人だった。
しかもでかい。二メートルくらいある。こっちを見るなり転がってきてめちゃビビった。
タックルで木とかなぎ倒しやがるからな。転がりながら炎のブレスを撃ってくるから近付けないし。
直後にオーラ纏った武闘家の蹴りで沈黙したけど。
……あの、君ら強ない? 俺いる?
九十二日目
ようやく北西の森に着いた。
森の中に入ったからか魔物の数が多い。
スライム、ワーウルフ、後は川沿いにハーフマーマンと連戦でキツイ。
武闘家とアーシアさんも省エネモードみたいで、それぞれオーラと魔力を抑えめに戦ってるようだ。
そのせいか、戦闘が昨日より激しい。
まぁ、武闘家はオーラ無かったら素の身体能力だしなぁ。それでも強いけど。
アーシアさんは大技より、小技を駆使してくれてる。相手の足だけを凍らせるとか、魔法で敵の動きを誘導するとか。うん、賢い。
現状出会った敵でやばいのはやっぱりかおまじんとブルーゴーレムだな。
このあたりと出会うとオーラと魔力を確実に削られている。
目的が魂のオーブの捜索なだけに、長期戦になるからな。
少なくとも回復はポーションを使うことで節約はしているが、それでもカツカツだ。
回復したとこで直るのは怪我だけだしなぁ、肉体的疲労は継続だから余計に疲労感がやばい。
二人もかなり疲弊してるみたいだし、引き際を考えないとな。
九十三日目
例の光が落下したと思わしきポイントに着いた。
うっそうと木が生い茂る森の中で不自然に出来ているクレーターっぽいのがあったから、何かが落ちたのは間違いないと思う。
ただ、件のオーブは見つからなかった。
アーシアさん曰く、ほんの僅かだが力を感じるそうなのでここにあったのは間違いないらしい。
誰かに持ち去られたのか、あるいは砕け散ったのか。
付近も捜索してみたが、それらしいものは無かった。
ただ、代わりに幼女を見つけた。正しくは童女か。
アホ毛がゆらゆらしてる黒髪赤目のロリっ子。魔法使いのコスプレみたいな格好して地面に座って、にぱーとした笑顔でこっちを見てくる。
多分、こいつがまどうじょだと思う。いや、恐ろしい魔物だった。
……なんてったってだ。
「おねえ、ちゃん?」
「ぐはっ!」
小首を傾げながら言ったこのセリフだけでこんな感じで武闘家が撃沈した。
あのクソ真面目で魔物殺す少女な武闘家が一瞬でだ。
アーシアさんも初めは凄い自分に「これは魔物これは魔物」と言い聞かせてたけど、うん。
「少しだけ」とか言いながらしっかり頭を撫でてたのは覚えてるからな。
あ、ちなみに俺は大丈夫だ。二次絵はいけるけど、リアルのロリは守備範囲外だからな。
イエスロリータ、ノータッチ。というか昨今は子供に声を掛けるだけでも通報される時代だし、迂闊に触れん。
……それに見た目が人間だから、すっごい倒しにくい。
完堕ちした武闘家がこの子を持ち帰りましょうとか言い出したけど、そいつ魔物だぞ分かってんのか。
過去を聞くに、武闘家は愛に飢えてるんだろうけど、それでも凄い固執してた。
うん、分かったから強く抱きしめるのは勘弁してさしあげろ。
お前の身体能力で抱きしめると痛いじゃすまないから。見てたから分かるけど、「ぎゅー」って言いながら抱きしめられた瞬間のまどうじょの顔やばかったぞ。
最終的には「殺されるー!」って言いながら逃げてたし。
あ、しょんぼりした武闘家のケアはアーシアさんに丸投げした。
それと落ち着いた頃にパーティで話し合って一度撤退することにした。
武闘家もオーラがガス欠で、アーシアさんも魔力が尽きそうだったからな。
九十四日目
トンカー王国が魔物の軍勢に襲われてた。
森を抜けたあたりで街の方から火の手が上がってることに気付いたあと、迷いなく武闘家とアーシアさんが駆けていってた。
慌てて追いかけたけど姿を見失ったし、マジでやばかった。
しかも運悪く街を襲う魔物の軍勢の一部に遭遇して戦闘になったしな。
ワーウルフ六匹相手によくもまぁ、生き残れたと自分を褒めたい。
お陰でポーション全部尽きたけど、命に比べりゃ安いしな。
この頃には戦線は無茶苦茶になってて、そこらじゅうで魔物と兵士が戦っている状態になってた。
とりあえず近くの兵士に加勢して魔物は倒して、数時間は探しただろうか。
俺自身の魔力も尽きてきた頃にようやく見つけたわ。
ただ状況が謎だった。
武闘家がオーブの載った杖をもったジジイ魔法使いな魔物と向かい合ってた。
んで、武闘家の背後に倒れ伏した兵士とアーシアさん。倒れてる彼らを庇うように武闘家が立ってるイメージ。
で、何故かよぼよぼなジジイ魔法使いの放つ超凄いビーム的なものを、武闘家が謎の巨大な盾みたいなのを出して防いでるというのが俺の見た光景だ。
うん、訳が分からん。
よく分かんないけど、敵っぽいからじじいを背後から斬り捨てたったわ。
その後、その爺さんの魔物が撤退宣言して一斉に魔物が消えた。
なんか知らんけど、生き残ったぞー。
九十五日目
トンカー城に呼ばれた。
アーシアさんも武闘家も病院だから今回は俺一人だ。
トンカー王が出てきてまたお礼を言われたわ。
で、昨日の話に戻ったけど、どうやら昨日の爺さんが魔物たちの親玉らしい。
魔道老ゼメル。魔王軍の幹部の魔物だとか。
魔法を得意とした魔物で、どこからともなく現れて、軍勢を召喚するとか。
いつ現れるか分からない、神出鬼没の魔物。
撤退時も霧のように消えるみたいで、そのせいで下手に打って出られないそうだ。
「頼む、どうかゼメルを討って欲しい」
倒したらお礼はするとのこと。
王様直々のお礼かぁ、何がもらえるか知らんけど多分良いものだろうな。
武闘家とアーシアさんにも相談しよう。
九十六日目
武闘家とアーシアさんが復活した。
二人とももう大丈夫らしい。良かった良かった。
早速昨日の依頼について話したら武闘家は乗り気のようだ。
リベンジに燃えてた。
一方、アーシアさんは不安そうな表情。
大丈夫か聞いてみたら「えぇ、いつかはこうなると分かってたから」との返答。
よく分からんけど、大丈夫ならいいや。
で、方針を話したけど、次に街を襲ってきた時に討つ方面でまとまった。
ただアーシアさん曰く、倒すには必要なアイテムがあるらしい。
それを作りましょうという話になった。
九十七日目
魔道老ゼメルは火と闇の魔法のエキスパートらしい。
そして何より魔力量が桁違いに多いとか。
正面から挑んでも勝てないとアーシアさんが断言するくらいだから、相当やばいっぽいな。
ただ、弱点もあるらしい。
ゼメルの弱点は、魔法に頼りすぎていること。
そこで作りたいのが魔法殺しと呼ばれる魔法薬だそうだ。
「この薬は振りかけるだけで一定時間、魔法を使えなくすることが出来るの」
成る程、魔法に自信を持つがゆえに魔法さえ封じてしまえば怖くないと。
ただ、材料が問題だった。
「……材料に『まどうじょ』の落とす、涙が必要なのよ」
確かにそれは難題だ。
何せ絵面がやばい、見た目が童女だから倒すだけでR18G待ったなし。
それに倒さないにせよ、童女を泣かせてアイテム入手する構図はどう見ても犯罪臭い。
でも、手に入れないと勝てない。
ううむ。
九十八日目
ハンサムな俺は天才的アイデアを思い付いた。
まどうじょの涙が入手出来ればそれでいいわけだ。
つまり感動の涙でも、笑いの涙でも、痛みの涙でも種類は問わないはず。
早速アイデアを口にしたらすぐさま試そうとなって、北西の森に向かった。
まどうじょはすぐに見つかった。
しかも以前会った個体みたいで、武闘家を見て真っ先に逃げようとしたから三人がかりで取り押さえた。
まどうじょが「助けて! 人殺し!」とかうるさかったが無視だ。
作戦通り俺が包丁を取り出したらもっとうるさくなったから、黙れと怒鳴りつけたら震え出した。
震えるまどうじょの目の前で包丁を構えた俺は目の前で大量の玉ねぎを取り出し。
そして、玉ねぎをみじん切りしてやった。
「----痛い! 目が痛い! 何したいの!? 馬鹿なの!?」
作戦通りだ。
すぐさま涙を零しだしたまどうじょから見事、涙が回収できた。
これで魔法薬が作れる。
玉ねぎは後でオニオンスープにして美味しく頂いた。
九十九日目
無事に魔法薬が完成したらしい。
アーシアさんが報告に来てくれた。
百日目
戦いに備えてポーションを買い込んだ。
これで敵がいつきても大丈夫だ。
かかってこいや!




