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勇者の日誌  作者: Yuupon
第二章 目覚め
12/25

12(武闘家日記)

 



 六十六日目

 ……知らない間に、私は気負っていたのかもしれません。

 勇者に「今日一日修行禁止な」と言われて気づきました。

 理由は鬼気迫る姿が目に余るとか。

 確かに、最近の私は焦っていました。

 今、世界各地では魔物による被害が後を絶ちません。この瞬間も世界のどこかでは、魔王の手によって苦しむ誰かが居る。私のような人が。

 村を、大切な人を失う辛さは私が一番分かっています。

 だからこそ、私は私のような人を増やしたくない。

 そういった焦りから、より過酷な修行を自分に課していました。

 それが勇者には好ましくなかったのでしょう。私に向かって「遊びに行くぞ」と言い出しました。

 勿論、私は激しく反抗しました。苦しんでいる誰かが居るのに私だけ楽しんではいられないと。

 けれど、最後には「修行だけでは伸びない」と言われ、渋々着いていくことになりました。

 そして街に繰り出して。

 渋々だったはずの遊びを、いつの間にか私は楽しんでいました。

 アパレルショップに連れていかれて、あろうことか店員さんを呼んで全身コーデ。

 普段絶対着ないようなフリフリのミニスカートを押さえて恥ずかしがる私に臆面もなく「似合ってる」なんて勇者が言ってくれて。

 それを勝手に購入して、しかもそのまま着て行きますとか言い出して。

 反抗しても聞く耳を持ってくれなくて、食事に連れてかれて。

 最後には普段から使える髪飾りまでプレゼントしてくれて。

 ……凄く、凄く楽しくて、嬉しかった。

 こんな感情になったのはいつぶりでしょうか?

 こんなことを思う余裕もなかったのか、と気付いて愕然としました。

 恐らく、勇者が伝えたかったのはこれ、なのでしょう。

 白い花の髪飾り、宝物にします。




 六十七日目

 修行を見直しました。

 一日中やるんじゃなくて、ちゃんと時間を決めることにしました。

 修行も楽しくやらなければ身に付きません。

 いざという時、動けないのが一番問題です。

 心に余裕をもって一歩一歩進みましょう。

 

 

 

 六十八日目

 全身にオーラを纏ったらすぐに尽きてしまう。

 なので私は考えました。

 必要な部位だけ纏えればよかったんです。

 すなわち、両手と両足。

 ここさえ纏えれば、スピードと攻撃力の強化が出来て、しかもオーラの消費量も抑えられます。

 全身なら三十秒しか持たなかったオーラも、四部位なら三分近く持ちます。

 これは大きな発見です!

 



 六十九日目

 昨日の発見を踏まえて更に実験をしてみました。

 腕だけを強化して殴るよりも、全身を使って殴った方が当然破壊力は高いわけです。

 そこで、全力で踏み込んで、殴りに行ったらどのくらいの威力が出るのか。

 試しにそこらへんに生えてる木に放つと、穴を開けることに成功しました。

 はい、腕が貫通したんです。

 これならドラゴンの皮すら貫けるかもしれません!




 七十日目

 海に現れる、嵐を起こす魔物。

 その第二次討伐隊の船が沈んだという話を聞きました。

 また新たに討伐隊を組むそうです。街からも懸賞金が出るとか。

 勇者も深刻な表情でした。

 行きますか? と聞いたら「あぁ」と答えていたので、討伐する気のようです。

 登録は任せたと言いたげに歩いていったので、今回も私が登録を済ませておきました。

 その後は勇者といつもの狩りです。

 戦闘してて思うんですけど、勇者は相手のターゲットを取るのが上手いんですよね。

 敵の攻撃を自分に向かせるというか。

 ……見習わなくては!




 七十一日目

 今日は修行をお休みしました。

 明後日には例の嵐の魔物の討伐がありますからね。

 オーラの消費を抑えるためにも、体内でオーラを循環させるだけに留めました。




 七十三日目

 クエスト当日。

 出発時刻が近づいてきたころに、私達は船に乗り込みました。

 今日の波は非常に穏やかだそうです。

 ですが、既に戦った人々からは急に天気が荒れ模様になるという話を聞きました。

 そして空に浮く巨大な半魚人が現れるそうです。

 いつ襲われるか分からないからこそ、戦いの時までしっかりと身体を休めておきましょう。

 隣に座る勇者も、目を閉じて体力の消費を抑えてますし、私も。





 七十四日目

 船に揺られて半日近く経った頃。

 晴天だった空が急に黒雲に覆われ始め、雨が降り始めて。

 今の今まで晴れていたのに、急激に変わり出した天候を見て私達は敵の出現を感じました。

 そして雨はやがて土砂降りになり、荒波が船を揺らしだした頃。

 その化け物は現れました。

 巨大な半魚人ーー数十メートルはあろうかという巨体が、まるで最初からそこに居たかのように。

 魔法使いたちが一斉に魔法を放っても、まるでダメージを受けていないように巨体が空を泳ぎ続ける。

 そのあまりにも異様な光景に目が釘付けになって、だからでしょうか。

 私は勇者の行動に気づくのが遅れました。

 気が付いたら、勇者が船の外目掛けて走り出していたんです。

 それを見て私は心臓が凍り付くかと思いました。

 ……だって、海は船が大きく揺れるほどの荒波です。

 そんな波の中に飛び込んだら死んでしまうのは間違いありません。

 慌ててオーラを纏って止めようとしたけど間に合いませんでした。

 伸ばした手は届かず、ドボンッと音を立てて沈んでいく勇者を見送ることしか出来ませんでした。

 何でこんなことを? さっぱり分からず、混乱して。

 後を追って海に飛び込もうとして他の冒険者に取り押さえられて。

 離してくださいと泣き叫んで。

 だから、直後に聞こえた声に心底安心しました。

「空の巨大な魔物はフェイクだ! 本命は船底に居る!」

 ……勇者の声。

 そんな叫びが響いた直後、空に浮かんでいた半魚人が大きく揺らめいて消えました。

 同時に、空も元の青空に戻り、荒波も穏やかに。

 慌てて私達が下を覗き込むと、沢山の魔物が船の周りにいました。

 私達は魔物に謀られていたのだ、という真実にたどり着いたのはその時です。

 そこからは鬱憤を晴らすかのような戦いでした。

 アーシアさんが放った氷系上級魔法、ブリザードで一気に水面の魔物を凍らせると、他の魔法使いたちが魔物を駆逐していきました。

 私も少しだけ戦いましたが、あんなのじゃ到底お役に立てたとは思えません。

 それで戦いは終わりでした。勇者が魔物の謀に気付いて、それで解決。

 ……勇者が、遠い。





 七十五日目

 私は、ちょっと悩んでいます。

 勇者を支える為に着いていくことを望んだのに、私は未だに彼の為に何をすることも出来ていません。

 むしろ貰ってばかりです。

 こんな私に勇者に着いていく価値があるのでしょうか?

 結局私は勇者に頼りきりです。

 今までの勇者との旅でいくつかの強敵と戦ってきて、一度として役に立てていない。

 強くならなければならないのは分かる。ただ無茶もいけない。

 でも、思うんです。

 一歩一歩進んでいったとして、仮に勇者が五歩ずつ進んでいたら? 

 追いつくには、一歩では追いつけません。

 



 七十六日目

 一日かけて勇者と共に明日船に乗る準備をしました。

 私には帰る場所がありません。

 だから、進み続けなくては。

 次は、次こそは役に立ってみせます。

 もし、それで駄目なら……。




 七十七日目

 ノーランドから出ている、トンカー王国行の船に乗るとアーシアさんと出会いました。

 彼女も同じ船でトンカー王国に向かうつもりだったようで、一緒に行くことになりました。

 夜は三人でトランプをしました。

 勇者はいじわるです。

 結局一度も一位は取れませんでした。

 でも、楽しかったです。凄く心地の良い空間でした。




 七十八日目

 勇者に模擬戦を断られました。

 代わりにアーシアさんに頼み込んで模擬戦をしました。

 オーラが切れるまでにタッチできれば私の勝ち。切れたら私の負け。

 その条件で実際戦ってみると弾幕のような氷の魔法が飛んできてとても近付けませんでした。

 避けるにしても、かなり密度があるせいで難しい。弾き落とすことは出来ますがとても近付けない。

 全身にオーラを纏えば強引に突破は出来ますが、辿り着いたところで実戦ならそこでオーラが切れて殺されるだけなので却下。

 最後は私のオーラが切れて負けてしまいました。




 七十九日目

 アーシアさんからアドバイスを受けました。

 何か技を作ればいいんじゃないとのことです。

 私に出来る技、何かあるでしょうか?





 八十日目

 新しい技が思いつかないままトンカー王国に到着しました。

 今日は疲れたので、明日また考えましょう。 




 





 

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