10(勇者日誌)
七十一日目
ドアに手紙が挟まってた。
差出人はアーシアさんだ。
なんか明日の夜に大事な話があるらしい。
一人で街外れの広場まで来て欲しいと書いてあった。
わざわざ深夜にいったい何の用だろう。
七十二日目
深夜にこっそり宿屋を抜け出した。
ニート時代に鍛えたステルススキルは今日も好調だぜ。
で、現場に着くとアーシアさんが居た。
いつもの魔法使い姿だけど、月明かりに照らされる様子が女神みたいだったから思わず「女神様」と口にしたら、泣かれた。
慌てて謝ったけどめっちゃ気まずかったわ。
そんなに嫌なあだ名だったのか……二度と口にしないようにしよう。
そのあと大事な話について聞いたけど、この前プレゼントしたオーブについてだった。
見つけたら教えて欲しいらしい。分かったと伝えた。
七十三日目
武闘家とアーシアさんにクエストに行きませんか? と誘われた。
ホイホイ付いてったら何か船に案内された。
……嫌な予感がする。
いや、だって周りにやたら武装した連中が一緒に乗ってるし。
それに海って今は嵐を起こす魔物が出るから船を出せないとか聞いてたんだけど。
……いや、でもまさかなぁ。
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まさかとは思ってた。まさかとは思ってたけどさぁ。
やっぱりこの船は第三次討伐隊の船らしい。
うん、雷を操る魔物を討伐するための船だ。
いや、知り合いだからってよく聞かなかった俺も悪いよ? でもこりゃあねぇだろ!
海の上だから降りるのも無理だし、もう覚悟決めるしかねー!
装備は、いつもの鋼の剣と旅人の服、ポーションと聖水。
いつ襲われるか分からんから、休める時に限界まで休んでおこう。
いざとなれば泳いででも逃げられるようにしなければ。
死なん、俺は死なんぞぉーーーーッッ!!!!
七十四日目
ちょっと色々あったから最初から書いてく。
天気晴朗なれども波高し。
まぁ雲一つない青空だったんだが、それが急に黒雲が発達し、瞬く間に雨が降り出した。
それはどんどんと激しくなり、土砂降りに。
波も激しく荒れ狂い、雲がより暗く、黒くなってた。
で、噂の魔物が現れた。
そいつが居たのは空だ。黒雲の近くにそれがいた。
いや、めっちゃデカかったわ。
空見上げたら巨大な半魚人が空を飛んでるとか、それなんてホラー?
しかもそいつがモリを振るうたびに、落雷が落ちて船が激しく揺れやがる。
魔法使い達が撃ち落とそうと攻撃したが、当たらない。遠すぎて当たらないのか? と思ったがそうじゃなかった。
……魔法が効いてないらしい。
俺も試しにフレアを撃ってみたけど、当たったはずなのに手応えがなかった。
……この時点で俺は悟ったぜ。
あ、勝ち目ねぇわこれ。
いや、だって無理じゃん! 相手は空飛んでるから魔法で攻撃するしかねーわけで、その魔法が効かないんじゃそりゃどうしようもない。
他の人達はまだ諦めてないようだったが、一抜けだ。
悪いな、俺はまだ死にたくねぇんだ。泳いででも逃げたらぁーーっ!
そんな思いで勢い良く海に飛び込んだ。
そしたら目の前に魔物がいた。
「……え?」
半魚人みたいな魔物が一匹。あとオクトスピアがいっぱい。
見た目は空に浮いてる魔物とそっくりだった。
しかも、そいつの手にはモリと、謎の機械のようなものが持たれてて、魔物達は船底に無数の穴を開けてた。
……うん、俺は察した。
とりあえず機械ぶっ壊したら空に浮かんでた半魚人や、荒波、黒雲が綺麗さっぱり消えた。
どうやらこの機械が原因だったようだ。
おおかた、あの機械的なもので空に幻影を映してたんだろう。そりゃ攻撃が当たらんわけだ。だってそこに居ないんだから当たるわけない。
で、皆が空に釘付けになってる間に集まった魔物達が船体の底に穴を開けて船を沈めてたと。
ネタバラシすればこんなところだろう。
それさえ分かればこっちのものだった。大声で伝えたら冒険者達が一斉に魔法を水中の魔物目掛けてぶち当ててた。
魔物達も反抗してたけど、アーシアさんが放ったブリザードって魔法で一瞬で氷漬けにされてたわ。
何匹か甲板に上がったオクトスピアも武闘家が蹴り一発でぶっ飛ばしてたし。
……もう全部この二人だけでいいんじゃないかな?
七十五日目
どうやら貿易が再開されるらしい。
報酬として金と他の大陸に行くための船の永年パスを貰えた。
にしてもこの街に来てからそれなりに日数が経ったからな。そろそろ他の大陸に移動しても良いかもしれない。
そう思って武闘家に聞くとそうですねと頷いていた。
七十六日目
明日、船が運転再開するらしい。
丁度いいので俺たちも乗っていこうと思う。
というわけで武闘家と共に今日一日は移動の準備に費やした。
船上だと暇だろうしトランプとかを買っておいた。
七十七日
アーシアさんとバッタリ会った。
彼女も船で別の大陸に行くつもりだったらしい。
ノーランドから出ているのはトンカー王国と呼ばれる海に面した国に向かう便だから、そこまでは一緒だとか。
偶然もあるもんだな。
その日の夜は三人で大富豪をやった。
武闘家は真面目だからか考えが読みやすくて、カモにしまくったらもう一回と何回も挑んできた。
お遊びでも負けるのは嫌らしい。ムキになるあたり子どもらしいな。
その様子を見てアーシアさんが笑ってた。
七十八日目
天気は晴れ。
穏やかな波に揺られて今日も一日海の上だ。
昨日カモにしすぎたせいでトランプはしたくないらしい武闘家がしきりに模擬戦を求めてくる。
痛いのは嫌なので丁重に断った。
それにしても魔物を追い払ったからか船旅も好調だ。
二日後に目的地に到着するらしい。
良きかな、良きかな。
七十九日目
やっと遠くに島が見えてきた。
目的地が見えてくるとちょっとホッとするな。
トンカー王国、一体どんな国なのか楽しみだ。
八十日目
久々の陸地に上陸!
あー、まだ揺れてる感覚がするわ。
これで長い船旅ともお別れだ。
とりあえず今日はゆっくり休むぞー!




