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【番外編】秀麗樹学園新聞部2年・文野春佳のメモ②


 "革命の灯火"の熱も冷めやまぬ中で、再び我らが秀麗樹しゅうれいじゅ学園を大いに騒がせるある出来事が起こった。

 この学校の生徒として生活すること2年、私──文野ふみの春佳はるかは史上かつてないスクープの連続に嬉しい悲鳴を上げている。新聞部総出で記事にし、たとえ徹夜になろうと何のその。人々に世の出来事を伝えるマスコミの仕事は忙しくてナンボのものなのだから。

 おっと、隙あらば自分語りをしてしまうのは私の悪い癖だ。では早速記事にした内容を元に、今回も私はメモ書き(アナログ)にて記録を残そうと思う。


 今回のメモの主役は"学園の女王"とされる甘粕あまかす清蘭きよら……ではなく。

 "学園の四天王"とされる4傑……でもなく。

 さらには"最も有名な一般人"の九頭竜くずりゅう倫人りんと……でもない。


 主役の名は……能登鷹のとたか音唯瑠ねいる


 九頭竜倫人と同じく"一般人"としてこの学園に通っていた彼女は、しかしたった1日で甘粕清蘭に比肩するほどの羨望と尊敬を集めることになる。

 まさにシンデレラストーリー、いや彼女に関しては必然とも言うべきか。ともかく、彼女の軽いプロフィールから振り返っていこう。


【能登鷹音唯瑠】


・年齢 17歳

・身長 159cm

・体重  47kg

・ヘアスタイル 大和撫子を彷彿とさせる漆塗りのような黒髪ロング

・性格 穏やかで心優しく礼儀正しい

・アピールポイント 数多の称賛の言葉を浴びる、神に愛された歌声

・歌唱力 10

・ダンス ?

・身体能力 ?

・ファンサービス 10

・容姿 10

・演技力 ?


 まだまだ不明な項目もあるものの、能登鷹音唯瑠に関しては"歌声"が何と言っても一番だと断言出来る。

 【ユニバース・ミュージック】主催の【第1回UMフラッピングコンテスト】、応募者数26789人にも及んだ大規模な新人発掘ボーカルコンテストで、見事栄冠を彼女は手にしたのだ。最終審査の審査員には名だたる面子が揃うも、特に注目すべきは"日本一のアイドル"である九頭竜倫人様もいたことだろう。彼も厳しく目を、いや耳を光らせる中で……能登鷹音唯瑠は堂々たる歌声を披露した。

 彼女の歌声は、まさに"神に愛された"としか言いようがない。透明度の高い澄んだ川のように清らかさ、身体の奥底にまで響き渡る重厚さ、空を翔ける鳥のようにどこまでの伸びゆくその声は、聞いた者を問答無用で虜にする魔力を持っている。

 彼女の歌声は全国放送に乗って人々の元に届き、絶大なセンセーションを巻き起こした。SNSでは彼女の歌う動画が数え切れないほど拡散され、後に【ユニバース・ミュージック】公式がアップロードした高音質動画は5日間で再生回数が1億回を突破、日本だけでなく彼女の歌声は海外まで轟いた。彼女が作詞作曲した【羽ばたく】が伝説の名曲となるのも最早秒読みと言っても過言ではない。

 

 それまで、クラスの中でも目立たず、寧ろ"一般人"として蔑まれる日々を送っていた能登鷹音唯瑠。まだ裏は取れていないが、彼女はとある2人組にいじめられていたらしい。彼女と同クラスの工藤くどう園子そのこ下水流しもずる蘆花ろか、この2人だと言われている。

 声楽部に所属しているとのことだが、他の部員達によると実力は芳しくないらしい。加えて図書委員でもあるらしいのだが、自分達の仕事の日は能登鷹音唯瑠にそれを押しつけてサボっていたという情報もある。

 しかしながらいずれにしろ裏は取れていないので、2人のことを記事にすることは出来なかった。……まぁ、自分の感想をこのメモの中に留めるとしたら、能登鷹音唯瑠の天性の才能に嫉妬し、しかし自分達は特に努力することもなかった怠惰な敗者であると断言せざるを得ない。控えめに言ってもクソ野郎だろう。

 

 さて胸糞悪い奴らのことは忘れ、再び能登鷹音唯瑠の話に触れよう。学園の生徒達の尊敬と羨望を集めるようになった彼女だが、今や昼休みにその自慢の歌声を存分に披露するなどしており、見方を変えれば一種の"ファンサービス"と呼べるだろう。元々歌うことが大好きな彼女からすれば、ファンサービスをしているという意識すらないのかもしれない。拍手喝采の渦の中にいる彼女は本当に幸せそうに笑っている。

 しかし、それまで何の部活にも所属せず、寧ろ歌声を披露しようとしていなかった彼女がどうして【第1回UMフラッピングコンテスト】に参加しようと思ったのか、その動機を知りたいものだが……こればっかりは、何故か一向に話してくれない。何やら男の影がありそうで、是非ともそう言ったネタは新聞部として欲しいものである。

 能登鷹音唯瑠にばかり注目がいくが、あのコンテストにおいて称賛される成績を残した生徒がもう1人いる。話題には事欠かない彼女──甘粕清蘭だ。

 優勝を勝ち取った能登鷹音唯瑠と比べると霞んでしまうが、甘粕清蘭もまた7位入賞を果たしている。"革命の灯火"における九頭竜倫人との戦いで敗戦し、アイドルを志すようになった彼女が初めて公の場での競争に参加した訳だが、やはり凄かった。つい最近まで"一般人"であり右も左も分からないはずの甘粕清蘭が、持ち前のキャラクター性と常識に囚われないパフォーマンスで人々を魅了したのだ。能登鷹音唯瑠の影に隠れてしまうものの、彼女も話題の人物として注目されたのだった。……しかし気になるのは、そんな甘粕清蘭の所属事務所はあの881(ヤバイ)プロなのである。……何故なのだろうか。正直に言うとトチ狂ったとしか思えない。彼女はなんと【アポカリプス】、しかも九頭竜倫人様も超える気でいるのだが、その可能性はあの事務所だと0と言わざるを得ない……。しかし、恒河沙分の一の確率は残っているかもしれないので、今後も彼女の動向を気にするとしよう。

 

 甘粕清蘭、4傑、そして能登鷹音唯。


 これだけの実力者が揃う世代に自分がいられることを誇らしく思いつつ、これからも私は新聞部としての仕事を全うしていこう。


 3月某日 


 秀麗樹学園新聞部2年 文野春佳 








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― 新着の感想 ―
[良い点] 能登鷹ちゃんのストーリーはまさしく王道で、努力や葛藤があってとても楽しく読ませていただきました。 ベタ褒めされて照れるシーンはとても愛らしゅうございました。よきよき! [気になる点] さり…
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