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白き魂の黙示録  作者: code.e
8/10

京弥とブラック

 集落を出てから5日たった。子供たちは元気にしてるだろうか?

 気軽に約束などしてしまった。俺が帰るのを楽しみにしている子もいるだろう。

 約束は守らないとな、俺が昔から守っている事だ。



 京弥一行(玲・可憐・ニック)は洞窟の酒場に向かっていた。

 っす!が語尾につく若者との約束の日だからである。若者の名前はグレイ。笑顔が好印象の平凡な若者だ。


 この5日の間に京弥は、京弥一行が始めて訪れた町である時計塔がシンボルの町アイルークにて潜伏して情報収集を行い、夜になると魔法の特訓をしていた。

 京弥自身の魔法技術はかなり上達していた。水を吸う真綿の様に教えれば直ぐに覚え自己流にアレンジをしていて教えている玲は嬉しくもあり少し寂しくもあった。

 召喚直後は京弥に教える事がたくさんあったので二人でいる時間が一日の大半を占めていたが、段々と教える事が減ってくると二人でいる共有時間が減ってきたからである。

 基本は常に傍にはいるが二人っきりというのは何かを教えている時だけで、玲にとってその時間は日に日に楽しみな時間になっていた。

 

 魔法技術の上達と言ってもまだ戦いに参入出来るほど上達はしていたわけではない。

 魔法というのは古来から杖やステッキ、魔法陣や詠唱など何かしらのアクションがあってこそ発動されると言うのが旨であり、魔法を人類が始めて使った時は諸説はあるが魔法陣と札を使い発動したとされる。

 現代(この異世界)での魔法も陣などを使用する事もあるが戦いにおいては陣などを使う際は予めそこに敵が来るという策略があってこそで、不意に敵とあう遭遇戦においては陣など書いている暇も無い。

 その為に武器や防具に刻印を施し戦闘時にすぐ発動できる状態にしておく。


 策略を巡らせ敵の予測ルートに魔法陣をはり敵を倒すというのはとても高位の魔法である。

 魔法陣その物は結界なども同じ事なので難しくはないのだが策略時に使う魔法陣は相手側も警戒しながら進んでくるので簡単な魔法陣ではすぐに破られてしまう。

 高位な魔法であるならばどんなに警戒して進もうとも簡単に見破れるものではない。

 だが魔法力のたかい進化種族の有翼人や獣人であってもその様な高位魔法を戦闘時に毎回使っていては直ぐに死に至ってしまう。

 その為に魔法陣による策略は何万対何万などの大規模な戦争時において使用される。各地において起きている小規模な戦闘では刻印武器などだけでの戦闘が大半だ。


 京弥はまだ刻印武器を持っていない。刻印防具は玲が見繕ってくれたおかげで着用できているが刻印武器にも適正があり剣、斧、槍、弓、銃などの武器が自分の魔法力を一番引き出してくれるかは使用者が自分で感じるしかない。

 有翼人も獣人も等しく兵隊は銃を使用することが多い。

 刻印の施された魔道銃で少ない(有翼人や獣人にとって)魔法力で相手を攻撃する事がローリスクハイリターンである。

 京弥自身も色々な武器に触っては見たが近距離武器には技術が伴ってこそ本来の力を発揮するものであって免許とりたてのドライバーがF1カーに乗っても本来の性能は引き出せない。

 その為に武器を触ってもいまいちまだピンとくる感じもなく、可憐との体術修行だけが向上している状態で武器など持っても意味をなさない状態だと玲と可憐は思っている。


 だがそんな状態を京弥自身が許すはずもなく身体全てに付加をかけ肉体その者を刻印武器にするという通常ではありえない特訓を行っていた。

 仮に高位の魔法力をもった兵士がこの行為を行っても1秒持たずに精神が崩壊して気を失ってしまう。

 光の属性は他の属性に比べ低出力で高スペックである事に京弥は着手してもしかしたら出来るかも知れないと感じ誰にも言わずに特訓を重ねていた。


 たった5日だったが京弥のこの特訓は身を結び、短時間でかなりの戦闘力をもった戦士に成長していた。


 京弥一行は洞窟に到着するとその入り口ではすでにグレイがうずうずと身体を動かし皆の到着を待っていた。


「あっ!!やっと来たっす!すごい待ったっす!」


 すごい?まだ朝の8時だぞいつから待ってたんだ?と皆が無言で目を合わせ苦笑するとニックが


「いやいや、グレイ。まだ早朝だぞ、少しはお前ランナーらしく落ち着きってもんを・・」


 ニックが喋っている最中にグレイが会話を始めた。喋るのが苦手もしくは人にあまり好かれない聞き下手のよくやる行為だと京弥は思っていた。


「そんなことより大変っす!ブラックさんが京弥さんだけをお呼びっす!」


 ブラック。それがランナー達の中で一番の強者とされる今回是が非でも協力を願いたい相手の名前だ。


「俺だけを呼んでいるのか?・・・わかった、行こう」そう言うとすかさず玲の声が聞こえてきた。


「駄目です!!」


 さすがにそんなに強い口調で否定されると思っていなかった京弥だったので少しびっくりした面持ちで振り返り玲を見た。


「会って話をしてくるだけだ。ニックの紹介だし危険も無いと思うぞ。それに俺は今回の作戦においてブラックを仲間に引き込む事は必須項目だ。

 あっちの意見を蔑ろには出来ない」


「それでも・・・駄目です」


 先程より少し弱い口調になった。弱い口調というよりかは少し泣きそうな声だった。

 玲は京弥に半歩近づき顔を見上げた。元々二人の身長差は10cm以上あるので見上げる形にはなる。


「私もついていきます。危険があれば私があなたの盾にならなければなりません。・・お願いします」


「・・・ブラックには俺一人で会う。だけど目に見える場所までだったら着いてきてもかまわない。それでいいか?」


 京弥は分からなかった。自分がまだ頼りないからか?それとも戦闘になったらまずいから?途中魔獣に襲われたら危険だから?色々あるがどれも確信には至らず分からないままだった。


 玲自身は京弥の傍にいたい。危険があったら守らなければとの使命はあるが、なにより恐れているのは


「闇煉獄の事は私の口から言わなければならない」だった。


 これまでその単語が出てきそうな時は何とか誤魔化してきたのは常に玲か可憐が傍にいて情報を遮断してきたからである。

 


          「召喚士=白い魂の救世主=闇煉獄」



 この世界の災いの話だけは召喚した私が話さなければならない。でも京弥様といる時間が長くなればなるほど言えなくなってくる。

 京弥様も真実をしれば私を魔女といってしまうかもしれない。誰に言われてもよい。

 だけど京弥様には言われたくない。怖い。でも言わなければ。

 こんな感情は玲は初めてで心が揺さぶられていたが平常心を取り戻した。


「わかりました。でも何かあれば直ぐに私は傍に行きます」


 玲の強い瞳に半ば強引におしきられる形となった。

 グレイに待ち合わせの場所のメモをもらい、すぐ近くにある森の中の水辺に向かった。


 その森には人を襲う魔獣は少ないのでそこまで警戒しながら進まなくても良かった為に30分もたたずに目的地についた。

 その場所は、小さい滝と綺麗な透き通った水が印象に残るとても綺麗な場所。恋人とくるならば持って来いの場所だった。

 そこにいたのは綺麗な場所にはとても不向きな光と闇があるならまさに闇だと言うオーラがでてる男がいた。

 黒を主体とした服装で頭からつま先まで肌が見えるのは目だけだった。その上に黒いフードまでかぶっているので京弥とは正反対の身なりだった。その隙間から見える目もまた鋭く眼光だけで敵を畏怖させる。


「お前がブラックか?」


 そんな男に物怖じせず先に話しかけたのは京弥だった。ブラックは表情は見えないが自分の姿を見て物怖じせず話かける京弥に対して笑みを浮かべているようだった。


「・・・そうだ。お前が響京弥。13人目の白き魂の救世主か・・。俺に情報を提供との依頼を受けたのだがお前に会って見たくてな」


「・・・そうか。会って見てがっかりしたか?俺はお前の様に禍々しいオーラは出てないからな。戦時中の救世主にしてはお前のような強者からすればがっかりな存在かもしれんな」


「ふっ・・まぁいい。俺は救世主信者ではないからな。13人目ともなれば最早だれがきても期待などしない。救世主一人で世界が変わるほど世界は単純には出来ていない。

 そんな世界でお前は何をするというのだ」


 京弥は下を向いて頭をかいた。あぁこいつもわかってるじゃないかと嬉しかった。笑った顔など見せずに上を向き鋭い眼光を真っ直ぐみてまた会話を続ける。


「お前の言うとおりだ。皆勘違いをしている、俺がきたら恒久的な平和が訪れると思っている。そもそも平和が恒久的に続いた歴史など存在しない。

 だげど平和ではなく差別をなくす、自由を手に入れる手伝いくらいならできるかも知れない。自由の先には平和ではなく戦いの日々が待ってるかも知れないが、そんな事は俺の知った事じゃない」


 ブラックは京弥から視線を外し一度振り返り、京弥に背をむけた。

 ブラックは下人と有翼人のハーフだった。愛し合ってはいけないから人から生まれた子供。

 幼少期は逃亡の日々だった。下人に紛れ逃亡はするがその身体の半身には羽が生えていた為に下人の子供達からも忌み嫌われる存在だった。

 その為に差別行為が大嫌いだった、憎むべき行為だった。

 生きていくうえで差別など無くならないと分かっていてもそれに真っ向から向き合おうとしている京弥は少し眩しかった。

 ブラックは顔だけを少しこちらに向けてまた話をはじめた。


「それで武器工場を襲撃して下人を解放して武器を研究か?その先には何があるんだ?お前は下人の統治者にでもなって皆を率いて有翼人や獣人と戦うのか?」


「俺は救世主であって統治者じゃない。そもそも俺は専制政治は嫌いなんだ。武力がある者が統治する世など間違っている。

 元来神とは偶像であって生まれる者ではなく創りだされる者だ。

 だから本意ではないが俺を神にでもしたてて人を集めた後、優秀な人材達を投票にて統治者を決めた方がいい。

 そしてあくまでこの世界の住人が自分達の手で自由をてにいれるんだ。

 俺はその手伝いをする」


「くっくっく・・・・創りあげた神か・・・信仰心がある奴らに言ったら発狂されそうな事だな。

 気に入ったぜお前が・・・協力してやるよ。ただお前個人に興味を失えば俺は消えるぞ」


「それでかまわないぜ。俺もお前の様な仲間が欲しかったんだ。」


「・・・・仲間か・・。

 武器工場だがな・・・お前の言うとおり働いているのは下人共だ。造るノウハウと知識は普通よりかはあるだろう。だがそんな奴らを何人も集めても意味は無い。

 これから2週間後にその工場に武器研究者のトップクラスが視察にくる。その研究者の一人が下人だ。

 そいつはガルフと言うじいさんなんだが武器研究の為に有翼人が捕らえて無理やり造られている。

 変わったじいさんだがかなりの研究者だ。そいつをついでに拉致すればお前の言う武器開発は進むんじゃないか?」


「はは・・・すげーな。期待通りだよ。それで行こう。見取り図とかは入手できるのか?」


「10日後、工場の近くにランナーが使用している洞窟がある。そこで落ち合おう。・・・それと俺はカラスを使役している。

 俺のからの伝達はカラスに文書をつける。それに手に入れた情報を書いておく。

 洞窟の場所はニックに聞いとけ・・・じゃあな」


 そう言ってブラックはどこが刻印魔法で起動したのかもわからないスピードでその場を去っていった。

 

 「ふぅ・・」っと京弥は空を見上げた。

 少し間違えれば殺されてたかも知れなかったなと、だから玲は心配したのかな?と考えた。


「京弥様!」


 玲が刻印魔法を使わずこちらに走ってきた。よく考えると玲はあまり魔法を使わないな?魔法力が高いのにと思った京弥だったが深くは考えなかった。

 玲が京弥の傍にくると心配そうに京弥の身体を触り「大丈夫ですか?」と言った。いつも通りの光景だった。


「大丈夫だよ。ただ少し疲れたな・・。可憐とニックに合流したら今後について話すよ。そして一度集落に戻ろう」


「はい!そうしましょう。京弥様約束してましたもんね」


 京弥と玲はそう言って可憐とニックの元に戻っていく。

 

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