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白き魂の黙示録  作者: code.e
7/10

ランナー

 時計塔。待ち合わせ場所に相応しく活気に溢れていた。

 ローゼンハイム候は差別制度をあまり好ましく思っていない人物でこの町では、下人も普通に歩いているのでこの様な場所で待ち合わせをしても目立たない。

 京弥と玲が揃って時計塔に到着すると可憐がこちらに気づき近寄ってきた。その横には同じように白いフードを被った男が一人、中肉中背の金髪のミディアムヘアーで年齢は京弥と変わらない。


「初めまして救世主様。私はこの一帯の情報収集に勤めております。ニックと言います。ここで話していては誰に聞かれているか分かりません。場所を移してもよろしいでしょうか?」


 京弥は玲と可憐に目をやって、特に問題なしと判断をして軽くうなずいた。


「では町を出ると直ぐに下人が集まる洞窟の中に酒場があります。そこに参りましょう」


(なるほど、下人同士のコミュニティーはあるのか、それに目立たない所での集会なども開かれてると・・・反乱軍など表立っては存在しなくても個々の集団が存在するのならば・・・)


「分かった。行こう」


 京弥がそう言うと一行は洞窟に向かった。



 町を出ると綺麗に石畳で作られたメインの通りは魔法力による電灯で照らされ暗くてもある程度は人が認識できるが、少し道を外れるとその先は真っ暗だった。

 ニックの道案内のもと暗闇を進んでいくと洞窟が見えてきた。この洞窟の奥に夜な夜な下人が集まって集会を開いている酒場があるらしい。


「足場が悪いのでお気をつけ下さい」


「大丈夫だ、問題ない見えている。」


 京弥は目に意識を集中して魔法を使っていた。視覚と聴覚に魔法の付加をかけて、暗闇でも見えるようにそして敵が戦闘時に早く動いても見えるように普段から少量の魔法で身体の内面に付加をかけるという特訓をしていた。

 近くにいる玲にも可憐にも悟られることなく魔法を使用するというのは集中力と精神力を多大に消費する為に京弥は心身ともに疲労はしているが一切顔には出さなかった。

 数分歩くと奥からかなり遠慮した声での談笑が聞こえてきた。

 玲と可憐が「そろそろ近いですね」と目でコンタクトをとるが、京弥は聴覚にも魔法を付加していたので洞窟に入る前からはっきり聞こえていたが聞こえた素振りみせずに軽くうなずいた。

 洞窟の最深部につくと酒場というよりかは地面に魔獣の干した肉だろうか、それといびつにつくられた木のジョッキに赤いお酒がつがれている。

 そこに数人の無骨な男達がいた。町にいた奴隷達との違いは身なりが多少なりとも武装されており冒険者と言う言葉がぴったりな男達だ。


「ニックじゃないか!それに召喚士様・・それとまさかその横のお方は・・?」


 京弥に視線が集まる。頭に被さったフードをとり辺りを見渡した京弥は軽く会釈して


「響京弥だ。・・・・13人目の白い魂を持った人間だ」


 おぉぉ・・と皆が小さい声で歓喜している。洞窟内の人間全てが京弥の周りに集合してきて皆全て平伏した。

 な・なんだ・・と京弥は内心驚いてはいたが顔には出さずに玲と可憐に目をやった。すると玲が皆に声をかけ始めた。


「この方が始めて見つけた成人での白い魂の持主です。慈悲深い京弥様は我らの我が儘な願いを受け入れてくださいました。

 今後はこの方のお役にどうか立ってくださいます様よろしくお願い致します」


 玲は深くお辞儀をした、その直後無骨な男達は玲に向かって面をあげて謝罪をした。


「召喚士様!そんなお辞儀など我らにしないで下さい。俺達は皆等しくあなた・・いえあなた達につらい役目を押し付けています。

 俺達はあなた達の為ならばなんだってしますよ!」


 京弥はその会話を聞きながら思っていた。彼らの言う何だってと言うのは死ぬ事さえいとわないと言う事、言葉が軽くはない重いのだ。

 (俺は集落の子供達に軽く約束などしてしまった。まだ俺は戦地にいる覚悟、順応ができていないのか?こんな事ではこの世界の住人の心など動かせない。言葉で信頼を得られない、この力だけでは何も変わらない)


 京弥の視点が一点を見つめる時、単純に何かを考えている時だがそんな時は真っ先に必ず玲が気づく。

 今回も京弥様と名前を呼び服の裾を掴み、にこりと微笑む。

 この仕草に・・いつも京弥に気をかけ何かあったら直ぐに京弥のそばによる。

 玲にとっては罪の意識、自分がこの人をこの世界に連れてきてしまったと言う意識なのかそれとも京弥が気になって仕方がない愛と言う物なのかもまだわかっていない。

 だがこの行動にいつも京弥は救われていた。

 


 この集団に限らず方方の情報収集をしている下人のグループをランナーと言う。

 そのランナー達の取りまとめをしているのがニックだった。


「それで京弥様。欲しい情報をお伺いしてもよろしいですか?」


 ニックが平伏したまま顔を上げて京弥に問いただした。


「とりあえず平伏を止めにしないか?皆仲間であって配下じゃない。おれ・・・いや私達は対等なのだから」


 そう言うとニックを含めたランナー達はお互いに見つめあい、少し笑った。膨大な魔法力を持った相手は例え仲間だと言われても最初は警戒してしまう。

 今回が始めての成人の救世主。幼子ならば味方にするのは容易く共、成人はそうはいかない。もしかしたら我らを見捨てて違う人種の方に流れてしまうかもしれないと言う恐怖があった。

 その恐怖が京弥の一言で安堵に変わった。

 皆が立ち上がり緊張のとれた顔になった。ピリついた空気が少し変わり話し合いをするならば意見の言いやすい空間になり、京弥は少し安心した。

 地面に布を引きその上に座り飲食をしていた場所に京弥はスタスタと歩きそこに座った。

 

「皆も座ってここで話そう」そう言うと玲と可憐が京弥の左右に座り円を描くように皆が座った。


「さてまず聞きたい事があるのだが、ここにいるランナー達で有翼人を何人倒せる?死なない前提でだ」


 ニックが、あごに手をあて考える素振りを見せると横にいたランナーが


「まずこの武装じゃ一人も倒せんでしょう。死ぬ前提でしたら魔法で一人一殺できますがそれが駄目となると我々が例え10人いても無理ですよ」


「そうか・・・有翼人はどのように戦うんだ?」


「有翼人は魔道銃と魔道剣を主に使います。両方共に魔法力で武器の刻印を起動させ攻撃力を飛躍的に上げ、何かしらの効果を付加させます。

 火の属性の者でしたら銃弾を爆弾や地雷などに変化させ、風の属性であるならば一発の銃弾に風を巻き起こさせ周り一帯を吹き飛ばしたりもできます。

 剣であるならば属性問わず魔法力の高低で切れ味がかなりかわります。有翼人の強者ほど剣での決闘を好んでいますね」

 

「なるほど・・・その刻印をもった武器は下人には使用はできないのか?」


「無理ですね。新作が出るたびに試そうと試みましたが俺らの魔法力を根こそぎ使わないと起動しませんよ」


「戦力差は分かってはいたが絶望的だな・・。まぁ分かってはいたけど・・さて質問なんだが魔法力を使用しない魔道銃や魔道剣を造る事に成功したら戦況は大きく変化すると思うか?」


 黙って聞いていたニックが質問に答える。


「それは大きく変わりますが・・そんな武器を造る事は不可能では?造れるとしたら昔から造られていると思いますが?」


 京弥が少し目を鋭くして回答する。ニックだけではなく全員に言い聞かせるように。


「武器を造る工程のなかで銃を造りその後刻印をする、そして魔法力によって刻印を起動させて銃の強度上げる。

 その後銃弾に刻まれた刻印を起動させて攻撃する。それが基本ならば銃の強度を上げるのに素材に魔法を組み込ませてから銃と銃弾を造る。そしてその魔法は全ての属性で一番強力な私の光の魔法でだ。

 それは可能か?もしくは試した事があるか?」


 皆黙り込んでしまったがその後も京弥は話し続ける。


「可能かどうか分からないって行った所かな。だとしたら試す価値はあるんだな・・。

 この領地で武器工場の様な物はあったりするのかな?それとも町々で武器を造っているのか?」


 黙っていたランナー達がまた口を開く。


「武器は町々で造ってはいません。剣を磨く研ぎ師などはいますが、銃などは販売のみで主に武器工場で造っています。」

「そこで造っているの労働者は有翼人か?」間髪いれず京弥が聞き返した。

「・・いいえ。下人です」


「そこで働いてる下人達は武器をつくるノウハウはなくても仕組みなどが多少は知ってるはずだな」


 京弥は目を瞑り考える。癖ともいえるのか目を瞑り上を見ながら足をトントンと動かす動作を見せている。

 玲は少し待ち微笑みながら話しかけた。


「考えはまとまりましたか京弥様?それともお疲れでしたら飲み物でも用意しましょうか?」


 目を開け玲の顔を見て、京弥は少し不適な笑みを浮かべて見せた。

 考えがまとまったと分かり玲は無言で微笑み返す。

 その光景をみていた可憐は少し心がモヤモヤしたが顔には出さなかった。


「その工場についての情報が欲しいな。より詳細な情報だ。

 詳しい人はこの中にいるかな?」


 はっ!っと気づいた様にニックが頷いた。


「武器工場周辺などの重要拠点の事を凄い詳しいランナーが一人います!ただ・・少し偏屈な奴で・・能力はもちろん魔法力も有翼人と対等に戦える程の持っており、我々ランナーの中で一番の強者です。

 ただ群れるのを大変嫌う一匹狼でして常に協力的と言う訳ではないので今回協力してくれるかは聞いてみないと分かりません・・」


「連絡はとれるのか?」


 一人のランナーが勢いよく手を上げた。まだ10代とも見てとれる風貌で活発的な若者といった感じの少年だった。


「自分がとれるっす!仲が言い訳じゃないっすけど定期的に自分の担当してる地域の情報を書面して渡してるっす!4日後会う事になってるっす!」


「そうか・・。ではそこで伝えてもらっていいかな?情報を提供してくれないか?と」


「了解っす!!」


 やたら明るい笑顔につられ周りも笑顔になっていた。

 やる事も決まりそれから少しの間とりとめのない会話して解散となり、また5日後この洞窟に集合となった。

 洞窟を出るとまだ真夜中だった。町に戻っても下人を泊めてくれる宿など無いので魔獣や有翼人に見つかりづらい場所での野宿になる。

 この辺りに詳しいニックが京弥一行に加わり比較的安全なポイントまで連れていってくれた。

 

 そしてすぐ5日後がやってきた。

 




 

 


 


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