聖騎士
有翼人、白い羽の生えた人間。
魔法力も優れ、容姿端麗でもあり進化当初は天使と呼ばれていた。
だが同時期に進化を成した獣人と呼ばれる見た目は人間と変わらぬが戦闘時などに爪や牙をだす獣と変わらぬ人種。
その獣人は我ら有翼人を「羽あり」と呼び敵対している。理由は見た目もあるだろうが我ら人種は肌の色が違うだけでも争いをする愚かな生き物。
その為姿が変われば争うのは必須だったのかも知れない。もう獣人との争いは約400年にわたり長く争いを続けている。
そして進化をしないまま取り残された人間を下人と見下し奴隷扱いとして働かせるのはどちらの人種も変わらぬ行いである。私はそれがあまり好きではない。
私の名は、カタリナ・フォン・ローベルバーグ有翼人の生まれであり、聖騎士だ。
有翼人の治める国は専制国家であり400年前に有翼人を集め独立国家を作った初代皇帝から現5代目皇帝、ヒートベルト様の治める国だ。
私はその中で最強と言われる聖騎士の称号を授かりこの国を守っている。愛国心は軍に入隊した時から一切変わっておらず忠誠心も変わらない。
だが奴隷制度だけは好意を持てていない。いくら私が聖騎士になれたと言っても奴隷の女性を買い弄ぶ同じ貴族共を罪にできないしその制度を無くすことは出来なかった。
下人の子供達を空中魔法地雷避けとして使う作戦時も抗議はしても他の案が見つからず死なせてしまった。
聖騎士はこの国で1人。聖騎士の仕事は国の規律と治安そして外敵を防ぐ色々あるが、この150年忌々しいあの闇煉獄が生まれてからは闇煉獄を浄化する事が一番の仕事となっている。
だがどんなに強大な魔法を使っても聖騎士の聖剣を使ってもあの煉獄を防ぐ手立てはなく、現れた場所にいた命を全て搾取してその場を立ち去る無慈悲な災害。
そしてその災害の力を増大させる存在の呪いの魔女、下人の奴隷解放の為とは言っているがその為の力の代償として闇煉獄を生んでしまったのだ。その存在を許せるわけはない。
私だって奴隷制度を無くしたい。どんな人種だって平和に過ごせる日々を送れるならばどんなに幸福な事だろうか。だがどんなに権力と力を持ってしても願いは叶っていない。私は無力だ。
そんな自分の不甲斐なさを感じながらのある日。私は国の定例会議に出欠する為に王都に訪れていた。
私は王都に在中はしておらず、日々どこかの戦地に身を追いていることが多い。戦地では敵の情報はすぐに入ってくるが自分の国の情報や王都の情報は少し遅れて入ってくる。
なので今日の私は幸運だった。光属性の召喚、呪いの魔女による召喚情報が直ぐに入ってきたのだから。
「会議中失礼致します!ローゼンハイム候が治める領地から巨大な光属性の力が現れたとの情報が入りました!」
会議中だった私達の部屋に兵士が訪れ、部屋に響く大きい声で報告があった。その会議に出欠していたローゼンハイム候が、がっくりとうなだれる。
「よりによって私の領地か・・。それで対応の方はどうなっている?
」
「はっ!近くの警備を対応していた部隊から探索にあたるとの情報がはいりましたがその後消息をたちました。それとその光属性の魔法力ですが・・・今までの光属性の魔法力の反応とは比べ物のならない程の力だったらしく、至急王都の魔女狩り専用の特集部隊もしくは聖騎士様の要請を希望しておりました」
「私の部隊では歯が立たぬとでも言いたいのか?無礼者目が。・・・皆様申し訳ないが私はこれにて失礼する。至急領地に戻らなくてはならない」
ローゼンハイム候はそう言うと颯爽と部屋から退出した。定例会議に出席している公爵、侯爵のほとんどは領地を所有している。
キール・フォン・ローゼンハイム候。侯爵でありながら公爵と変わらぬ程の領地を治めており、その知恵と力は他の貴族も認めており、皇帝の信頼も高い。
私が聖騎士になった時もとても喜んでくれた私にとっては父とも変わらぬ信頼に長ける人物だ。困っているなら手助けをしなければと私は思った。
「呪いの魔女の案件ならば私も動かなければなりません。会議中の所失礼致しますが退出致します。」
「待てカタリナ。卿には我が領土での獣人との戦い最中でまずそれについての報告があるであろう。」
そう言ったのは、ワルツ・フォン・グロズード公爵。この中の貴族でもっとも領地と力と権力をもつ貴族。実質この国はグロズード公爵に動かされていると言っても過言ではない程の力の持主だ。
私とは正反対の考えで奴隷制度を推奨し下人の命をなんとも思っていない、有翼人主義の男だ。正直あまり好感は持っていない。
「ですが、報告にあるとおり今までに見たことの無い光の力ならば早急な対応が必要かと思いますが」
「闇煉獄や呪い魔女は確かに脅威だが、獣人の侵略も捨て置けん。それに召喚直後に何かがおきたなど聞いた事も無い。それにローゼンハイム候の顔もたててやれ」
「・・・かしこまりました」
そう言って私はその会議の途中退出を許されることはなかった。
会議後、私は引き続きグロズード領にての獣人討伐戦に出征する事になる。ローゼンハイム領には魔女狩り精鋭部隊が派遣された。
魔女と呼ばれ忌み嫌われる存在の召喚士は、闇煉獄が生まれてからは魔女狩りが苛烈を極めその数を極端に減らした。恐らく魔女はもう数名しかいないと判断された為、魔女狩り精鋭部隊数は結成当初に比べれば減りはしたがそれでも光属性は手強いし、下人とはいえ魔女はそれなりの力を持っている。その為に数は少なくなったがそれでも精鋭部隊は強い、私はそう認識している。
今私はローゼンハイム領に向かっている最中だ、グロズード領の獣人戦はまだ終わっていないが皇帝陛下勅命が下った。
「「ローゼンハイム領にて光の戦士及び呪いの魔女を討伐せよ」」
魔女討伐精鋭部隊の壊滅。ありえない事だった。
今までの歴史上に召喚された12人の光属性の下人、確かに強大な力は持っていた。だがその為の精鋭部隊だ、こちらも今まで簡単に壊滅などありえなかった。
13人目の光属性の下人、そんな力をもった光が闇に飲まれた時あの煉獄は呪いの闇煉獄はどれだけ強大な災害になってしまうのだ。この世界を滅ぼす災害になってしまうのでは?いち早く見つけ処断せねば大変な事になる。
私は必ずその光を見つけ闇になる前に殺さなければ。




