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白き魂の黙示録  作者: code.e
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召喚士と魔女

 私が白い魂を探す為に祈祷してから3年弱が過ぎた。


 水無瀬 玲。この名前で生を授かり19年。全ての人種は生まれた時に魔法力は決まっておりどれだけ願いを捧げようとも、修行をしても増える事は無い。

 魔法力とは生命力その物でもある為に他の人種に比べ進化のしていない私達は強い魔法を使うと直ぐ死に至る。

 私は遥か昔から続く祈祷師の一族であり、今は同種には召喚士と呼ばれている。

 神と対話して召喚できる力は魔法力を使わないで起こせる奇跡の力で、進化していない下人の私達からしか生まれてこない。だが召喚には膨大な時間がかかる為に戦いには不向きである。


 数300年前から私達召喚士の行っている事は、私達とは違う時間軸、過去や異世界から白い魂を召喚士して受肉させ私達の変わりに戦ってもらう事。

 白い魂の持主は唯一、光の魔法を使う。

 その力は絶大で、火、水、土、風全ての魔法に効果的で普通の魔法で魔法力を多大に使う上位の魔法にすら匹敵するがその様な奇跡のような存在が多いわけもなく数百億の中から白い光を探す日々。

 歴史の中で白い魂の転移者は今まで12人。その全てが転移前は幼子だった。どうやら白い魂とは穢れていない魂でありながら強い魔法力を持つ者と言うのが召喚士の見解である。

 だが歴代の12人の白い魂の幼子達は10年以内に全て・・・闇に捕まってしまう。この荒んだ救いの無い世界で戦いに身を投じられ絶望し光の力の対する力、闇に落ちる。


 私達の事を召喚士と呼び、神のように崇めるのは仲間達つまり進化前の人達、他の人種から下人と呼ばれる人達。有翼人、獣人は私達召喚士の事を呪いの魔女と呼ぶ。

 他の人種から見れば私達は害であり、呪いの元凶である。理由は闇に落ちた白き魂の集合体、闇煉獄。

 闇煉獄は自然災害の様にどこに現るか不明でそれが地上に現れた時、そこにあった命全てを飲み込み消えていく。呪いの災害。

 

 私達召喚士のエゴによって生まれた災害、私達の罪だ。


 闇に落ちる子達が増えるにつれてその力は肥大し続ける。それなのに私達は祈りをやめない。辞めれないのだ。だって私達は下人の希望、皆の夢、自由と平等を勝ち取る為の唯一の力。


 元々多くなかった召喚士だが、闇煉獄の災害が増えてからの有翼人と獣人の魔女狩りが過剰を極め今では私と妹の可憐のみだ。

 何故私達だけ生き残れてるかというと、私の力が歴代存在した召喚士の中でも強大な力の持主であり、稀有な事に魔法力も有翼人と獣人にも劣らない程持っていた為、皆が命をはって守ってくれたからである。可憐は召喚士の力は並だったが魔法力が絶大で私を命がけで守ってくれている。

 そんな私が召還する白き魂は必ず救世主になってくれると皆が信じている。私はその期待に答えなければならない。ならなければならない。


 そしてそんな私にはやらなければならない事がもう1つある。私の中では皆の言う自由と平等よりも重きを置いてしまっている事。


 闇煉獄を消すこと。この私達の罪を罰で報いる事。強大な力を持って生まれた私の宿命。



 私達は洞窟や集落を転々として逃げながら祈りを捧げる日々を過ごしている。生命力をつかい結界をはり私達を守り数年持たずに死んでいく仲間達を横目に祈りを捧げる日々。

 そんな悲しみの日々、やっとみつけた大きな光、白き魂の持主。だけど聞いていた話と違った。その人は大人だった。20代後半ぐらいの容姿で綺麗な顔立ち、そして何とも言えない不思議なオーラを持つ魅力的な男性。

 白き魂は穢れ無き魂。何故成人を迎えた男性が・・。そんな事を思うよりも私は誰よりも強く光り輝くその人の白き魂に思わず魅了されてしまった。


「・・・綺麗」


 私は見た瞬間、心が震えた。見つけた感動なのか分からないけど涙が止まらなかった。

 

 その人の周りには人がたくさんいた。何かの祝賀会最中?お祭り?私には体験した事の無い世界。もしかしたら私にもこんなふうに普通に笑える世界もあったのかな。

 今から私はこの人を世界から引き離しこちらに呼ばなければならない。どんなに見繕っても、綺麗な言い方を探しても見つからない。理不尽に引き離す。

 怒るだろうか?怒るよね。あんなに幸せな笑顔をつくれる場所からこんな死の匂いがそこかしこに漂ってる場所に呼ばれるんだから。理由は分からなかったけど確信があった、この人はそれでも私を、私達を救ってくれる。この人なら私達の世界にも、今そこにある笑顔の空間を創ってくれる。


「・・・召喚します」


 悪魔の魔法のように黒い手が白い魂を掴む、引き離す、そして引き寄せる。人を殺してた実感がわく。自分の手でナイフを突き刺すのはこんな感じなんだろうか。罪悪感に押しつぶされそうになる。


 召喚完了。


 喜ぶ所だ。やっと見つけた救世主様。召喚も無事完了したのだ。だけど私は涙がとまらなかった。

 皆の為、私を守るために死んでいった仲間達の為、私は何があっても動じないと心に決めていたのに涙だけがとまらなかった。

 私この人を苦しめるだけの女になってしまうのだろうか?悩まさせるだけの女になってしまうのだろうか?今まで生きてきて始めて感じる感情。不思議な気持ち。


 私は召喚士。そして呪いの魔女。今までの召喚士の罪を終わらせる者。そう言って私は心を閉ざす。

  

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