確信的駄文小説『主人公らが、悪と戦って勝つ話』
※ この作品は[確信的駄文小説]です。苦手な方はご注意ください。
▼
▼
▼
あるところに、主人公とヒロインがいました。ヒロインの名前はなにがいいかしら。シャルロッタとでもしておきましょう。あとでいやになったら変えればよし。
山のふもとに、悪がいました。彼または彼女は、「悪」。「悪人」ではない。悪人と呼ぶと、なんだかほんとうの悪じゃない気がしてきてしまいますからね。なあシャルロッタ、そうだろう?
「いいんじゃない?」
ああそうかい。
さてさて、物語の題材はそろった。
主人公と勇者シャルロッタは、悪を退治しに行きました。どこへ?
「ふもとさ」
そう、彼らがいるのは山の上。山上憶良じゃないよ。
「そのネタはお蔵入り」
ああそうかい。
てなわけで、主人公とヒロインは、「山の下の悪ら」のもとにたどり着きました。
「悪らだって?」
「悪と、その手先ども。まとめて悪ら」
「ああ、悪等ね」
「そうよ」
ところで、ここは有名な温泉地。この一帯を箱根温泉というとか、いわないとか。
「せっかくだから、入ろうよ」
「混浴は嫌だから、男に変身するわね」
ああそうかい。
さてさて、温泉からあがって持参したシジミ汁をすすった主人公と豪傑カルロスは、「ああこの温泉にはこんなパワーが秘められていたのか」と効能書きを見てしばしの間おったまげて過ごしたのち、「悪ら」と戦って勝ちました。あ、カルロスっていうのは、男に変身したシャルロッタの便宜上の呼び名です。
「なんでシャルルじゃないんだい?」
「主人公のくせに細かなことを気にしなシャル」
「ああそうかい。もういいぜ」
「なんだとこの野郎」
こうして喧嘩が始まった。
さて、ここで思わぬことが起こります。
「ふっふっふ、悪はまだ、倒れとらんぞ」
ああそうかい。
「総会だぜ!」
死んだふりをしていた悪は手先どもを復活させ、悪の総会を開き、悪の手先どもは「アジフライの恨み!」と叫びました。
「爽快だぜ!」
じつはさっき勇者らはシジミ汁のおかずにアジフライを食べたのだけれど、「これはもともと悪らの食料であったのを山の上の主人公らが掠めとって冷凍食品にしたものであったのだ」という嘘の新聞記事を、悪の友人その名も「悪友エックス」と呼ばれる輩が社長代理を務めている全国紙の会社が書いて、悪の手先らが「アジフライの恨み!」と叫んで士気をアップさせるようにアジテートしたのです。
こうして、カルロスと主人公は休戦協定を結び、ともに悪らと戦うために箱根を去った。そう、悪らはたまたま箱根のふもとに旅行に来ていただけで、その本拠は箱根ではなかったのです!
てなわけで、バスを乗り継いで東京へ向かった主人公とカルロスは、それぞれ渋谷方面・池袋方面から悪らを追いつめる。そして最終的に、悪らはやっつけられてしまいました。
「やったわね」
「ところでカルロス、喧嘩はどうする?」
「喧嘩? やめにしましょ。山の上に戻りましょ」
「どこだっけ? キリマンジャロ?」
「いやいや、箱根じゃろ」
そういうとカルロスは呪文を唱え、可愛らしいブレイズヘアの似合う二十五歳くらいのヒロインの姿に戻った。
「じゃ、帰ろうか」
こうして、めでたしめでたしです。
ふたりの冒険は、新たな悪がこの銀河系にふたたび現れて「悪友エックス」と手を組むときが来るまで、おあずけなのでした。