25話 白きフリルへの焦燥
★ 白きフリルへの焦燥
アスタフェルの店の寄り道はそれで一旦おしまいになり、ワタシたちは予定通り店を回って買い物をした。
少々時間がかかったが、あのエプロンドレスのおかげでようやく予定通りに買い物ができたわけだ。
「……大丈夫か?」
ワタシは彼を振り仰いだ。すでにアスタフェルは両腕に袋を通し、その腕で大きな箱を三段抱え、背にはたくさん物が入っていびつな形を見せるリュックを背負っている。
かくいうワタシは大きめの肩掛けカバンを掛けているだけだ。
「大丈夫だが……よくこれだけ買うものがあるな」
「魔女だからな。普通に暮らすより必要なものが多いんだ」
なにより清潔なものがたくさんいる。
使い古しの布を使って手当するのは好ましくないから新しい布は大量にいるし、薬を人に渡すための小さな壺や瓶もたくさんいる。
それから薬を作る際に使用する植物油や動物の脂も、できるだけ品質がいいものが大量に必要だ。
「でも助かるよ。今まで一人だったから、こんなに思いっきり一度に買えなかったんだ」
「これくらいならお安い御用だ。どんどん俺を使ってくれて構わんぞ」
請け負うアスタフェルに、ワタシはくすりと笑った。
「頼もしいな。やはり男手があると安心できる。女一人だと心もとなくてな」
ワタシだって仕事を手伝ってくれる人にはこれくらいのご機嫌取りはする。相手が出会い頭に命を狙ってきた魔王であってもだ。
「そんなこと言われたらもっともっと持ちたくなってきたな。さあジャンザ、もう一箱追加するか?」
「箱じゃなくて袋だ。次が最後の買い物……香辛料だ」
これが本日の買い物のメインといっていい。王子様に使う惚れ薬に欠かせない大事な材料だ。
「香辛料って、料理の?」
「料理にも使うがほとんどは薬の材料にする。そもそも口に入るものとはすべて薬の作用があり、なかでも香辛料はその効果が顕著で、殊にナツメグは――」
などと講釈していたワタシの目の端に、白いものが写った。
視線が吸い寄せられる。
それは、ワタシたちを追い抜いた男が抱えていた、白い布切れだった。見覚えのあるフリル。まさか――。
「どうした?」
「あ、いや」
アスタフェルは抱えた荷物が邪魔で見えなかったらしい。
まさかな? あんなに高いものがそう簡単に売れるわけがない。
あれは違うフリルだ。
違う、けれども。
大丈夫だと言ったのに。アスタフェルはワタシの言葉を信じてお金を貯めようとしているのに。
「…………………」
アスタフェルの輝いた顔を思い出す。可愛い、可愛いといって目をキラキラさせていた。
……よほど着たいのだろう。それが売れてしまったなどとなったら、どれだけ落胆するか……。
「ジャンザ?」
「すまない、アスタ。ちょっと用事を思い出した。あの角を曲がっところでいつも香辛料屋が店を出しているから、先に行って待っててくれ」
「え、おいジャンザ!」
大荷物を抱えたアスタフェルを置き、ワタシは来た道を取って返した。
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