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キャラクター作成

 

「そんじゃあ、またな。」


「あーい!最初の遺跡でね!」


 ピッ


 友達と電話をしていた葉月夜斗(はづきよると)こと俺は、その身をベッドへ投げる。それと同時に、手に持っていた携帯をスリープモードにすると、もう一つの手に持っていた機械的なヘルメットに視線を向けた。


 長年の夢だった、VR機器だ。もちろんこれ単体では出来るものも限られてくる。だから、それ専用のVRMMOゲームソフトも買ってきた。最近はやっているものらしい。


 俺は上半身だけ起こして、ゲームソフトのカセットをVR機器にセットする。


 あああ…やべえめっちゃ緊張する!!


 いざ装着しようとしても、緊張のあまりその手が止まる。俺は一回深呼吸をする。


 ……よし!


 覚悟を決めた俺は電気を消すと、ヘルメットを被り側面にあるボタンを押した。そしてベッドで仰向けになると、目を瞑った。


 その瞬間、眠りに似た穏やかな感情が頭を支配した。











 ヒーローズ & モンスターズ -オンライン-












 そういうタイトルが目の前に映し出された。しばらくその状態が続く。読み込んでいるのだろうか。そう思った時、タイトルが消えていった。


『こんにちは。』


 少女のような声が白い空間に響いた。驚いてあたりを見渡すと、俺はいつの間にかその白い空間に立っていることに気づく。


「うわぁ、すっげえ!」


 俺は驚きのあまり声を上げた。頭に被っていたあのヘルメットもない。


『まずはあなたのスキンを決めましょう。』


 また少女の声が聞こえた。恐らくAIだろう。すると、俺の前の空中に様々な長いボタンと例となるスキンの絵が現れた。まずは…


【人間スキン】 【魔族スキン】


 というような文字がボタンに記されている。


『質問があったら遠慮なく言ってください。』


 そういう声が聞こえたので、早速俺は質問してみる。


「これって…どういう事なんだ?」


 すると、すぐに返ってくる。


『これは、スキンを決める時に、どちらの種族が良いかという選択です。』


「へえー。」


 少しわかった気がする。…ん?


「魔族って…モンスターの事だよな。」


『いいえ、違いますよ。』


「え…そうなのか?」


 少女の声が、少しだけ大きくなる。


『このゲームでは、知能のあるモンスター族を魔族、知能のないモンスター族をそのままモンスターと呼びます。』


 調子づいたのか、少しずつ饒舌になっていく。


『それに、説明書はご覧になられましたか?このゲームは、仮想現実という特徴を活かし、あなたのいつもの姿、つまり人間の姿以外のスキンを取り入れたのです。それが【魔族スキン】。それ以外にも活かしたところがありますが、それはまた後ほど。』


「ああ…まあ、確かにそうか。」


 俺は説明書を読んでいなかった。そういうのを読まずにゲームをしてしまう性格なのだ。どういうゲームなのかというのも、友達から少し聞いただけだ。


 しかし、ここで説明書を読むために一旦切るのも良くない。俺は仕方なくボタンの前に立った。


「…これって、一度選んだら戻れないのか?」


『いいえ。戻れますよ。』


「あぁ、わかった。」


 俺は試しに魔族スキンと記されたボタンを押した。すると、そこからまたボタンが現れる。


「うお、多いなぁ…こんなにあるのか…。豊富…。」


 そこには、それぞれの種族が記された多くのボタンがあった。ゴブリン族、獣人族、スライム族、竜族、スケルトン族、など。あらゆる種族がそこに記されていた。俺は、単純な疑問を呟く。


「これゲームの容量とか大丈夫か…。」


『問題ありません。』


 そして、変わらず少女の声が答えを返した。


「問題ないんだ…。」


 俺は、少女の言った言葉を一回繰り返した。


 まあ、それはそうとして…スキンどうしようか…。


 正直なところ、俺は少し気になっていた。確かに、人間の姿とは違う、魔族の姿というのも興味深い。ただ、それに慣れてしまった場合、現実の方でなにか支障をきたしたりしないだろうか。


 特に、人間の姿とは全く違うスキンのもの。例えばスライム族だとか、竜族といったものだ。


 俺は、質問をしてみた。


「魔族スキンって、慣れちゃった時…現実に帰ってきたら色々と大丈夫なのか?」


『大丈夫です。問題ありません。』


 …


「え、問題ないのほんと大丈夫?」


『大丈夫だって言っているでしょう?』


 さっきの細かい説明とは打って変わって、強引にそういう少女の声。


「…まあいいや。」


 理由を聞こうなんて思ったが、結局俺は諦めて最初の選択肢に戻る。


「なんというか、魔族スキンもいいけど、人間の姿じゃないと落ち着かないかもなぁ。」


 俺はそう呟いて、人間スキンのボタンを押した。そこからは、二つの選択肢が現れる。


【自作する】 【このままにする】


「これはどういう事なんだ?」


 迷わず質問した。


『これはスキンを1から作るか、もしくは自分の姿のままのスキンにするかの選択です。総計からでは、自作が多い傾向にあります。』


「なるほど…。」


 適当に相槌を打つ。ここで、俺はある考えが思い浮かぶ。


「じゃあ…年寄りのおじさんが自作スキンの時カワイイ女の子になる事もできるのか?」


『可能です。』


「うわ疑心暗鬼になるぅ…。」


 まさかとは思ったけど出来るんだ…。すると、少女の声から溜息が吐かれる。


『ですが、そんな特殊な人間は今のところ確認されていませんよ。安心してください。』


「ああ…まあそれならいいや。」


『まあ男から女にする人間なら何千人くらいかはいましたが。』


「あやっぱだめだ。」


 俺は呆れて自作の選択肢ボタンを見つめる。そこから、またふと疑問に思う。


「これってさ、自分の姿からなにか加えたりする事って出来るか?」


『出来ます。【このままにする】という選択肢を押し、【変更する】という選択肢を押せば可能です。』


「わかった。」


 俺は、少女の声が言っていたとおりに選択肢を押す。すると、目の前に自分の姿が映し出された。その横に、縦に並んだ選択肢がズラっと浮かんでいる。


 ここから変えられるってわけか。


 早速俺は自分の姿から、多少なにかを変える。


 黒い瞳から青い瞳に。黒い髪から青い髪に。背を少し高くする。


 あ、服も変えられんじゃん。種類は少ないけど。


 せっかくなので、初期装備の貧相な服装から少しカッコイイ戦闘服に変える。青いマントや赤いマフラー等の装飾品も加える。そして加えてて思ったことが一つ。



 水属性扱いそうだなこいつ。



 別に意識して青色にした訳では無いが、偶然にもこうなってしまった。


 まあなんかカッコイイからいいか。


 装飾品等の付け加えも終え、目の前に映しだされた半透明の俺を改めて見る。



 うんもうこれ水属性だな。決まり。



 そう思って、【終了】の選択肢を押した。


 すると、自分がそのスキンの姿に変わった。




 が、その瞬間




 ズボボボオォ!!!


 !?!?


 目の前に多くの武器が下から轟音とともに現れた。


『次は武器を選んでください。』


「ちょっと待って」


『自分に合った武器を選んでくださいね。』


「ちょっと待ってって」


『多分弓矢が似合うと思います。』


「勝手に決めんなってか無視すんなやおい!!」


 漫才のようなやりとりに俺は少し笑うが、それでも言いたいことは言わせてもらう。


「なにあのモグラみたいな出現の仕方もっといいのあっただろ。」


『ナイスツッコミです。』


「はぁ??」


 予想外の返しに思わず顔を顰める。そんな俺に対し、少女の声は淡々と説明する。


『そういうツッコミを想定されて作られた演出なのです。』


「は、え、そうなのか?」


『はい。』


 俺は片手で顔を覆う。


「じゃあ…俺…まんまと乗せられたわけか…。」


『その姿、カッコイイですね。』


「…今言うセリフじゃねえだろ…嬉しいけども。」


 そう言って、俺は目の前の多くの武器を見据える。


「それはそれとして…多いな。武器。」


 ざっと見て20くらいはありそうだ。俺はとりあえず目の前にあった弓矢を手に取る。

 重さは意外と軽めだ。特に装飾もされていないごく普通の木製の弓だからだろうか。矢の先端は鉄製でよく尖っている。試しに矢を弓につけて構えてみる。弦を引っ張って、ようやくここで気づく。


「あ、そういえばここで打っても大丈夫か?」


『大丈夫です。的も出現させてしまいましょうか。』


「お、助かる。」


 そう言ったあと、遠くに的が出現したのを発見する。俺はそれに狙いを定め、弦を離した。



 ビュゥゥン!! ゴッ!!



 勢いよく空を切った矢は的の真ん中を外れてしまう。しかし、的を外した訳ではなかった。狙っていた中央からやや右へと逸れてしまっただけだ。


『優秀ですね。ほかの方と比べて、なかなかの命中率です。』


「そうか?手応えは感じなかったけど…。」


『大体のプレイヤーは的から外れてしまうのです。あなたは、良い腕を持っていると思います。』


 俺は首を傾げた。


 そんなに…いや、だいぶ適当にやったんだけど…。


 自分自身の腕を信じきれず、もう一度遠くの的を狙って打ってみる事にした。今度は、ちゃんと狙って。


「……」


 真ん中を狙って、弦を離す。


 ビュゥン!!! ゴッッ!!


「…!!」


 俺は心底驚いた。



 まさか本当に、真ん中に当たってしまうなんて。


『おめでとうございます。見事、中央へ命中しましたね。』


「ほん…とだね…。すっげえ…!」


 才能を開花させてしまったかもしれない。自分が自分じゃない気がして、胸が躍る。


 あ、スキンは確かに自分とは違うけど。そういう意味じゃなくて、なにか別の意味で。


『それでは、弓矢を装備していきますか?』


「いや…まだ早いかなぁ…。」


 確かに弓矢はいいかもしれない。でも、その前に、


 俺は、弓矢以外の多くの武器を見据える。


「まだこんなにも武器はある。せっかくだし、吟味していこうぜ。」


『おや、ノリノリですね?』


「へっ、ちょっとね。」


 俺は弓矢を元の場所において、ほかの武器を試してみることにした。



 ………



 そんな中、俺はとある武器に目を向けた。紫色の光る玉みたいな武器だ。というかこんな見た目で武器と言えるかどうか。


 とりあえず質問してみる。


「これはなんだ?」


『これはオリジナル武器を創ることが出来る武器です。』


 少女の声は相変わらず決められた台詞のように説明する。


「ええと…つまり、自分に合った武器を作れるって事か?」


『はい、その為の武器です。とはいえ、あなたのようなレベル1のプレイヤーにはまだ装備出来ませんが。』


「…え…じゃあ、ここにある意味って」


『ないですね』


「ないんだ!じゃなんでここにあんだよ!」


 あ、これ多分また漫才始まるやつだ。


『この武器の存在を知る為ですかね。』


「…ん?さっき無いって」


『この武器はカンストレベルであ「待て待て待て無視すんな!無視すんなぁ!!」


 俺は食い気味につっこむ。


『なんですか?快く説明をしている最中に。』


「あ、あぁもう、いいよもう…説明して…」


 もうダメだ。疲れた。これチュートリアル前だよね。なげーよ。


 俺はもう投げやりになって武器の説明を聞く。


『この武器はカンストレベルである《Lv9999》の、10分の1、つまり約《Lv1000》以上で装備することができます。』


「…へぇ。」


『そしてこの武器は魔力を消費する事で武器として生成されます。生成する時に消費された魔力が多ければ多いほど、理想とする武器に近づけますし性能の良くなります。それに加え、ごく稀にスキルも付与される場合もあります。』


「…それって、大量生産する事って可能なのか?例えば…銃弾とか。」


『可能です。銃弾や矢などの小物は、生成時に消費される魔力は少なくなります。故に、小物等は魔力さえあれば大量生産する事は可能です。』


「へぇ…。」


『そして、自分の魔力はレベルが上がるにつれて増えていきます。それに伴い、小物の生産率も上がっていきます。双銃や弓矢などを主に使っているプレイヤーには重宝されている武器です。』


「…矢とか銃弾とかって買えるよね。」


『そうですね。』


「お金が魔力に変わっただけだよね。」


『そうですね。』


「…もうそれ武器じゃなくね。」


『そうですね。』


 …


「いやそうですねじゃなくて」


『と、言うのが本来の使い方。』


 少女の声がいきなり怖くなったような気がした。無機質な声が、やけに白い空間に響く。


「…と言うと?」


『最近、この武器をイレギュラーに使うプレイヤーが多くなってきたのです。例えば…』


「…例えば?」


『…トランプ、ナイフとフォーク、紙、電撃、水、中には小規模な隕石さえ創り出してモンスターに攻撃する、というプレイヤーが続出しているのです。そしてそれは、どれも高レベルのプレイヤーばかり。』


 そう言われて想像したのは、トランプで攻撃する姿や電気で相手を麻痺させる姿。特になにかあるわけでもないように思えるが。


「俺は別にいいと思うんだけど…。」


『私も、一種の攻撃方法として非常に効果的だとは思うんですけどね。』



「…そ、それで?」


 もしや、その使い方は良くなかったりするのだろうか?本来の使い方とは違うから、バグが発生しやすかったりとか?


 俺は少女の声を待った。少女は、溜めているのだろうか、なかなか声が聞こえない。







『え?終わりですけど。』



「おわりぃ!!??」



 なんかあると思ったらなんもなかったよ!構えちゃったよ!なんなんだよ!!


「え、なんかあるんじゃねえの!?そういう雰囲気だったろ!」


『何もありませんが。』


「…なんだよもぅ…。」


 俺は顔を片手で覆って天を仰ぐ。


『…面白い人間ですね。』


「うるっせ。」



 ………



 一通り武器を試したが、やはり弓矢だけが手に馴染んだ。


「じゃあ、これにしてくれ。」


『弓矢でよろしいですか?』


「ああ。」


 そう返事をした瞬間、手に持っていた弓矢以外の武器が轟音とともに空間に沈んでいった。もうつっこまんぞ。


『それでは、あなたの名前入力してください。』


 すると、目の前に名前を入力する横に細長い欄が現れた。


「これか…よし。」


 これに関しては、もう決めてある。俺は欄に触れてキーボードを出現させ、名前を打ち込んでいく。


【ヨルト】


「これでよしっと。まあそのまんまだけど、別にいいや。」


『これでよろしいですか?』


「ああ。」


 すると、目の前の欄が消えた。それと同時に、少女の声が聞こえる。


『それでは、最後に…』


 目の前によくある木製の宝箱が出現する。


『ヨルト様にスキルを一つだけ贈呈します。』


「ああ、スキル。」


 なんか聞いたことあるな。


『その宝箱を開けてください。』


「おっけ、わかった。」


 少女の声に促され、俺は宝箱を開ける。中から光が漏れ、それは徐々に明かされる。スキルは…





【千里眼 LV1】


「…これはどういうスキルだ?」


『名前の通りですね。自分を中心に半径10メートル内にいるモンスターを感知することの出来るスキルです。良くも悪くも、といった所でしょうか。』


 お、遠距離を扱う弓矢にはぴったりなスキルじゃないか。


「レベルMAXになったらどうなるんだ?」


『自分を中心に半径200メートル内にいるモンスターやプレイヤーを感知することができます。』


「ひっろ。すげえな。」


 このスキル、甘く見ちゃいけないかもなぁ…。あ、そうだ、


「ちなみにさ、一番強いスキルって何?」


『【極限】ですね。一定期間ステータスが10パーセント上がり、魔力の消費量を著しく抑えることが出来るスキルです。さらに、【光陰】というスキル、普段このスキルは自分の速度をあげるといった効果を持つのですが、【極限】と混合して発動させることによって、自分以外の時間を完全に止めるといった効果を持つようになります。』


「えなにそのチート。」


『勿論デメリットもありますよ。連続して発動し続けると、心身や精神が崩壊し最悪の場合死に至ります。ゲームオーバーになるだけですが。』


「だよね一瞬びっくりした。」


 だとしても、正しく使いこなせばチートだということには変わりない。


『さて、そろそろ始めますよ。』


「あ、ああ、わかった。」


 少女の声が突然仕切った。うん、まあ、


「長かったな…ここまで。」


 苦笑いしながらここまでのスキンや武器のくだりを思い返す。それと同時に、体が光りだした。


『お気をつけて。』


 …よし!


 俺はVRMMOゲームライフを全力で楽しむことを覚悟した。







 《キャラ作成場→始まりの遺跡》




と、いった物語なのですが、私はVRMMOやゲームの設定等は知識的な部分もあり、個人的に苦手です。なのでもし、矛盾だらけだったり、こんなのゲームじゃねえだろ、と思ってしまった場合はご容赦ください。


それと、この【ヒーローズ & モンスターズ -オンライン-】なのですが、あまり更新頻度が良くない可能性があるのでそちらもご理解いただけると嬉しいです。

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