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Capriccio  作者: 若かりし柚木
第2部
20/21

夕食

「完成っ!」

 ティムが大声で叫び、カタリーナも笑顔で拍手した。ヴァレリアは黙々と皿をワゴンに載せ、テーブルの方へと向かった。

「おっ、にんにくのいい匂いがするね」

 キーラが顔を綻ばせる。先程まで飲んでいた飲み物は空になっていた。

「魚介のスパゲッティじゃないか。久しぶりだね。ティムの提案かい?」

「うん」

 ヴァレリアは皿を置き、かわりに空のコーヒーカップをワゴンに載せていく。

「おいしそうですね!」

 アンズリーが目を輝かせた。

「おいしいよ、何せヴァレリアはこのレストランのシェフだからね」

 キーラが請け合った。

「アレンはどこ行った?」

「ああ、奴は仕事だろうね。さっき出かけたところだ」

 ティムの質問にシリルが淡々と答える。アンズリーが少々驚いているところを見ると、アレンはまた行き先も告げずに出て行ってしまったらしい。

 カタリーナが全員分のオレンジジュースを器用に持って厨房から出てきた。

「あれえ、またあの子出かけちゃって! みんなで食べた方がおいしいのになあ」

 カタリーナの台詞はまるで母親か何かのようで、ヴァレリアはおかしかった。

 六人全員が席に着くと、カタリーナはこほんと一つ咳払いをした。

「えー、それでは、新たな住人に、乾杯!」

「かんぱーい」

 シリルとヴァレリア以外は大声で唱和した。

「ではさっそく、いただきます!」

「いただきまーす」

「さっき言ってたんだけど、明日はティムとヴァレリアとキーラとアレンが仕事。だからアンズリーのことはあたしが護衛する」

「はい、ありがとうございます」

「シリルもいるんだろう? 明日も仕事はないんだろうし?」

 キーラが棘を含んだ言い方をする。

「仕事がないとは聞き捨てならないね。ないわけじゃない、しないだけさ」

「どっちも同じだよ」

「まあまあ。シリルがいたって護衛には向いてないよ。ところでアンズリー、一日中何もしないのは暇すぎるよね? 何か手伝ってみる?」

「手伝う?」

 アンズリーはきょとんとした。

「うん、ウェイトレスでもいいし、できるんなら料理人でもいいし」

「だったらピアノ弾きます! あの、私、ピアノ弾きで食べてたんです。ついこの前まで」

 アンズリーがはにかむように笑みを浮かべる。カタリーナは眉間に皺を寄せた。

「ピアノかぁ……」

「ピアノなら二階の倉庫にあった!」

 ティムが嬉しげに叫ぶ。ヴァレリアもそのピアノを思い出していた。グランドピアノではないので店内にも置くスペースはあるだろう。かなり年代物の品だったが、音は出たはずだ。

「え、あの骨董? 音出せるの、あれ」

 カタリーナは眉間の皺を深くする。

「調律をしないと使えないだろうねぇ」

 キーラがしたり顔で言うと、

「調律師ぐらいなら呼んで来られるさ、僕にまかせてくれ」

 シリルが妙に乗り気で請け合った。

「へえ、珍しいなぁ、シリルが自分から動くなんて。まあいいか。じゃあ、アンズリー、明日出してみよう」

「はいっ」

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