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Capriccio  作者: 若かりし柚木
第1部
14/21

護衛

「あ、あのっ、ありがとうございましたっ」

 アンズリーは恐縮した。二人は何も言わずに前を歩いていく。馬車道を歩いて引き返すのはなかなかの重労働だったが、アンズリーは必死で追った。

「本当に私、何てお礼言ったらいいか、わかんないくらいで……」

 アンズリーがそう言った時、突然ティムが振り返って言った。

「礼なんか言わなくていいよ」

「で、でもっ」

「けどもしよかったら、一緒に来ないか?」

 そう言ったティムの顔を、ヴァレリアが胡乱な目で見た。

「え?」

 アンズリーは驚いた。

「追われてるんだったら、俺らの所ほど安全な隠れ場所はないと思う。そうだ、本当に護衛してあげてもいいよ、ねぇ?」

「……そうだな」

「いいんですか」

「あんたこそ、いいのか? こんな奴ら信用して」

 ヴァレリアが包帯をさすりながら苦笑いをする。

「こんな奴らだなんて……ティムさん、ヴァレリアさん、ありがとうございます!」

 ティムはとたんに破顔した。そして嬉しそうにスキップでどんどん先に行ってしまった。

 ヴァレリアはそんなティムにどこかやさしげな視線を向けている。

「なんか、ヴァレリアさんてお母さんみたい」

 思わずそう口にするアンズリーに、ヴァレリアは少し鬱陶しげに眉を寄せてみせた。口角は緩い弧を描いている。

「お母さん、か。そんないいもんじゃない」

「……あの、何で助けて下さったんですか?」

 ヴァレリアの顔から微かな笑みが消えた。

「――ティムは、助けないわけにはいかなかったんだろう」

「どういうことですか?」

「いずれわかる」

「じゃ、じゃあヴァレリアさんは何で?」

「何でだろうな」

 ヴァレリアは無表情で、アンズリーには感情が読み取れなかった。

「あんたに助けてもらいたかったから、かもしれないな」

 アンズリーは何も言えなかった。聞きたいことは山ほどあったが、ヴァレリアの顔が話は終わりだと言っていた。

「おーい、何してんだー! もうちょい早く歩けないのかぁ?」

 遥か前方の黒い点が叫んでいる。

 アンズリーとヴァレリアは顔を見合わせ、駆け出した。

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