『RⅠ.2』転生先の雇用条件と不合格者の処遇【介入者】
俺は死んだ、記憶は残っている
辺りは暗く体は石像の様にぎこちない動きをしてしまう
あのウワサはやっぱり嘘だったのかそれともここが正しい行き先なのか
なんにせよもう俗世のことは俺に何の関係もない
しばらくして、目が慣れてきた辺りを見返すと自分のように座りこんだ人が
散らばって石柱にもたれ掛かっているそのうちの一体が自分に近づいてくる
転生について説明してくれるのかと思ったがそうではなかった
「こんにちは、僕は全!ここは何処で君は誰?教えてくれ感情の子よ!」
王侯貴族の格好で手を腰に当て前屈みになって自分が無知であり
万策尽きている事をアピールしてきた
「ねぇ聞いてる?君も喋れないの?首が動くだけ?」
「うーん・・・よしわかったイエスなら1回ノーなら2回うなずてくれたまえ」
「君は本当は喋れるが喋りたくないもしくは、喋らせてもらえない」
「コクッ」
「君はここに無理やり連れてこられた」
「コクコクッ」
「以外だ違うのか・・・という事は他の人も自分の意思という事に」
「じゃああと2つ教えてくれ、君自らから死ぬ危険に飛び込んだ」
「・・・」
「どうした?こんどは首もうごかなくなっ」
「えっ君その頭から剥げ落ちてるの何?額だよ額なにそれ」
全が示した場所が自分の体の一部であるとようやく理解した動く石像は目頭を見て
貫かれた額から光が放ち始める様子を全の瞳越しに見た、だが生きていた頃の彼の無垢さは消え
全が自分の頭を鷲掴みにしている様子を呆けて見るだけだった
光が安定した光度になると数百枚程度にまとめられた書簡が落ちてくる
それを見下げると額の光が文字を照射するだが石像には読めない字だった
そこに、全が手をかざすと理解したような面持ちで古言を呟く
「汝、敬謙なるルディクスの死者なればこれまでの徳を我に還し、継ぎし血脈を絶やす事なかれ」
「・・・成程」
石像が全に首をやる
「君は僕の質問に答えてくれたし御礼をしなくちゃね」
「とりあえずごちゃ混ぜになった君の感情を1つにしてやろう」
「それと文字を訳して君にも読めるように・・・」
全が書簡と石像に手をかざすといずれも適当な状態になった
「これで良し、もうあう事はないけど幸運を祈ってるよ!」
別れの言葉を言うと黒い塵になって消えて行った
再び書簡を見ると文字が読めるようになっていた文字を簡潔に現代語に略すとこういうだ
ここでは、自分の新しい家庭を選びそこに生まれる事が許される者への仲介と
その家庭の構成・年収・環境・知識・保護意識・1日の接する時間・望んだ事かどうかなどが書いてある
中でも特別気になったのが【希望・雇用条件】の欄だ全ての仲介案内にここだけ細かく記載されていた
「やさしい子にー」「元気な子ー」ほぼ全てにこの共通点があった、恐らく父母が考えている事が
そのままここに反映されるのだろう、その証拠にまだまだ共通点があった
「あの人と一緒になる為に」「家業を継いで欲しい」「頭の良い子供を作って周りに褒められたい」
「生活保護を受けられる」「苦労を子供を言い訳に逃れられる」「赤ちゃんポストどこだっけ」
など、も記載されていた
私欲
周りに迷惑が掛からず自分で全責任を負えるならまだ分かる。だが欲求に子供を巻き込む奴の
元に生まれたいと思うだろうか? 『先ず、無い』
そう思った瞬間それらがタグ付けされた仲介先が全て消え去った
残ったのは2件だけっだった
良く考えてみれば同じ事を一瞬でも考えない人間など現実には存在しない居たとしたらそいつは
極め付けの親馬鹿か自分の子供とすら思っていないかの2択だろう
昔の俺だったらこの欄に
「勝手な期待を抱いて生んで成人したら後はあなた一人で生きて行ってねデスゲームみたいだけど許してね」
「仕来たりや宗教上の理由で堕ろせなかったワケひゃないけどがんばってね」
「育てるのは嫌だし、人殺しにもなりたくないしってまあ生んだ時点で死亡する事は確定なんだけどね」
「一応、健全者だし大丈夫だよね」
これを書いたときの気持ちは
『幸せな子になるように育てよう?無理無理!
幸せって元来、不幸を知ってそれより良い状態の事を言うんだからな?
生んだ時点でそいつは不幸になる事確定なんだよ!』
という所だろう
「自分が石橋になる」前に「石橋を叩く側」になってしまっている
怪しい王侯貴族・無責任な転生先・石橋の是非、幸先の悪さが際立ってきた
やはり、自分に残された感情は理性ではなく欲求なのではないかと感傷に浸る
「どなたか、分かりませんがルディクスの閻魔様よ!」
「これより先に落ちし一方にて再誕したく存じます!」
大きな女とも男とも分からない声で叫びながら2枚の書簡が宙を舞い
黒い地面に落ちた
「汝の言葉聞き入れたそれでは処分されなきよう注意されたし!」
「ー処分っ!?」
額から出ている光が新たな文章を映し出した
金切りのような音と共に額の光が全身に回り出し
仮の自分に終わりが迎えている事を実感しながら眼を閉じ衝天した