小学三年生編〜 第二話 どうしても、大堀タケルは大切な事を思い出せない -1
「私もタイムスリップして来た」
そう俺の前で公言した少女。その容姿は肩あたりで切り揃えられた髪に大きな瞳。そして、活発な印象を与えてくる。
―――白雪林檎だ。
「お前、どうして俺がタイムスリップしてるって気付いたんだ?」
「ん? そりゃタケルの事をずっと見てたからかな」
白雪はそんな恥ずかしい台詞を平然とした顔で言ってのける。何だよこいつは、好きになっちゃうぞ。
「だってタケルさ、一人だけ大人びてるしプールの着替えの時なんか一人だけめっちゃ挙動不振じゃんそりゃあタイムスリッパーだったら気付くよ。クスッ」
なんだと! 俺がコソコソとタオルに隠れている部分を除いてたのバレてたのか。マズイな。
「……まぁ、あの調子じゃ高校でも童貞だったっしょ? ふぅ、安心安心」
「おい、一応俺たち小学三年生だぞ。見ろ、先生固まっちゃってる、こういうのは二人だけの時にしてくれ」
おおぉぉ……先生の目が怖いよ。さっきよりも目が引いてる、俺なんか余計な事言っちゃったかな? 親とかに連絡されたら死ぬな、社会的に。
「話変わるけど、お前がスリッパーだって事は分かった。まぁ、あまり俺には関わらないでくれ。俺はこの人生、月野に捧げるつもりだからな」
「ドヤ顔で恥ずかしい事を言うなよ。ふっ」
なっ……。こいつ俺の目標を鼻で笑いやがったな。
つーか何で今更俺に関わってくるんだよ。俺はあんまり白雪と一緒に居たくないんだよな。月野が虐められた元凶を辿ると、その根本には俺と白雪が居るわけだから。
「まぁいいや。私もそんな感じだし。それと、じゃあどう解決するつもり?」
「どうって、何をだよ」
俺の隣の席に白雪は座る。そして、大きくため息を吐いた。
「驚いた。まさか忘れていたなんて」
忘れたって何を忘れているんだろう。
「自分だけの世界に浸ってないで、教えてくれよ」
「嫌だわ。それは私が幸せを祈ってる以上教えられないもの。あなた自身が気付くか思い出さないといけないの。過去のことだから」
幸せを祈ってるから教えられないってどんだけ自己中何だよこいつ。やはり白雪は苦手だ。でも確かに三年生あたりに何か重大な事件が起こった気がするな。
「移動教室だから、そろそろ行きましょ。相変わらずどこか抜けているのね……そろそろ私の気持ちにも……」
うーむ何か大切なことだった気がする。俺の中で重大な何かが作られた日だった気がするんだよなぁ。
そして俺たちは移動し始める。窓から入る太陽の光が俺たちを包み込む。
「まぁあなたが気付かなくても私が動くからいいわ。私の罪にも関わってる事だし私の信念にも……かしら。でも、タケルがやらないと意味がないのよ。そしてタケルが気付かないと意味がないの。私の償いにもそれは必要なの」
白雪林檎は急に振り返って来て俺にそう言った。その時、なぜか白雪の瞳が光って見えた。
「これだけは教えてあげる。月野輝夜の命が危ない。貴方はその記憶を封印したのかもね、期待してるわ」
そして、白雪林檎の震えた声だけが響き渡った。優しく太陽に包み込まれる空間の中で、その言葉を聞いた瞬間、俺の思考は止まった。
急展開に次ぐ急展開ですいませんorz
本当申し訳ないです、テキトーにやってるわけじゃないんです(汗)