小学三年生編〜 第三話 いつまでも、白雪林檎は幸せの意味を知らない-3
月曜日、それは学生たちが忌み嫌う最低の曜日。そんな最悪な日の朝俺はとにかく憂鬱な気分で学校の階段を一段一段上がっていた。
昨日俺は白雪に対してかなり酷い事を言ってしまった。これじゃ六年生の時となんら変わっていない。この後、月野を助けようとも、俺は同じ過ちを繰り返すのではないか。はたして、そんな奴に月野輝夜を守る資格があるのだろうか。俺はその答えを出せずにいる。
階段を登り終え、廊下を歩いていると前方から白雪林檎がこちらに向かって歩いてきた。
無言で迫り来る。そうとう起こっているのだろうか、目すら合わしてくれない。
俺と彼女がすれ違う瞬間
「壊れたものを治せないなんて事はないんだよ」
ボソッと、聞こえるか聞こえないか程度の声量で、彼女は確かにそう言った。まるで自分に言い聞かせるかのようなか弱い声。今日、初めて白雪の感情が見えた瞬間だった。
白雪の事だから、実は許してくれているんじゃないかって期待していた。俺はどうやら自分を好いてくれる人間すら遠ざけてしまう人間のようだ。
俺と白雪の中で繋がりかけていた何かにヒビが入ってしまった気がする。
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その日の放課後、大堀家にて。
リンリンリンリン!!! とけたたましい音を奏で、電話がなった。
「はい。大堀です―――――え? いえ、知りません。分かりました情報が入り次第連絡を入れます」
何やら額に汗を浮かべて話す母親は、ガチャと受話器を置くと俺に向き直り、憂いと焦燥感を名一杯に纏った声で確実に言う。
「タケル! 大変よ―――――輝夜ちゃんが今日の放課後から行方不明だって……」