一族と貴族
「ようおかえり、元気だったか」
都にはいり懐かしい我が家に向かうと商店の懐かしい人たちが声をかけてきてくれる。
私は懐かしさを押さえながら挨拶をしてようやく母親の診療所に到着した。
軍馬を裏の納屋に入れ1階に入るが母親はおらず2階へかけ上がると相変わらず怪我人と病人でごった返しており、私は驚くみんなに人差し指を唇に当てて診察室のドアを開けた。
「順番だっていつも言ってるだろみんなまってるんだから」
ドアが開いた音を聴いたのか母親が声をかけてくる。
私は隣の八百屋のおじさんをみている母親の後ろに近づき肩越しに母親を抱き締め、
「ただいま戻りました。」
そう言うと母親は驚いてふりかえると、
「アポロニア帰ってきたんだね、おかえり」
抱きしめてくれ、久しぶりにいいにおいがする母親の温もりに私は嬉しさを増した。
「今日は多いからちょっと待ってて」
そう言っておじさんの診察を見終わると診察室をでて、
「今日は息子が帰ってきたんだから重病人以外はあしたきなさい」
無茶なことを言う母親に苦笑しながら、それに慣れっこの人々は、
「よかったね息子さん帰ってきて」
そう言いながら帰っていき誰もいなくなってしまった。
「今日はおしまい、おりよう」
階段を降りると嬉しさのあまり忘れていたノルンとリーアそしてミルが所在なさげに立っており、私は慌てて1階に入れると母親に紹介した。
「旅の仲間であるノルンと妹のリーアそして白虎のミルだよ母さん、一緒に暮らしてもいい」
そう聞くと嬉しそうに母親は頷き二人を抱き締め、
「ようこそノルンとリーア、ここを自分の家だと思ってねよろしく」
ノルンは顔を赤くして、リーアは嬉しそうに頷いた。
私はお湯をわかしてお茶を入れると、
「母さんもかわりはないかい」
「相変わらずの忙しさだよ、しばらくはゆっくりしておいで」
そう言ってミルを驚いたりして過ごした。
翌日からノルンとリーアに体力をつけるための運動を教えて、午後は森へとはいり罠を仕掛けたりして過ごす。
ノルンは私と行動を共にして罠の仕掛けかた弓の使い方をおぼえて、リーアは母親について診療所を手伝っていた。
「アポロニア殿はいらっしゃいますか」
そう聞き覚えのある声があり、居留守を使いたかったがリーアが出てしまう。
「オズワルドさん久しぶりですね」
祖父、いまはその息子の当主に使えている執事であり私にとっては会いたくない人だった。
「帰ってこられたときいて当主フレーゲル様からの呼び出しでお迎えに参りました。」
拒否できるわけでもなく私はため息をついて、
「着替えていきます。少々お待ちを」
そう言って自分の着る服の中でましなものを着ると外で待っている馬車の中の人となった。
幼い頃暮らした場所だが、いい思いではなく来たくない場所だったが逃げられるわけもなく祖父がいた記憶がある執務室に通された。
「何年も音信不通で良いご身分だなアポロニア」
私は無言で一礼をすると、
「貴様が何をしようが鳳凰の当主たる証はわしが引き継いでいる。」
私は鳳凰の根本である気を操ることができないのに何をこだわるのかと思いながら聞いている。
「貴様は多少なりと身に付けたその技術を息子たちに教えろ」
そう私を見下した目で睨み付けるので、
「無理です。祖父が教えて身に付かなかったのにそれよりも劣る私がどうすれば教えられるでしょうか」
「湖畔でのあんれは使えたではないか」
「その結果が1年以上も体を動かすことが出来ずになったことをお忘れですか、完治して帰ってこれたのもようやくです。」
「ちっ、雑種はしょせん雑種と言うことかまあいいだろう、しかし父の遺言でお前を卒業させろと厳命を受けているからな、明日から通え退学届けも握りつぶして休学にしてあったからな」
「断る事はできないということですね」
そう私は祖父が亡くなった後も縛り付けようとする事に恨みをつぶやくしかなかった。
私から目線をはずして呼び鈴を鳴らしてドアが開いたので一礼だけすると外に出る。
「明日からの必要なものについては届けてあります。」
そうオズワルドが馬車に一緒に乗ると伝えてくれ、
「数年間の遅れもありますれば放課後に各家庭教師との勉強をしていただきます。」
「それは受けないとダメかい」
「それが王立学校の功労者として復帰を認められた条件にございます。」
そう言われて受け入れるしかないことを悟った。
家に到着するとリーアが目を輝かせ、
「アポロニアすごーい、あんなきれいな服始めてみた。早くきてきてお兄ちゃんがさわっちゃダメって言うから」
そう言われたので届けられていた制服を着ることにした。
色はネイビーブルーで中等部なので金をあしらったラインが入っており、私は懐かしさもありながらリーアにみせた。
「アポロニアすごい王子さまみたい、いいな私も着たいな」
そう何度も繰り返すので今朝着替えて時に気がついた昔の制服を取り出すと、
「外では着てはいけないけど家でなら良いよ」
そう言って渡すと大喜びでその場で着替えた。
リーアが着る方が私が着るより何倍も似合うなと思いながらノルンに、
「すまないが狩りはしばらく任せる。授業に追い付くまで放課後も勉強だから」
そう言って私は数年ぶりに開いた教科書にめまいを受けた。
薬草学や数学等は母親から教えられており問題はないが歴史などの一般教養が悩みどころになりそうで今からでもと思いながら読み始めた。
「アポロニア、ごはんできたよ」
そうリーアが私を呼び、もう少しと思いながら生返事をしていると、
「こら、可愛い可愛いリーアが呼んだんだから」
そう母親からげんこつを久しぶりにもらい寂しそうにしているリーアに謝ると食卓に座る。しかしノルンの姿はなく、
「かわらないね男の子は」
どうやらノルンも私と同じで熱中しすぎて帰るのが遅れていると言うことで、
「門まで迎えにいってくる。先に食べておいて二人で」
そう言って外へ飛び出して正門へと向かった。
もう夕闇迫る町並みを駆け抜けて正門前までいくと揉め事が起こっている。
私はたぶんと思っていたので人混みをすり抜けて前列に出ると衛兵に捕まっているノルンがいた、
「離してくれよ、診療所に住んでるノルンだってば」
そう一生懸命説明しているが衛兵は納得せず、
「証明になるものを見せろ、最近不審者が多いし、出るときに申告してないからな」
そう言ってロープでとらえようとしている。
「衛兵さんすみません、ノルンが迷惑をかけたみたいで」
そう言うと驚いて、
「昨日報告書に書いてあったがアポロニアだろ帰ってきたと言うことはこの子は連れか」
私は一礼をすると、
「すいません私が門を抜けるときの注意点を教えてなかったので仕事上の迷惑をかけてしまったようです。ノルンはいま妹と共に診療所で暮らしているのです。」
「そうか、今回はしょうがないが身分証なり申請なりして通行するように」
そう言ってノルンを下ろしてくれて何度もお礼を言いながら私はノルンにも謝りながら自宅へと帰った。
家ではどうやら帰ってくるのを待っていてくれたようでノルンが帰ってくるとリーアも大喜びで、
「アポロニアありがとう」
そう言ってくれ急いでご飯を暖めなおすと楽しく夕飯を食べた。
翌日、朝早くからギルドにいくと懐かしい職員のノリスさんがカウンターにいたので、
「すいませんギルド登録をしたいのでお願いできませんか」
「あら、帰ってきたときいてたけど、おかえりなさいませ。登録はそちらのかたでしょうか」
ノルンが頷き私は推薦状を渡すと登録を始めた。
私は空いた時間でいまは受けることはできないがそのうちと依頼の張ってあるボードを確認していく。
動物の討伐もいくつかあり、ノルンが罠でとってくれば依頼を完了できるのもいくつかあり、何としても早めに授業に参加できるようにと改めて思った。
家に戻ると翌日から就学をするようにと学校からの手紙が来ており、私はその日早めに寝ることにした。
日の出と共に起きると身支度をととのえて昔のように誰とも絡まないように学校へ向かう。
朝市の準備をする人々を見ながらロイヤルマギへ制服を着て歩いていくと、ただでさえ目立つ格好なのに平民の子供が歩くと目立つので仕事の手を休めてみている。
私は気恥ずかしさに早歩きで通りすぎて校門へと到着して衛兵に挨拶をして通りすぎると、初等部ではなく中等部なので建物が違うのは学校からの手紙に書いておりそちらへと向かった。
初等部とは大まかには一緒だが自主練習室というのが建物のよこにあるらしく建物の中へとはいる。
クラスはF-1、本来なら成績順なのでF-5か6なのだが裏で手を回したのか何なのか一番最上位のクラスの生徒になっている。
そんなことを今さら考えながら歩いていくと、私は昔懐かしい扇状に雛壇になった教室に入った。
造りは同じだが、体格にあわせて間隔が広がっているようで見上げていくと、
「久しぶりだねアポロニア君がいなくなって寂しかったが、再度通ってくると聞いて私のわがままで同じクラスにしてもらったんだ。」
そう言われて懐かしいロイド王子であり、スラッとした身長もさらに伸びてわたしから見てもかっこよくなっている。
「ありがとうございます、でも毎日放課後まで勉強しないと最高位のクラスに追い付いていけそうにもありません。」
そう私は嬉しそうにすねると、
「私が今度は君を助けるから頑張ろう。三公女はいま国に戻っているから静かだしね」
王子は笑いながらおりてきて私と握手をしてくれた。
しばらく座って話し込んでいると他の生徒が教室へ入って来たので私は王子に礼を言って一番後ろの昔のような定位置に一人になるように座った。
ほとんど知っているあの頃の同級生はおらず、私はなるべく気配を隠すように座って授業が始まるのを待ったいた。
「起立」
ロイド王子の号令と共に懐かしいマルシア先生が入ってくると礼をする。
私を見つけると前に来なさいと言われ落ち込む気分で先生のところにおりていくと、
「アポロニア君おかえりなさい」
そう嬉しそうに先生から言われると頷いて礼を言う。
「みなさん、同級生が怪我がようやく癒えて戻ってきました。アポロニア君です。仲良くしてあげてくださいね。」
そう言うと私に一言言うように促してくるので、
「平民のアポロニアと申します。長いブランクがあるのでよろしくお願いします。」
そう言うと最前列のロイド王子が手をあげて発言する。
「アポロニアは私の親友であり命の恩人でもある。みんな頼む」
そう言うと教室全体がざわついて私は耳まで赤くなり居たたまれなくなり一礼すると一番後ろの席に急いで戻った。
休み時間になるとヒソヒソ話と私を見つめる複数の好意的とは思えない目線に居場所がなくなり、教科書を立ててそこに隠れるようにしながらマルシア先授業の復習をし、やはり殆どがちんぷんかんぷんに近いものであり、私は昼の時間になる手前でもうかなりへっこまされていた。
昼になり、久しぶりに来たのでお弁当を作ってくるのを忘れ付属の食堂で食べることになり、王子が誘ってくれて食べに行くことにした。
王子の取り巻きは侯爵の長子であるマズガン・ブリューネ、と男爵の次男坊であるキスリング・ノルドハイムの二人であり、心ではどう思われているかはわからないが歓迎をしてくれた。
四人の席に座ると給事が出てきて出てきて前菜から次々と料理を出してくれ、私は緊張しながら味もわからずに出てくるものを食べてデザートでようやく落ち着くことができた。
「アポロニアはあの時の怪物と戦ったんだよね、その様子を教えろ」
そういきなりマズガンにふられてあの時ってと思っていると、
「マズいきなりはまずいですよ、困っているではないですか」
そうキスリングが取りなしてくれる。
それでも聞きたいらしく体を乗り出してくるマズガン、
「あの時のこと、よくは覚えてないのだけれど暗闇に光るひとつ目が怖くて無我夢中で攻撃したんだけど、気がついたら体を動かすことさえ出来ずに寝かされていましたから。」
そう言うと、
「結局あれが意図的なのか偶発的なのかわからなかったからな、しかし今度出たら退治してみたいなキスリング」
そうふると、
「軍隊に任せた方が現実的だろうね、アポロニアは運が良いだけだったろうしね」
そう最後にふられて頷く。
「だが私は命を救ってもらった。他の大勢のクラスメイトは命をおとしたんだから運だけでは片付けられない」
そう言って王子がこの話を締め括ってくれた。
教室にもどらず午後は武道館での訓練であり、どうやら来月に校内での大会が開催されるようで皆熱気に包まれてて練習試合を始める。
王子はキスリングと始マズガンは私に木剣をいきなり投げてきて、
「相手をしろ、逃げないよな」
そう言われて逃げ出すわけにもいかず私は剣を構える。
始めをする人はおらずいきなりマズガンが私に大きく振りかぶりながら走りより真っ直ぐうち下ろしてくる。
体格もマズガンはクラスでも一番大きく上級生にひけをとらない、逆に私はクラスでも一番小さく初等部の生徒に埋もれてしまうほどの低さで、本来なら避けて反撃だがわざと両手持ちの木剣で受け止めてみる。
ガツンと言う音と共にその場で動かずうけきる。
大人からの打撃に近いがまだまだ力量はたりないので気を使わずに自分の体と剣技だけで反撃をしてみる。
懐に入りながら束の端っこで突き上げマズガンから離れないように小技で攻撃をする。
「ちょこまかと正統な剣技でもなく学校の習ったのにも入ってない、ふざけるな野盗かなにかか」
そう怒りながら次第に当たらない剣でなく拳や蹴り体当たりをしてきており、私は優しくいなしながらマズガンから離れることは無かった。
「それまで」
そう言われてマズガンが最後に胴を薙ぎにきたが飛び退いて一息つく。
どうやら途中から同級生が見ていたようで拍手が上がり私は慌てて一礼すると武道館から急いで出ていった。
服を着替え急いで補習を受けるために図書館へ向かった。
指定された図書室の中にある自習室へ入ると気難しそうな老人がおり、
「お前が逃げ出した少年か、さっさと座れそしてこれを今日中に提出しろ」
それだけ言うと分厚い書物を読み始めてしまう。
私は座ってテストを受け始める。
初等部で習った範囲と薬草学等はすぐに終わったが、中等部での魔法系等はわからずに白紙のまま出さざる終えなかった。
「野外での知識はあるが、数学や歴史なにより魔法学が全く全滅だな」
そう指摘され顔を赤くするしかなく黙って頷く。
私はいくつか指摘され本を5冊ほど机にのせてくると、
「来週までに読んでおけ」
それだけ言うと出ていけと言わんばかりに手をふるので本をもって部屋を出ると挨拶も名前も伝えてなかったが再度入室するのも躊躇するので次回にはと思いながら部屋を後にした。
帰宅後本をひたすら読んでいく。選んでくれた本は難しいが丁寧に解説されており、私は要点を書き出していく。夕飯以外は机に座り込み、私はひたすら本を読むことに没頭して気がついたら朝になっており、慌てて水浴びをして制服に着替えると弁当と思ったがなにもしているわけでもなくそのまま出掛けた。
朝市の店に並んでいるトマトやいくつかの果物そしてパンが売っているのに気がついて購入した。
行儀が悪いがトマトを食べながら学園に向かい教室にはいると水筒の水を飲んで一息ついた。
教室の一番後ろに座りまた読み始める。魔法の事なのだが気の流れとにておりそれを分かりやすく解説している。本を読みながら片手の手のひらに気と同じようにそのなにかを集中する。
私の手のひらにはその純粋なエネルギーのかたまりが球体に変化しこれに色々と属性をつけたりしたものが魔法と呼ばれているのをこの本には書いてあった。
私は意識の集中をやめると霧散して消えてしまう。私は少し嬉しくなりながらもう一度と思っていると、
「あんな技は認めないからな盗族野郎」
そう私の襟を掴んでマズガンが私に罵声を浴びせる。
私は昔からのこの理不尽な平民と貴族の関係に諦めておりそのままなすがままに言わせていると、
「もういいだろう、ここで罵ってもかわらない」
そう王子の声が聞こえ突き放されそのまま席に座った。
私はやなことを無かったことにするため号令がかかるまで本に没頭し、私の横に誰か来たようだが気づかないふりをして読み続け、一時限目は薬草学の授業だったので内容をみてまた本にのめりこんだ。
休み時間もそのまま挨拶もそこそこに読み続け次の時間は歴史である一番苦手だ。
「200年前の光武戦役で皇国の権威は失墜したが50年に1度大祭を行い復活を願っており、我が国も使節を送り込む予定である。」
そう三公女の国である皇国、遠回りをさせられた国であり私には全く縁が無いと思いながら授業の終わるベルを聞いた。
私は鞄と袋を持って階段をかけおり教室を出るとロイヤルマギに付随する森へと入り、朝市で購入したパンと果物野菜を出してナイフでパンをきってサンドイッチを作り食べ始める。
食事を済ませた生徒が外に出てきており、大会のための練習をしているのか生徒達が剣を交え始めた。
私は本を開き読み続ける。法程式と呼ばれるそれは資質が低い者でもある程度は使いこなせるといい、親が操る資質を子が受け継いでいくものでロイヤルマギに上級社会の者が多いいのに納得はできた。これに当てはめれば祖父が血縁である最後の希望の私の血に期待したのもわかる。
私は目を閉じてため息をつくと本を閉じた。
「助けて、誰か」
叫び声が上がり明るい日差しのなか私は薄目を開けると、都市とロイヤルマギの魔法防壁をどう破ったのか黒い物が数体訓練をしていた生徒を襲い始めている。
私は荷物をまとめたが、私にできることで試したいことを思い付き本を開き目的のページを見つける。
私は魔法の方程式を構築していく。
高度なのは無理なので属性のないエネルギーを矢に変化させると、
「マジックアロー」
そう言うと一つの白い矢は目標に向かって飛んでいく。
意識を保ち目標の鳥のような怪物に誘導していき、予想していなかったのか回避運動を取ることもせず突き刺さり消える。
私はもう一度方程式を考えマジックアローを放つが飛んでいる鳥には回避されてしまう。
地面に落ちた鳥は駆けつけた衛兵が攻撃を始め、他のも先生が魔法や弓で攻撃を始め駆逐してしまった。
私は初歩的な魔法だが実際うまくできたことに満足をして大騒ぎしている校庭を大きく迂回して教室へと戻った。
生徒にもひどくはないが怪我人も出たようで、次の時間は休講となり帰り仕度を始める。
結構離れていたので私が魔法を使用したことについてとがめられたらと一抹の不安を覚えながら教室を出ようとすると、
「アポロニアと言う生徒はいるかな、言付けを頼まれている。」
用務員らしい初老の男性が入り口で私の名前を呼んだ。
私は顔に出さない様にしながら呼び掛けに答え男性の前に来ると、
「サグレウス先生から図書室に来るようにと指示があった。」
そう言われて回りになにか言われる前に頷き図書館へ急いだ。
図書室では書記官にサグレウス先生の場所を聞いていくとそこはあの自習室であり、ノックをして中に入ると気難しそうなあの先生が待っていた。
「ぼさっと突っ立ってないで座りなさい。」
私は慌てて座り何を言われるかと身構えながら待っていると、
「先程のは誰に習ったのかね、未熟だが純粋な魔法エネルギーを変換して攻撃するとはな」
書いていたペンを休めメガネを外すと私を見る。
「お貸しいただいた本に記述があり、エネルギーを集めることができたので自分なりに方程式をたててみました。」
「方程式を言ってみなさい」
私は背中に汗をかきながら心で唱えた方程式を伝える。
「非効率で稚拙だが、今回はそれで助かったな」
私は良い方程式では無いと自覚はしていたが何を助かったかと言われているのかわからずにいると、
「全く無知には困る。お前が作り出したエネルギーの総量は命中したときに爆発の方程式を入れていたらあのモンスターだけでなく人々を消し炭にかえていただろう。浅はかな知識である意味助かったな」
私は手のひらを見てリンゴくらいの大きさのエネルギーにそんな力があったとは思いもよらなくて呆然としてしまう。
「週に1度と思ったが無知は危険だからな毎日こい。ただし話しかけられるまで静かにしていることだ」
それだけ言うとまたペンをもって書き始めてしまった。
私は一礼して外に出ようとすると、
「無論わかっていると思うが魔法は禁止だ」
私の背中にそれだけ言われ私は高揚感から事の重大さに疲れ帰宅した。
リーアが元気よく出迎えてくれたが私は小さい声で
「ただいま」
それだけ言うと自分の部屋に戻り、さっきまでひたすら読みたかった魔法学の本は開かずに数学の本を開いて読み始める。魔法学の方程式と似ており公式を当てはめていき解答を得ると言うことでひたすら本を読む。
この本の筆者は魔法学のと同じで要点をしっかり書いており、私には解りやすくひたすら読んで紐解いていく。
不意に視界が暗くなり、
「アポロニア、集中するのもいいけど皆がお腹すかせて待ってるわよ」
母親の声が暗闇から聞こえて慌てて食卓についた。
「学校で何かあったようだね、商人のホプキンスさんのところのマーレが怪我をしてそれも魔傷で、お母さんは呼ばれたから3人でよろしくね」
母親はリーアの頭を撫でると、鞄を持って待っていた馬車に乗り込んで夜の町へと出掛けていった。
「アポロニア何があったんだい、魔傷ってなに」
ノルンが聞いてきたので、
「魔属性のモンスターの攻撃を受けると傷口がヒールでも回復せず病気で体が徐々にだけど消耗して死にいたる」
「治すにはどうするんです」
「神官の高位の治療か、ミスキャスて言う薬草かななかなかないんだよギルドの依頼も毎日出てるし高額だけど誰も受けないからね、見つける方が希だし」
「アポロニアでもミスキャスを探してくるの無理なの」
私は少し考え、
「昔群生しているところは知ってるけどそこにあるかな」
そう言いながらあの狭いところを抜けた場所を思い出しながら返事をすると、
「休みに取りに行こうよ、こずかい稼ぎもしたいし」
そう言われて頷いた。
夜遅くに母親が戻り、手持ちのミスキャスで治癒させてきたけど使いきったと言うと、
「おいらが取ってくるよ」
ノルンが嬉しそうに母親に言うと母親も嬉しそうに、
「そうね、最近こういう事例が多くてギルドにも依頼をかけてるけど手に入らないからお母さん嬉しいわ」そう言ってノルンをわざわざ抱きしめてくれて私に、
「よろしくね」
そう言ってくれた。
次の休みの日に私はノルンとリーアも連れて出かける。
私は刀と弓矢をノルンには大型のナイフを持たせて馬に三人で乗ると城外の懐かしい狩り場に向けて進む。
いくつかの薬草がはえているポイントを思い出しながらノルンに教えて懐かしい岩場に到着して降りると松風を放し飼いにしてそのまま懐かしい裂け目を登る。
子供の頃なら狭い隙間も楽だったけど今の体格だとかなり窮屈で所々の岩の出っ張りに体をこすらせながら上までのぼりきった。
「すごいきれい」
リーアが荒らされていない草花の宝庫に思わず声をあげ、私は少し奥に進むと岩と岩との間に群生していたミスキャスを見つけて、
「大きいのだけ採取していくように、すべてとりつくすともう取れなくなるからね他の所のように」
私が言うとノルンは嬉しそうに返事をして採取し始め、私は他に母親から頼まれたものとギルドから通年採取依頼をしているものも合わせて採取するとお昼にしてパンにハムをはさんで3人で食べ始めた。
「ここすごいね、誰も来ないところがこんな近くで」
そう森の向こうに見える城を見ながら嬉しそうにノルンはパンをパクつき、リーアは積んだ花を王冠にして頭にかぶり嬉しそうに食べていた。
大きな岩盤の上なので私が見つけたところ以外は切り立った岩の壁でできていて私は端っこまで行き甘い野イチゴをリーアと採取していると目の前で爆発音と爆風が飛んでくる。
城とは反対側の森で魔法を使ったようで火球が広がりかなりの使い手かと思うが遠すぎて詳細はわからず、私はノルンとリーアを連れて降りて軍馬を呼ぶと城へと走らせ戻った。
城門の衛兵にさっきの事を伝えると音を聞いていたらしく直ぐに調べさせると大騒ぎをしていた。
私は馬を戻すとリーアに母親に頼まれた薬草を渡すようにたのみギルドへノルンと向かう。
ギルドでは先程の話が伝わっているのか冒険者が集まりギルドからの情報を引き出しており、城の近くであれほどの魔法に大騒ぎであり、私達は依頼の薬草などを取って薬草を換金した。
「アポロニアさん、すいません少しだけいいですか」
ノリスさんが帰ろうとする私を呼び止め衛兵からの情報を確認してくる。
「場所がいまいちわかりにくいんですけどこの辺りでしょうか」
私に地図をみせながら確認していると数人の冒険者はそれを見て外に出て向かうようで、もしかしたから金になるのかと言うことらしくノルンが、
「僕たちも行きましょうよ」
そう言ったが私は首をふって家へと帰ってきた。
リーアが母親に薬草の保存の仕方を習っているようで、ミルが大人しく足元で寝ており私は部屋に戻り装備をはずして片付けると本を開き読み始めた。
歴史についての本だがどちらかと言うと貴族のことが色々書いてあり、興味を持つことができずに放課後のあの部屋でも散々でため息をついていると外が騒がしくなり診療所に人が集まっているようだった。
「おかあさんが呼んでる」
リーアが部屋に入ってきて私を呼ぶので診療所に上がると人があふれておりなかにはいると冒険者が診察台に寝かされ苦しんでいる。
「体を押さえて、魔傷だけどミスキャスが効かなくて」
母親は傷口に塗り込んだ薬草の上から治癒の魔法をかけているが冒険者は苦しみ続けており暴れる。
私は気を送り込みからだの神経を麻痺させるようにして暴れるのを押さえた。
「何から受けた傷なの」
母親は仲間であろうローブを着た冒険者に聞くとはっきり言わず要領も得ず母親を苛立たせる。
「仲間の命がどうなってもいいの」
再度問いかけたがやはりはっきり言わない。
傷口の紫色が広がっており呼吸困難を起こし始めて傷口付近の神経を麻痺させてももう手遅れと言わざる終えなくなり、しばらくすると息が絶えて亡くなってしまった。
母親は厳しい顔をしながら冒険者になにか話しており、私はノルンとリーアを連れて下へ戻り就寝した。
翌朝けだるさもあったが学校へ向かい勉強していると昼に先生に呼び出され正門に家族からの至急の呼び出しと言われて慌てて向かった。




