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九十九の扉

呼び起こすもの。

作者: 安本 葉月

「いらっしゃいませ、ようこそ九十九の扉へ。目覚まし時計さん」

ひまわりの形をした時計は壁を見渡すようにしてから、目の前に立つ大柄の男に目をやった。

壁には男の子と目覚まし時計が一緒に写っている様子が映し出されている、

その男の子は、小学生くらいから大学生くらいまでの成長の過程がある、

しかし、それ以降、スーツ姿などの社会人の映像はない。


「ぼくはもういらなくなったんですか?」

見上げるようにして大男に聞いた。

大男はその質問には答えず、僕に話しかけた。


「俺には、三つの選択肢を君に示すことしかできない。」

男がそう話すと、女の子がチョコレートの袋を手に僕のところへ近寄ってきた。

「目覚ましさんが起こさなくなったら、あの子はどうやって起きるの?」

「るりちゃん、最近の人は、携帯やスマートフォンのアラーム機能で目覚ましをかけちゃうんでちゅよー」

そのとおり、僕は小学生になったお祝いにってツトム君のおじいちゃんに買われた。

それからずっと、ツトム君の学校の日も、少年野球の日も、ずっとツトム君を起こしてきた。受験勉強の時は机に僕をおいて、時間を計って勉強してた。電池が切れたらその日のうちに電池を取り替えてくれていた。

だから。これからもずっと一緒にいられると思っていたんだ、それなのに・・・


「ねぇ、ハナダ・・・」

ハナダと呼ばれた大男はため息をひとつついて、話しかけた。

「あのな、言わないでおこうと思ってたんだが、そのツトムってやつが、お前を捨てたから俺たちが迎えに来たわけじゃないんだぞ。俺たちは、九十九神様に仕えてるんだ、それに、お前は、お前は・・・お前の本体はバラバラに壊れたんだ。」

「え?でも、さっき、携帯がって・・・!」

「こうみえても、ハナダは優しいんだよ。」

女の子がそういうと、大男は照れたように、顔を真っ赤にして

「るりちゃんったら、優しいでちゅねー、ハナダうれちいでちゅー!」

といって、大泣きし始めた。

すると、女の子が大男の足を軽くけると、大男は床にのめり込むように打ち付けられた。

「調子に乗るな」

女の子はそう言い放って、さらに踏みつけた。

「ふぐっっ。」

大男は失神してしまったようで動かなくなった。


「ひまわりのお兄ちゃん、お兄ちゃんはね、ツトムってお兄ちゃんのお母さんが掃除してて落としちゃったの。本当なら、バラバラになった時点で、転生されちゃうんだけど、ツトム兄ちゃんが、バラバラになったひまわりさんを神社に奉納したの。ずっと大切にしてたからって。それで、つくもんが、るりたち、案内人をひまわり兄ちゃんに送ったんだよ。壊れたなら捨てて、新しいのを買えばいいのに、ツトム兄ちゃん、よっぽどひまわり兄ちゃんを大事にしていたんだね。」

話の途中、時々チョコレートをつまみながら話していた。


「ツトムが・・・?ツトムが、ただの・・・ただの目覚まし時計の僕を・・・奉納して・・・」

僕は目頭が熱くなるのを感じた。僕が思ってた小さかったツトムは大きくなっても僕を大切に思ってくれていたんだ、僕がツトムを大切に思っていたのと同じように。


目を覚ました大男は足をさすりながら、しゃべった。

「理由はどうあれ、あなたにせまられた選択肢は3つ。1つは、通常通り転生すること。もう1つは九十九神の所に行くこと、そこには、あなたみたいに大事にされたもの、天命を終えたものなどの魂が暮らして九十九神と楽しんでいる。3つめは、本来、本体に残ってもらうんですが、今回、あなたの本体は壊れているので、本体に戻るこXとはできません、ですが、九十九神の配慮により、ツトムさんの新しく購入された壁掛け時計に魂を移すことができます。どうされますか?って、その様子では聞くまでもなさそうですね。」


涙が溢れて止まらない僕はちゃんと話せていただろうか

「これからもツトムと同じ時を刻んでいきたい!」


「それだけ思われる目覚まし時計もそういないだろうね。」

ハナダが呟く。るりはチョコレートを一口ほおばり、応える。

「そうだねー、ツトムにいちゃんの新しく買った壁掛け時計もひまわりだったもんね。」

「それにしても、九十九神様も全て見越して、案内人を送るんだもんなー。」

愚痴とも取れるその言葉に、るりは笑みを浮かべながら、チョコレートにてを伸ばす。

「るりちゃん、歯磨きしないと虫歯ができちゃいまちゅよー?」

というハナダが、また床にのめり込んだことは言うまでもない。



前作に続き、九十九の扉2作目です。

読んでいただいてありがとうございます。

多分、次も九十九の扉になるような気がします。

よければまたお立ち寄りください。

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