プロローグ
君のいない未来なんて、あの頃は想像できなかったんだ。
「俺達はずっと一緒だろう?」
そんな、信頼性なんてこれっぽっちもない情報。それでも、信じたかった言葉。
俺達はずっと一緒だ。
それでも離れるしかなかったんだよ。
嫌いになりたくはなかったから。そんな自分は、自分だと認めたくないから。
「頑張って、ひとりになろうとしてるんだと思う」
いつか逃げない自分になるよ。そうして君に会いに行く。
「お前のこと、信用してるよ」
「おい、頼むから会って、電話でもいいからっ」
「じゃーな」
いつか会いに行く。それだけは約束するから、だからもう少しだけ、時間をください。
ひとりになるための時間を。
「もう、笑ってくれないんだ」
でかい身体を小さく縮こまらせて、あいつはそういった。
泣いてるかな、なんて少しの罪悪感を感じて胸が痛い。
「もし、俺のことで泣いたらさ、」
あいつがゆっくりと顔を上げるのを待った。まだ泣いてはいない。目を見て、俺は少しだけ安堵する。
「愛してるって、いっといてくれよ」
「んなの自分でいえ、帰ってきてな」
あいつがそういって睨むのに対して、俺はただ苦笑いを浮かべることしか出来なかった。
「また、連絡するよ」
ねぇ咲、俺のいない生活はどうだい。
俺は、さみしくて仕方ないよ。
***