【幕間 或る人の家の前】
「え?テレビ局さん?ヘェー、参ったなぁ……俺ぁそんなテレビなんかに出られるような顔じゃ────え?事故の事が聞きたかったの?なんだぁ、先に言ってよー。
ああ、俺だよ。第一発見者ってのは。通報したのも俺さね。
ありゃ凄かったなぁ。そこの居間で新聞読んでたらよ、いきなりドカーンってでっかい音がしてな。あ、ドカーンっつーよりガシャーンって感じだったかな。てっきり爆弾テロかと思って、俺、つっかけ引っかけて外に飛び出したのよ。
そしたらさぁ、凄いことになってんの。こんな大きいトラックが横倒しになってて、んで二人の人が倒れてるんだわ。俺、交通事故に出会したのはこれが初めてだけど、もう二度と見たくないもんだね……。え、なんでかって?
そりゃあんた……まずもって現場ってなぁ、血の海なんだよ。いや……誇張表現じゃなくてな。二人の人、その海の中に半分没したみたいに倒れてたんだよ…………。あの凄い臭いは、何とも例え難いね。……鉄工所と生ゴミの処分場を、足して二で割ったみたいだったって言えば、近いんかな。
それにな……、
あの二人……、…………笑ってたんだよ。
倒れてんのに、笑ってたんだよ…………。
それが逆に、怖くってねぇ………………」