【アンコール 翌朝のテレビ】
「……おはようございます、首都圏のニュースです。
クリスマスを迎えた最初のニュースは、痛ましい交通事故についてです。昨夜19時頃、東京都調布市調布ヶ丘2丁目の信号で、居眠り運転をしていた大型トレーラーが通行人2名を撥ねました。2人は病院に搬送されましたが、現在でも意識不明の重体の状態が続いています。警察は運転していた東京都内の運送会社従業員・仙川慶太を自動車運転過失傷害の疑いで逮捕、取調べを行っています。
撥ねられたのは、東京都三鷹市に住む無職の富士見治修さん18歳、調布市に住む深大寺ひばりさん12歳です。仙川容疑者は警察の取調べに対し、「一日中の運転で眠気に襲われていた。前がよく見えなくて、暗い色のコートを羽織っていた二人の姿が分からなかった」と話しているという事です。
現場は京王線布田駅にほど近い甲州街道の調布ヶ丘信号で、道路がカーブしており見通しも悪くなっています。また、事故発生当時は雪が降っており、視界も悪かったとの事です。警察では、引き続き事故の原因について調べる事にしています。
クリスマスイブの夜に、あまりにも悲しい事故が起きてしまいました。一刻も早い原因究明が待たれますね。
次のニュースです」
……以上で、「冽空の刹那」は完結となります。
クリスマス小説です、一応。ですがメインテーマは「自殺」となっています。また、随所に太宰治の影も見え隠れしていますね。
ちなみに、この小説を執筆するに当たって、作者は埋葬されている禅林寺を実際に訪れました。その際、JR三鷹駅前にある「太宰文学サロン」も見学させていただきました。無事完成したので、また報告をしに行こうかと思っています。
もしかしたら太宰治をご存知の方なら、主人公の青年・富士見治修の名前が太宰治の本名・津島修治をひっくり返したものであることにも早い段階で気づいていたのではないでしょうか?(笑)
「富士ちゃん」と「ひばり」。この2名の名前には、まだまだたくさんのしかけがあったりします。それはまた、後日。
ご精読ありがとうございました!!
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本作に登場する「自殺無理由論」は、作者の創作です。近い議論はありますが、このような意見は探しても見つからないのでご注意下さい。
また、太宰治の自殺の理由に関しても多くの説があり、はっきりとした事は分かっていません。多少の決めつけのもとで書いているということをご了承ください。
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