それでも、大好き
「ごめん。俺、好きなヤツがいるんだ。」
完璧に終わったあたしの恋。
修学旅行から帰ってきても気まずくて、前みたいに話せない。
ちら
翔太を見る。いつもと全然変わらない。楽しそうに男友達としゃべっている。
じっと見ているのに、気がついてくれない。あたし、本当に意識されてないんだ・・・。
落ち込む。あたし、そんな翔太に嫌われていたのかな。
さみしいよ、悲しいよ。
今まで隣にいた翔太がいなくなった。
毎日、当たり前にいた翔太がいないって
なんて心細いんだろう。
こんなことに、
こんなことになっちゃうなら
告白なんてしなきゃよかった。
あたし、自惚れてた。
翔太が、遠い。
近いはずなのに、同じクラスなのに、
遠いー・・・。
「なーなー翔太ぁ、今日は夏架と一緒じゃないん?」
ドキっ
突っ込まないでよ!そこ!
でも私、聞いてしまう。
「んー・・・。まーな。」
やっぱり、翔太、あたしといるのもうやなんだ・・・。
「どしたん?ケンカでもしたかー?」
「そんなとこ。」
「ほぇ~めずらしーな。」
・・・。今、なんていった?
あたしのあの告白、
ケンカっていうことになってるの?
ありったけの勇気をだして告白したのに。そんなの、ひどいよ。
あたしと翔太についての関係の会話なんて聞きたくない。だけど、なにを言うのかすっごい気になる。
「まぁ夏架はそーいう対象になんないかもなぁ。友達以上恋人未満、的な。翔太、好きなヤツはいるん?」
あ・・・
ー翔太の好きな人ー
だれ?
だれなの?
確か、告白したときに
「好きなヤツがいるんだ。」っていってたよね?
あたしじゃない、他に好きな人がいるんだ。
あたしが負けた、その子。
翔太の好きな人ー・・・。
「・・・そりゃいるよ。幼なじみ。」
お、幼なじみ!?
ま、漫画でお馴染みの展開じゃない。
だれよ!なんて子!?
ちょうどタイミングよく、翔太が言ってくれた。
「荻野 果林って名前。白蘭女学院に通っている。」
「うっそ!マジで!?白蘭女学院ってちょーお嬢様学校じゃん!可愛い子もいっぱいいるって噂だし。っか~翔太やるぅ!」
「その中でも果林は一番可愛いよ。」
「うわぁ~ごちそーさまぁ。リア充だな、オイ。」
ー荻野 果林ー
無言で階段を駆け下りる。
駅にダッシュして、電車に乗る。
どうしても、
どうしても確かめたいことがあるー
ゴトン ゴトン
通勤ラッシュを過ぎた電車は、人がいない。
一番端の席に座った。
そうすると、今までの想いが込み上げてきた。
もう、疲れた。翔太のコトで色々考えるの、嫌になった。
告白して、ダメだった。
「俺も好きだよ。」って言って欲しかった。
彼女っていう立場に、なりたかった。
ゴトン
ゴトン
軽く揺れる電車は、とても心地よくてー・・・
昔を思い出した。
はじめてあったのは、中学一年生のときだったね。
入学式の次の日、初めての授業で、隣の席だった翔太は
「わりぃ、教科書、見せて?」
って声をかけてくれたよね。
でも私は、教科書なんか持ってなく、まさかまさかのノートも忘れたんだよ!
先生が、
「バカ二人ー立っとけー。」
っていって、入学早々まだ肌寒いのに廊下に立たせられた。
給食のとき、あたしがとっておいた大好きなミニトマト、翔太が
「嫌いなら食ってやるよ。俺、トマトちょー好きなんだよね~。」
って言ってパクって食べちゃったね。
好きなものは最初に食べるか、最後に食べるかで、ケンカもしたね。
走るのが大好きで入部した陸上部。
二年生のとき、
「もう陸上やめようかな。後輩にどんどん記録、抜かれてる。」
って愚痴ったら、翔太はこういってくれたよね。
「記録がどうこうじゃない。夏架はゴールすることだけ考えればいいんだ。そーすりゃ結果なんて後からいくらでもついてくるさ。」
「そーだけど・・・」
「夏架は走るのが好きだから陸上部に入部したんだろ?好きなコトはあきらめちゃダメだ。」
あのときの翔太の言葉。
すごい衝撃的だった。
前向きに考えようっておもえるようになった。おかげで立ち直れたんだー・・・。
これだけじゃない。
体育祭や学芸祭。日々の会話ややりとりしたメール。
こんなに頭の中に溢れている。
だから
だからー・・・
絶対にあきらめない。
翔太のこと、
絶対にあきらめないー・・・。
っていうか、あきらめられないよ!
だからまずは!
荻野果林さんにあってみたい!
白蘭女学院の最寄り駅に降りる。
駅からまっすぐ五分くらい歩いたら、白蘭女学院の白い校舎が見えてきた。
ー白蘭女学院・・・
あたしなんかでも知っている、ミッション系のお嬢様学校。
中高一貫教育のせいなのか、綺麗でいいにおいのするお姉さんもいっぱいいる。
真っ白なブラウスに、ブローチがついてる赤のリボン。
ふんわりしたスカートは上品な茶色で、ちっちゃなレースがついている。
制服も可愛いなぁ。
はっ!
じゃない!果林さんを見にきたんだって!
もう一回はっっ!!!
そういえば私、果林さんのコト、なにも知らない・・・。
な、名前と、可愛いってことぐらいしか・・・。バカだった~!!!これじゃ白蘭女学院にきた意味がない!
ううう
出直すか・・・
くぅう~あたしの往復の電車賃、返せ~!
とバカなことを思っていたら
「果林!」
後ろから声がした。
振り向くと、二人の女の子が楽しそうに話していた。
めちゃくちゃ美少女だった。
一目見ただけで、果林さんだって分かった。
綺麗な黒髪は、ツヤがあって長い。
遠くからでもわかるくらいに長いまつげに、ぱっちりしたつぶらな目。
腕も足も細くて、白蘭女学院の上品な制服がよくにあっている。
そして、きゃははという声も綺麗だ・・・。
完璧にあたしの負けだ・・・。
同じ女子なのに、なんでこんなに違うんだろう?
ショックでフラフラしていたら、なんと果林さんにぶつかってあたしのバッグの中身が全部でた!
ぎゃぁあ~!!!あたしってヤツは!もう、どこまでアホなの~!
スッ
軽やかに膝を曲げて、一緒に拾ってくれた。
「大丈夫?おけがはなくて?」
どきんっ
「だっだ・・・いじょーぶで・・すっ!」
な、なに!?ドキンて!
女子が女子にときめいてどーする!
あたし、もしかして変態!?
じゃ、なくて!
「あ、ありがとうございますっっ!じゃっ、さよな・・・あっ!痛っっ!」
げげっ膝擦りむいちゃったぁ・・・
ツいてなさすぎる~!
「あら、けが、なさっているじゃない。よろしければわたくしの絆創膏、差し上げましょうか?」
そういってピンクの絆創膏をくれた。
「あっありがとうございますっっっっ!光栄でございますっ!!!さいならっ!」
だっっしゅーーーーー!!!!
でも、果林さん、本当に素敵な人だった。
変なの。
好きな人の好きな人なのに、不思議と悔しさと嫉妬はない。
でもでも、あきらめないよ。必ず、翔太を振り向かせてみせる!
このときあたしは
果林さんと出会ったコトと
翔太を諦めなかったというその重要性に
まだ、気がついてなかったのですー・・・
「・・・あの子が葵木夏架か・・・。」
果林はボソッといった。
ピッ
携帯を手に取る。
トゥルル
トゥルル
トゥルル
「・・・今度はなんだ、果林。」
クスクス
「あはは。さっき翔ちゃんがふっちゃった夏架って子、来たわよ?あたしのコトみにきたのかしら?ふふふっ」
「なっ・・・!おまえ、なんで夏架の顔知って・・・!」
「ふふ、この前勝手に写真みちゃった♡別にいいでしょ?」
「いや・・・」
「そうよね、だって翔ちゃんは・・・」
「・・・・」
「一生あたしの下僕なんだから・・・」
クスクス
荻野果林ちゃんは、今キャラ的に一番すきです!
そんな果林ちゃんが初登場!ってコトで、楽しくかけましたo(^▽^)o
夏架もいつもよりちょっと・・・いや、かなり!?テンション高くなってます笑
ってコトで読んでくださりありがとーございましたぁ*・゜゜・*:.。..。.:*・'(*゜▽゜*)'・*:.。. .。.:*・゜゜・*