報告とソロな奴
コンッコンッ
周囲を薄茶色で彩られ、上品という言葉を体現したかのような一室に、これまた上品に茨の紋章が掘られている木造の扉から、乾ききったノック音が響き渡った。
「・・・入れ」
そしてその一室にロウンは木造の椅子に腰掛けながら、一息の休息をとっていた、当然休息中であったためか、その言葉には若干の不満の感情がにじみ出ていた。
「失礼します」
ロウンの言葉を受けて、ドアをノックしてきたと思わしき男の声が部屋に響き渡り、その言葉と同時にドアがゆっくりと開き始め、その開いた扉から茶髪の男が出てきた。
おそらく、この男はロウンに伝言があってきたのであろう、そしてもちろんロウンもそんなこととうの昔に了承済みであった。
「・・・ついに到着したか、ビョーシェ騎士団が」
ロウンはすぐさま目の前の男がいうであろう伝言の内容を察するかのように言う。
「はい、ロウンさまの強烈な要望により、ビョーシェ騎士団は帝都よりこのシュートラスへと、予想より早くたどり着くことに成功しました、本来はあと6日はつかないとの見通しでしたが、馬車などをありったけ徴収した結果、3日後にはには遅れていた後軍もシュートラスに到着予定です、全軍が到着次第、シュートラスにて改めて騎士団の編成が行われ、それが終了しだいロウン様の名であるドゥットルーズが養院されている病院の警備を行います。おそらく4日後には警備が始まるかと」
茶髪の報告者は現在の進展状況と今後の進展予測を一通り述べたあと、黙って目の前のロウンの様子を伺った。
「ご苦労・・・苦労してここまで来てもらったのだ、今現在シュートラスにいる我が商人ギルドが総力をあげて最上級のもてなしをさせて上げろ、それと、私はこれから大事な会議がある、その為に少々休みたいのだ、済まないが席を外してくれ」
ロウンは最低限の意見を行ったあと、目の前の男の退室を促した。
「はい・・・畏まりました」
茶髪の男はそう言うと会釈をし、正しく教科書のような礼儀でドアに向かって歩くと、もう一度深々と会釈し、部屋から出ていったのであった。
「・・・ふん、随分早かったな、まあ別に問題はないが」
ロウンは疲れたようにそう言うと後ろにある椅子に座り込んだ。
「となると計画を早めて方がいいか・・・できるだけしっぽが出ないうちに事を片付けなくてはならないしな」
ロウンは目の前の机に置いてあるコップを掴むと、その中に入っている水をガプガプと飲み干した。
「はぁっ」
ジュートラスダンジョン6階、魔物が闊歩して歩いている場所に、迷彩柄の服とヘルメットを着た少年がぐったりしたように壁にもたれかかっていた。
少年の名前はもちろん言わずと知れた真である、おそらくもともと少ない体力を無理やり使った影響で座り込んでしまったのであろう、現に真は足を手で抑えながら壁にもたれかかっていた。
「結構さがしたぞおい」
苦々しい表情で薄暗いダンジョンを憎々しげに見つめる真、いままで血眼になって探したのにまだ見つからないのであるのだからそう思うのも当然のことであった。
「・・・そろそろコイツ(M1897)も使いし過ぎたせいか、銃身が暑くなってやがる・・・手入れしないと暴発しそうで怖いな・・・ただ身元不明の写真に写ってたやつを召喚したから尚更だし、それに足だけじゃなくて手首もむっちゃくちゃ痛い」
そう足だけではなくショットガンという結構反動がキツイものを打ちすぎたせいで、手首がジンジンするようになり、それどころか、異常は真の体のみならず、いままで主力として使い続けてきたM1897ショットガンにもお呼び始めてきたのである。
だんだんと明るみになってきた今の現状に、真はため息が出すのと同時に、頭を抱え始めたのであった。
「・・・こいつも壊れているんじゃないのだろうか」
ついには今現在隠し扉を探すのに使っている赤外線カメラまで疑う始末であった。
「・・・武器のステータスが閲覧できたらこいつの耐久力とか安全性とかわかるかもしれないのにな・・・はぁ・・・」
真はため息をつきながら、手首足首をさすり、唯一ある強靭の精神力を活かし、立ち上がった。
「さっさと見つけなくては、依頼を果たせないだけならいいけど、依頼を待っている人にとっちゃ死活問題だ、もう一時間くらいは探さなくては」
体にムチを打ちながら、真は自分にそう言い聞かせつつ、ハッと突然何かを見つけたのか、慌てて真はショットガンを掲げる。
ダンッ
「ギィッ」
そして構え、撃ったその先には、既に息絶えているゴブリンの姿があった。
「・・・ソラがいないから慌てて打つ必要性が出てきたし、最悪だな」
苦笑いをしつつ、真はダンジョンを探索する。