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二人の少女の接触

「うん…」

ソラはベットの上で寝転びながら、本を読みふけっていたのであった。どのような本であるか、それは表紙がフルカラーでなお且つ日本語が書かれている時点で、ソラが現在呼んでいる本はこの世界の物ではなく、異界の本だと言う事が、いとも簡単に分かるであろう。

「…おいしそう」

ちなみに今ソラが読んでいるのは料理の雑誌である。

真は逐一さまざまな本を一つ一つ召喚するのは効率が悪いと思ったのだろうか、要らない本が多少無駄に召喚される事を考慮しながらも、本棚の一部ごと召喚したためか、ソラが当初求めていた教科書以外の本が、大量に混じる事になったのであった。ソラが現在呼んでいる料理の本はその無駄な本の一部である。

「…食べれないかな」

ソラはチョコレートケーキのページを指でなぞりながら、そう思うのであった。

「…はぁ」

ソラは本を閉じ、他の数学や英語の教科書が置いてある近くの棚の上にその料理の本を置くと、ふと、すぐ傍の窓から外を見た。

「ひまだな」

怪我をしたため、教科書や無駄に召喚された本以外でする事がなく、ソラはなんだかそう嘆いていた。

「…そうだ」

なにかを思いついたのだろうか、ソラは言った。

「外に行こう、この病院の近くの公園なら、もう外に出て言っても大丈夫みたいだし、リハビリリハビリ」

ソラはそう言うと、さっそく実行に移そうと、行動するのであった。













「うん・・・」

石畳で整理された通路で、メガネをかけたちょっとばかり気の弱そうな少女が、これまた某青髪の少女の用にちょっとばかり悩んでいるようなうめき声を出しながらゆっくりと歩いていた。

少女の名前はソーシャ、さきほどある男性と出会い、そしてその影響によって、あることに興味を持ってしまい、このように呻き声をたれながしてしまうことになってしまった、哀れな少女である。

「多数決政治か・・・」

そう、ソーシャが呻き声を垂れ流すほどに悩んでしまう発端となったのは、とある古本屋であった青年と一緒に探すことを約束したことよって、その青年から、多数決政治というこれまでの政治体制とは、全く考えが異なった考え方を聞いてしまったからである。


ソーシャは一応自他共に認める読書家であり、当然その趣味故に政治に関する知識は一般の人々の知識よりも奥深く、現在の政治に対し、ある一定の理解を持っていたのも、ごく当然のことであった。

そしてそのある一定の理解を根本的に崩すどころか、まるで上から強引に塗りつぶすかのごとく現れた新しい考え方が“多数決政治”であった。

ある一定の知識を持っている個に影響を受けてしまう、ソーシャはそのことに、悩み、呻き声を垂れ流しにしながら歩いているのであった。

そしてもちろん、そのような心理的状況をそのまま放置しておくわけにも行かず、こうなったら気分転換に公園にでも言ってみようとソーシャは考え、この病院の敷地内にある、ある程度人が混んでいない公園へと足を踏み入れたのであった。


ちなみにあの古本屋には結局多数決政治に関する本はおいていなかったようだ。


「・・・あ」

そしてソーシャはふと、ソーシャが行き着いた公園のベンチにおいて、綺麗な青髪に透き通るような青い瞳をした見覚えのある人物の姿が、腰掛けながら本を読んでいることに気がついた。


「・・・確か、ソラさんだっけ」

そう、目の前に女性は自らが絶賛賭け事の対象にしている人物である、異国風の人物に付き添っていた人物であった。

「なんでここにいるんだろう」

ソーシャがそう思うのも無理はないであろう、普通なら相方の異国風の男の人の弱さ故によってできしまう隙間を埋めるためにも、かの少女が頑張らならなくてはいけないはずである、とてもこんなところで油を売っている場合ではないはずだと、ソーシャはソラを見つめながら思った。

「・・・」

当然ソーシャは疑問下に本読んでいるソラを観察し始める。一応は賭け事がうまくいくか行かないかはこの人が最も重要であるとソーシャは認識しており、その行動は当然のことであった。

「うん?」

しかし、ソーシャの視点はいつの間にかソラ自身への監視という目的から外れ、いつの間にか、ソラが読んでいる本その本の珍しい点に着目し始めたのであった。

「・・・綺麗な本」

フルカラーな本などそうそう見たことがないソーシャは、ついついそのような独り言をつぶやいてしまった。

ソーシャも一応は色がついている本を読んだことはあるが、あれほど綺麗にまさしく現物と見分けがつかないほどに彩られている絵など見たことがなかった、描かれているおそらく食べ物であることはソーシャにもわかっていたが、あんなにも見るだけで食欲をそそられてしまう料理の本などもちろん見たことがなく、ソーシャ自身も数分もの間、その本の表紙をソーシャは我を忘れた感じに見つめていた現実に気づいていなかった程であった、そしてそのことに気づいたソーシャはもちろん愕然とする。

自分がここまで夢中になれる本が、ここまで自分の探究心がくすぐられる本が存在しているということに。


「・・・」

どうする?ソーシャはいつの間にか冷や汗を書きながらそう思う。

とりあえずあえてソーシャの意向に沿うのなら、ソーシャにとって、あの本がめちゃくちゃ欲しいのであった。それこそどんなことをしてでも欲しいと思えるレベルである。


「・・・うん」

でも我慢しなくては、ソーシャはなんとか自分の欲求を押さえつけながらそう思う、しかし、未だにソーシャの頭の中では天使と悪魔が戦っていた。


「どうしよう」

最近いい本がないし、それに別に彼女は知り合いみたいなものだし、いいじゃないかと悪魔が言ってくる。

だめだめ、彼女は別に知り合いでもなんでもないし、そんな人から本を借りるなんで失礼だよと天使が叫び始める。


「うう・・・うん」

でも今しかない、今しかないんだ。


そうだ!!

ここで考えてても何も始まらない、大の本好きであるソーシャはそう思ったが最後、天使の声を即刻シャットアウトすると、勇気を振り絞って、自らが欲しいその本に夢中になっているソラの元へと、歩いて行ったのであった。








「美味しそうだな・・・真これ召喚してくれないかな・・・」

ベンチに腰掛けながら、未だに力が入りにくい体に不便を感じつつ、ソラは真が召喚してくれた本を読みながら、ついついそんなことをつぶやいていたのであった。


ソラが読んでいるページの欄には、豚骨ラーメンや、札幌ラーメンなどの写真がズラリと並んだおり、そこから察するにおそらくラーメン特集のページなのであろう、カップラーメンでさえあまりにもの美味しさによだれがたれそうになってしまうソラにとって、カップラーメンの上位互換と聞いているこれら本格的なラーメンにそのようなことをつぶやいてしまったとしても、なんらおかしくもなかったのであった。


「うん・・・このショウユラーメンというのもいいな、でもトンコツも捨てがたいし、ああっもう真の世界に良ければ全て解決するんだけどな・・・」


いつの間にかよだれを垂らしている事に気づいたソラは、ハッと顔を赤くしながら右手でよだれを拭う、気をつけなくてはと、ソラは味噌ラーメンの写真を見ながら気を引き締めたのであった。


「あの・・・」

そして気を引き締めて再び雑誌に目を通し始めるソラの元に、なにかを尋ねる声が聞こえてきたのであった。


「ん?」

そしてもちろんソラはその声が聞こえた方向を見つめる、テンプレなら聞こえずにその声を無視してしまうことが多いが、もちろんソラにはそんなことなど一切なく、キチンと普通にその声が聞こえた方向を向いたのであった。

「すみません・・・ソラさんですよね」

「・・・」

ソラは頭にハテナマークを浮かべながら、もしや知り合いなのか?とソラはおもったのか、鋭い目で自らの名前を言った人物の顔を見つめる。

「そ・・・そんな怖い目で見つめないでくださいよ」

「・・・あっごめんなさい」

いろいろ考えてみたがどうもこの目の前の人物に身に覚えがないと、ソラはおもったのだった。

「それで・・・えっと私になにかよう?」

しかし、見知らぬ人だからといってそっぽ向く訳にもいかず、ソラは目の前の人物がなんの用で自分に話しかけたのかを聞いたのであった。

「あっ・・・はい」

ちょっとばかりおどおどしながら目の前の少女は言った。

「私、シュートラスギルド支店で働いていますソーシャと申します、えっと、ギルド支店で依頼を受けられた時に、お会いしましたよね」

「・・・」

ソラはそう言われるともう一度頭の中で目の前の人物の顔を検索してみる、そしてあっと思いついたように声を上げると、ソラは目の前の人物が今現在自分たちが受けているミッションを了承してくれた人物であるということを思い出したのであった。

「あっ、そう言えばそう・・・すみません」

あわててソラは謝り出す。

「いえそんな・・・そんなにあっていないのですから心配なさらず、それより」

目の前のソーシャと名乗った少女は、まさしくそんなことどうでもいいとばかりにすぐにそう言うと、突然目を輝かせながら言った。


「その本、見せてもらえませんかね?」















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