ゴブリンを拳銃で倒す話
至極簡単な登場人物紹介
山﨑 真 十七歳 桜坂高等学校生
秋葉に遊びに行ったら不意打ちにもほどがあるような感じに電車から降りたら異世界へ飛ばされた人、人によって意見は分かれるかわいそうな人、または運のいい人、どうやら謎の人物に遊び感覚で異世界に転移させられたようで、その証拠に手紙が置いてあった、一応強制的にもたされた能力である、異世界召喚師の力を持っている。
これはマコトが居た世界において、存在している物、もしくは存在していたものを召喚できる能力である。哀れ、真はこの能力で異世界を旅していくこととなる。
趣味は読書 特技は読書 得意技は読書 得意教科は読書である。
まあとりあえず読書が好きな奴である。
一応、この物語の主人公である。
ここはヨネハの森、ハーストリア帝国にある結構な規模の森である。
そんな森の中を走っている17歳位の少女がいた。
「はっ…はっ」
まるで川のように流れるような、そのうえ、水滴がこぼれそうなくらい美しい水色のロングヘアーに、美しい水色の瞳、鈴が鳴るかのような、きれいな声、そして、雪のようにきめ細やかな肌…如何にもその容姿は、ラノベのヒロインを具現化したような…まあ、簡単にいえば、超のつく美少女であった。
「はっ…はっ」
しかし、その美少女には、似つかわしくない物があった。
「はっ…はっ…痛い…痛いよ」
彼女がそう叫びながら手で押さえる場所をよく見てみると、足の膝に生々しい傷跡があったのである、しかも、ずいぶん放置していたのか、膿んでもいる。
「…う…痛いよ…」
少女の体を今一度良く見ていると、先ほどの傷程ではないにせよ、あちら此方に擦り傷の跡があった。
「はっ…はっだめ…疲れた」
少女は体を極限にまで酷使した様で、その影響からか、倒れこんでしまった。
「はっ…はぁ…ぐすん…」
少女はいつの間にか、忘れていた涙を、思い出したかのように流しだし始めた。
「う…うう…」
少女は泣きながら、こう呟いた。
「助けてよ…誰か…」
「…」
しかし、そんなことを言っていても、こんな森の中に、都合よく人がいるはずもなく…ただその少女の声は、誰の耳にも届かず、ただいたずらに森の中へ溶けていくだけであった。
「う…う…ぐすん」
少女はまた、激痛が走る左足を引きずりながら、とぼとぼと歩き始めた。
「…なんだあれ?」
もちろん真はそんな少女の存在など知る由もなく、彼もまたヨネハの森を絶賛探検中であった。
さて、おそらく誰もがこの言葉を聞いただけでは、真が何を見てしまったのかは分からないだろう。
しかし、真はまるで、そんな空気を読むがごとく、ちょうどいいタイミングで自らが遭遇してしまったものを言ってくれた。
「…ゴブリンだよな…あれ、絶対」
真は一応、見つからないために、すぐそばにあった木の陰に隠れながら、RPGの常連ともいうべきモンスターの名前を言った。
奇妙な長い耳、人間の鼻の3倍ぐらいでデカイ鼻、四本の指、一応ボロボロの赤い洋服を着ていて、武装として、はこぼれを起こしている剣を持っていた。
(…どうする)
真はそう思いながらゴブリンを見つめる。
幸いにもゴブリンは真の存在に気付いている様子はなく、のんびりボケーとしながら、とことこと歩いていた。
(ここは異世界だし、ゴブリンがいても別に不思議ではない、いや、むしろそれは当然のことかもしれない、しかし、どうするか…)
真が読んだ小説の中で登場するゴブリンは、大体は害のある雑魚モンスターとして登場するが、中には種族として、人間と共に暮らしていると言う設定の小説もあったため、そして、一応日本人としての感性はあの謎の人物からの攻撃?から逃れたのか、ちゃんと残っており、そのため真は、いきなり出会いがしらにゴブリンを殺すことを躊躇していたのであった。
(…マジでどうしよう、アイツが居るんじゃ、向こう側に行けないじゃないか)
実は真は、これまで何の目的もなくフラフラしていたわけでもない、ちゃんと森の中を歩きながら、川を探していたのである。
何故かと聞かれれば、川を見つけて下れば、もしかしたら人間の暮らしている町につけるかもしれないという希望的観測にしたがって、真は、川を絶賛探していたのである。
そして、2時間探して、ようやく川を見つけたのだが、そこにとおせんぼうするがごとく、ゴブリンが居たのである。
「…あ!そうだ」
突然真は何か思いついたらしく、ゴブリンに気づかれないよう、そうつぶやいた。
「…」
「ブン」
真はもしかしたら、さっきのウインドウみたいに、ゴブリンのステータスを念じれば見れるかも知れないと思い、さっそくあのゴブリンのステータス現れろ!!てな感じにやってみた、そしたら案の定、ゴブリンのステータスが真の目の前にこれ又忽然と表示された。
ゴブリン
レベル5
初級モンスター
HP 30
MP 0
魔力 0
攻撃力 14
防御力 12
精神力 23
称号 なし
武術技 拾った剣を振り下ろす、ゴブリンパンチ
魔法技 なし
現在地 ハーストリア帝国 ヨネハの森林地帯
装備 はこぼれを起こした剣
道具 ぼろぼろの赤い服
次のレベルまで ???
(…ゴブリン俺より強えーーー!!)
ステータスを見て、レベルが俺より上だし、攻撃力、防御力共に、明らかに真より強かったのであった。
(やっぱり俺って、初級モンスターとか言うゴブリンより弱いと言うことなのか…)
真はその事実に落胆しながらそう思った。
(…まあそれは仕方ないかな…俺は別に運動しているわけでもなく、帰宅部だし、剣を余裕で振り回すゴブリンよりか弱いのは当然のことかもしれないし)
しかし、そんなことを気にしていても川には渡れない、とりあえずこのゴブリンをどうするかを決めなくてはならなかった。
(…こうなったら、迂回するか、別にここを通らなくては川に行けないわけでもないし、無駄な争いは嫌だし、それに拳銃の弾だってもったいない、ここは逃げるのが一番だな)
真はそんな感じに、迂回して川を目指すことに決定すると、さっそくそれを実行しようと思い、ゴブリンから一旦離れようとしたその時!!
「カランッカラララン」
「…やべ」
ついつい、勢い余って、石を蹴ってしまうという、ありがちな展開を起こしてしまったのであった。
「…」
真はゴブリンの方向を恐る恐るゆっくりとむいてみた。
そしてそこには、そんなドジなことをやってしまった、真の姿を確認し、凝視するゴブリンの姿があったのであった。
「…ハロー、今日もいい天気ですね」
真はこのゴブリンが、もしかしたら人間にやさしいゴブリンだということを祈りながら、そして、苦笑いを行いながら、そう言った。
しかし世の中日本の景気のようにうまくいかないのが常のように、真もまた運に見放されたのであった。
「ギャーーーー!!」
そんな真めがけて、ゴブリンが奇声を上げながらなおかつ剣を振りかざし、真に迫ったのだった。
「はぁー、不運だぜこれは!!」
しかしこのような状況に陥ったとしても、真はいたって冷静だった、おそらく精神を弄られたからであろう、真もそのことにきづきながらも皮肉げにこう呟いた。
「本当に不運だぜこんちくしょ!!」
真は銃など撃ったどころか、触ったことすらないのだが、精神が弄られた影響か、なんの問題もなく拳銃をゴブリンに構える。
「…魔法や剣ではなく、銃でゴブリンと戦う俺って、なんだか可笑しくね?」
何気なく真はそんなことを思いながらも、躊躇なく、引き金を引いた。
ダン!!
と、乾いた音が、森の中を響き渡った。
真は銃をもちろん撃ったこともなく、しかも、彼の今まで読んだ本に拳銃の使い方が書かれてあった物があったからこそ、キチンと撃てるというありさまである。さらに、H&K USPは1867年以降に開発されたものであり、補正も効かないので、例え撃ったとしても命中率が最悪なはずであった、しかし、しかしである。
いわゆる真には、精神を弄られたおかげで、銃初心者によくある、恐怖心が全くなく、また、実戦のような極限状態に置かれてまったくもって冷静であったし、撃つと決めれば、それこそプロの兵隊のように、躊躇なく打つことができた。
しかもゴブリンの目には真は全く武器らしき物を身につけていないと映ったのか、何も考えずただ単に自らが持っている剣で簡単に殺せると思い、ただ悠々と完全に油断しながら、真に向かって走って行くだけであった。
そして、それらの要素が重なったうえ、どうやら運も良かったのか、拳銃の弾は見事ゴブリンの頭を貫いていたのであった。
「ギ…」
そんな断末魔をゴブリンは叫び、頭から赤い血を流しながら、どさっと倒れ伏せ、そのまま動かなくなった。
「…銃を撃っても…そしてゴブリンみたいな人間に近い姿をした生き物を殺しても…何の罪悪感も湧かないとか…俺…おかしくねーか…」
人並みの大きさの生物を殺したにもかかわらず、そして何の躊躇もなく銃を撃つことを出来たそんな自分に、真は嫌悪感を感じ、銃を持っている右手をだらーんと垂らしながら、暗い気持ちで、とぼとぼと、頭部を撃ち抜かれたゴブリンの死体の横を歩き、川に向かった…。
「りーん、りーん、りーん」
「…だめだ、とても今日中に、人間のいそうな町に着くことなど、不可能だな」
真はあの後川を下り、人間の町にたどりつくこと祈りながら、敗残兵が撤退するみたいにとぼとぼと川沿いを下ったのであった、幸いにも川の大きさが広いためか、川の隅は木などの障害物もなく小石のみだったので、森のなかよりも断然歩きやすく、また、ゴブリンのようなモンスターにも会うことなどもなかった。
しかし、どうやら真はそう言った事に恵まれながらも結局は人間の町に辿り着くことができないまま、夜を迎えてしまったのであった。
「…月が5つもあるな…」
異世界で定番の大量にある月を見ながら、真はそうつぶやくのであった。これもまた精神が弄られたためか、そして月が5つもあっても何故か明るさは元の世界と変わらないためか、別に取り乱すこともなく、のんびりと大量にある月を見ながら、そう呟くのであった。
「…ここで、野宿するしかないか」
はぁーと、ため息をつきながら、そう呟いた。
しかし、真はそんな現代日本の…悪く言えば毎日ベットで寝るのが当たり前なおぼっちゃまである、川のごつごつした岩の上で寝られるほど、真の体がしっかりとしているはずもない。
「…ぐ~」
それに腹も減っていたのであった。
「はぁー、とりあえず何か召喚しないと、特に今日はいつになく歩き回ったせいで、いつもに増して腹が減ったしな…」
というわけで真は、さっそく何を召喚すればいいのかを決めることにした。
「…これはよく考えなけねば…いったい何を召喚すればちゃんとした寝床も得ることもでき、なおかつ、食料を手に入れることができるかだ…」
うーんと、真は考える人みたいに頭を抱えながら、なにかそう言ったものを一気に召喚できる道があるはずだと思い、自らの記憶を探っていった。
(…そうだ!!3ヵ月前ぐらいに、確か家族で、キャンプをした時があったな、そしてその時の持ち物の中に、寝袋と、携行用のガスコンロと、小さなヤカンみたいな食器などと、10個ぐらいのカップラーメンが入った、段ボールがあったはずだ…存在していたもの、つまり、今現在存在していない物でも召喚できるのなら、そう言うのだって召喚できるはず)
真は、そのことを思い出した自分に感心しながら、さっそく召喚して見ることにした。
(…どうか、召喚できますように)
真はそんなことを思いながらも、とりあえず必要かどうかは知らないが、よくわからない、召喚の構え?をした。
「…山崎真が告げる、キャンプ行った時にあった、引っ越しのサカイのマークのある段ボール箱を召喚せよ!!」
ずいぶん適当な感じに言ってしまったが、いくらなんでもそこまで詳細に思いだすことなどできるはずもなく、ただとりあえずそういうしかなかったのである。
しかし、どうやら真はちゃんとその段ボール箱の特徴を頭の中でイメージできたお陰か、「バ!!」という乾いた音と共に、真の目の前に忽然と、ワープしてきたかのように、引っ越しのサカイ印の段ボール箱が現れたのであった。
「…やべ、便利だわこの能力」
真は、素直にそんな感想を抱いたのであった。
自分の作品を評価してくださった皆様、お気に入りに登録してくださった皆様、本当にありがとうございます。
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