子供以下の強さと自由と平等を求める者
ようやく書き終えました。
だるい
「…うんと…真、それ何?」
ソラが真がニヤニヤしながら持っている銀色の物体を指差しながら言った。
形状としてはカメラ?っぽい感じであろうか、しかし普通のカメラとは一線を離脱し、中央の画面の所に大量のボタンやら、更には取ってらしきものが付いていた、正直言って、普通のカメラにはどうがんばっても見えない代物であった、そんな可笑しなカメラどころか、普通のカメラですらまともに見た事のないソラにとって、頭にハテナを浮かべながら真に向かってそう言うのも無理はないであろう。
因みに、真達が現在居る場所は、ホテルの一室であり、この前の武器屋から帰還して、数分が立った時のことであった。
「…おっ!よくぞ聞いてくれたぞソラ中尉!」
ノリノリなのであろうか、真がそんな事を面白半分にそう言いながら、自らが持っているカメラ?をソラに向かって見せつけた。
「これはね、サーモグラフィーっていう、現代テクノロジーの塊なんだよ、凄いだろ?数十万もするけど…でも今は関係ないんだよな本当!無料だしな、ふふっ」
「へ…」
ソラは目を点にしながら、目の前でよく分からない理由でトリップしている真を、只見つめていることしかできなかったのであった。
「…まあ…とりあえず、そのさーもぐらふぃーだっけ?それでどうやって隠し扉を探すの?」
ソラが我慢の限界に達したのであろうか、トントンと真の肩を強めに叩きながらそう言った。
「ああっ…これはな、ちょっと待ってよ」
そう言って、真はなにやら説明書らしきものを取り出し、それを見ながら、ポチポチとサーモグラフィーのボタンを操作し始めた。
「とりあえずこの画面を見てみて」
どうやら操作が終わったのであろうか、すぐさまソラにサーモグラフィー画面を見せつける。
「ん?」
興味津津に、ソラがサーモグラフィ―の画面をそおっと覗いた。
「…なにこれ」
そこには、黒と赤と緑、それに青色に彩られた、謎の空間が映し出されていたのであった。
「…真の手が真っ赤かになってるんだけど?変なの…だけどこの色ぐわい…なにか示すのかな?」
ソラが直感的に考えながらそう言う。
「これはな、簡単に言えばこのカメラに映った対象の物体の温度を測る事が出来る機械なんだよ」
真もソラの横に行きながら、画面を指差し説明する。
「例えば…赤が高くて、青がそれより冷たい、黒が温度がほぼないって感じかな?こんな風に温度が色で分けられていて、簡単に視界内の物体の温度が測れるって言うわけ」
真はそのあとも詳しく、画面を凝視しているソラに向かって至極簡単すぎる説明をしたのであった。
「…」
ひょいっと、試しにソラが自分の腕を画面に映し出してみた。
「…へー」
画面上で真っ赤になっている自分の手をくいくい、と手のひらを閉じたり開いたりするソラ。
「ふふっ、面白い」
今度は移動して窓から見てみるソラ、どうやら早くも気に行ってくれたようだと、真はソラの様子をみながら微笑ましくそう感じたのであった。
「すごいよこれ!!温度がこんな風に測れるだなんて、色で分けるって言う発想も凄いし…確かにこれなら、温度が通常の壁より高くなっているであろう、隠し扉を見つけられそうね」
ソラが嬉しそうにサーモグラフィーを真に向けながらそう言った。
「おお、なんだかそう言われると照れるよな…、それとソラ」
「ん?なに、真?」
ソラが現在進行形でサーモグラフィーを覗き込みながらそう言う。
「電池が切れそうだから、もうそろそろやめようぜ、勿体ないしさ」
「…」
「…」
「…」
「…なぜ沈黙する」
「…」
暗い路地裏に、一人のみすぼらしい10歳位の少年が居た、きているのはまさしく雑巾の様な服で、肌もすすけいて汚れていいた。その姿は所謂ファンタジーの世界で言う最下層の人間、とも言うべき存在の少年であった。
「…」
そして、その様子を見ている真と同じくらいの年齢の少年が居た、その少年の服装はこの暗い路地裏に、まったくもって相応しくない高貴で、装飾で飾られた服であった。
恐らくこの少年は、何処かの貴族の息子か、お金持ちの息子なのであろう、しかし、その少年の様子は何処か可笑しく、震えながら、怒っているかのように、拳を握っていた。
「…っ」
少年は力強く腕を握りしめながら、いつの間にか日が傾き黄色くなった空を見つめた。
「おかしい…」
少年は言った。力強く、震える声で言った。
「世界を…変えなくちゃ」
少年は誓うように言った。
「おやじが言ったように、俺は!」
少年はさらに言う。
「この世界に、自由と平等を与えなくちゃいけないんだ!」
少年の叫びは、暗い路地裏に、誰にもききいれらずに、響き渡った。
「…」
一方此方は真、さっそく、サーモグラフィーを無事召喚し終えた真達は、服装、武器、その他を整え、すぐさまダンジョンへ直行したのであった。
「…よし…付いたっと…」
真は重いバックをよっこらせ!と背負いながら、ダンジョンの入り口の前でそう言った。
「真」
真と同じように一息をついたソラは、何か考えたのであろうか、真の名前を呼んだ。
「どうした?」
真は不思議そうに、自分の名前を呼んだソラを見る
「考えてみたんだけど、やっぱり、私も真みたいにぼでぃーあーまーを着ておこうかなと思うんだけど」
ソラが真の着ているボディーアーマー指さしながらそういう。
「…結構重たいぞソラ」
真がいまでもなんだか肩こりを起こしているような感覚のある肩をさすりながらそういう。
「大丈夫、私真より力がある自信があるし、それに、もしもの時のために真の世界のそういう服とかに慣れておきたいしね、だから、お願い」
ソラは真に頼むように言った。
「…まあいいけど」
真は別に反対する理由もないので、そういう。
「ありがとう真」
賛成してくれた真にソラはそういった。
シュートラスのダンジョン1F
「…」
「…にこにこ」
ぴぴっと、サーモグラフィーを操作する真、そして、新しく召喚し、自らが着ているボディーアーマーを触りながら、そしてこれからこれを使って隠し扉を探せると思い、なんだか気持ちが高揚しているソラ、何とも楽しそうな風景である。
「…これでいっか…うんじゃま、これで行こうか」
「うん」
サーモグラフィーの画面を見ながらソラが呟いた。ちなみにソラのボディーアーマー姿、似合っているな…と真は思った、美少女と軍服はよく合うと言うものである。
「…」
真はもう一度サーモグラフィーの画面をのぞいてみてみる、おそらくダンジョンの壁は基本的に冷たいのだろうか、黒く映ってるな、と真は思った。
「真、これなら分かりそうね」
「…おう、と言っても時間はかかりそうだが」
しかしである、確かに一つ一つの壁を探って行くよりは完璧に早いであろうが、それでも困難が付きまとう、なにしろずっと広いダンジョンをさまよいながら画像を見続けなくてはならないのであるからして。
しかも考えたくはないが、隠し扉が温かくなっていると言う説も、エカーナさんの単なる仮説である、そう思うとなんだか疲れが湧きでてくるような感覚に真は襲われそうであった。
「まあ…せっかくここまで来たんだし、やるしかないか」
真はまさか此処まできて諦めるわけにはいかない、そう思い、自らの口で言う事で自分を戒めたながら、真はサーモグラフィーを片手にもった。
「…」
「…」
「ッ!マコト、スライムくる」
「ああっめんどくせ、ソラ!魔法で攻撃しちゃって」
ダンジョン内のモンスターの妨害を受けながら、真達は隠し扉を探すため、さまよう。
「ロウンさま、ただいま戻りました」
ロウンの部屋へと戻ったベアトリーチェは、自らの主人であるロウンに向かって、まさしく従者の如くそう言った。
「…ふむ…ベアトリーチェか…なんだ?…私に何か用が有ってきたのであろう?」
ロウンはなぜか不機嫌そうな口ようでそう言い、ベアトリーチェにその事を言わせようとした。
「…はい、実はジューコフに傷を負わせた少年について…お知らせにまいりました」
「うむ…」
ロウンは、机をドンッと叩きながらベアトリーチェに向かって言った。
「その事はすでに部下を通じて知っておる、信じられないような話をな、そしてそれが真実であるということをも、そしては私はお前に聞きたい、その少年はどのようにしてジューコフに重傷を負わせ、どのような容姿で、そしてどのような力を持っているのかだ…して、お前はその事を知っておるのであろう?」
「いえ…先ほどロウンさまが申された前途の一つだけは、すでに私が見にいった段階で重傷を負っていたため、かの少年がどのようにしてジューコフに傷を負わせたのかは判断につきかねませんが、しかし後述の二つにつきましては、断片的にですが知っております」
ベアトリーチェは相変わらず無表情な顔でロウンにそう報告する。
「ふむ…なるほど、分かった、断片的にでもよい、ではまずその少年の力について聞きたい」
「はい…わかりました」
ベアトリーチェは言った。
「ジューコフを倒した少年…しかし、私としてはジューコフを倒したと思わしき少年…と私は評価します」
「む?」
ロウンは訳がわからないと言う感じに言った。
「何故だ?報告によればその少年が重傷を負ったジューコフのすぐそばに居たのだろ、さらに、傍に居たどころか、その少年以外の人物は貴様らの魔法によって眠っていた。報告に来た部下もその事をお前が言っていたと言っておる、なぜ“思わしき”なのだ?ベアトリーチェよ」
ロウンは疑問めいたベアトリーチェの発言にそう問う。
「はい…是は私が彼を直接見た結果として、判断しました」
「…ベアトリーチェよ、とりあえずではなぜお前はその少年が“おもわしき”になってしまったのか、その理由を先に言ってくれ」
「わかりました」
ベアトリーチェは主人のその問いに答え、こう言った。
「その少年が、一目瞭然で子供以下の強さだからです」
「…ヘックション!!」
「真…大丈夫そんな大きなくしゃみをして」
ソラは行き成り大きなクシャミをした真が心配なのかそう言う。
「ずっ…ああ大丈夫だ…ただ…」
「ただ?」
「…なんだか誰かが俺の事を噂している様な」
真は何故か心配そうにそう言う。
「…うん…大丈夫よそんな、例え噂されていたとしても精々“あの子何処の国の人なのかしら”ってホテルの人たちが言っている程度よ、一応、真は異国風であんな高いホテルに泊まってるんだし、そう言う事もあるって…」
「う…」
真は髪をかきながら何故かうめいた。
「それもそうか」
「…ほう…子供以下の強さ…か…なるほど、では一体どのような要素で例の少年の強さをはかったのかね、ベアトリーチェよ」
ロウンがさっきまでの不機嫌はどこへやら、一転して面白そうに言う。
「はい、まず魔力から見て、私はみるだけで相手の魔力が強いかどうかがすぐ分かります、そして、かの少年を見た所、魔力は皆無でした…」
「…魔力が皆無だと…」
ロウンが驚いたように言う。
「はい、皆無です」
ベアトリーチェが断言した様に言う。
「…力具なんかで魔力を隠していると言う線は?」
「それもありえません、唯一あったのは俊敏力を上げる短剣のみでした、この短剣は、普通の力具で、もちろんジューコフを倒す力はありませんでした、そして、私の直感すら凌ぐ魔法具がシュートラスに入ったと言う情報はありませんし、仮に私たちの情報網すら突破していたとしても、なぜ短剣の魔力は隠さなかったのか、疑問が残ります」
これもまた、ベアトリーチェは断言したかのように言った。
「…普通の赤ん坊ですら微々たる魔力を持っていると言うのに、全く存在しないとは…かなり珍しい部類に入ると言うのを知って言っておるのかベアトリーチェよ」
ロウンはベアトリーチェの発言を信じられないでいるのだろうか、再度脅す様にそう言う。
「はい、皆無です」
そのような脅しなどなんら動じないように、まるで機械の様に同じ事を繰り返すベアトリーチェであった。
「…」
その反応をみて、恐らく本当であろうとロウンは思った、まずベアトリーチェが主である自らに嘘を付くはずがないし、例え付いたとしても利益もなにもない、正直“魔力が皆無の少年がジューコフに重傷を負わせた”のと“ベアトリーチェが嘘の発言を言っている確率”で言えば、やはり“魔力皆無の少年がジューコフに重傷を負わせた”の方が確率は高いとロウンは判断し、一旦落ち着きながら、ロウンは次に進み始めた。
「…ふむ…分かった、お前がそこまで言うからには嘘ではないだろう、では他の要素はどうだ?」
「はい、魔術的な強さは皆無と判断したので、今度は刀などの武術的な使い手と思い観察しましたが…」
ベアトリーチェは言った。
「武術的な行動は一切せず、また肉体も全く鍛えられていませんでした、まともに戦えば子供にすら劣るのではと思うほどに…」
「…」
ロウンは黙って聞いていた。
「刀など刃物は…先ほども言いました通り、俊敏力を上げる短剣のみで、後は変な鉄の器具でした」
「へんな鉄の器具?」
ロウンは疑問に思ったのかそう言った。
「はい、なにやら鉄の筒に鉄の取っ手を付け、取っ手を持って、その筒を此方に向けて来た、それだけでした、魔力もなにもないですし、そのような武器など、私たちの情報網はもちろんありません、仮にかの武器がジューコフを倒す力をもっているのならば、幾らレアアイテムと言えど私たちにその武器についての情報がないはずが有りません」
「…」
確かにひ弱な肉体を持つ者でも、持つだけでいとも簡単にジューコフを倒せるような武器ならば、彼らがその存在を知るはずがない、そのような強力な武器がこれまでちまたで話題にすら上らないのは、可笑しすぎるからである。
「魔力皆無、武術も皆無、肉体的に鍛えられてもありません、これは子供にすら劣ると、私は彼を直接見て判断しました」
ベアトリーチェはそう結論ずけ、ロウンに受けてそう言った。
「…」
ロウンはその話を聞き、考えた素振りをしたあと、次の言葉を述べた。
「む…そいつの強さは分かった、では、そいつの容姿はどうだ?あくまでそれはお前の判断であって、最終判断は私がする、とりあえず、判断材料である容姿をみせろ」
「わかりました…これを」
そういって、ベアトリーチェは書類をわたした。
「…」
それは恐らくベアトリーチェが書いたとおもわしき、似顔絵が描かれていた。もちろんそこには、例の異国風の男が描かれていた。
「…ふっ」
しかし、ロウンは何故かその似顔絵をみると、不敵に笑いだし始めた。
「…?」
ベアトリーチェもどうしたのかと、無表情な顔で首を傾げた。
「ふふふ…これは…そうか…面白い…」
ロウンはそう言うと、ベアトリーチェに言った。
「この男を調べろ、それと…特にこれについてだ」
そう言うとロウンは目の前にあった鍵穴付きの金庫のようなものに手を伸ばした。
…き…き…
かちゃ…
「…主にこの男の元に、これと同じもが有るかどうかをだ」
ロウンの手に握られていたのは、マジックペンであった。
「…なあソラ…」
「なに真」
真はなぜかうなだれるように、ソラに向かってそういい。
ソラもどうしたのかという感じな顔で答える。
「…もう何時間も探してるけど…見つからなすぎだろこれ」
「…」
真達はこれまで数時間もダンジョンを探し回っており、すでに3階は探しつくしており、ついに4階に到達、そしていつのまにかその4階も半分は探しつくしたと言う感じであった。
「…真」
ソラは遠い目をするかのように言った。
「いい真、隠し扉って言うのはね、普通探すものではないの、偶然見つけてしまう物なのよ、大体にしてこうして探すこと自体がありえないことであって、今回は真の道具によって、隠し扉を探すという行為を、あり得ないほど効率化させたから実行できただけだと思うの。だから、結局は困難を極めるというのは当たり前な話よ」
ソラは真にむかって、そのような…現実的な話を言ったのであった。
「…え…じゃあ、やっぱり一日やそこらで出来る話しじゃないわけ?」
真が顔を引きつりながらそう言う。
「そう言う事、運が良ければ一週間で終わると思うし、頑張ろう真!」
ソラが笑顔でそう言った。
「…」
一方真は、すでにガタがついてしまった足をさすりながら、ダンジョンの壁をボーっと見つめるようにして、黄昏ていたのであった。
誤字脱字はやっぱり直すのに結構時間がかかると思うので、そこらへんはご了承ください。