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襲来2

ちょっと今回は短め

「…まだなのか、シュートラスギルド支店長の奴は」

小さくも迫力が有る声で、ギブソンは目の前にある時計を見ながら、そしてストレス発散ぎみに足をガタガタを揺らしながら、そう呟いた。

「もうすぐ付くはずだと思うけど、だって19時過ぎには来るってギルドの職員さんたちは言ってたんだし、そんなに慌てるもんじゃないわよ、ストレスがたまるだけだわ」

足をガタガタウザったく振るわせるギブソンに、エカーナが目の前に用意されていた湯気がモアモアと出てくる飲み物を飲みながら言った、因みにその飲み物の正体は良く分からないが、紫色をしていた。

「…ちっ」

ギブソンはあまりにものイライラに少々キレてしまっているのであろうか、力強く舌打ちをしながら、足で勢いよく床をドンドンと叩いた、因みに床にはひびが入っていた。

「…そう言えば、真の奴らは何処言ったんだ?」

今更だと思うが、ふとギブソンは思ったのであろうか、謎の紫色の飲み物を飲むエカーナに向かってそんな今更な疑問をぶつけた。

「…ズゥ…ぷはぁ…」

コンッと、エカーナはその紫色のなぞの飲み物を飲み終えたのであろうか、コップを目の前の机に置いた。

「さぁ…ここに居るのが飽きて、他の場所に遊びにでも行ったんじゃないの?ナニをしに行ったのだか…はぁ…青春って良いわね…」

エカーナは何故か「ナニか」という言葉を強調させながら、ニヤニヤと呟いた。

「…」

「…」

ちょっとばかりの沈黙が走った。

「…ふ…ふははははは」

ギブソンはエカーナのその言葉の意図を察したのであろうか、急に大きな笑い声を上げて言った。

「エカーナ、お前は良いよなそんな性格で、場を和すとか、ストレスを如何にためないかとか、そう言う性格がよ!昔と全く変わらないな!!」

「あら?貴方も外の性格が変わっただけで、ホントの心、つまり内側の性格は、これっぽちも変っていないと思うけど」

エカーナはギブソンに仕返しするように、そう言う。

「…そうか?」

ギブソンはエカーナのその言葉に、疑問を抱いた。

「そう言うもんよ、私には分かる」

エカーナは一旦言葉を切ったあとこう言った。

「だって私たち、幼馴染だからね」

「…そうか」

ギブソンはその言葉に、何故かため息を付きながら、ギブソンらしくない小さな声で、そう呟いた。

「あっほら…」

何かを見つけたのであろうか、エカーナは顔でギブソンも見るように促す。

「噂をすれば来たわよ、彼らが」

エカーナが見つめる方向には、ソラと真が居た。








「えっ、まだ来てないのギルド支店長さん!」

エカーナの例の話を聞いたのであろうか、ソラが驚きの声を上げながら、エカーナに向かって叫んだ。

「…」

真はそんなソラとは正反対で、驚きもせずただ単に、よくもまあゲームも何もない世界でそんなにも待ってられたな…と思っていた。

「そうよ、ギルドの職員の皆が言うにはもうすぐ来ても可笑しくないと言っていたけど、中々来ないのよね、ギルド支店長の奴」

エカーナは、驚くソラに向かってそう言った。

「どうして…何かあったのかな…」

ソラが考え深げにそう言う。

「…」

真の方は疲れが限界に達したのか、立つのも苦しくなり、床に座り込んでいた。

「本当…何が有ったのかしら…全く分からないわ…」

エカーナも額に手をあて、困ったような顔をする。

「…」

一方真は死ぬほど帰りたいと思っていた。

「うん…じゃあ他に何か情報とか…例えばギルド支店長さんからじゃなくて、他の人たちからの情報とかは来ないの?」

ソラは意気込ながらそう言った。

「ぜんぜん…まったく、一言も耳にしてないわ…はぁ…」

エカーナはため息を付きながら言った。

「うん…」

その言葉に、ソラも言葉がつまった。

「…なぁなぁ…」

恐らくそのすきを付いたのか、真が床に座ったまま、ソラを呼び掛けた。

「なによ?」

「もう…帰ろうぜ…ベッドで横になりたい…どうせ、盗賊とかに襲われたりして予定がくるってるだけだろう?そんな簡単にギルドの職員達が言う時間に来るとは思わんのだが、まあいいや…とりあえず早く帰ろ…」

「だまってなさい」

ぺしとソラは真の額をデコピンで叩く。

「あらあら…真さんどうしたの?なんか生気持ってかれた様な顔して?」

「いやさ、コイツ体力ないのよホント、すっかり疲れちゃって、このざまよ」

はぁ…とソラはあきれるようにため息を付きながら、エカーナに言う。

「へ…真さんがこんなに疲れるだなんて・・どう言う事したの?もしかして…」

そう言って一瞬、エカーナはニヤニヤした顔でソラの耳元に口を運ぶ

「アレなこと?」

「え…?」

キョトンと、ソラはまだエカーナのその言葉の意味に気づけなかったのか、そんな間抜けな顔をさらした。

「どう意味で…」

「ほらアレよ…アレ」

「…」

「…」

「…」

「ナッ!!」

ようやく気付いたのだろうか、ソラはその言葉を聞いて一瞬の間に顔を沸騰させ、悲鳴の様な声を上げた。

「あわわわ」

余りにもの予想外な言葉だったためか、ソラは顔を真っ赤にしながら硬直していた

「うふっ男の子をこんなに疲れさせるほどやるだなんて、見かけによらずね…うふふふ」

そういって、いたずら下な顔で笑うエカーナ

「ち…っちがう!!なんでこんな奴とソンナことしなくちゃいけないのにょ!!たぎゃ…単に依頼を達成しにダンジョンに何時間か引きこもってただけなにょ!!だからそんなもんじゃ」

余りにもの慌て口ようでかなり噛んでいるソラ、そんなソラの様子にご満足げなのか、ケラケラとエカーナは笑っていた。

「大丈夫、そんな事、冗談だよ、それで…」

ぷんぷんと、未だに起こっているソラを無視しながら、エカーナは自分の直感から来た事を言ってみた。

「何かあったの?そのダンジョンで?」

「え…」

キョトンと、エカーナのその言葉に先ほどまでの怒りを忘れるほどに、ソラはそのエカーナの言葉にかたまった。

「え…なんで分かったんです、私たちがダンジョンでなにかあったてこと」

「うん…」

未だにキョトンとしているソラの顔を見ながら、エカーナは髪を弄りながらこう答えた。

「だって、貴方達って、なんだかそんなものに毎日襲われてそうな雰囲気じゃない、トラブル体質ってかんじ?」

「…」

ソラは自分たちはそう思われてるんだな…と、なんだかちょっと絶望感に似た感情を覚えていた。

「…」

一方空気と化していた真は、そんなのそっちのけで、いつの間にやら傍にあった椅子に座って眠りこけていた。






「へ…15階でコースラスの薬草を探してたけど、薬草どころか、通常の剣すら出なかったと…」

「うん…そうなの…はぁ…なんでなのかな…」

まるで思春期の悩みを打ち明けた感じに、ソラはため息を付いていた。

「うん…考えられるのは…誰かが15階でソラちゃんたちが来るより先に、片っ端から取り去って行ったて事ぐらいかしら…」

「でも、一体だれがそんな事を」

「幾らなんでもそれは私には分からないわ、もしかしたらあのダンジョンの性質が変わったのかもしれないし…」

「うん…」

ソラがいじけるように言う。

「こうなったら、宝箱以外で行くのね」

「…宝箱以外って…」

ソラが疑問下にそう言う

「モンスターハウスって知ってる?」

エカーナがソラに向かって問いかけた。

「あ…はい知ってます、たしか、ダンジョン内に隠し部屋が有って、その隠し部屋の一つが、モンスターハウスで、確か、その隠し部屋にはモンスターが引き召し合っているって言う奴?」

ソラがエカーナに向かって、自らのその簡単な知識を披露する。

「そう、ダンジョン内には隠し部屋って言うのがあって、有名なのが宝の部屋ね…その中の一つがモンスターハウス、所謂外れね」

「…それがどうかしたんですか?」

ソラがまた疑問下に呟く。

「…モンスターハウスは、その中に居るモンスターを全滅させれば、宝の部屋で手に入るアイテムより、素晴らしいアイテムが現れるって聞いたことある?」

エカーナが得意げに言う。

「ッ!あっ…はい聞いたことあります」

「それに、モンスターハウスは宝の部屋よりエカウント率は高いわ、もし見つけられれば…宝箱で見つけなくても、コースラスの薬草くらい、10個も20個も手に入ると思うわ…こう言うのはどうかしら?宝箱じゃなくて、モンスターハウスとか、そう言う隠し部屋で見つけるって言うのは?」

「…」

「…」

何故か沈黙が走った。

「…あ…ごめんね、冗談なの、無理に決まってるか…他のベテランのパーティーだってそんなことよっぽどの事でもない限りしないし…ごめんね、なんだかこんな冗談言って」

「いいえ」

ソラはなんだかあやまり口ようになったエカーナに言った。

「大丈夫です、怒ってなんかいません」

「…あ…」

驚いたような口ようでエカーナは言った。

「その方法良いと思います、確かに、普通なら冗談か、からかいにしかならないような展開にしかならないかもしれませんが、私にはこいつが居ます」

そう言ってソラは、ビシッと、傍にある椅子で眠りこけている真を指差した。

「え…え…ん?」

エカーナは頭に?の文字を浮かべた。

「真なら、そんな不可能も可能にしてしまいそうだし、それにそうじゃなかったとしても、私はエカーナさんにそんなことで怒ったりしません、大丈夫です」

「え…ああ、そうなの」

「はい、さっそく真が起きたらこの事、言ってみたいと思います、真はこう見えても頼りになりますし、凄いんですよホント」

にっこり笑いながらソラが言う

「…」

ソラのその、にっこりと笑った顔を見ながら、何故かエカーナは、この子たちなら別に大丈夫だと、なぜか根拠なくそう思っていたのであった。







「…ここでいいか…」

「ええ、ここならシュートラス商人ギルド全体にちょうど良く包み込めるでしょう」

「ああ…そうだな、じゃあやるか」

そう言ってジューコフは、暗闇の中、呪文を唱えた。

「…」

ベアトリーチェも、そのジューコフの呪文に沿う形で、呪文を唱えた。







「…そう言えばギブソンさんは何処へ行ったんですか?さっきまで一緒に居たはずじゃ…」

ソラが気づいた様に言う。

「ああ、彼なら、どうせまたギルドの職員にギルド支店長はいつ帰ってくるんだ!!って聞き込みを続けているわ、因みにこれで30回目ぐらいね…」

「うわ…」

余りにもその回数にソラはそんな声を上げた。

「でも、どうせなんにも収穫がなくて帰ってくるだけよ、あっ、ほら噂をすれば」

そう言ってエカーナはギブソンが着た方向を指差す。

「どうだったギブソン、なにか収穫でもあった?」

面白可笑しげにエカーナはギブソンにそう言う

「くそ!!あいつ等俺が来たら盛大にため息を付きやがって!態度がなってない、おまけにあいつ等はな、結局はこう言うんだ。ギルド支店長に関する情報は全くありません、恐らく、遅れているだけだと思われるので、しばらくお待ちください、を!!何回も何回も言いやがって!!くそくそくそ!!」

ギブソンはそう言って足で床を蹴る。

「はぁ…ほらやめなさいよ、また床がへこむわ」

「そんなこと気にしてられん!!ボルトの事がかかってんだぞ!また聞きに…」

また聞きに行くのか?とエカーナとソラは思ったのだが、しかし突然、耳なりを起すような怒鳴り声をあげていたギブソンが急に黙った。

「…ん?どういたの急に黙って?どうかしたの?

もちろん突然の事にエカーナはキョトンとした顔でギブソンに言った。

「うゥ…んなんだか眠く…」

ぐら…とギブソンは突然その巨体をよろめかせ、自らが蹴りこます事で凹んでしまった床へ、ドスンッと倒れこんだ。

「えっ!!どうしたのギブソン…」

余りにもの異常な現象なので驚いてエカーナは倒れこんだギブソンに駆け寄る。

「…ギブソン…なんでアンタ突然寝て…あれ…」

どさっ…と今度はエカーナが、ギブソンに折り重なるようにして、倒れこんだ。

「ぐーぐー」

「すーすー」

どうやら二人とも眠ってしまった様だ。

「えっ!!え?え?」

勿論一番驚いたのはソラである、突然さっきまで元気に騒いでいたギブソンと、そんなギブソンと話していたエカーナが眠ってしまったのだからそれは当然のことかもしれない。

「え?うそ…」

そういって、異常を感じたソラは周りを見渡した。

「…」

そこには案の定、近くで動き回っていたはずのギルド職員たちは、ぐっすりと、床に転がるようにして、眠っていた。

「ま…まさか」

その様子にソラは何が起こったのか気づいた。

「スリープクラウド!!」

吸い込んだ相手を強制的に眠り状態にする魔法…しかしソラが其の事に気づいた時にはもちろん遅く。

「ッ!!」

くら…と、あっという間に強烈な眠気に襲われた。

「…まこ…と」

どさ…と、ソラはさっきから近くの椅子で眠りこけていた真を見ながら、あっという間に倒れふせ、そのまま深い眠りに付いた。










「…よし、全員眠ったな」

さっと、シュートラスギルド支店に忍び込みながら、全員が自らが放ったスリープクラウドにより寝ている事を確認すると、ジューコフは言った。

「…それより早く、ビョーシェ関連の書類を焼き捨てるわよ、あ…そうだわ」

ベアトリーチェはふと思いついたように言った。

「あなたじゃ頼りないわ…私が書類を始末してくる、だから貴方はここで外から来るかもしれない冒険者とか一般人が来るかどうかみはっておいて、むりやり来るようだったら容赦なく実力行使しなさい、分かった?」

「…ちっ、そんな事わかってるっつーの」

「そう…じゃあお願いね」

そう言って、ベアトリーチェは自らを睨めつけてくるジューコフを見ながら、無表情な顔で、すっと、シュートラス冒険者ギルド支店二階へと上がって行った。

「…ちっ…めんどくせーな」

そういって、ジューコフはあたりを見渡した。

周りは強力な睡眠魔法を吸い込み、ぐっすりと深い眠りにつき、床に転がっている人々が居るだけであった。

「…」

ジューコフはこいつらが何かしらの要因で起きないかを心配したが、この魔法を放ったベアトリーチェによると、唯一の弱点はとしては、この魔法を浴びる前からすでに眠っていた相手には効果は無いけど、起きていた人なら、例え自分の目の前で爆発が起きたとしても、魔法の効果が切れるまで、起きるはずわないわ、と言っていた。

「…ん?」

しかし、そんなぐっすりと眠っている人々の中、ジューコフの目はふとある人物の姿を確認した。

「…ッ!!」

そして、ジューコフはその人物の正体に気づき…

硬直した。

「…」

それは、何やら長身で筋肉マッチョなボルトに似た男とそれに重なり合うようにして眠っている女のすぐそばの床に、倒れこみながら、眠っていた。

「な…」

驚きながらジューコフは、そのある人物に、自分でも気づかない内に、ゆっくりと、ゆっくりと近づいていた。

「…」

その人物は、透き通るような、青い空の様な長い髪と、それと同じ色をである瞳を併せ持った、少女…そう、あの時、自分をその貧弱な力で打ち負かした、少女の姿であった。

「…は…はは」

ジューコフはその少女の目の前まで行き、床の上でぐっすりと眠りこんでいる少女を、立ちながら見降ろした。

「…なんだよ…なんでお前がこんな所に居るんだ」

ジューコフはそう言う。

「…お前が居ると、本当に頭がおかしくなりそうだ…」

ジューコフはその独り言をさらに言う。

(この感情は偽物だ…そうだ…そうなんだ、俺はそう思うしかねぇ)

そう思いながら、それでも何故か体は勝手に動く様に、ジューコフはその床の上で眠りこけているソラの顔を良く見る為に、屈みこんだ。

「…だがな…」

触れたい…ジューコフは思った。

誰から否定されようが、例えこの感情がにせものだったとしても。

もう一度味わいたい、あの時感じられた喜びを、感情を…

ベアトリーチェに否定され、これからはもう出してはいけないはずの感情が、ベアトリーチェが居ないと言う環境のせいか、まるで無限にあふれだす湧水の様にあふれだし。


ジューコフはこらえきれなかった。

「…」

ジューコフはまるで、暗闇の中から感じられた一筋の光を掴み取るかのように、眠っているソラに向かって、手を…伸ばした。





ダンッ!!





「…な」

しかし、そのジューコフの伸ばした手は、一筋の光のように見えたソラの元に届く前に、そのかん高い音と共に弾き出された鈍い鉛玉により、真っ赤な赤い血を飛び散りさせながら、砕け散った。

「…」

きしくもその腕は、目の前に居る少女の攻撃によって、失った腕と同じであった。

「…」

呆然と自らの失われた腕を見つめているジューコフ、そしてそんなジューコフに向かって、ある男の声が、先ほどジューコフの腕を打ち砕いた鉛玉のように、冷徹に、ジューコフに降り注いだ。



「ソラに触るんじゃねーよ、この殺戮者が…」

椅子に座りながら、さっきまで寝ていたふりをしていた真が、その手に握られたM1897ショットガンを握りしめ、ジューコフに向かってそう言った。


その顔は、あの時ジューコフを絶望へと突き落とした、あの謎の女と同じ顔であった。


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