襲来
ようやく気付いた、なぜ今までこんなに更新が遅れてしまうかを…簡単なことだった。
私受験生なんだは今年…
というわけで、更新が遅くなりました、いや…本当にすみません。
これからもこのくらい遅くなるかも
りーんりーんりーん
いつの間にかすっかり日も暮れ、早くも気温が下がり始めた異世界の18時末、鈴虫が鳴いているような声があたりに響き渡る中、かがり火に照らされながら、低い背丈の草とごつごつとした石以外なにもない真っ暗な暗い道を、何人かの護衛と共にシュートラス冒険者ギルド支店へと向かう、一つの馬車が有った。
「…」
その馬車には、5人位の護衛とおもわしき人間が居いた、人数は男3人女2人ぐらいであろうか、皆槍に弓、剣に棍棒、魔法の杖にナックル、さまざまな武器で、武装していた。
「…」
そして、その護衛に囲まれるように、顔になにか傷を負っているのだろうか、それとも生れつきなのであろうか、顔が醜くゆがんでいる男が居た、そう、彼こそがシュートラス冒険者ギルド支店長であった。
「…まだか、シュートラスは…もうクタクタだぞ、早く柔らかいベットの上で寝たいな」
そんなものものしい武装した集団の中央に彼は居るはずなのだが、彼の性格なのか、気楽にシュートラス冒険者ギルド支店長は、自らを囲んでいる護衛たちに言った。
「…」
「…」
「…」
案の定、彼の一番の傍に居た護衛三人組は、自らの護衛対象であるシュートラス冒険者ギルド支店長をちょっと見るだけで、結局何も言わず、すぐさま無視し、また、あたりを警戒する事に神経を尖らすのであった。
「…おいおい…幾らなんでもそれは酷いですぞ、だれか話してくれる人いないのかな…」
シュートラス冒険者ギルド支店長はそんな事を言いながら、一番自分と話をしてくれそうな、とある女性に向かって言った。
「なあなあマミラちゃん、わしと一緒に話をしましょうか?ふふふ」
その人物、マミラとは、金髪の髪を足に届くまで長く伸ばし、胸も大きく、いわゆるスタイル抜群な女性であった、年は20歳位であろうか…とても大人びていると言うのがとても印象的な女性である。
「…はぁ…セルツ殿よ、ちょっとは緊張してみたらどうだ?話を聞くに命狙われているらしいが、こんな事をしている暇はないと、私は思うのだが」
大人びた、クールな口ようと声でそう言うマミラに、冒険者ギルドシュートラス支店長、セルツはなぜかニヤニヤしていた、下心まんまんである。
「ふふッ…マミラちゃん、とりあえず君はどう思うのかな、あとどのくらいでシュートラスに付くのか…お話をしようではないか、私は暇で暇でしたかないのだよ」
セルツはそんな事をマミラちゃんを見ながら、馬車の壁にもたれ掛けながら言った。
「…はぁ…うむ…30分もないのでは?…さっき目印の岩が目に映ったから、是は確かだとおもうぞ、それとセルツ殿、危険だから、やっぱり大人しくしておいた方がいいと思うのだが」
すこし不満げに、マミラはセルツに向かって言った。
「…つれないな…しょうがない寝るとしますか」
セルツはマミラのそんな素っ気ない反応に、歯をかみしめたような顔をしながらそう呟いた。
「能天気な奴だ…」
こんな状況で寝られるセルツに向かってマミラ小声では呟いた。
「って、こんな状況で眠れるわけないでしょうが!!」
そして、突然そんな事を叫びながら、セルツは飛び起きた。
「…」
「…」
「…」
恐らく笑いでも取ろうとしたのだろうか定かではないが、どうやら各護衛たちはそんなセルツのご様子に慣れているのであろうか、さっきと同じようにチョット見つめただけで、またもや興味を亡くしたように、彼らの視線はバラバラになった。
「…はぁ…マミラちゃん、なんでこんなにも皆冷たいんだ」
笑いを取る事に見事失敗したセルツは、さみしげにマミラに向かってそう呟く。
「…それぐらい察したらどうだ?」
そんなセルツの様子を、マミラはジト目で見つめていたのであった。
「…またまたからっぽですねハイ、本当にありがとうございました」
絶賛シュートラスのダンジョン内において探検中の真は、なんだか壊れ気味に、空っぽであった宝箱に向かって、そう言ったのであった。
「…また空っぽなの?」
ソラは驚いたのであろうか、そう言う真に向かって恐る恐る聞いた。
「じゃあ見てみろよ、見事に空っぽだ、刃こぼれを起した剣すらない、永遠だよもうこれ、火の鳥だよ火の鳥」
真はちょっとばかり意味の分からない愚痴を混ぜながらも、ソラに空っぽの宝箱を見せつけながら言った。
「…」
「…」
そのあとは、空っぽの宝箱を見つめてるソラと、へなへなと地べたに座り込む真との間に、緊張感…ではなく、ただただ脱力感と無力感と沈黙感が走っただけであった。
「…」
空っぽの宝箱を見ながらソラは沈黙していた。
「…ソラ、もうここんところ10個くらい宝箱とが空っぽだったし、それ以外は刃こぼれした剣とそれに次ぐ屑アイテムばかり、ほら…」
そう言って真は携帯をソラにかざす様に見せつけた。
「…もう19時だ…もう歩けね…さっさと脱出用のクリスタル使って帰ろうぜ」
真はソラに向かってそう言った。
因みに脱出用のクリスタルとは、特定の呪文を唱えると、4人限定であるが、いとも簡単にダンジョンを脱出できるアイテムである、しかし、意外にも割高なため、奥地に行くとき以外は通常の冒険者は装備しない事で知られている、事実、ドゥットルーズもあの時は簡単に帰るつもりだったため、装備していなかった、しかし、そこは金持ちの真にとってはどうでもいい事、いとも簡単にこの脱出用のクリスタルを、真は買えたのであった。
「…はぁ、それもそうね」
「だろ?だから帰ろう、そうしよう、また明日来ればいいよ」
震える足をマッサージしながら、真は泣く様な目でソラを見つめた。
「…じゃあ…帰ろっか」
「よししゃぁぁぁぁぁ、ほら脱出用クリスタルだ」
真は歓喜を上げながら、ソラに脱出用クリスタルを渡した、どうやら脱出用クリスタルはちょっとでも魔力がないと使えないらしく、やっぱり魔力がない真には使えなかったのであった。
「はいはい、それにしても可笑しいな…こんなに出てこないなんて…可笑しい…」
「良いからさっさと帰ろうぜ…もう死ぬ」
真はさっさと帰りたい為か、ソラの言葉を途中でせき止めて、そう叫んだ。
「…イル…ラル」
パア――
ソラが呪文を呟きだしたその瞬間、脱出用クリスタルは輝きだした。
「…脱出」
シュン
と…ソラと真の姿は、脱出用クリスタルの明かりが消えるとともに、消えてなくなった。
「…なあマミラ」
「…なんだい…セルツ殿よ」
馬車内で冒険者ギルド支店長であるセルツが、またもやこの暇さに耐えきれなくなったのであろうか、マミラに向かってまたもや話しかけた。
「いや…ちょっとな」
セルツが言いづらそうに言った。
「俺が今まで、シュートラスの町を離れて何処に行っていたか、聞きたくないか?」
セルツはマミラに向かってそう言った。
「…」
実はマミラはシュートラスの町を拠点にしており、セルツがシュートラスの町を出発してから護衛としてセルツを一緒に居た、しかし、セルツが何のためにシュートラスの町を離れ、何処に行っていたのか知らされておらず、ちょっとばかり興味が湧いていた。
「…別に良いが」
マミラは本来護衛として、この事を拒否しなくてはならないが、あまりにもうるさいのと、そして、興味等の理由におり、マミラはセルツの話を聞く事にしたのであった。
「…おォ…今まで俺の話に答えてくれた人はなかなか居なかったぞ!!うんさすがマミラちゃんだ…マミラちゃんのためなら…」
「うむ…いいからさっさと話したらどうだ?」
マミラはちょっとばかりイラつきながら、セルツに向かってそう言う。
「おととっ…すまんすまん、うんじゃ、あんまりマミラちゃん以外の人たちには聞かれたくないから、小声で言うね」
セルツはそう呟きながら話し始めた。
「実はな、俺、大本営の奴らの所へいってきたんだ」
「…ッ!!」
その言葉に不意を突かれたような感じにマミラは驚きの声をあげそうになったが、セルツが余り自分以外に聞かれたくないと言ってきたので、押し留まる
「…な…大本営だと…大本営て確か、この世界に散らばる冒険者ギルドの最高機関なんだろう?そんな組織に、どうやってお前が会ったんだ?」
相手が護衛対象なので、本来は敬語を使わなくてはならない事などすっかり忘れて、マミラは他の人達に聞かれないように、セルツに向かってそう言った。幸いにも他の護衛たちはセルツとマミラの会話には興味がないのか、彼女たちの会話は聞かれている様子はなかった。
「ふん、俺も最初大本営の奴らから通達があった時には目を疑ったさ、俺みたいな辺境の支店長に、大本営の奴らが直々にお呼びになられたんだからな」
セルツは苦々しげに言った。
「…ほぉ…しかしどうしてお前みたいなのが」
「まあまて、理由は後で言う、とにかく、俺は集合場所である隣町ベーニスにまで、マミラちゃん達を護衛として連れて行き、途中で分かれてあと、事前に通達されていた集合場所に行ったのさ」
セルツはマミラの言葉を遮りながらそう言う。
「けどな…まあ当たり前かもしれんが、会ったとしても、その会った奴は、末端なのか、それとも代理なのかは分からないが、その集合場所には黒い服で身を隠している男が一人だけいたんだよ」
セルツは言葉を一旦とめた
「…ここからがその理由だ、とりあえず、その大本営の連中に言われた通達された言葉はな」
セルツはまたもや言葉を途切れさせた。
「ここで話はいきなり飛ぶが…まあ何と言うかあの事件、お前も聞いて居るだろ?ドゥットルーズが病院送りになったって話」
セルツはマミラに向かってその事を知っているかを聞いた。
「…うむ、聞いたことあるはあるが、それがどう関係してるのだ?」
マミラはそう呟いた。
「いやな…関係あるかどうか分からんが、実はそいつから、その…事件が起きた場所であるシュートラスのダンジョンに行くドゥットルーズに、ラテとか言う魔術師を、強制的に入らせろと、もはや命令と同じような事を言われたんだよ」
セルツはさらに誰にも聞こえないように、さらに小さく、そしてマミラの耳元でその事を言った。
「…なるほど、で…その命令を実行し、そしてあの事件が起きたと…つまり、今回のドットルーズに関する事件は、大本営が一つ絡んでるってこと…なのか」
セルツの証言を元に、自らの考えを増築させ、そのような疑問にいたったマミラは、セルツと同じくらいの小さな声で、セルツに向かって疑問を返した。
「分からん…証拠がないからな、とりあえず、ただ単にそのラテとか言う良く分からん奴を、大本営が強制的にドゥットルーズに入れたと言う事は事実だ、そして、これは、俺の勝手な発想に近いが、どうやら大本営よりももっとやばい奴も絡んでるみたいだぜ」
セルツはそう言った。
「うむ…幾らなんでも壮大すぎではないか?本当にそいつは大本営の手下なのか?」
マミラが疑問を浮かべた負うな顔でそう言う。
「…さぁ…とりあえず俺のもとに届いた手紙は完全に大本営の物だった」
セルツはそう言った。
「…なるほどな」
マミラはその話を聞き、そんな声を上げた。
「まあ、この一連の事から考えるに」
セルツは言った。
「今回の出来事は、なんだかよく分からんが、何処かの組織、恐らく冒険者ギルドに多大な資金を提供し、大きな影響力をもっている奴が、何故だか分かんないが、本営を利用してドゥットルーズを壊滅させようとして、失敗した…ってことかな、ドゥットルーズが病院送りになってしまった事を踏まえると」
セルツはそう呟いた。
「…まさか、お前が命を狙われるかもしれない理由は…」
マミラは察したように呟いた。
「ははっマミラ…」
セルツはそんな風に驚愕な顔を浮かべているマミラに向かってちょっとばかりなぜか先ほどと同じようなニヤニヤ顔を浮かべていた。
「そんなわけで、俺死にそうだから付きぁ…」
「…」
マミラの平手打ちがセルツにクリーンヒットした瞬間であった。
「…いて…」
セルツはマミラに平手打ちされた場所を摩りながら、そんなうめき声をあげていた。
「…はぁ、セルツ殿よ、いい加減そのような手で私を混乱させないでくれ、お陰でセルツ殿がいままで言ってくれた事すべてがセルツ殿が作った妄想にしか思えなくなってしまったではないか」
マミラ頭を抱えながらはセルツに向かってそう言った。
「…」
しかし、セルツはふと、少し考えながら黙りこみ、そしてマミラに言った。
「…ははっそうさ、これは俺の妄想さ、俺みたいなそこらへんにいるギルド支店長如きが会うような現象なわけないだろ」
「…そうか…なら居たしかたないか、それにしてもその話、お前の妄想としては」
「…」
そんなマミラの叫ぶ顔を、なぜかセルツは遠いものでも見つめるかのように見つめていた。
「…まいっか、これで」
「なにかいったか?」
「いいや」
セルツはマミラに向かってそう答えた。
「まったく、これからは少しは冗談は控えるのだな、じゃなきゃ…ッ!!」
その時、マミラの言葉突然詰まった。
「どうしたマミラ?」
突如言葉を途切れさせたマミラに、セルツはちょっとばかり目を見開きながらそう呟いた。
「…なにか来る!!」
「「ッ!!」」
その言葉に馬車内に居る全員が驚愕の顔を浮かべたその瞬間
ドゴゴゴゴッ
と、馬車が突如、爆発した様な攻撃を受けた。
「ぐわわわわわ!!」
「のわ!!」
突如受けたその攻撃に、馬車は大破、全員馬車内から投げ出された。
「ぐぅ…がぁッ」
そして、勿論そんな攻撃を受け、まったくもって無事であるはずもない、腕が見事に吹っ飛んでいた者もいた。
「みな…大丈夫か?」
他の者たちより早く、この襲撃に気づけたマミラだけは、所々かすり傷や切り傷を受けただけで、重症にはなっていなかった。
「ぐぅぁ…一体何者だ…気配を完全に隠し、馬車を一撃で吹き飛ばすなんて…誰だ?」
所々大きな切り傷を受けた護衛の一味である男が、呻きながらそう呟く。
「…まずい…やっぱりあいつ等が…」
セルツが胸に切り傷を受けたようで、ドクドクを胸から流れる血を手で押さえながらそう言った。
「な?」
マミラはその言葉に驚いたのだろうか、こんな状況下であってもそんな声を上げた。
「お前…もしかして本当なのか?あの話…」
マミラはセルツに向かってそう言った。
「やっぱりそうだったか…可笑しいと思ったよ…ぁぅ…そんな事を聞いている場合じゃない、良いから…マミラ…まともに歩けるお前だけで良いから逃げッ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
しかし、そのセルツの言葉は、突如発生した巨大な竜巻の音にかき消された。
「…な?」
余りにもの突然のことと、そしてマミラはその竜巻をみて驚く。
「…なんだ…あの竜巻」
そこには、マミラが見たこともない様な、凄まじい程の大きな竜巻あった。
「う…ゎ!!」
その余りにもの大きな竜巻を見て、逃げようとしているのだろうか、重傷を負った各護衛の人たちが、戦意を完全に損失し、傷を負った場所を押させながら逃げようとした、しかし、スピード的にどうしても逃げられそうにない。
「…ッ、こうなったら一緒に逃げるぞセルツよ、他の者を置いていくのはいささか心残りであるが、彼らとて護衛と言う依頼を受ける以上死を覚悟している、お前が最優先だ、いくぞ…」
マミラはそう言うと、自らより背の高いセルツを抱えようとした。
「…ッ!!バカ!アホな事をするな!」
「大丈夫だ、私の足はあの竜巻より断然早い、それに、幾らなんでもこの暗闇の中、そして竜巻が荒れ狂うなか、遠距離攻撃で私を狙い撃ちは絶対にされるはずがない、大丈夫だ」
マミラは拒否するセルツを問答無用で抱え込みながら自信満々に言った。
「良いから下せ!!お前死にたいのか!!」
「はぁ…だから大丈夫だと言って…」
しかし、マミラのその言葉は続かなかった。
キュイーン
ドス
「え…」
マミラは突然痛みと衝撃を受けた場所見た。
「…」
そこにはあったはずの右足がなかった。
「な…」
マミラは驚愕の表情をしながら、あっという間に、自ら背負ったセルツと共に、倒れこんだ。
「…え…なぜ」
マミラは足から来る激痛に耐えながら、自らの右足を覗き込んだ。
そこには、先ほどまで似合った白く細い脚はなく、ただ、夜の暗さに冷え切った地面しかなかった。
「あぁ…」
マミラはあまりにもの事に頭の中が真っ白になった。
「…だから言ったのに」
マミラは強張りながらも、その声がした方向を向いた。
そこには、残念そうな顔しながら、マミラを見つめるセルツが居た。
「…せめて、俺を置いていけば無償で助かったかもしれないのに…マミラはもう」
セルツは血がドクドクと流れる胸を押さえながらも、細々と、小さな声でそう言った。
「…」
その様子を、マミラは右足から来る激痛に耐えながら、黙って聞いているしかなかった。
「…私は恐らく生き残る事は出来ないだろう、例えここで生き残ったとしても、次の場所で必ず殺されるだろう」
セルツは何故か笑顔を浮かべマミラの顔を見ながらそう言った。
「…これを着れ」
セルツは自らが着ていた服を被せた。
「な…なんだこれは」
マミラは良く分からなかった。
「これはな、俺がギルド支店長になるまえに、ダンジョンの奥の宝箱の中から見つかったものでな、魔防をあり得ない程上げることが出来る高性能な服さ、現にさっきの遠距離攻撃だって、本来は心臓をごっそり持っていかれるはずだったのに」
そう言ってセルツは自らの血だらけの胸を見せつけた。
「傷つくだけで済んだ、これを着ていれば、あの竜巻に巻き込まれても竜巻の衝撃波で盛り上がる土によって、地面に埋もれるだけで済むだろうな」
セルツはなぜか、笑顔でマミラにそう言った。
「…」
マミラは意味が分からないと言う感じにセルツを見上げた。
「…なぜ…なぜ私を助ける?理由でも…あるのか」
痛みに途切れ途切れになってしまう口ようで、マミラはセルツに向かってそう言う
「いやは…簡単な事だよマミラちゃん」
セルツはマミラに向かってその理由を言う
「君に、惚れたからさ」
「なに…」
マミラは良く分からないと言う感じに言う。
「なんだ…一体、突然、お前は本当に訳が分からない奴だな、いいか、この依頼を受ける前は、私とお前は赤の他人だった、お前が私に惚れる要素としたら、私の容姿くらいか?だとしたら哀れ…」
マミラはセルツに向かってそう呟く
「君は…本当に分かってないね」
セルツはなんだか残念そうに、マミラに言った。
「な?」
マミラはそんなセルツの言葉に驚いたのか、そんな声を上げた。
「この顔をみてくれ」
セルツは自分の血でぬれた手で、自分の顔を指差しながらそう言う
「…」
彼が指差した顔は、何の影響なのか、醜くゆがんでいた、いわゆる奇形とも言える顔であった。
「…この顔はな、生まれた時からそうだった…」
セルツは言った
「…昔からそうだった…俺はこの顔のおかげで虐げられ、差別され、軽蔑された」
セルツはさらに言う。
「現にそうだっただろう?お前以外の護衛たちは、俺が話しかけても、何にも反応しなかった、命令しない限りな」
セルツはなぜか悔しそうに言った。
「だがな、この旅の間、お前だけは違った」
「…」
マミラは目を見開きながら、黙って聞いていた。
「お前は、俺がなけなしの勇気をもってして話かけたら、喜ぶように返してくれた、久しぶりだよこんな会話がスムーズに進んだのは、素晴らしかった…」
セルツは言い続ける。
「…だからな、生きてほしんだ、君に、これからも生きて行っても正直マシな思いをしないであろう俺より、容姿に恵まれ、これからも素晴らしい思いで人生を過ごしていけるであろう君に」
セルツの歪んだ目からは、いつの間にか潤んでいた。
「…」
マミラはその顔を驚きながら、ただただ黙って聞いているしかなかった。
「俺は幸せ者だな、君みたいな人の身代わりになれて…本当に」
セルツはマミラの体に自らの服を着せながら、そう呟く。
「…」
マミラの頭の中は混乱していた、それがどうしてなのか、マミラには分からなかった。
「…セルツよ」
そしてマミラはその混乱する頭の中で、つないで言葉を、今にも迫ってきそうな竜巻の目の前で、セルツに向かって言った。
「…すまない、本当に…すまない」
なぜか、マミラはみずからの口が勝手に動くように、その言葉が出ていた。
「…」
終始、なぜかセルツはそのマミラの言葉を聞いていても、笑顔であった。
「…ありがとう、セルツよ…私はお前の事を忘れないだろう、すまない、そしてありがとう」
「…どういたしまして」
その言葉を言ったセルツはやっぱり終始笑顔で、その笑顔と共に、セルツの体は、竜巻により、引き裂かれていった。
「…対象のギルド支店長は死んだ?」
ベアトリーチェは竜巻によって荒れ果てた目の前の大地を見ながら言った。
「…ああ、にしても俺の攻撃を察知できるやつが居たとわな、なかなか骨のある奴が居たもんだな」
ジューコフはベアトリーチェの言葉に答えながら、そう呟いた。
「…敵に感情移入、ですか、直ぐにその感情は消してください、じゃまです、出来るだけ早くね、それと、目標の敵である支店長の死を確認したのなら、もうここには様はありません、直ぐにシュートラスギルド支店に行き、直ちに資料を奪取しますよ」
ベアトリーチェは機械的にジューコフに向かってそう言った。
「…チィッ、うるせー奴だな、分かってるさ」
「では、行きますよ、ジューコフ」
「ああ」
そういって、二人は虫の鳴き声がいつの間にか聞こえなくなった暗い道を、シュートラスに向かって歩き始めた。
…ぼこ
かれら二人が去ってから十分くらい立ったころ、竜巻により荒れ果てた地面がちょうど人の大きさと同じくらいに盛り上がった。
「ぷはっ!!」
土の中から出てきたのは、案の定、セルツからもらった魔防御底上げのアイテムを装着した、マミラの姿であった。
「…奴らはもう完全にさったみたいだな」
マミラはあの二人の気配を感じとれない事を確認すると、そう言った
「…ふむ、体に異常はないみたいだな」
マミラは所々かすり傷が有るぐらいは別に大した事が何ことを確認すると、そう言う。
「…右足以外はな」
しかし、やはり右足はポッキリと、無くなっていた。
「…大精霊よ」
マミラは胸に手を当て、自らの膨大の魔力を、大精霊の名と共に、自らの体に込めながら、呪文を唱えた。
「…我が体力を贄に、我が損失を埋めたえ…」
ふわ…
そういうと突然、マミラの体と、半径5五メートル位が光ったと思うと、それと同時に、マミラを中心に直径15メートルの魔法陣が描かれた。
きゅきゅきゅきゅ…
そんな虫のざわめき声の様な音と共に、魔法陣から光の粒?が飛び出し、マミラの無くなった右足に集合する。
「…くぅ」
どうやら痛むのであろうか、集中している顔にゆがみが生じたが、構わずマミラはこの魔術を続ける。
ふわわわわ
徐々にその光の束が人間の足のようになって行った。
「…」
マミラは集中する
そして…
“ふわり”
と、そんな軽く、柔らかな音と共に、光の束は弾け、代わりにそこには、元の白く、細い、女性の美しい足が有った。
「…ッ!!はぁ…はぁ…」
その事が確認される、マミラは突如シャトルランをやった後の様な学生のごとく荒い息を吐いた。
すうぅ…
そして、それと同時に、マミラを包み込むように展開していた魔法陣は、完全に消えてなくなった。
「…はぁ…はぁ…ふぅ…」
何分か立つと、落ち着いてきたのか、荒い息が、弱まってきた。
「…」
その荒い息が止むと、マミラは、ふと、空を見上げた。
そこには、とても美しい、満天の星空が輝いていた。
「…」
その輝く星空をみて、心や澄ませたマミラは、ふとこう言った。
「…不思議なものだな、人間と言うのは、私でさえ…混乱してしまうほどに」
マミラはいつまでも、夜が来るたびに、永遠に輝き続けるであろう星空を見ながら、そう呟いた。
「…」
真はとぼとぼと、ソラと共に、シュートラスのダンジョン前に無事、脱出用クリスタルで出できたのだが、どうやら気分は最低ランクのようであった。
「…ああ、あれほど探したのに、ちっとも見つからんとか、可笑しすぎるだろマジで、大人しくギルドに金を支払って、諦めた方がいいんじゃないか?」
真は両手をだらんと投げ出すようにぶら下げながら、ソラを見ながらそう言った。
「…うん…可笑しいわね」
「なにが?」
真はソラのその言葉に脱力感バリバリの声で、何処か可笑しいとこでもあったのか?と言う感じに言った。
「…うん…なんていうかね」
ソラは考える人みたいに右手を顎に持って行きながら言った。
「幾らなんでもあり得ないの、何回も連続でからっぽの宝箱が出てくるだなんて、それに例え出て来たとしても刃こぼれを起した剣ばっか…」
ソラは真をみながら、今までの事を振り返る。
「え…じゃあなんだ?なんか陰謀でもあったとでも言うのか」
真は口を曲げながらそう言う。
「…分からないけど、現状ではそう言うしか、だって、確かにお目当ての薬草なら、これくらい出てこなくても不思議に思わないけど、普通なら刃こぼれを起した剣より高価な、通常の剣とか、回復ポーションとか、出てきても可笑しくないの、でも今回、そんなのこれっぽちも出てこなかった…」
「…」
真はそのソラの言葉を、目を点にさせているみたいに見つめながら聞いていた。
「…じゃあどうすればいいんだソラ…俺たちは」
真はもはや考える力が残っていないのであろうか、ソラにまる投げする様に言う
「うん…とりあえず、一度シュートラス冒険者ギルド支店に戻りましょう、もしかしたらギルド職員なら何か知っているかもしれないし…それが一番無難だわ」
「…そうか」
真はまあそれが一番無難なのかもしれないのかな…とあまり考えない頭でそう思った。
「うんじゃあ、ホテルに帰って、夕食食って、たっぷりと睡眠を取ったあと、明日シュートラス冒険者ギルド支店に行こうぜ、じゃあそういうこと…」
「なにいってるのよ真」
「え?」
真は突然自らの言葉を遮ったソラに驚きの声を上げた。
「これから行くわよ、ボルトさんやエカーナさんを置いてきたままだし、この前の件についても、にか情報を掴めてるかもしれない、明日なんて、なにバカみたいな事いってるのよ!!」
ソラは真の背中を叩きながら、真達が泊まるホテルの方向ではなく、ジュートラス冒険者ギルド支店へと続く道へ、真を押す。
「…にこ」
笑顔で
「…」
真は言葉も出ないまま、ソラに引きずられるかのように、シュートラス冒険者ギルド支店へと、連行されていったのであった。
大本営(笑)
面白そうなので、この世界ではギルドの最高機関として出してみました。