朝の突入、そして再びダンジョンへ
ちょっとばかり、夜の寒気が未だに残り、吐息も白くなっている異世界での8時前後、現代日本でもこの時間は騒がしいが、やはりと言うか、異世界でもこの時間は騒がしかった。
しかも異世界の人たちは昔の人と同じように早寝早起きらしく、すでにこの時間にはシュートラス冒険者ギルド支店前には、依頼を受けようとしているのであろうか、数多の人間がすでに大量に集まっていた。
しかし、その依頼を受けようと集まっている人々、もしくは他種族たちとは、ちょっと違った要件でこのシュートラス冒険者ギルド支店に来た者もいた、その一人として、何やらため息をつきながら虚ろ下に目を擦って眠たそうにしている、黒髪黒目の異国風の男が挙げられるであろう、そして、その隣にいる青髪青眼の少女も…
「…こないな、ギブソンさん」
そんな黒髪黒目の異国風の男、山崎真が、そんなストレスを自らが吐く白い吐息に込めながら、ふと呟いた。
「ホント…来ないわね」
その言葉にこたえるように青いロングヘアーの少女、ソラも続く様に言った。
因みに、何故彼らがこうして朝早く寒いなか、こうしてシュートラス冒険者ギルド支店に突っ立ているのか、それは、真が武器屋の店長こと、ギブソンさんとその幼馴染、エカーナさんとの約束があったからである。
あの時、真はついつい急ぐためにと、適当に生返事をしてしまったものの、しっかりと約束を覚えていたのか、返事してしまった物はしたかないと言う事と、一応はソラが泣きながらさまよっていると言う情報をくれたことへの、せめてもの恩返しという事で、真は結局相棒であるソラの了解を得て、こうして集合場所である、シュートラス冒険者ギルド支店へと足を運んだのであった。
「…何か疲れて来た」
因みに、遠い目をしながらそんな事を呟いている、今の真の姿は少々、いつもとは違っていた、見かけこそ現代日本から飛ばされた時の服を着ているが、いつもと違う点は、頭に88式鉄帽をかぶっている点が挙げられる、是はもしもの時の防御策とも言うべきものとして使っているのである、なら、ボディーアーマーを来てりゃあいいじゃないか、と言う所に行きつくが、実はボディーアーマー、結構重たいのである、力はないが精神力はある真にとって、肉体的苦痛をその膨大な精神力で補う事が可能であるが、それをすると、後で筋肉痛になってしまう事に気がついたので、真曰く「戦闘時以外にあまり着たくない」とのこと、今も筋肉痛で所々痛いのだとか、そして真の腰には、服で隠してあるが、西部劇よろしく、拳銃っぽいのが収められていた、そうこの拳銃っぽいもの、せっかくレベルが上がったのだからと召喚した、新しい武器である、M1897ショットガンである。詳しい説明はのちほどで。
「…あ」
その時、何か見えたのであろうか、ソラがふと呟いた。
「あれ…私たちの探している武器屋の店長じゃない?」
「お!ようやく来たか…ってえ…」
真はようやくやってきたボルトの姿を見て、思わず喜びの笑みを上げたが、そのギブソンの姿に絶句した。
「…なにあのマンガみたいな棍棒」
そう、ギブソンが持っている物、それは棍棒?とハテナの文字がついても可笑しくはないほどデカイ棍棒をもってきたのである。
大きさはおよそ3メートル、太さは50センチはあろうかと言うほどのデカさである、安全策なのだろうか、なにやらぶ厚い皮で覆われているみたいであるが、もしかしたらその分厚い皮を取ったら、その棍棒は、真の直感では恐らく全身トゲが生えているのだろうと、すぐさま察したのであった。
ちなみに、やはりと言うか、そんな恐ろしーもん持っているギブソンは、案の定、周囲にいる人たちから避けられていた。
「おう!真!すまね!!こいつを準備してたら遅くなっちまった!!なにせずっと何十にも鍵をかけた倉庫の奥に仕舞っておいたままだったしな!本当にすまね!!」
真に近づきつつ、そう言って頭を下げるギブソン、しかし、その実態は、毎度のことながら余りにもの大声のせいで、怒鳴っているのか誤っているのか分からなくなってしまうような…とりあえずそれと二メートルもの体格のせいか、カツアゲでもしているとでも見違えてしまう様な光景でもあった。
「ひぃ…」
ヒョイッと、怯えたのであろうか、小動物のごとくソラが真の背中に隠れる、そんな所に隠れてもあんまり意味がない様な気がするのだが…真は自らの背中に隠れているソラを横目で見ながら、そう思った。
「ん?おっ!ソラちゃんじゃないか、良かったなお前仲直りできなのか!!ハハハ、良かった良かった」
ドンドンと、真の肩を叩きながらそんなことを言うギブソン、ちょ…痛いから、少し位手加減しろよ、そう思う真であった。
「…とりあえずギブソンさん、なんすかその棍棒みたいな物は、戦いにでも行くんですか?」
真の背に隠れてしまったソラとは正反対に、3メートルもある様な棍棒を前にしても、別段戸惑いもなく、いつも通りに真はギブソンにそう言った。
「おおォ!!この棍棒を持っていても、お前は俺を恐れないのか、うん!!良い良い、やっぱりマコト殿はどでかい肝っ玉を持ってんな、ハハハハ!!」
再び笑いだすギブソン、良いからささっとその棍棒を持ってきた意味を言ってほしいなと、真は思った。
「それはね、脅しのためによ」
その声と共に、今まで姿が見えなかったエカーナが現れ、ギブソンの隣に並んだ。
「あっエカーナさん、脅しってど言う意味ッすか」
真は突然現れたエカーナに驚きはしながらも、とりあえず、エカーナにそう言った。
「へー、ふふっ、アンタらしい意見だね、いい少年?物事を聞くにはね、ただ普通に聞きに行くより、武器を持って言った方が、相手に圧力がかかって聞きやすいだろう、いわゆる抑止力ってやつだね、通常ギルドみたいな大きな組織相手に個人が少しでも対等に意見し合うためには、やっぱりそう言うのを持っておかないといけないのは、当たり前な事なのよマコトさん」
「…」
抑止力ね…まぁ、ここは異世界なのだし、そう言うのが必要だと言う思想は、現代日本とは大きく違うのかもしれない…ギブソンが持っている棍棒を見ながら、真はそう思った。
「さあて、一通り質問は終わったみたいだし、後はソラちゃんとの自己紹介、くらいかしら」
真の納得したような顔を見た後、エカーナはそう言い、真の後ろにいるソラの元へと、歩いて行った。
「さて…では行こう」
「…」
とりあえず、あれこれと自己紹介とかが終わった後、少し間を置き、ギブソンがそう言った。棍棒を振り回しながら…
「ちょ…何だあれ」
「なんだなんだ?だれだあれ?」
「あれ…あれってあそこの武器屋の店長さんじゃ」
「…」
そのためなのか只でさえ目立っていたギブソンが、その目立っていた棍棒を余裕でバットのごとく振り回しているためか、周りの人たちが痛い目でギブソンから離れて行く…正直俺も離れたいよ、怖いという面ではなく、恥ずかしいと言う面で、真は遂に自分にも向けられ始めた視線を感じながらそう思った。
「突入!!!」
ガッ!!と、ギブソンはギルドへと投入した…
「…」
因みに真は突入できなかった、何故かって?恥ずかしいからに決まっているだろう、因みにソラも、エカーナさんも突入していなかった、やっぱり皆もそうなんだなと、一人で突入していくギブソンの背中を見ながら、真はそう思った。
それからはもう大変な騒ぎであった、受付の人がさっきのソラのごとく震えあがっちゃってまともに口を開いてくれず、挙句の果てにはその受付の人をどかしてギルドの奥へと入って行くギブソン…とりあえず結論から言うと、どうやら今このギルドに居る彼らは、現状ではギブソンの言う、ギルド陰謀論とか言う事など、まったく知らないみたいであって、唯一知っているっぽいシュートラスギルド支店長さんも、出かけていて夜まで戻らないらしい、そんな結論を、真はギブソンの乱入により騒然としたギルドの中で、他人のふり他人のふり…をしながらそう思った。
「…で、どうしようかソラ」
真はふと呟いた。
「うん…私も分かんないよ」
「…」
はぁ…と真もため息をつきながら、それもそうか…と思っていた。
「とにかく、ギブソンさんも、エカーナさんも、ここで夜までギルド支店長を待つ構えみたいだし、もう私たちの役目も終わったんじゃない?」
「…それもそうか」
真は奥でギルド支店長さんを待っているであろうギブソンとエカーナを思い浮かべながら、そう呟いた。
「だけど、このままホテルに帰るだけじゃあ、なんだかダメだと思わない」
しかし、等のソラはどうやらこのまま帰るだけなのはおきめさないように言った。
「…じゃあなんかするの?」
「ギルドの掲示板に張ってある、依頼を受けてみましょうよ」
ソラは掲示板の方向を指差しながら言った。
掲示板に張ってある依頼と言うのは、この世界の冒険者の仕事の一つであるらしい、真は横長にそしてそこに大量に貼られてある依頼と思わしき紙を見ながらそう思った。
この様に依頼が書かれた紙を依頼届けと言って、とりあえずそのような、依頼届けとかいう紙にはまず一番上にランクが有って、それぞれGからSSSまであるらしく、自らのランクと照らし合わせて、その依頼内容を見極めて、自分で選ぶらしい、そう真は思った。
因みに別に真達がGランクだからと言って、Gランクの依頼しか受けれないと言うわけではなく、基本5ランク位上の依頼でも受けれるらしい(例外はあるらしいが)といっても、基本身の丈に合わない依頼を受ける人は、ごくごく少なく、精々どんなに欲張っても、自らのランクより3くらい高い依頼を受けるのが当たり前らしい、それにデメリットが有って、通常自らのランクよりも依頼を受けた場合、その依頼に失敗すると、罰金が発生する上、ランクのポイントまで減少するらしい、所謂、防止策と言うやつみたいである。それでもごく稀に身の丈に合ってない依頼を受ける人もいるらしいが、その人たちの末路は知れているらしい、真はそんな人たちの末路を思い浮かべながらそう思った、因みに例外もあるらしい。
「う~ん」
真は唸りながら依頼内容が書かれた依頼届けを見た。
洗濯を手伝って欲しいと言う家庭的な物から、高ランクであるが、ダンジョン何階まで一緒に来てほしいとの依頼と、いろいろとカオスな様子を出している。
「ねえねえ真、これなんかどう?」
っと、真がそんな思考に陥った隙を付いたように、真の目の前にソラが言う依頼届けを見せながらそう言う。
「おっと…うん…なになに」
依頼主 メリーヌ ランクE
母の病気が悪化してしまったんです、どうかダンジョンで取れる、コースラスの薬草を取ってきてほしいです。お願いします。
銀貨 一枚
「…なんとまあ、悲しい様な」
真は依頼内容を見ながらそう思った。
「…真、この依頼内容をみて、何とも思わないの?」
しかし、何故か真の反応がそれだけではお気に召さないのか、ソラが腕を腰に組みながらそう言う。
「え…うん…別に可哀そうな内容以外は何もない様な」
「はぁ…まあ真は異世界人だし、それもそうか…いい是はね」
ソラは依頼内容の銀貨一枚、という場所を指差しながら言う。
「お礼金額が少ないの」
「へ…どう言う意味」
真は?の文字を受かべながらそう言う
「だから、通常Eランク相当の依頼内容だった場合、平均して銀貨十枚が相当なの、しかも、このコースラスの薬草って言うのはね、ダンジョン15階の奥にある宝箱の中から、稀に取れるもの、つまりEランクでもかなりレベルの高いミッションなのよ、ふつう、こう言う、依頼内容が難しい上に、報酬が異常に少ない依頼内容が書かれた依頼届けと言うのは、普通、掲示板の枠の無駄遣いだとして、ギルドの職員が即座に捨ててしまうんだけど、今の騒動の中で捨てるのが遅れてしまったものなのかも、奇跡的張られてあったわ」
ソラが依頼内容の紙をかざしながらそう言う。
「…はぁ…それでソラはその依頼を受けるのか?」
真はそう言った。
「…良い真?こう言う依頼内容が難しくて、報酬が極端に無い依頼を達成した場合、達成したパーティのランクのポイントが通常より多くなるのよ」
ソラが微笑み下にそう言う。
「なるほど」
なるほど、ちゃんとメリットみたいなものあるみたいだなと、真は思った。
しかし、同時にちょっとした疑問も巻き起こったのであった。
「へ…じゃあ別にそれなら外さなくたって、誰かしてくれそうな気がするが…」
「それは無いわね、幾ら多くなると言っても、通常のEランクの人たちのは、こんな依頼を受けるぐらいなら、依頼を重複した方が遥かに楽で多くのランクのポイントが上がるの、それに、特にこんなある特定の物を探すって言う依頼は地味であまり人気がないと言うのも、理由の一つかしらね」
「…はぁ」
ちなみに依頼は重複出来るらしく、現に依頼届けを数枚同時に持っている人だって見かける、しかし、重複するにも制限やデメリットが有るらしく、依頼を達成する為の時間制限が設定されたり、それをやりそこなったら、やはり罰金と、減点があるらしい。
「つまりなんだソラ、俺たちはどうせ金くらい一杯持っているし、それに俺たちは最低ランク、減点される事はない、だからこの依頼を受けてみよう、と言う事か?」
真はふと浮かんだソラの考えを察したようにそう言った。
「そうそう、それに、真の強さなら、15階を冒険するくらい大丈夫でしょ、私は大丈夫だと思うわ」
依頼を届けの紙を押しつけながら、ソラが言った。
「…大丈夫なのか、またダンジョンで男魔術師みたいなやつに出会ったり、それに、この依頼なんだか稀にしか取れない薬草を取らなくちゃいけないんだろ、幾らもしもの時のお金が有るからと言って、なんだか乗る気が」
「もう…大丈夫だって、幾らなんでもこの前みたいな事はあるはずないし、それに」
ソラは言った。
「人助けよ、人助け、それとも真はメリーヌさんを見捨てるの?」
ソラがふてきな笑顔を浮かべながら、真に向かってそう言った。
「…それもそうか」
真はあった事のないメリーヌちゃんの顔を浮かべながら、(ちょっとばかりニヤニヤしたのは秘密である)結局ソラの提示した依頼を受ける事にしたのであった。
「まったく、何なのあの大男…ああ、事務所がメッチャくちゃじゃない、これであのお男と女が言っている事が戯言だったら、賠償金ものね」
ギルドの職員なのであろう、緑色の瞳に、黒ずんだ青色の髪をブロンドにした、20歳くらいの女性が、あの大男に愚痴を言いながら散らかってしまったギルド内を整理しながら言う。
「でもキーマさん、もしあの大男の人たちが言っている事が本当だとすれば、大変よね、もし本当だったら私たちにも影響が出るのかな」
キーマと呼ばれた女性の隣で、ちょっと弱めな声をだすのは、眼鏡をかけた、茶髪の髪をみつあみにした15歳位の少女が言った。
「そんなわけないじゃない、ああいう奴っていうのは自分こそが最強という事を示したいだけの大馬鹿もの以外にありえないわ、かけったていいわね、そう思うでしょソーシャ」
キーマと呼ばれた女性が自らの言葉に答えた隣の少女、ソーシャに言った。
「ぅ…んそうかもね、キーマさんが言う、そう言う人なのかもね…」
「でしょ、本当に最悪な奴…ってあ、誰か依頼を申請に来たわよ」
キーマとソーシャは会話していたが、途中、やってきた男女二人組の姿を見ると、すぐさまいつも通りの接待の姿勢に直した。
「こんにちは…あの依頼の申請ですね、ここにギルドカードと、依頼届けを提出してください」
ソーシャはが少々散らかっている机の上に、ギルドカードと依頼届けを置く様に促しながら言った。
「あ…分かりました」
そういい、依頼届けを出してきた、ちょっとばかり若い少年、17歳くらいだろうか、異国風の黒い瞳と髪が特徴のその人は、いそいそと依頼届けとギルドカードを提示した。
「ちょっと…真、私のも出さなくちゃ意味ないでしょう」
っと、そこで後ろの水色のロングヘアーをした、透き通るような青瞳をした少年と同年代とおもわしき少女が、注意しながら、少女のギルドカードを少年に差し出しながら言った。
「あ…そうなのか、すまんすまん、はい、俺とソラのギルドカードです、こっちは依頼届け」
少年がにっこりと愛想笑いをしながら、ギルドカードと依頼届けを出した。
「…あ…ありがとうございます、ではさっそく申請に入ります」
ソーシャはいつも通りに二枚のギルドカードと依頼届けを見通しながら、しかし突然なにか可笑しい所に気がついたのか、「は…?」と、声を上げた。
「ねえ、キーマ…これ見てよ」
「うん?なになに」
「是れ…この人たち初めて受ける依頼のなのに、Eランクのしかも難しいのを選んでいるの…それに報酬が極端に少ない依頼、更に見てこれ」
そういってソーシャは異国風の男のギルドカードのあるを指さした。
「え!!この人の強さやばくない、ゴブリン以下じゃない」
異国風の男の”強さ”に余りにも驚いたのか、ソーシャがそう言う。
「…でしょ…私よりよわい」
「ほんと…ちょっとした子供よりよわいわ…これは注意を促した方がいいわね」
「…そうかも」
「あたりまえよ、ほら、さっさと注意をうながして、きっとこの少年は夢見過ぎなのよ、このメリーヌちゃんは僕が救うんだって感じに、だから、ちゃんと注意しなくちゃ」
キーマが、ソーシャに対して、目の前の少年に対して注意をするように促しながらそう言う。
「よし…じゃあ言うね、あのすみません」
話がまとまったのを見計らって、キーマは目の前の異国風の男を説得すべく、行動に移った。
「あ…はい」
少年はちょっとたじろいたあと、おどおどと返事をした。
「すみません、あ…あの、貴方のギルドカードを拝見させてもらいましたが、とてもこの依頼を達成できる強さには見えません、この依頼、破棄した方が良いのだと思いますが…」
ソーシャは一応ギルドの受付係として、もし無謀な事をしようとしている人物が居た場合、その自分には一応の警告を与えておく事、という規定が有ることと、キーマの助言にそいながら、そう言った。
「…ああ、大丈夫ですから、はい」
あ…ダメだこの人、ソーシャはそう思いながらこの異国風の男の格好を注視した。
見かけも貧相だし、どう見ても鍛えている格好には見えない、武装らしきものだって見当たらない、絶対にこう言う奴がダンジョンに行ったら即刻終わりそうな人である、もう少し説得した方がいいのかも、ソーシャはそう思いながらもう一度目の前の人物を説得することにした。
「はぁ…もう一度警告します、貴方の強さではとてもこの依頼を遂行することは不可能です、それに、知っていると思われますが、このような自らのランクより高い依頼を受け、失敗した場合、多額の罰金が科せられます、これが最後の警告です」
これ位警告すればさすがにあきらめてくれるはず、ソーシャはそう思いながら目のまえの男の反応を待った。
「…大丈夫です」
しかし目の前の人物は、そんな警告など気にも留めず、大丈夫です、の言葉で押し通したのであった。
(…はぁ…キーマの言う通り、あの大男のみたいな、ダメな人って居るんだな、現実を理解せずに、こう言う人…自分は何でも出来るんだって人って)
ソーシャはため息をつきながら、もう諦めたと言う感じに、依頼を受理する事にした。
「う…ん、分かりました、警告はしましたからね…それでは依頼を受理します」
「なんかすみません、お願いします」
(…やっぱりなんだか頼りなさそうな男の人だな)ソーシャはそう思いながら依頼の受理に取りかかった)
「ああ、行っちゃた…あの男の人たち大丈夫かな」
ギルドの外へと歩いていく異国風の男たちを見ながら、ソーシャが気弱げにそう呟く
「さあね、戻ってこない可能性は十分あり得るけど、まあ生きて帰ってこれたとしても、泣きながら戻ってくる事になりそうわね…」
キーマが自信満々にそう言う。
「…っと、そうだ」
その時、キーマは何か思いついたよう声を上げた。
「ねえソーシャ、掛けてみない?」
「なにを?」
ソーシャは、キーマの突然の願い出に、若干戸惑いながらも、頭にハテナマークを浮かべながら、一体、何を掛けるのかを問いた。
「もし、あの人たちが、この依頼を達成してきたら、ソーシャは恋人を作らなくてはいけないとか…」
「へ…」
ソーシャはキーマの言葉に顔真っ赤にさせた。
「だってさ、ソーシャちゃん、可愛いのに彼氏の一人や二人居ないだなんて、ダメじゃない、人生の無駄づかいよ、だから、この掛けに、私が勝ったら、ソーシャちゃんは、彼氏を作らなくてはいけない、と言うのはどうよ」
ニヤニヤした顔で、キーマはソーシャに言う。
「な…な…じゃあ、キーマさんは、掛けに負けたらどうするんですか?」
「私?うん…じゃあ何処かの飲食店にでも行く時奢ってやるって言うのはどうかな?」
「え…なんだか掛け物が平等じゃない気が」
ソーシャがその掛け事の不平等さに不満げにそう言う。
「いいじゃない、だってあの人たちが依頼を達成してくる事なんてまずあり得ないんだし、これ位が妥当よ、それに、ソーシャちゃんの彼氏を作るらせるためには、これくらいしなくちゃね…」
キーマはのどが渇いたのか、傍にあった水を飲みながら言った。
「…もう…余計な御世話…」
ソーシャは頬を膨らませながら、プンプンと怒っているのか、ただ単にいじけているのか分からない感じに、そう呟いた。
「なんだか警告されたけど、結局大丈夫なのか、本当に…」
無事に依頼を受理できた真達は、まさかこのままダンジョンに行けるはずがないので、一旦武装を整える為、ホテルに帰ったのであった。
しかしながら、ホテルに無事に付き、ほっとした後、真は今更ながら、心配なのであろうか、ソラに向かってそんな事を言った。
「はぁ…大丈夫よランクは一応私たちより2つ上くらいだし、もしもの失敗したときのお金だってあるし、もし危険だったら逃げればいいし、心配しなくて大丈夫よ、それより、さっさとダンジョンへ行くための仕度をしましょう」
「…へいへい」
真はそんな返事をボソッと言いながら、ダンジョンへ行くための準備をし始めた。
「…よし、これで良し」
真はボディーアーマーに着替え、ヘンリー銃を持ちながらそう呟いた。
「…医療具良し、弾薬よし、ダイナマイトよし、M1897ショットガンよし…と、ショットガンの方は残り弾数に心配が有るけど、したかないか」
一応召喚数は残り一個あるが、是は前の時と同じように、もしもの時の為に残しておかないといけなしな、真はそう思いながら、リュックを背負った。
「じゃあ行こう、真」
真はその声が耳に入ると、すっと…その声がした方向、ソラの方向を向いた。
「よし…じゃあ行くか」
二度目のダンジョンへ、真はそう思いながら、ソラに向かってそう言った。
「ふむ…なるほど…私の表上の精鋭であるビョーシェ騎士団は、やはり、ここまで来るのに一週間…もしくはそれ以上掛かると言うわけか…」
ここは何処かにある洋館、さらにその洋館の何処かになる部屋の中で、ヤークト・ロウン、または、ビョーシェ商人ギルドの長が、目の前に居る部下と思わしき男から、現在の彼の表上の精鋭である、ビョーシェ騎士団の現状を伝えられていた。
「はい…幾ら精鋭である彼らとて、突然の拾集です、幾分時間がかかるのはしょうがないかと…」
ロウンの部下である男が、自らがビョーシェ騎士団に関しの報告を、つぶさにロウンに報告した。
「そうか…まあしたかあるまい、それと、現在シュートラス医療所にて隔離中のドゥットルーズ一味の状況はどうだ?」
「はっ、現在のドゥットルーズ一味の現状ですが、ご心配ありません、食事のとき以外はすぐさま寝てもらっています、正直このまま殺してもいいのかもしれないと思ったのですが、どうでしょうか、もしかしたら脱出される可能性も否定できないので」
「ふむ…確かに現時点で殺すと言う選択肢もあるが、もしもの時の対策だ。もしもお得意様の貴族等がドゥットルーズの容態を見せろとか言った場合、死んでいては見せることはできないのでね。そのための対策として、生かしておくのも重要なことであるしな」
ロウンは自らの部下を見ながらそう言った。
「はっ了解しました他に何かあれば…」
「いや、別に他にはないな…そうだ」
その時ロウンは何かピンッと来るものがあったのか、付け加えるように自らの部下にこう言った。
「優先度は低くてよい、ヤルトーの奴らの事を、ちょっと調べてくれないか?」
「真!あそこにゴブリン!!」
「お…いたいた、お得意様のゴブリンだぜ!」
真はソラのその言葉を聞くと、まるで反射のごとく、ガチャッと真はすぐさまヘンリー銃を構えた。
現在、真達が居るのは、シュートラスのダンジョン3階である、前回は例の騒動のせいで全くと言っていいほど階を進めることはできなかったが、今回はそんなことなど無く、ダンジョンは通常運転であり、この状況下なら、もともと近代兵器を使ってのアウトレンジ戦法ともいうべき方法で、接近せずともモンスターに致命傷を与える事の出来る真にとって、ここまでいとも簡単に来る事ができたのは、当たり前の事であった。
「…」
真は構えたヘンリー銃をソラが見つけたゴブリンに向けて照準を付ける。
ダンッ!!
いつも通り、いつの間にか自動的に流れてくる?様な感じに来る直感的なものを頼りに、真は引き金を引いた。
ドサっ…
そして、真がその引き金を引いたさいに出た乾いた音と共に、ゴブリンは頭に風穴を自分でも気づかずに開けられ、何が起こったのかも分からずに、絶命した。
「よし…なるべく弾は節約しなくちゃな…」
真はゴブリンが見事その額に風穴をあけ、絶命したのを確認すると、ふとそう呟いた。
「うん…それもそうだね、当たり前だけど、真の残り召喚数は1しか残っていないんだから、丁寧に扱わないとね、それに、たまにへんりーじゅうを使わずに、私が倒すから、ゴブリンくらいならレイピヤやファイアーボールのような初級魔法でも簡単に倒せるし、それに、前と同じ理由だけど、実戦経験で鍛えなくちゃね」
ソラが真の言葉にうなずきながらそう言った。
「…そうだな…じゃあソラ、次は頼んだ」
真はヘンリー銃の弾を装填しながら、ソラの言葉にそう呟いた。
「ありがとう、あ…真」
その時、ソラは何かに気がついたのか、ゴブリンが倒れた場所を指差しながらそう言った。
「ん?」
真はゆっくりと、ソラが指差した方向を見つめた。
「…お…ゴブリンの死体が消えて、何かある…」
真はゴブリンが有ったはずの場所に、何かが有る事を確認し、そう呟いた。
「あれは…はこぼれを起こした剣?」
ソラがその何かを見ながらそう言った。
(…そうみたいだな)
真は薄汚れた柄と、なんだかガタガタな刃をみながらそう思った。
「まあ、とりあえず行ってみようぜ」
真はそう言い、ゴブリンが倒された場所へと、歩いて行った。
「…うん、ソラの言う通り、はこぼれを起した剣だな」
真はゴブリンが倒された場所に立ちながら、直ぐ下に落ちているはこぼれを起した剣をみながらそう呟いた。
「ふん…なるほど」
ソラは下に落ちているはこぼれを起した剣を拾い、みつめながら呟いた。
「ドロップアイテムね、これ」
「え…」
え?是がドロップアイテム?真はそう思いながら、驚きの声を上げた。
「…え、是がドロップアイテムって奴?にしてもドロップしたアイテムがはこぼれを起した剣っていうのは無いんじゃないの?てか使えるのこれ…そうじゃなくても売れるの?」
真はふと浮かんだ大いなる疑問を、ソラに向かってぶつけた。
「うん…まあ…まず戦闘用には使えないでしょうね、精々使えるとしても、壊れたり、はこぼれが酷過ぎる剣を格安で引き取ってくれる所でお金に換えるぐらいしか利用価値はないわね、それか鍛冶師に鍛え直してもらうか」
ソラははこぼれをおこした剣を見ながらそう言った。
「…じゃあなんだ、このはこぼれを起した剣は、あまり使い物にはならないってこと?」
「まあ、そう言う物よ、所詮はG級モンスターなんだし、落とすものも、所詮はこんなもんよ」
「…」
真は初めてドロップという、現象に遭遇した事に歓喜していたが、そんな気分もソラの説明を聞いたら冷えて行ったのであった。
「そんなに落ち込まなくても…一応、G級モンスターだって、こんなもんじゃなくて、時々良いもん出してくる時が有るから、そんなに落ち込まなくたっていいわ、ほら、行くわよ」
「…へいへい」
真はドロップしたアイテムをそこらにポイ捨てしたソラを見ながら、ふと浮かんだ疑問を呟いた。
「なあ、ソラ」
「なに?」
「こんな風に落とした剣とか、さっきまで転がってたゴブリンの死体って、どうなるんだ?」
真はふと、そう思った。
「…うん…よく分かってないけど、一般の説ではダンジョンに吸収されるとか、そう言う見解が一般的ね」
ソラは手を首に当てながら、考え下にそう呟いた。
「…そうなのか」
まあファンタジーだし、例え科学的要素があったとしても、昔の人が雷は神様のお怒りとか思ったように、そう考えるしかないだけかも知れない。
…まあ、ファンタジーな世界でこんなことを深く突っ込んでもしたかない、真はそう思いながら呟いた。
ちなみに募集した近代兵器はまだまだ出していく予定です。




