ダンジョンへの序章と、裏で進む陰謀
ダンジョン…
見た目は単なる洞窟であるが、通常洞窟とは月とすっぽんくらい違う、その洞窟は別名、モンスターの巣とも言われている、一説によれば、モンスターはダンジョンより生まれるとされ、外にいるモンスターは、まだ見つかっていないダンジョンから表れると言われている。
しかし、人々はダンジョンをこう呼ぶ、夢と希望の洞窟と…
なぜモンスターの巣であるダンジョンが夢と希望の洞窟で有るのだろうか…それは、ダンジョン内のモンスターは、人間などに倒されるとき、それと同時に出す、ドロップアイテムと言われるものが関係している。ドロップアイテムは、この世界に必要な物資などで構成されている、そのアイテムは、塩などの日用品から、剣などの武器類、魔道具などの、魔術間連に至るまである、そのため、得られるドロップアイテムなどにもランク付けがあり、例えば、コショウの様な滅多にない香辛料はAランク、現代の様に、木で出来た物ではないが、簡単に出てくる羊皮紙、これはGランクである。このようにSSSからGまであるとされている。そして、これらを入手するには、なにもモンスターを倒さなくてはならないということだけではない、他にもダンジョン内に何故か、忽然と現れる、宝箱によって入手できることだってある。
そして、話は元に戻るが、なぜ夢と希望の洞窟なのか、それはこれらをダンジョン内で入手し、売ることによって、生計を立てることができるからである、場合によっては高ランクのアイテムを入手することができれば、一攫千金になりうるからである。
文明レベルは中世ヨーロッパ(違うところもあるが)であるこの世界において、農民などは食べるだけで精いっぱいである、行動しなければ農民たちは一生ろくな生活ができないのである。
彼らにとって、ダンジョンに入って、一攫千金を狙う事は、まさしく夢の様な事なのである。そのために、農民の中でも腕の立つ者は、冒険者としてダンジョンを冒険する、また、この世界の人々のダンジョンに対する価値観が現代日本人とは異なると言うことも、原因の一つでもある。
さらに、ダンジョンの利点はそれだけではない、外と比べ、モンスターの出現率が有りえないほど高いので、ただ純粋に、力を求めたりするものも集まり、そして冒険心に駆られた物たちも集まる。
以上が、モンスターの巣であるダンジョンが別名『夢と希望の洞窟』と呼ばれるゆえんである、じっさいに、大きなダンジョンでは人が集まり、町が形成され、通称、ダンジョン町と呼ばれるものを形成することもある、シュートラスも収入の半分以上が、ダンジョンによるものである。
買い物を終えた後、ホテルに帰った真は、明日行く予定である、ダンジョンの事を思い浮かべながら、ダンジョンとは何なのかを頭の中で整理をしていた。
「で?明日ダンジョンに行くんでしょ?」
ソラがお化粧台にあった、ブラシで髪を溶かしながら言った。
「うん…まあこれからのことのためにも、まず力をつけないといけないし、ダンジョンの一階目は戦闘の初心者にとって、とても都合のいい場所らしいし、そろそろ、近代兵器操作術を体験してみないといけないしな、それにさ…」
真は何故か弄られたはずの自らの心の中に、浮かんできた事を言った。
「なんだか、ダンジョンって冒険心に駆られるしな」
「…」
「…」
一瞬間が空いた。
「…ふふっ攻撃力が4の癖に」
ソラが堪え切れないという感じに、控え目な笑い声をあげながら、そんなひどい事を言った。
「…それを言うなよ、それに俺は攻撃力だなんて関係ない、近代兵器の強さぐらい教えてやっただろう」
真は、今まで召喚した物の中で唯一武器である拳銃を見せつけた。
「はいはい、だけど真、たまが勿体ないとか言って結局いつまでたっても、そのけんじゅう、私の目の前で使わなかったじゃない」
「…うんまあ、それもそうだけど」
ソラの的確な質問に真はちょっとばかり言葉を詰まらせた。
「なんていうかその…この武器は扱いにくいというか、まだ俺はこの武器を完璧には使いこなせないんだよ、だから明日、他の俺の完璧に操作できる武器を召喚して強さを見せつけてやるから、期待してろよ!!」
真はとりあえずそう言った。
「はいはい、そのキンダイヘイキっていうのがどれくらい強いか、明日確かめていただきます、楽しみにしてるわよ」
ソラは笑顔で真にそう言った。
「…了解、そう言えばさソラ」
「ん?」
「このギルドカードに書かれてある、職業とか、どういう意味なのかわかる?」
真はこのギルドカードを手にした時、疑問に思ったことを言った。
「うん…なるほど、真は異世界人だし、無理もないか…じゃあ説明するね」
ソラはそう言うと、自らのギルドカードを提示した。ギルドカードにはこう書かれてあった。
ソラ
出身地 不明
種族 人間
職業 魔術師
魔力 100
攻撃力 18
防御力 23
魔防御 40
祝福 なし
加護 なし
ギルドランク G
「…」
真は自らのウインドウにものっていなかった魔力が出ていたのにちょっとばかり驚きながらも、とりあえず、自らの数値の劣等感に、愕然としたのであった。
「ほら、落ち込んでないで…とりあえず、このギルドカードの説明はね」
落ち込んで着る真を宥めながら、ソラはそう言うと、まず職業の欄を指差した。
「まず、職業なんだけど、有名なのは、剣士、魔術師、槍使い、弓使いとかが有るの、これらの職業を持てば、それぞれ、剣の使い手、魔術の使い手であるという事が、分かるの、特に使い手のない人には、なしって付くわね、因みに、複数持っている人もいるけど、それはもう才能の問題だからしたかないのよね、まあ、魔術師になるにも才能の問題だけど…」
ソラはいったん一息ついた後、また口を開いた。
「まあ、とりあえず、職業は自らの得意な物を表しているのよ、そして、自分がやっている、職業のことも指すの、例えば、町を守る騎士なんかは、自らの得意分野である剣士、そして自らの職業そのものである騎士、と言う感じにギルドカードに出てくるのよ、まあ、職業についてはこんな感じ、分かった?」
ソラは真がちゃんと理解できたのかを、確かめるべくそう言った。
「うん…まあ、つまり、職業と言うのは、自分の得意分野であるものと、次に自分が付いている、職業である、こんな感じ?」
「そう、職業については簡単に言うとそんな感じ、そして、他の、攻撃、防御なんだけど、これは名前の通り、攻撃はその人の力を表しているの、そして、防御はその人の耐久力かな?これが高いほど、攻撃を受けても耐えれることができるの、因みに、攻撃と防御はね、人間の中にある、気、と言うのが関係しているの」
ソラはいったん話を区切った。
「気と言うのを簡単に説明すると、通常この世界の生き物の中には、気と言う特別な力があって、この気を操作することによって、例え私の様な女性でも、男以上の力と防御を持つことだって可能なのよ、つまり、私のこの数値は、気を操作している時の力を表しているの、攻撃や防御を上げるには、如何にこの気を自分の体にあったように動かすのかが肝心なこととなるの…と言っても、そんな毎日気を使っているわけでもないし、それにこの世界の戦闘を主に行っている人たちにとっても、疲れるのよ、気を使うのって、だからいざとなったら時にしか使わないし、どんなに気を操るのが得意な人でも、気、のみでは、攻撃防御共に40くらいで、なかなか上がらないのよ、あまりにも上がらないうえ、気を使って戦闘したあとはあり得ないほど疲れるから、みんな気を鍛えるのを早々にやめて、力具を使って身体能力を上げているっていうのが現状だけどね」
「…」
「それに、魔術師の場合、攻撃と防御は、扱う魔法によって変わるの、例えば、攻撃的な魔法が得意であれば、それに準じて攻撃力が上がるし、防御的な魔法を得意とすれば、防御力が上がるの、例え気が弱くてもね」
ソラが追加するようにそう言った。
「…」
つまり、この世界の人間には魔力のほかに、おもに身体能力のみを上げる不思議な力、気、と言うのものが存在するのか…と言っても、それを操るのは至難の技らしいけど…そして、気には限界がある、と言う事か…
真はソラの説明を聞き、そう思った。
「気についての説明、分かった?」
「うん、まあ、なんとなくだけど、それで、その気と言うのは俺にでも使えるのか?」
真は今は魔力がないので魔法は使えないが、もしかしたら気を使って挽回可能かも!と思い、ソラにそう言った。
「…うん…異世界人に気が使えるかどうかは分かんないけど、多分使えるんじゃないかな」
「お!じゃあ、ソラ気の使い方を教え…」
「あ!気の使い方を教えるのは無理だから、気と言うのはね、個性があるの、だから他人から気の扱い方を教わっても、まったく上達しないの、こればかりは自分で取得するしかないね…」
「…がくん」
と真はうなだれた。
「ふふふ、まあ、とりあえずは次に魔防御、これは、魔術攻撃に対する防御の事、例えば、普通に切りつけるなら、魔防御がいかに高くても問題はないの、だけど、風の魔法を使った、例えばエアーカッターで切りつけるとなると、魔防御が働いて、攻撃が相手に効かないって事が有るの、いわば魔法攻撃に対して、特別な防御力を持っていることを指すの、ちなみに魔防御は気には関係なく、体内にある魔力によって上がったり、下がったりするの、分かった?」
(つまり、魔防御は、気と関係なく、魔力に関係するのか、俺の防御と魔防御が同じなのはそのためか…)
「…まあ、俺の世界にもこう言う概念があったからな…大丈夫だ」
「そう、じゃあ次に加護や祝福はね、いわゆる神様から特別にもらったり、ドラゴンみたいな、特別なモンスターや種族からもらえるの」
「え?神様?」
真はソラの口から出て来たその単語に、ビックリしながら答えた。
「うん?知らないの真?」
ソラもどうやら驚いた様子
「…いや、俺の世界にも神様はいるが、実在はしないのだが…もしかしてこの世界では実在するの?」
「…どう言う事?」
ソラがあまり理解できないような感じに、頭をかしげながら言った。
「だから、俺の世界の神様は架空上だけど、この世界には神様は実在するのかってこと」
「…」
「…」
「…つまり、真の世界には神様はいないってこと?」
「人によってはいると考えている人もいるけど、少なくとも俺は存在しないと思う」
時々、神様、どうかテストの点数が良くなりますようとか願うけどな、真はそう思いながら言った。
「…なるほどね…さすが異世界、魔法がないどころか、神様が居ないだなんて…いいわ、この世界において、神様がどういう存在なのか教えてあげる」
どうやら、この世界には神様は実在するようだ、真はそう思いながらソラの言葉を聞いた。
「まず、神様って言うのは、この世界には数多いるの、例えるのなら雷の神、トールの様な自然現象をつかさどる神、それと、特定の地域だけで信仰されている土地神とか、場合によっては、特定の人々や種族の信仰対象にされている、神ではないけど、龍とかだね、これらが神と言うのも、あと、悪魔とか、天使とかも、神様ではないけど、近い存在、これが、私たちの世界に実在する神様と、神様に準じたなにかなの、他にもあるらしいけど、さすがの私もこの世界のすべてがわかるわけじゃあないから」
「…」
とりあえず、この世界には神様とやらが実在することを確認した真であった。
「真、もうそろそろ寝るよ」
ギルドカードの説明がある程度終わったあと、どうやら、眠くなったらしいソラがそう言った。
「…なあソラ」
「ん?」
「せっかくこうしてホテルに泊まったんだからさ、もうちょっと起きてようぜ」
真は、携帯の時計の、8:00の部分を指した。
ちなみにこの世界にも時計がある、と言っても、真の持っている携帯のようにデジタル方式ではなく、アナログ方式の時計で、振り子時計が一般的らしい。
ちなみに、ソラはすでにアラビア数字を読むことができるのである、もう驚かねーよ、そう思う真であった。
「…ん?ちっとも遅くないけど…」
現代人にとっては、まだまだこれからだと言う時間帯だが、この世界ではそうではない、事実、このホテルに使われている照明器具は、なにやら、紫色の未知の蝋でできた、真の世界の蠟燭より、なぜか結構明るい蝋燭が主流である。しかし、それでも現代の電灯ほどではないので、昔の人のように、この世界の人たちはこれくらいの時間で寝るのである。
「…いいか、ソラ、俺たちの世界では17歳は普通早くても、11時ごろに寝るのが常だ、今までは碌な部屋もなかったから早めに寝ていたが、今はこの様に現代とほぼ変わらない部屋にいる、と言うことは…」
真は、ろうそくの光に不気味照らされながら言った。
「…ん?…と言うことは?」
ソラは頭に?を浮かべながら呟いた。
「…」
「ん?」
ソラは真が向いている方向を向いた。
そこには…ベットがあった。
「・・・・・・・・・・・・ッ!!!!!!」
ソラが突然驚いた様子になった。
「まままま…まさか、え?え?そんな、エロ…」
「カードゲームでもしようぜ!!」
ナニかしら勘違いしていたソラであった。そして、如何にも真らしい意見でもあった。
「よっしゃ!!あっがりー!」
ソラが、ダイヤの2とクローバの2を同時に捨て、そう宣言した。
「…なぜだ…なぜそんなにも強い」
ちなみに今やっているのはババ抜きである、やり方については、どうやらトランプの様な遊びぐらいなら、この世界にもあるらしく、天才なソラは、すぐさまやり方を覚え、いつの間にか教えていたご本人が連戦連敗であった。
「ふふふ、お主もまだまだじゃのう、なんちゃて」
ソラは鈴の様な声で、笑いながらそう言った。
「…もう寝ようぜ、疲れた」
「だめ、今度は七並べよ、もう、このトランプゲームって、楽しいわ」
「もう、マジ勘弁」
結局ソラがついに眠くなって終了した、11時まで連戦連敗し続けた真、哀れなり。
所変わって、これは真たちがトランプゲームで盛り上がっているころ、とある場所にある館の中、その館の中央の部屋に、二人の中年くらいの男性商人と思わしき人物が集まっていた。そして、その中年くらいの男性商人の片方は、あの文房具屋の店長であった。
「これは…素晴らしい、一体この様なものをどこで手に入れたのですか」
もう片方の中年くらいの男は、歓喜の声をあげながら、同時に自らの頭の中に浮かんだ疑問を、文房具屋の店長に質問した。
その中年くらいの男の前にいる、文房具屋の店長が持っていた物は、マジックペンであった。
「いえいえ、ビョーシェ商人ギルドの頭、ヤークト・ロウンさんが驚くのも無理なからぬ事、これは、従来の筆記用具とは似ても似つかないほど、高性能なペンです、私は、まじっくぺんなる物を複製することはできないかといろいろ分解して見たりもしましたが、まず、素材的に難しいという事に気づきました、このまじっくぺんを主にコーティングしている、木でもない、岩石でもない、つまり、このマジックペンは新物質で構成されているのです」
文房具屋の店長は、ビョーシェ商人ギルドの頭、ロウンの問いを受け流し、自らが持っている、マジックペンのすごさを語った。
恐らく文房具屋の店長が言っている新物質とは、マジックペンに使われているプラスチックのことであろう。
「確かに、そのような物質見たことがない、何十年も世界中を旅してきた私ですらもな…とりあえず、ヤルトーよ、商品を紹介して、私のこのまじっくぺんとやらに対する注目を上げるという意図も分かるが、それより先に、私はね、一体どのようにしてそのような商品を100本以上も手に入れたのかを、聞いているのだ」
落ち着いた様子で、ロウンは文房具屋店長…ヤルトーに対してそのことを聞いた。
「ロウンさん、今から言う事はとても信じられないとは思いますが、どうか、聞いてください、ビョーシェ商人ギルドのにとって、利益を上げる為の重要なチャンスなのです、信じられると誓いますか?」
「…いいだろう、信じよう」
ロウン言った。
「…実はですね、これをうちに持ってきたのは、別に、何処かの大商人でもなく、かと言って、国が新開発したものでもない、何の変哲もない、17歳くらいの男女が持って来たのだよ」
「な!!」
ビョーシェ商人ギルドの頭のロウンは驚愕の声を発した。
それはそうであろう、現代で例えれば、レーザー銃を17歳の男女が持って来た感じである、驚くのも無理はない。
「彼らはニホンとか言う国から来たとか言っていたが、聞いたこともない国です、おそらく何処か遠い果ての小国か何かでしょう、それから察するに、彼らはろくな護衛を持っていないのではないのか?と私は思いました、事実、密偵からの情報では、彼らは護衛の一人や二人も雇ってはいないのですよ」
「…つまりヤルトーよ、君は何を言いたいのだね、はっきり言いたまえ」
恐らくヤルトーの意図が分からないのであろう、ロウンがそう言った。
「分からないのですか?このような素晴らしい商品を、百本以上も持っている連中ですよ、詰まり、他にもまだまだ沢山、このまじっくぺんを彼らは持っているだろう、いや…きっとそれ以上ものも…持っているに違いない!!」
ヤルトーは右腕を握りしめて言った。
「まじっくぺんの様な物を大量に持っているうえ、まともな護衛が存在しない、これは、正直いって、チャンスではないか?奴らからまじっくぺんの様な素晴らしい物を奪えば、我々ビョーシェ商人ギルドの資金は潤い、莫大な利益を得ることが可能である、そう思わないでしょうか」
ほう、と、ロウンの口からため息が漏れる。
「つまり、ヤルトー、その少年少女から、まじっくぺんを奪おうと?」
「そうです」
「…しかし可笑しいな、もし、相手が少年少女だけならば、別に我々ビョーシェ商人ギルドに発表しなくともいいはずだ、あなたの部下たちで容易に片付くはず、利益もヤルトー、自分自身の身で独占できるのに、それとも、その少年少女とやらは、何か特別な力か何かでも持っているのか?」
ロウンがそのことを疑問に思ったのか、そう言った。
「ふふっそうですね、確かに相手がただの少年少女なら、別に私だけで片付きます、しかし、私は自らの利益を分散してでも、同時にやりたいことがあるのです」
「ほう…それは何ですか?」
「…3年前、私はある冒険者によって、私の所有する奴隷達が逃がされたのを覚えていますか?」
「ええ、確か、あの奴隷は不法奴隷でしたですね、そのために逃がされても文句が言えず、結局逃がされてしまった事件ですね、それが如何したのですか?確かあなたの奴隷を逃がしたパーティーは、相当の腕お持ち主たちで、とても貴方だけでは手出しできなかったはずでは?それで結局は仕返しをあきらめた」
「そう、実はそのパーティーが今回、このジュートラスの町に来るのですよ」
「…ほう、つまり何ですか、その少年少女から奪った高性能な物を分け与えてやるから、そのパーティーへの仕返しを手伝ってほしいと…」
「ああ、そう言うことだ、ビョーシェ商人ギルドの頭、ロウンさんならあの忌々しいパーティーを捕まえることだって可能だろう、そして、その報酬として、あのまじっくぺんを持っている奴らから奪った物で得られる利益の比率は、お前が7で俺が3だ、これでどうだ?」
「…いいのですか?それで…貴方にしては恐ろしいほど譲歩していますが…なにかそのパーティを捕まえなくてはいけない、理由でもあるのですか?」
「…利益は比率で7:3だ、これ以上のこと言う必要はない」
「…分かりました、では、さっそくその少年少女の捕縛と、あなたの復讐を手助けしましょう」
「…ありがとうございます」
ヤルトーは笑顔でそう言った。
「ちゅんちゅん」
何故か異世界でもお馴染みらしい、鳥の鳴き声と共に、真は起きたのであった。
「…」
もちろん、ソラが真のベットに潜り込んで、すやすやと寝むっている展開などもなく、そして、そのようなことも考えてもいなかった真であった。
「…」
昨日は散々な日だったなと、真は思い出していた。
「…」
真はとりあえず、ソラのベットを見た。
ベットの上にはソラが眠っていた、どうやら真の方が早く起きた様子である。
「…」
「すぴー」
まるで天使のような笑顔で寝ているソラ、それは精神が弄られていた真をもってしても脱帽する程の物であった。
「…かわいいな」
真はソラの寝顔を見ながら、考え深げにそう思った。
「…これがこの世界の朝食か…別に変らないと思うけど…」
真は現在ソラと一緒に宿がだしてくれた朝食を食べていた。
「…」
真の目の前にはソルボージェという、スクランブルエッグに似た食べ物が置かれてあった。
別に見た目も悪くないし、たんに名前だけが違うだけではないか?そう思った真であった。
「ぜんぜん、別物よ、確かに味こそは別に真の世界の料理と変りはないけど、魔法香辛料とかが使われているから、うん…なんていうか、この魔法香辛料の違和感ってなかなか言葉に表しにくいのよね…とりあえず食べてみて」
「それじゃ、いたただきます」
そう言って真は横にあったフォークを取り出し、ソルボージェを口に運んだ
「…」
もぐもぐと、真はこのソルボージェとか言う食べ物の味を確かめるべく良く噛んでいたのであった。
そして、ソラが言っていた違和感とやらが直ぐに訪れた。
…あれ?ん?なんだかあれだな、別にまずくもないし、どちらかと上手いのだが…幻想的な味?
真はこの味を感じてもしやと思った。
いわゆるこの世界の魔法香辛料とやらは、言わば人間が作り出した香辛料である、自然が作り出したというものではない、そして、どうやらこれら魔法香辛料を作る人たちは、どうしても口に合うような、無理やり合わせるような…不純物など一切なく、いわゆる人間の口に完璧に合うような…簡単に言えばあまりにもの完璧すぎて、カップラーメンみたいな程良い味ではないのである、まあ、まさしく言葉で言い表しにくい、そんな違和感を感じる、そのような感じの味であった。
「…なあ、ソラ」
「ん?」
「…もしかして、自然からとれる香辛料、トウガラシとか、コショウってとても高価なの?」
「もちろんだよ」
ソラが何当たり前なことをいっているんだと言う感じに言った。
「…マジックペンじゃなくて、香辛料にすればよかったかな」
そう思いながら、真はソルボージェを口に運んだ。
「…よし、さっそくダンジョンで使う近代兵器を召喚するとするか」
「面白そうね、異世界の武器ってどんなのだろう」
その後は別段なにもおかしなこともなく、真たちは朝食を食べた後、さっそく、今日行く予定のダンジョンへ向けての武装を召喚するため、真とソラはそんな話し合いをしていた。
「…よし、まずは…山崎真が命ず、兵器大全集1を召喚せよ!!」
真はまず、1868年までに使えそうな兵器を調べる為、自らが知っている本の中で、より兵器に関して詳しく書かれていたものを召喚した。
「しゅあん」
いつもどおりに、ワープしたかのように、忽然と、戦艦三笠の写真が表紙の兵器大全集1と言う本が召喚された。
「…ん?その本は?…まさかこれが近代兵器!!」
ソラがそんな的外れなことを言う
「いやいや違う違う、これは近代兵器じゃなくて、ただの本、この本には俺の世界にある古今東西あらゆる昔の兵器がのっている、いわば兵器の専門書みたいなものかな?兵器の写真はもちろん、その兵器の戦歴、評価、性能等一つ一つ丁寧に描かれてあるんだ」
真は簡単な説明をした。
「…ふんー、つまり、その本には真の世界の武器が有って、召喚する際に役立てようと?」
「まあ、そんな感じかな」
「へー、じゃあ、まず何を召喚するの?」
ソラが面白そうに本を覗き込んだ
「まあ、まてまて、そう焦んなよ、まず俺が選ぶから」
そう言って真はソラをなだめた後、兵器大全集1の1868年あたりのページを開いた。
(うん…一番使えそうな兵器は、やっぱりあの映画、ラストサムライにも登場した、ガトリング砲だよな)
真は本のページを開きながら心の中で呟いた。
ガトリング砲とは、言わば現代の機関銃の原型とも言うべき兵器である、といっても、現代の様に、持ち運べるほど軽くも小さくもなく、大八車の様な物に、でっかいバルカン砲をのっけたよう様なものである、もっともこの世界では、それでも結構な威力を発揮するであろうが…
(しかし、ガトリング砲の様な大きなものは、とてもじゃないが、馬や車がないようじゃ、手軽に持ち運べるような代物じゃないし、そのため、人力で運ぶ場合、ダンジョン内で、召喚すると言う道しかないから、今は召喚することはできないよな…だけど、ダンジョン内に階段とかそういうのが有れば通行できないしな…)
真は思う思い、ダンジョン内にガトリング砲の邪魔になりそうな階段とかはないのかをソラに聞いてみた。
「なあソラ、ダンジョン内には階段とかある?」
「…階段?なんでまた?」
「うん…移動するのに大八車を使う武器を召喚したいんだよ、大八車じゃ階段を上り下りできないだろう」
「…ダンジョン内には、階段は滅多にないけど、一階から二階に行くときは、階段を使うわ、だから、使うとしても、その階限定ね、大きさによるけど」
びみょ―な答えが返ってきた
(うん…階段とかやっぱりあるか、これは実際にみてみないと分かんないな)
結局真はガトリング砲の召喚をやめ、次にライフル銃や騎兵銃などの、持ち運びのできる兵器を探した。
(うん…ヘンリー銃かスペンサー銃か…ここら辺が銃の良さそうなところかな…ん?)
その時真はある写真の部分に注目した、その写真には、銃剣が移されていた、銃剣とはいわゆる、銃の先っちょにナイフ見たいな簡易的な刃物をつけて、ライフル銃などを簡易的な槍にした様なものである。昔は弾がなくなると、白兵戦になることがあったので、昔の銃にはよくこういう機能が有ったのである。
(…銃剣って、近代兵器の部類に入るのか…分からんな)
真はとりあえず、一応、確認のためとして、この銃剣が取り付けられている銃ごと、召喚することにしたのであった。
(まあ、とりあえず、銃はヘンリー銃か、スペンサー銃かを決めてからにしよう)
真はそう思い、とりあえず、その二つの銃が有る場所のページを覚えた後、次に爆弾はどうなのかを調べた
そして、ノーベル賞を作った人の写真と共に書かれてある兵器を見つけて真はふと思いついた。
(ダイナマイト…おっそうだ…)
真はあることは思いついた、
(ダイナマイト+どこでも好きな所で道具を使わずとも火を出せる火の魔法、これいいんじゃねえ?)
珪藻土ダイナマイトの欄を見ながら真はそのことを思いついた。
(よし、とりあえずは、銃は装填数が多いヘンリー銃に決定、ダイナマイトは、ライターを使えば手軽で簡単に使えるし、ライターを使わなくても、魔法で火を出せるソラに渡せば、かなり使えそうだな、ソラにこの事を話してみるか)
真はとりあえず、武器の方針については大体固め、次に、結局手に入れることのできなかった防具代わりの、戦闘服なんかを探してみた。
(うん…あまりないな)
もともとこの本は武器専用であり、やはり、防御面のみの戦闘服なんかはあまり書かれていなかった。
(…まあこれでいいか)
真がそう思った時に開いていたページは、米軍のボディーアーマーの欄であった。防弾、防刃、そして耐衝撃性にもすぐれ、なお且つ動きやすく設計されてある、これでも良いかな?真はそう思い、防具の代わりとして召喚するのは、このボディーアーマーと、自衛隊の88式鉄帽(いわゆる軍用ヘルメット)にすることにしたのであった。
「…よし、召喚するとしますか」
因みに現在の真の召喚数は6である、これらを召喚するのは当たり前だが、予備の弾等の弾薬も想定して召喚するなら、直ぐに使いつぶしてしまうような数であるが、仕方ない事だと、真はそう思い、腹をくくって召喚することにしたのであった。
「山崎真が命ずる、銃剣つきのヘンリー銃を召喚せよ!」
すぐさま真の目の前に銃剣付きのヘンリー銃が表れる
「山崎真が命ずる、自衛隊の88式鉄帽を召喚せよ」
まあとりあえず、こんな感じで真の武装が次々と召喚されていったのであった。
「どうだソラ、カッコいいか?」
数分後、すっかり見た目は軍人と化した真が立っていた、このようなことになってしまったのは、決して作者のせいではない…はず…
頭には自衛隊の88式鉄帽(迷彩柄)胴体には米軍のボディーアーマー(服の迷彩柄はさすがに怪しすぎるらしいので、素朴な灰色のバージョン)片手には銃剣付きヘンリー銃である。
(…すげーな、なんかこのヘンリー銃を持っているだけで、この銃のすべての事が何故か判るし、それに銃剣も近代兵器として認識されるみたいで、銃剣についてもどう扱えばいいのかも分かる、変な感覚だ)
真は今までの17年の人生の中でも感じたことのない感覚に、ちょっとばかり不安であった。
「うん…」
まあ、とりあえず、現在ソラがそんな360°どこから見ても軍人に見える真を鑑定していた。
「…真」
「ん?」
「…もうちょっとセンスのある真の世界の軍服とかない?」
どうやらこの世界の人々にとって、現代の軍服姿は異様に映るようであった。まあ、現代日本でもこんな恰好して街中歩いたら、注目の対象になるだろうがな!!真は半ば悲しみながらそう思ったのであった。