第27話
クルトとの会話を終え、私たちはギルドのホールに戻った。
ギルド中央の巨大モニターではまだ『星霜の旅団』の生配信が続いていた。
「クルト、ラキナには無かったけどこれは映像を流す道具『モニター』よ。今はリアのクラン『星霜の旅団』がダンジョンに行っているライブ放送が流れているのよ」
クルトが画面を見て目を細める。
髭をなでながら、
「ほう、モニターというものですか」
と呟いた。
「興味深い……このような技術、ラキナには存在しなかったな」
彼は真剣な眼差しで画面に見入っている。
「リア姉さんたちが戦っている様子がこうして見られるとは」
クルトの眼差しには純粋な驚きと興奮が混ざっていた。
鍛治師であり技術者でもあるので新しい技術に対する好奇心が強く働いているようだ。
「これは素晴らしい装置ですな、母上。これがあれば、遠く離れた場所の様子も簡単に把握できるのですね」
私は微笑みながらクルトに頷いた。
「そうね。地球ではこういう便利な道具がたくさんあるのよ」
クルトは目を輝かせながら画面を凝視し続けていた。
彼にとって全てが新鮮なのだろう。
私はクルトを微笑ましく見ていた。
そんな話をしていると私を見つけた颯斗と理依奈が駆け寄ってきた。
「麗奈お姉ちゃん良い物あった?」
「残念ながら何も無かったわ」
私は首を横に振って答えてから二人をクルトに紹介した。
「クルト、こちらが私の甥っ子と姪っ子よ。今日一緒にダンジョンに行った二人ね」
「ほぉ、この二人が母上の甥っ子と姪っ子か」
クルトは髭をさすりながら二人を見て言った。
その姿勢には一種の威厳があり、少年少女たちを圧倒しているようだ。
颯斗と理依奈はクルトの姿を見て驚いた様子で目を丸くしている。
「ド、ドワーフの人ですか……?」
颯斗が恐る恐る尋ねる。
「いかにも」
クルトは自信に満ちた態度で胸を叩いた。
「儂はドワーフの鍛冶師、クルト・カザハナ。レーナ母上の義息子だ」
理依奈は目を輝かせながら近づいていった。
「すごい!本物のドワーフだ!私、漫画や映画でしか見た事無いよ!」
彼女の興奮した声には純粋な好奇心が溢れている。
颯斗は緊張気味に近づき挨拶をした。
「初めまして、風花 颯斗です」
「あ!初めまして、風花 理依奈です!」
颯斗は少し緊張しながら、理依奈は明るく自己紹介した。
彼らの視線はクルトの小柄ながらも威厳のある姿に釘付けになっている。
「リア姉さんの話では、地球には儂らのような亜人がいないと聞いていたが、本当なのですか?」
「ええ、本当よ」
私は答えた。
「地球には人間しかいません。だから二人はクルトを見たときにとても驚いたのよ」
クルトはしばし沈黙し、やがて目を細めて笑みを浮かべた。
「なるほど、道理で皆が珍しそうに見ているわけだ。しかし、これからは違うかもしれんな」
「どういうことですか?」
颯斗が気になり尋ねた。
クルトは胸を張って答える。
「地球とラキナが繋がった以上、儂らみたいな者たちが訪れてくる。君たちにとっては未知の体験かもしれないが、これから新たな時代が始まろうとしているのだろう」
彼の言葉に二人は目を輝かせた。
特に理依奈は興奮を隠せない様子だ。
「ドワーフやエルフや獣人みたいな人たちがいっぱい地球に来るってこと?」
理依奈は両手を握りしめて問いかけた。
その顔には期待が溢れている。
クルトはゆっくりとうなずき、
「ああ、おそらくその可能性が高いだろう。今まで隔てられてきた二つの世界が一つにつながったのだ。今後は多くの者たちがこちらに訪れるであろう」
颯斗も緊張した表情で口を開いた。
「でも、地球のみんなはどう思うかな……怖がられたりしないかな?」
その質問に対し、クルトは柔らかな笑みを浮かべた。
「心配には及ばぬぞ。我々亜人もみな同じ生命なのだ。それに……」
彼は一呼吸置き、誇らしげに胸を張った。
「互いを知り、尊重すれば問題はあるまい。それが交流というものじゃ」
その言葉には長年の経験に裏打ちされた重みがあった。
理依奈はますます目を輝かせる。
「じゃあ、ドワーフやエルフみたいな人たちが来たら、私もいろんなお話聞きたいな!」
クルトはうんうんと頷き、髭をしごいた。
「良いことだ。お互いの文化や知識を交換できれば、新たな創造の源になることもある。儂も鍛冶について教えることも教わることもあるだろう」
私は微笑みながら二人のやり取りを見守った。




