第20話
翌朝。
太陽が昇る前に目覚めた私はキッチンへ向かった。
「麗奈、早いわね」
恵がすでに起きていた。
二人で朝食の支度を始める。
「ダンジョンに行くなら簡単に食べられるほうがいいかな」
私はサンドイッチとおにぎりを作ることにした。
鮭をロースターに入れ、タマネギを刻み、水に漬ける。
ゆで卵を作り殻をむいていく。
ゆで卵を細かくして、水気を切ったタマネギとともにマヨネーズと酢と塩こしょうで和え、たまごサンドイッチを作る。
次にパンにマヨネーズを塗り、ハムとツナとレタスとキュウリを挟んでハムツナサンドイッチも作った。
焼き上がった鮭をほぐしておにぎりの具にする。
鮭おにぎりと梅干しおにぎり。
それぞれ丁寧に海苔を巻く。
「できた!」
入れ物に詰めて収納魔法に入れる。
この便利さは魔法に感謝だ。
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「みんなー!起きてー!」
家中を回りながら家族を起こしていく。
全員が揃うと、恵の作った朝食が始まった。
トーストとスクランブルエッグとサラダ。
シンプルだが贅沢な時間だ。
食事が終わると各自準備を始めた。
理依奈と颯斗がリュックを持って降りてくる。
「鉄の片手剣と円盾と着替えを入れてきた!」
「私は杖と短剣と着替え!」
「武器持って歩いてもいいの?」
と尋ねると、
「ダンジョン発生以降、刃物類はケースに入れていれば問題なくなったんだ」
と颯斗が答えた。
「ギルドで預けることもできるけど、頻繁に通う場所じゃない限り持ち歩くのが一般的」
なるほど……。
私も収納魔法があるとはいえ、『普通』の範囲内で行動すべきかもしれない。
「麗奈さんは武器はどうするの?」
颯斗に聞かれ、
「基本は剣だけど、魔法でも拳でもいけるよ」
と答えると、
「日本のダンジョンに入るなら武器専用のリュックがあるよ。ギルドに着いたら買いに行ったほうがいいかも」
というアドバイスをもらった。
私はシンプルな杖を収納魔法から取り出し、
「とりあえず今日はこれで行こうかな。入れ物はあとで買いに行くことにするね」
魔法使いらしい衣装も考えておかないと……と思いつつ出発の時間が迫っていた。
「さて……」
時間を見るとそろそろ出発しなければならない時間だった。
「魔法使いっぽい服装ねぇ……」
収納魔法の中から使えそうなものを選んでいく。
かつてラキナで使っていた黒いローブが目に入った。
「これは……懐かしいわね」
ローブを手に取り広げる。
昔「魔女です」とアピールするために作ったものだが、フォノンの人々には受けが悪く、ほとんど使わずしまっていた装備だった。
しかし今は地球であり、むしろその魔法使いらしさが良いかもしれない。
「これにしよう」
黒いドレスに黒いローブと黒い魔法使い風の帽子を選んだ。
それらをバッグに詰める。
「服装はいつもの服で顔は帽子で半分隠れてるし、色付きメガネもあるから……まあ大丈夫でしょう」
理依奈と颯斗の方を見ると、彼らも準備万端のようだった。
「みんな準備OK?」
「うん!」
「オッケーだよ」
三人で玄関に向かった。
「それじゃあ行ってきます」
「気をつけてね」
「いってらっしゃい」
晴奈と恵が優しく送り出す。
「行ってきま~す」
理依奈が元気よく飛び出していく。
その後を追いかけるように颯斗と私が出かけた。
「電車での渋谷への行き方わかる?」
「うん!渋谷駅ならよく行ってるよ」
理依奈が自信満々に胸を張る。
確かに理依奈の行動力なら行ったことがありそうだ。
「任せようかな」
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電車に乗り込むと混雑の時間とはずれていたのか混雑していなかった。
私たちの他にも武器らしきものが見えるリュックや鞄を持った人たちが多く見られた。
「やっぱり多いのね」
私が周囲を見回しながらつぶやくと、
「あの人の鞄にも武器が入ってそうだね」
理依奈が小声で言う。
確かに鞄の形状からして普通ではないものが多かった。
どうやら日常的にダンジョンに潜る人々にとっては日常の光景のようだ。
「颯斗も言ってたけど、ギルドで預かるシステムがあっても、いろんなダンジョンを行ったり来たりするなら持ち歩いた方が便利なのね」
電車に揺られながら私は納得した。




