(幕間) ヴィセンテ商会長と〇〇
今週も読みに来てくださってありがとうございます!
「さて。」
そう言って窓辺の方に歩くヴィセンテ商会長。
そして窓を開けて半分体を乗り出し、屋根の方へ向かって
「もういいぞ、出てきて。」
しばらく躊躇ったような雰囲気を感じたあと、声をかけられた人物は屋根の上から姿を見せしぶしぶと言った感じで降りてきて窓に近づいた。
ヴィセンテは窓から少し離れその人物が窓から入って来られるようにする。少しふてくされたような顔をしながらその人物は窓から応接室に入ってくる。
「思ったより...若いな...」
そう言って少し驚いた顔を見せた。
「悪かったな、若くて。」
ぶっきらぼうに答えるこの若者の態度を見て、相手は別に自分と敵対するつもりはなさそうだ、と判断したヴィセンテは口の端で笑みをこぼす。
「言っとくけどな、気配は分かるように出してたんだ。牽制だ、牽制!」
そう言ってむすっとした顔を見せる。ヴィセンテは上から下までざっとその若者のことを見た後
「まぁ、確かにな。お前なら隠れようと思ったらうまく隠れそうだしな。で、お前はあれか、ミアの護衛的な?」
その男の子(10代後半だろうか?)は頭をガシガシかきながら
「ああ、そうだよ。監視も兼ねてはいるが、本人はあの調子だし、主に護衛任務と言っても問題ないだろうな。本人は『じゃない方』なんてさっきも言っててなんだかもう終わったことのように思っているみたいだけど、実際はそう簡単にはいかない。色々それぞれの人や立場の思惑があって、ミアのことが魅力的に見える人も邪魔者だと思う人もそれなりの数いるんだよ。」
ダルそうな口ぶりかとは裏腹に目の光を鋭くさせてヴィセンテを睨む。まるでお前はどっちだ?とでも言うように。
「ここ1ヶ月ほぼ毎日俺たちのことを見ていたんだろ。それでお前の中では結論が出ているのではないか?」
その男の子はぷいっと横を向くと
「結論は出てはいないし、出すつもりもない。そうやって自分の感情で動くと間違えることの方が多いからな。だが、ミアが自分で今までの経緯について異世界から来たことを含めて話したのは今回が初めてだ。知られないように生きようとしていた時もあった。そう考えると、ミアが相当あんた達に気を許しているのが分かる。こう言う場合、俺の存在を隠したままにするよりも俺がついていると言うのを見せておいた方がいい、牽制になるからな。」
そして若者は目つきを鋭くして
「ミアに危害を加えるようなら、その首と胴体きれいに分けてやるから。」
そうやってどこからか小型ナイフを出す。
ヴィセンテはその小型ナイフで首と胴を分けるのは骨が折れそうだ...と思いつつ、両手を上げて潔白を証明する。
「いやいや、俺たちは純粋に美亜の能力を買っているんだ。わざわざ棒に振るような真似するかよ。給料だって出し渋っているつもりはないぜ。」
そう言って相手がナイフをしまうまで両手を上げ続けた。納得したのか若者はくるっとナイフを回したあと。上着の内ポケットにシュッとしまう。
「...それで?お前の雇い主は王国派なのか?それとも教会派なのか?」
一瞬ビクッとした後、
「お、俺は教会派だ。」
「そうか。教会にこんな隠密に優れたものがいるとは思わなかった。」
もう一度、若者ギクッとしながらも、
「...そうじゃねぇと生き残れないからな、この世の中は。」
神に忠誠を誓ったものの割には案外世俗的である。
「ミアの家には王国派の監視員もいるからな。ミアが危ない目に遭えば、教会も王国も敵に回すことになるからな。気をつけろよ。」
そう言って少年は入ってきた窓から出ようとした。
「これからは共闘関係の間柄じゃねぇか。名ぐらい名乗れよ」
そう言って手を出し
「まあ、知らせておいても害はないか。俺はリック。ミアと同じ家に住んでいるから、何かあればそこに来い。」
そう言い残してリックは窓から出て行った。
「同じ家に住んでいるねぇ...。」
そんなことを言いながらリックが消えた方向を見ていたのだった。
とうとう二人が出会いました。
ちょっと短いんですが、この二人が会ったところで話が続けられる訳もなく...
次回は未亜に来る新たなお仕事についてのお話です!
来週の水曜日の午後7時に投稿予定です!




