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聖女じゃなかったので、翻訳チートで商人通訳として生きていきます!  作者: 角まがり


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じゃない方と通訳の初仕事(1)

今日も読みにきてくださってありがとうございます!

3日後。同じ応接室に、前回とほぼ同じメンバーが集まった。違うとことは会長付きの通訳が前回の通訳さんではなく未亜に変わったところだった。つまり、今回が未亜の初通訳業務になる。


(落ち着いて...大丈夫。会長だって大丈夫だって言ってくれた。)


相手の言葉がそっくりそのまま翻訳されて聞こえる未亜にとって誤訳という可能性は限りなく低いものの、未だに単位の互換には自信がない。今日もこっそり手のひらに収まる小さい紙を持ち込み、そこにぎっしり今回使いそうな単位が書いてある。


(会長はもしかしたら単位の話なんかしないかもしれないし、もししたとしてもそのままの単位で構わないって言ってたけど...)


文脈まで理解して通訳することは、誤解を生じさせないためにも必要だと思っていた。


よし。未亜が小さくもう一度気合を入れ直した直後、サリムが商談の口火を切った。


「3日ぶりでございます。今日はまた前回とは違う通訳の方をつけていらっしゃるんですね。」


そういうと未亜を品定めするかのように上から下、下から上に見た。未亜はそんな視線に負けないようにツンとした顔を保ちつつ、サリムの言葉をそのまま訳す。


会長はチラッとだけ目で未亜を見た後、相手に視線を移した。


(あくまで私は通訳。私の仕事は相手の言葉を翻訳すること。)


「先日の私達からの契約書の内容を吟味して頂けましたでしょうか。」


サリムは会長ににっこりと笑って見せる。


「それを叩き台にし、契約を詰めていければと思っておりますが...」


「それなんだがなぁ。」


未亜は、この交渉の前に未亜は2つ確認でしていたことがあった。その1つは未亜の通訳能力の発動条件だった。実験の結果、未亜は、相手がある言語を話しているのを聞いた後、その人に向かってその言葉を使って話せるということが分かった。相手が話さないうちは、リュシエール語がデフォルトで設定されているらしく、口からリュシエール語が出てきていた。もっともそれは全部日本語のように聞こえるので、未亜自身は自分である特定の言語を話していると言う意識はなかったが。


また、通訳をする場合は、未亜がその人の方向をしっかり見た上で、「この人はこの言語」と認識することでできることが分かった。今もサヘルの言葉を会長に翻訳する時は、会長にリュシエール語!を意識して行なっている。逆の場合もまた然りだ。


そしてもう1つ確認したことは通訳の仕方だった。前回の通訳さんは会長の言葉も丁寧な言葉に直していた。もちろん、そう言うことも必要な時があるだろう。しかし、未亜は会長がわざと横柄な態度や言葉を使っているのではないか、と思ったのだ。交渉術の1つとして。そのため、事前に会長に確認を取っていた。以前の通訳さんの時の話もし、「どのように訳したほうが適切ですか。」と。会長はニヤッと笑って「俺の言葉そのままのトーンでやってくれた構わない」


その言葉を心の中で反芻しながら、未亜はそのままサヘル語で「それなんだがなぁ。」と伝える。


サリムは一瞬ピクッと眉を上げて未亜を見た。それを見た会長が


「今回の通訳には俺が話しているように通訳するようにお願いしている。こいつの通訳の問題ではないからな。」


それもそのまま未亜は訳し、素知らぬ顔をする。内心は怒られないかドキドキしているが...。そんな未亜の様子を見て気にしないことにしたのかサリムは視線を会長に戻す。


「分かりました。今までの通訳の方とお話し方が異なっていたので少々面食らっただけです。」


そう言ってまた会長に笑いかけた。一方未亜はその笑顔を見て不信感を募らせていく。会長は未亜から見てもかなり横柄な態度を取っている。明らかに取引相手にする態度ではない。それなのに怒るどころか笑って取り引きを続けようとする。これはやっぱり...


「さて、本題に入ろうか。まず、俺たちとしては、今回の取引はおいしい話だと思っている。」


そこで会長は一度言葉を切る。サリムはその言葉を聞き笑みを広げる。


「だが、まずは場所を確定しなきゃなんねぇ。まさか『今回新たに発見された鉱山』て言葉しか無い契約書に俺たちがサインするとは思っていないだろう?」


サリムは笑顔のまま

「もちろんでございます。こちらはサヘル語で書かれた契約書の書式に則ったものでございます。サヘル語はそのものの名前をそのまま書くなどそのような不粋なことは致しませんので。」


会長は通訳し終わった未亜をちらっと見てきたので、未亜は小さくうなづいた。


「それでもだ。この契約を進めるならどの鉱山のことかを明確に記してもらわなければこの話を進める気はない。」


「今回のお話はサヘル国の南で新たに発見された鉱山でして...その鉱山の名前をと言うことでしたら、それは」


「ジャバル・サミート鉱山だろ?」


サリムの言葉を遮って会長が言う。


「ご存知でしたか」


サリムは少し驚いたようだった。


「俺たちの情報網を舐めてもらっちゃ困る」

 

そう言って会長は不敵に笑う。本当は通りかかった行商人に話を聞いただけである。しかし、交渉の場でそんなことも馬鹿正直に言わなくてもいいのだ。


「いえ、リオ・ソラル商会にお声がけして良かったと改めて思っただけですよ。私どもの国の情報はあまり外に出ないですから。そして鉱山のお名前がお分かりなら、そこの鉱石がいかに品質がいいかも聞き及びでしょう。」


「確かに。すごくいい魔鉱石が出ると言う噂だと言う話だった。」


「では!」」


「しかし妙なのは、その鉱山の優先権に名乗りを上げたのはバハール商会だけだと言う。」


「...私どもがいち早く手を挙げたため他の商会は少し臆したと聞いております。私どもは、ご存知のようにサヘル国では大きな商会ですし。誰も勝ちの見込みがない勝負には挑みたくないものでしょう?」


「そうか?俺なら負けてもともとで名乗りを上げるだけ上げてみるがな?」


「そう言うお考えもありえますね。でも、結果としては私どもが販売優先権を得ました。過程はあまり問題ではないのでは?」


「まあ、そうだな」


ここで会長は少し考えるそぶりを見せて少し未亜のために時間をとってくれる。この応酬を通訳を介して行なっているのだからすごい。向こうの通訳さんもなかなかやり手だ。むしろチート能力を使わないでこの会話を通訳できていることに尊敬する。未亜はふっと息を軽く吐くと会長に向かってうなづく。ここからが正念場だ。


「どうやってその鉱山の優先権を手に入れたかは俺たちはあまり気にしない。だが、どうしても他の商会は名乗りを上げなかったのかは追求してみてもいいところだとは思わないか?」


サリムはそれでもにこやかに会長を見つめる。そんなサリムをじっと見つめながら会長は


「だからその鉱山の周りを調査した。これが調査結果だ。」


そう言って会長は未亜とディオゴの汗と涙の結晶を見せた。


やはり交渉の場面は長引きますね...

次回は未亜が大活躍(の予定)!


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