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聖女じゃなかったので、翻訳チートで商人通訳として生きていきます!  作者: 角まがり


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じゃない方と新しいお家

今日から港町マルティナ篇スタートです!


未亜達が乗った馬車はどんどん町中に入っていく。リックが声をかけてくれたのが丘の頂上あたりに近かったようで、そこから馬車は海に向かって下っていく様な形になった。さすが港町と言うべきか、大通りは広く馬車が2台余裕ですれ違える。遠くから見えたように一面白い壁で覆われた建物は美しく、どこかヨーロッパの国を彷彿とさせた。大通りには、様々なお店があり、海に近づくにつれて人もお店も増えている様だった。しばらくその大通りを下っていったところで、馬車は左手の小さな道に入っていった。


(どこに行くんだろう・・・)


マーサはこの馬車がどこに向かっているのか既に知っているようで、落ち着いて座っている。馬車は小道を今度は右に曲がる。またちょっと上り坂になったようだ。そしてもう一度左に曲がってしばらくしたところで止まった。


「着きましたよ、未亜様。ここが私たちのマルティナでの家になります。」


そう言われて、馬車を降りると、目の前には細長い青いドアがあった。この建物も他の建物の様に白い。近くで見ると石灰のようなものが固めてあるように見えた。どこからか鍵を取り出したマーサは、ドアの鍵穴に差し込み回す。


カチャリという音のあと、マーサはドアノブを捻りドアを開ける。

「さぁ、お入りください。」


未亜は促されるまま中に入った。午後になると日差しが入りいくいのか少し暗かったが、入ってすぐに大きなソファーとロッキングチェア、そして本棚が奥にあるのが見えた。また、上に続く階段も左の壁側に着いている。その階段を目で追うと、2階の廊下が見え、その奥にはいくつかの部屋がありそうだった。1階の右の方に目をやるとキッチンが見えた。その左横はダイニングのようだ。


「わぁぁぁぁ!」


未亜は、この世界に来てから一番感動していた。もちろん王宮の部屋はすごかったのだが、あまりにも荘厳すぎて気後れする気持ちの方が勝っていた。しかし、この家は、可愛いヨーロッパの家という感じで暖かみのある素敵な家だった。


「お分かりのように既に、家具は用意してあるので心配いりません。こちらは王国からの贈り物になります。あまり華美なものはこの家にあいませんし、何より未亜様がお喜びにならないかと思いましたので、この地域の一般家庭にあるものの中で質の良いものをご用意いたしました。」


にっこり笑うマーサに未亜は思わず抱きつく。

「マーサ、ありがとう!」


そんな未亜の後ろからリックが入ってきて

「お〜、これはいいな。俺もここに住んで良いのか。」


「はい、リック様の仕事のことを考えるとそちらの方がいいかと思います。お部屋は2階に4部屋ありますから、お一人ずつお好きな部屋をお選びください。玄関と同じ方向だと海がご覧いただけます。お食事は毎食私の方で用意致しますので、必要ない時はそのように申しつけてください。」


リックは「俺の仕事ねぇ..」と階段の手すりに肘をつきながら、マーサをじっと見た。マーサはその視線に気づきながらも笑顔を返す。リックは諦めたように「俺、2階見てくるわ!」と言って、上がっていった。


そのリックを目線で見送った後、マーサは未亜の方を向き、


「未亜様、こちらの物件は王家の所有にはなりますが、表向き別の家主が立てられているいわゆる王家の隠れ家的なスポットです。そのためここに住むことで王家と未亜様のことを紐付けるものはいないでしょう。宰相様からは、好きなだけ使って良いとお許しをいただいています。また一方で、もしこの家を出て完全に自分で自活したくなったらそうしてもらっても構わない。と伺っています。その場合は、私とエリックがここに住み続けることになると思います。なので、気兼ねなくこちらをお使いください。」


そしてこっそりと


「宰相様には、未亜様より少しお若いですが、それは大切にしていらっしゃるお嬢様がいらっしゃるんですよ。そのお嬢様と未亜様を重ね合わせておられるようで・・・。『もし、自分の娘が同じような目にあったと考えたら耐えられない!』とおっしゃっていて。仕事と私情は別であるべきですが、この家は宰相様の親心なんですよ。」


未亜は、お城を出る時、宰相に挨拶をしていたが、もっときちんと感謝を伝えるべきだったと後悔した。日本でも一人暮らしをするとき、一番最初にしなければしなくて、時間もお金も気力も取られるのは、物件探しだった。新しい生活を始める時に、既に生活環境が整っていることがどんなにありがたいことか!胸がいっぱいになってうるうるしていると、


「さて、ミア様もお部屋を選んで、荷物を下ろしてきてください。少し休憩した後、今日の夕飯の買い出しにでも行きましょう。町を見たくて、うずうずされていらっしゃるでしょう。」


それは、本当にそうだ。あのキラキラとした海とそこから続いているように思われる街並みを見たら、ここでじっとしているのは勿体無い気がした。未亜は、ウキウキと階段を上がっていく、2階の廊下を歩いていると左手のドアが開いていて、そこからリックがひょっこりと顔を出した。


「あれ、そっちの部屋にしたんだ。そっちだとせっかくの海が見えないのに、いいの?」


リックはヒラヒラと手を振りながら、


「いや、そっちは通りに面しているから窓から出入りしたら目立つだろう。こっちは他の建物の陰になっていていい。」


「窓から出入りしたら、例え建物の陰でも目立つでしょ。ちゃんとドアから出入りしてね。」


リックは微笑んでそのまま何も言わなかった。

そんなリックを放っておいて、未亜は、右手の部屋を見る。どちらのドアも空いていてどちらの窓からもキラキラした海が見えた。それぞれの部屋は、テーマが違うらしく、奥の部屋は海、手前の部屋はモダンをテーマにしているように見えた。散々悩んだ挙句、未亜は、奥の海をテーマにした部屋を自分の部屋にすることにした。白い壁に映えるようなターコイズブルーのベッドに、ストライプのクッションがついた白い椅子とそれにあった白い机。壁には、海の写真が飾ってある。


(これはやばい!映える!)


ここに携帯があれば、絶対に写真を撮りまくっているであろう未亜は、ここにカメラがないことを心底惜しんだ。


(さぁ、ここから始めよう!私の異世界生活を!)



人に読んでもらえるってこんなに嬉しいことなんですね。続きが読みたい!と思ってもらえるようにがんばります。次の更新は来週の月曜日の午後7時の予定です。来週からお仕事探しが始まります!

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