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聖女じゃなかったので、翻訳チートで商人通訳として生きていきます!  作者: 角まがり


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じゃない方と港町行きの馬車

教会・王宮篇(序章)最終話です!

宰相様と枢機卿(とリック)との話し合いと言う名の交渉の1週間が経っていた。この間に未亜は聖女となった女子高生ちゃんに手紙を書いた。そしてここで気がついたのが、自分が書いた日本語がどういうわけかすぐにリュシエール語に書き変わってしまうことだった。


(日本語で書けば他の人にも読まれないしいいと思ったんだけどな...)


目論見が外れてしまったが、せっかくの機会である。あたりさわりのない内容を書き連ねた。


・自分の名前は成宮未亜であること

・聖女と認定されなかったのでマルティナという町で新しい生活を始めること。

・何かあればいつでも連絡を欲しいこと。

・今度会う機会があれば、名前を教えてほしいいこと。

・無理はしないで欲しいこと。


(女子高生ちゃんのノリがよくわからないので内容が当たり障りになってしまった。ノリノリで「私が聖女!やった!」って感じであれば、私の心配している気持ちも「うざっ!」としか思われないだろうし...)


何度か書き直した後で、リックに手渡した。


「きちんと聖女様にお渡しいたします。」


ちゃんと届くといいな、と思いつつも、この間の枢機卿の態度から届けられない可能性があるのを感じている。

だからこそ、預けるならリックだと思っているし、立候補してくれてありがたかった。


そんなことをしていたら、あっという間に1週間が経ち、今、未亜はマルティナ行きの馬車に揺られていた。この馬車で5日行ったところにマルティナがあるらしい。


王宮がマルティナまでの馬車や道中の宿泊施設を手配してくれることになったが、未亜には1点懸念点があった。それが王家や貴族のように扱われる事だった。これから一庶民として生活するのだから、馬車も宿泊施設も庶民レベルのものを用意して欲しいと注文した。


その甲斐あって今乗っている馬車も一般のちょっと裕福な人達が長距離移動の際に使用するものであった。ただ、未亜は甘く見ていた。高級馬車ではない時の馬車の揺れの激しさを。おかげで走って3時間も経たないうちに未亜のお尻と腰が痛くなり始めた


(馬車って一度乗ってみたかったのだけれど...思ったより快適じゃない...振動でお尻痛いし...これ、乗馬ダイエットできるんじゃないかな?)


そう思いながらふと目線を自分のお尻から前に移すとそこにはリックがそして未亜の隣には慣れた様子でマーサが座っている。


そうなのだ。未亜の心配はもちろんマーサに伝わっており、マーサには王宮に残ると言う選択肢が与えられたにも関わらず、マーサは未亜と来る事を選んだのだ。マーサはいい人だし、知らない人より知っている人がついて来てくれるのは心強いのだが、さすがにこの決断を聞いた時、未亜は焦った。


「マーサ。いえ、マーサさん。私について来てくれると言うなら、それは私にとって本当に嬉しくてありがたいことではあるんですが、それはマーサさんのキャリアを壊すことになりかねないと思っています。せっかく王宮で働けているのにこんな見ず知らずの女のために自分のキャリアを棒に振ることはないと思います。」


マーサから一緒にマルティナに行くと告げられた時、未亜は椅子の上に正座しながらマーサに言った。


「ミア様。ミア様が私の身やキャリアを案じてくださっていることは百も承知なのです。宰相様からも伺っています。でも、私自身がミア様について行きたいと思ったのです。それに、王宮で賓客として扱われている未亜様の側付きなんて王宮残るよりも名誉なことですよ。」


そう言ってマーサは微笑んだ。未亜は困った顔をして


「でも、私はこれから、『王国特別保護移民』になります。王宮で賓客扱いされるような立場ではなくなるんですよ。」


「それでも、王家の人たちも教会の人たちもあなたの事をそう扱わないでしょう。聡いミア様ならもうお気づきかと思いますが、私はミア様のお世話を仰せつかっているだけでなく、お目付け役と言う任も与えられています。この王宮を出てまでそれを続けろと言うのは、王宮が私を信用してくださっているからと捉えることはできませんか。」


それは本当にそうなのだろう。未亜は肯首した。


「だからもし、この任務をやり遂げて王宮に帰ったら出世街道まっしぐらなのですよ。」


そうやってふふふと笑うマーサは、あまりその道に興味がなさそうだった。そもそもマーサがいつ王宮に帰れるかも分からない。未亜の帰還方法が見つかれば明日にでもこの任を解かれるだろうが、見つからなければずっとこのままの可能性だってある。


「でも...」


言い淀む未亜をマーサは、優しく抱き留めた。


「では、本当の事をいいましょう。私はここ数週間でミア様のことが好きになってしまったんですよ。こんなにしっかりしていらっしゃるのに、家事がちょっぴり苦手でいらっしゃるところも不敬かもしれませんが、実の娘のように可愛く思っております。私には子どもがおりませんし、未亜様の行末を見守りたいと言う親心です。」


マーサの言葉をその言葉通り受け止められるほど未亜は子どもではなかったが、未亜のことを心配してくれている気持ちがあるのも本当だと感じられて、これ以上何か言うのは野暮なのだろうと感じた。久々の人に抱きしめられたこともあり、ちょっと鼻の奥をツンとさせながら


「分かりました。マーサ。それでは一緒にマルティナに来て頂けますか。」


最初に王宮に移って来てマーサに敬称はやめて欲しいと言われていた。だから敢えてまた「マーサ」呼びをしてみた。マーサはにっこりと笑い、自分の選択が間違っていなかった事を確認した。


そのマーサが今隣で、未亜のお尻がなるべく痛くならないように工夫してくれている。ありがたい事だなぁと思っていると目の前の席からくっくっと笑いを噛み殺したような声が聞こえた。


「馬車に乗り慣れていないって言うの本当だったんだな」


オレンジのくるくる髪を短くし、前髪を上げ、旅装束に長剣を持って入りリックは今は敬虔な司祭見習いには見えなかった。


今朝馬車の前で会った際に思わず

「リックさん?」と「?」付きで聞いてしまったくらいだ。


「今日は教会関係の人が見送りに来ないと聞いたから。それにほら、こっちの方が動きやすいし。」


そう言ってくるりと回ってみせた。今までのリックとあまりにも装いが違うので驚いてしまう。そういえば未亜に敬語を使うのを辞めていた。


馬車の中に入ってから、リックを問いただすと元は騎士団所属だったと言うから驚きだ。確かに、宗教服はダボダボしていたのでよく分からなかったが、体は鍛えられているように見える。ある出来事がきっかけで(それが何かは教えてもらえなかった)、宗教に目覚め、聖光教会に見習いとして入ったのだと言う。しかし、あのマントも話し方も何もかもが自分の性格と合わなかったらしく、だいぶストレスが溜まっていたらしい。今回の件も、事前に二つ返事で受けていたそうだ。


リックが語る驚愕の過去を聞きながら、本当に人を見た目で判断してはいけないな、と思う。その人にはその人の歴史がある。目に見えているものが全てではない、そう強く思った。


「え?あの、ちょっと待って。リックさんは、今何歳・・・?」


「ん?20だけど?」


(こんな童顔な20がいてたまるか!15歳くらいだと思ってた、ごめん。)

本当に人は見た目に寄らないのである。


「だからさ、もう『リックさん』はやめて『リック』って読んでくれないか?その方がオレも緊張せずに済むし。あ、あと敬語も無しで!」


「おねしゃーします」とちょっとはにかみながら言うリックのお願いに「No」とは言えなかった。


「うん。分かった。これからよろしく、リック。」


そんな会話があったのが3時間ほど前。今ではすっかり未亜とマーサの前で素でいるリックにまた少し心の距離が近づいたかな?と思う。


そんなこんなで順調に予定をこなした5日目。うとうとしていたところをリックに揺り起こされる。


「とうとう着いたぞ。マルティナだ!」


馬車の窓から外を見ると小高い丘の上を走っている馬車からはあたり一面キラキラ光る海が見えた。心なしか風もちょっと塩っぽい。その海の手前には、白い壁で赤茶色の瓦の建物がたくさん並んでいる。白い壁が太陽の光を反射しより眩しく見える。


(ここがマルティナ!私が住む新しい町!)


今週から月・水・金の午後7時更新になっています!いよいよ金曜日から港町マルティナ篇(本編)です!

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