表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、翻訳チートで商人通訳として生きていきます!  作者: 角まがり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/14

じゃない方と交渉結果

今週も読んでくださりありがとうございます!

2勝2敗の交渉結果の現状に頭を抱えながら未亜は言った。


「それでは次の私の希望です。私の身分を証明するものを作ってはいただけませんか。このままでは、どこの誰だか分からない人になってしまいますし、そのような人を雇ってもらえるとは思えません。もちろん、私が異世界から間違って召喚された人間だと言うこともできますが・・・」


そこで、ちらっと横目で枢機卿を見る。枢機卿は「ま、待ってくれ!それは・・・」と冷や汗を流している。


「・・・それは、流石に頭がおかしい人と言われかねないですし・・・。何か王家権限で新しい身分を作ってもらえますか。」


宰相は、少し考える様子を見せて

「それでは、『王国特別保護移民』というのはいかがでしょうか?」


「『王国特別保護移民』?」


「はい。これは百十数年ほど前の大戦において作られた制度でして...戦争によって何らかの事情で我が国にきた他国の人々の中で自国に帰れなくなった人々を保護する名目で作られたものです。ミア様が初めて適用される人ではなく、もともとある制度なので、悪目立ちはしないかと...」


「その身分になることで、どのようなことが出来ますか。またはどのようなことが出来ませんか。」


「そうですね...。基本的な人権は守られることを保証しましょう。仕事の選択の自由も財産の保有も認められております。ただし、貴族の身分は得られませんし、国外に行く場合は届け出を出して国から承認を得てもらってからになります。あ、もちろん、国内であれば承認無しで自由に居住地を選択できます。」


「その身分を持っていることで、その...仕事に就きにくいとか何か不利益を被ることはあるでしょうか。」


「ありません。と、言いたいところですが、世の中には知らないことを怖がる人もいるのも事実です。この制度が出来てから時間も経っておりますし、なんだか訳が分からない身分だから、という理由で職に就きにくいということはあるかもしれません。その場合は、マーサまたは一緒に行く侍女にお知らせください。こちらからきっちり業務指導に向かわせますから。」


にっこり笑った宰相様の目元は全然笑っていなかった。「本当に全く最近の若いやつは自分で調べるということもしない...」などと独りごちている。


この身分にすることは事前にある程度打ち合わせ済みだったのか枢機卿はなにも反応がない。


「また、この身分で滞在した場合、3年を超えると国民になる権利が生まれます。権利なので、そのままの身分がいいと思えばそのままにしておくことも可能です。もちろん、それまでの納税履歴や犯罪歴など条件はいくつかありますが...。でも、ミア様には悪くない条件ではないでしょうか。」


未亜は本当に王国も聖光教会も未亜の扱いに困っているのだと感じた。この身分は彼らが未亜を国民として囲ってしまってもいいものか悩んでいるとも受け取れる。実際の未亜の素行を見てから決めたい、けれど他所の国に勝手に行かれるのも困る...という気持ちが透けて見えるようだった。


また、未亜は、宰相様が、3年後という具体的な数字を示したのにも少し衝撃を受けていた。薄々元の世界に帰れないのではないかとは思っていたが、もう国は未亜がここ数年では帰れないだろうと踏んで未亜の処遇を考えている。


(...こう現実を目の前に突きつけられるとやっぱりちょっとくるなー。)


自分でなんとなく分かっていたはずなのに、だからこそ自分で生活を始めたい、と言ったはずなのに、まだどこかで明日にでも帰れるのでは?とちょっと期待していた自分に気づき、未亜はそっと視線を下げた。


(...悩むのは後。今は、この交渉に集中!)


未亜は顔を上げて


「分かりました。それでは、それでお願いします。」


「承知いたしました。それでは、『王国特別保護移民』としての身分証を作成しましょう。他には何かご希望がございますか。」


未亜とそれから枢機卿をそれぞれ見ながらこれ以上交渉することはないという雰囲気を匂わせてくる宰相様に、未亜はまた小さく手を挙げた。


「あの、これが最後なんですが、私と一緒にここに来た子に会って話をさせてもらえませんか。もしかしたらこの先会えなくなるかもしれませんし、挨拶だけでも...」


「ならん!」


枢機卿の声が会議室に響き渡った。これまでも機会があれば、お願いしてきて断られていたのでダメ元ではあったが、こんな勢いで拒絶されるとは思わず、未亜は少し面食らってしまった。


「聖女様はお忙しいのだ。お前のような『じゃない方』のために割く時間などない!」


枢機卿が「じゃない方」と読んだ時、宰相様の片眉がピクっと上がった。ここにきて枢機卿にまで「じゃない方」と呼ばれたことにより聖光教会での未亜の扱われ方が透けて見えるような気がした。


ここは怯む場面ではないと悟った未亜は、毅然とした態度で


「分かりました。それでは私が手紙を書いてもいいでしょうか。それをお渡しくだされば、結構です。流石の聖女様も手紙を読む時間はあるでしょう?それともあなた方は彼女にプライベートの手紙を読む時間を与えないほど彼女の生活を管理しているのですか?」


それはそれで女子高生ちゃんのメンタルが心配になる。


「ぐ...そんな手紙など!」


顔を真っ赤にしながら次に言う言葉に詰まっている枢機卿に未亜は少し違和感を覚える。続けて未亜が話そうと口を開けた瞬間


「それでは、私が手紙を預かると言うのはどうでしょうか。」


枢機卿の後ろから思いもかけない人物からの提案があった。リックである。


「ミア様もマルティナ出発前に暫く時間があるでしょう。その間にお手紙を書いてくだされば、私が聖女様にお届けしましょう。」


「な、何を、リック、勝手に!」


枢機卿がまた爆発しそうなところで、リックは枢機卿に耳打ちをした。何を話したか未亜のところからは聞こえなかったが、話しているうちに枢機卿の顔の強張りがほぐれて来た。そして


「よろしい。聖女様に手紙を書く事を許してやろう。書き終わったらここにいるリックに渡せば良い」


そんなやり取りを宰相様は冷たい目で観察している。未亜はなんで手紙を書くのにも許可がいるんだよ...と思わないではなかったがこの機会を逃すのも惜しいので


「ありがとうございます。」


社会で揉まれたからできる渾身の作り笑顔を見せながら言った。


「それではこれで話はまとまりましたね。数日中には賠償金と身分証を手配致します。ミア様、それまでにお手紙を書いて頂けますか。」


そうやってこの長い交渉が終わったのだった。

3勝2敗1引き分けと言ったところか、まずまずだったな、と思いながら会議室から出てマーサと合流した未亜は自分のあてがわれた客室の方へ歩いて行くのだった。


今週から月・水・金の午後7時に更新予定です。港町マルティナ編も始まりますので、楽しみにしていてください!よろしければブックマークしてお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ