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第十八話 青の巨塔、黒の絶望 ハチオウジ決戦・その四

 説明しよう。ネガトロン・ジュニアは元の感染者である三森沙紗を模倣したネガリアンだが、その高度な擬態能力ゆえ、決まった形を持たない。人間に想像できるだろうか。姿もなく、名前もなく、ただ一人前の人格だけを持った生物の感情を。

 将来を楽観視する言葉に、何者でもないなら、何者にもなれる、というものがある。これは逆も然り。何者にもなれる者は、何者でもない。

 彼女は、自分にとって、誰かにとって何者かであり続けたかった。


 ジュニアはついに全身を透明化させて加山を攻撃するが、ネガリアンとゼツボーグという相性の悪さか、加山の技術か、加山の刀がすべての攻撃に吸い寄せられるように動き、本体に近い部分から切り落としていく。

 最初の連撃が通用しなかった時点で、加山の優勢は確定していた。彼はジュニアの攻撃を見てから対処しているのではない。ネガリアンの気配を感じ取り、それに合わせて適切に武器を振るっているに過ぎない。つまり、例えジュニアの擬態が完璧だとしても、加山が目隠しをしていようとも、この状況は変わらないということである。

 そして、ダメージが蓄積するごとに擬態の精度が落ちていくことを自覚したジュニアは再び攻撃をやめ、加山の射程の外に姿を現した。能力そのものが弱っているのか、三森沙紗の姿もわずかに変色していた。

「……このままじゃ埒が明かない。というかお互いじり貧の泥仕合だ。これじゃあ逸君にも悪いから、さっさと決着をつけよう」

 事実、この切り合いに那珂畑は手を出せないでいた。加山が自らの防御を捨てて【アトロシティ・サムライ】を発動していることは理解していた。彼の体を守らなければという使命感もあった。しかし、入り込む隙がなかった。ジュニアはすでに加山、那珂畑両者に対する有効打を把握している。加山に対する直接攻撃は那珂畑が盾となって防ぐことができるが、那珂畑に対して瓦礫を投げつけた場合、その破片や流れ弾が加山に当たってしまったら、もはや軽傷では済まされない。那珂畑にとっては悔しいことだが、結論として、今は一対一の戦いを続けさせることが最善だった。

 ジュニアの動きは止まったが、状況が止まったわけではない。周囲に分散していたジュニアの気配が、一か所に集まっていく。地中や校舎に潜ませていた部分も本体に戻したようで、足元の地面がわずかに沈んだ。

「加山大悟、これから僕の全力を真正面からあんたにぶつける。その刀で全部切り落として、僕の所まで来れたらあんたの勝ちだ」

 ジュニアの発言はブラフなどではない。その真意を察してか、加山は刀を腰に構え、居合抜きの姿勢をとる。

「……いいぜ。こちとらとっくに必殺技を披露してんだ。嬢ちゃんこそ手加減抜きでかかって来な」

 再びの静寂。校舎の壁がパラパラと崩れていく音に混じったラジオの音声が、合図となった。

『中盤の直線! ここでタワーが加速するー!』

 その声と同時に、ジュニアの攻撃が始まった。それはまるで両手から放つ極太の波動砲。それまで擬態してきたであろう無数の色が混ざり合ったネガリアンの塊が、加山を飲み込まんと押し寄せる。

『最終コーナーに入った! ストーリーマニア、内ラチに包囲され動けない! 前方にレイジングソウル、両サイドにはストームスライダーとソアリングスカイ!』

 加山の抜きの一太刀。たったそれだけで波動砲は切り裂かれ、彼の目の前から左右に逸れていく。しかし、ジュニアの攻撃は続く。加山は連続切りでそれをしのぎつつ、少しずつ、一歩ずつジュニア本体に迫っていった。

「くくっ……」

 加山の後ろにいた那珂畑だけが、わずかに漏れた彼の笑い声を耳にする。

『大外をついてタワーオブブルー! ストーリーマニアの包囲網を避けてタワーオブブルーが上がってきたー!』

「くははははっ、あーっはははははーーっ!」

 ラジオの解説が熱を帯びるにつれ、加山の笑い声も大きくなっていく。

『コーナーを抜けて最終直線! 先頭はいぜんタワーオブブルー! しかしストーリーマニア、わずかに包囲網の隙間に出る!』

 それは戦闘の高揚か、死に際の狂気か、ただの断末魔か。加山以外の誰にもわからなかった。

『ストーリーマニア、包囲網を抜けて先頭に迫る! タワーかマニアか、一騎討ちの形になりました!』

「なあ坊主! 楽しいなあ思う存分長物を振り回せるってのは! あはははははっ!!」

 加山はこの期に及んで、必死に歯を食いしばりはしなかった。その顔は逆に、まるでクリスマスプレゼントの包装紙を破り散らす子供のように、純粋に笑い輝いていた。

『残り200を切った! マニアが後続を突き放す! しかしタワーのロングスパートが止まらない!』

 だがこの時、波動砲に視界を奪われて加山も、那珂畑も、ドローンから監視する局員の誰もジュニアの変化に気づけなかった。いや、全力攻撃を続けるジュニアに、何らかのからめ手を用意する余裕があったわけでもない。その変化はごく自然に、しかし想定外に進みつつあった。

『タワー伸びる! タワー伸びる! マニアはまだ来ない!!』

 ジュニアまでの距離が1メートルを切ったところで、加山は波動砲の範囲外、真上に大きく跳んだ。ジュニアはそれに対処すべく波動砲を止め、照準を加山に合わせる。しかし間に合わない。加山の刀はすでに彼女の左腕の外を通り抜け、首元へと迫っていた。

『タワーだ、タワーだ! タワーオブブルー! 大きく差をつけてゴールイン!』

 15時44分。放送席越しにも聞こえる大歓声とは裏腹に、戦場は静まり返っていた。加山の刀は、確かに正確な軌道でジュニアの首元から脇腹へと抜けるように振り下ろされた。ネガトロンを切り伏せるだけのエネルギーも、じゅうぶんに残っていた。しかし、ジュニアの傷は、首元をわずかに裂いた程度で止まっていた。加山の刀が途中で折れ、とどめと思われた攻撃はそのまま空振りに終わったのである。

「ははっ、ここに来て運負けかよ……」

 加山はジュニアの傷口を見て、その原因に気がついた。彼女の体には、砂や瓦礫が混ざっていた。

 加山の生成した刃物は、ネガリアンのみを切断し、それ以外には無力である。その性能は、長大な【アトロシティ・サムライ】でも同じだった。

 そしてジュニアの変化は、彼女が意図的にやったことではない。身も蓋もない表現だが、流れでそうなっていた。那珂畑への瓦礫攻撃、根のように地中に這わせたウイルス。そしてそれらを本体に戻した時、付着物もそのまま本体に取り込まれていたのだ。

 加山がすべて凌いだ波動砲にも、無数の石礫が混ざっていた。それらが刀身に当たることで、刀の切れ味は次第に低下。最終的に最も多くの砂を蓄えていた本体に、致命傷を与えられない状態になっていた。

「……終わりだね」

 振り下ろされた刀から光が消え粉々に崩れていくのを見てから、ジュニアは波動砲の余剰エネルギーで足元から巨大な手を作り、加山の体を掴み上げた。

『タワーオブブルー、完全勝利! ストーリーマニアの追い上げをものともせず、大外から造花賞を掴み取りました!!』

「ああ。満足だ」

 加山の体がゆっくりと手の中に消えていく。那珂畑はとっさにそこへ向かって駆け出した。今なら、波動砲で多くの力を消費した今なら、【ネガティヴ・スパイラル】でとどめを刺せる。そうでなくとも、あの巨大な手を壊して加山を救出できる。もう一対一の決闘は終わった。加山は敗北した。しかし、彼が死ぬことまでは、誰も納得できるはずがなかった。

『大悟ちゃん!!』

「やめろおおおおおおおおお!!」

 羽崎の悲鳴、那珂畑の咆哮。同時に振り抜いた右腕は、空を切った。那珂畑の攻撃が命中する直前でジュニアは手を加山ごと本体に取り込んだ。抗体を失った人間を肉体ごと食い尽くすだけなら、ネガトロンには一瞬で事足りた。

 しかしジュニアも相当疲弊していたのか、取り込んだ勢いで数歩後ずさり、那珂畑から少し離れたところで膝をつく。

「加山さんを、加山さんをどこへやった!」

 那珂畑が叫ぶように問う。しかし彼もその答えはすでにわかっていた。嘘でも夢でも、そこにいると言ってほしかった。

「……僕が、食べたよ」

 ジュニアは息を切らしながら答える。戦いに区切りがついたと判断したのか、彼女は体内に紛れ込んだ砂や瓦礫を少しずつ排出していた。


 3度目だ。手の届く場所にいた命を、ついに3度も失った。大学の友人も、マンションの望月将太も、そして加山大悟も。気づけなかった、知らなかった、追いつけなかった。たったそれだけの理由で、那珂畑は失い続けた。それだけではない。今日この場のために、ジュニアが何人殺したのだろうか。水族館のチケットを持っていたハチオウジの男は、一緒に行く予定だった誰かは、どんな思いだったのだろうか。

 あらゆる感情が渦巻き、増幅してこみ上げる。

 自分ひとりが死にたいがために始めたことで、いったいいくつもの命が消えたことか。

 もう、たくさんだ。


「アンチネガリアン、許容量をオーバー! ゼツボーグの形を保てません!」

 宇宙開発局、司令本部。鳴島がそれまで出したことがないほどの大声で報告する。

「那珂畑君! 耐えるんだ! 君まで戦えなくなったら……!」

 小堀がマイクに叫ぶが、那珂畑の身体データを示すメーターは、危険値を表す赤い表示のまま変わらない。彼の絶望により膨大な量のアンチネガリアンが体内で生成され、本人の制御できる範囲を越えようとしていた。

「くそっ!」

 ただ見守ることしかできない悔しさに、小堀は弱い力で机を叩く。これまでゼツボーグが敗北する様は何十人と見てきたが、決して慣れるものではない。慣れていいはずがない。それも、もはや最後のひとりとなった那珂畑を失うことが何を意味するか、小堀は誰よりも理解していた。

 そして羽崎は膝から崩れ落ちたまま、動けないでいた。

「……いや、これって……!」

 鳴島がメーターの異常に気づく。先ほどまでアンチネガリアンだけが増え続けていた状態から、それに追随するようにゼツボーグの合金生成量も上がっている。つまり、那珂畑はまだゼツボーグとしての力を失ったわけではない。彼の防御力は健在、それどころか強化されているということだ。

 しかし、モニターに映る那珂畑の姿は立ち尽くしたまま、絶望の表情のまま動かない。当然だ。これほどの生成量に体が適応できたとして、精神まで冷静に制御できるはずがない。

 そして何より、鳴島はこのメーターの動きに見覚えがあった。それが、彼女にわずかな勝利の可能性を見出させた。

「まだ、かもしれません」

「まだって……いやまさか、それこそ駄目だ。彼の身がもたない!」

 急激なアンチネガリアン増加によるゼツボーグの異変。それまで例は少数ながらある。しかし、それは諸刃の剣。場合によっては加山よりも凄惨な結末を意味していた。


 ゼツボーグの形が保てない。那珂畑の体は、背中から裂けるようにゼツボーグが解除されていった。いや、普通の変身解除ではない。まるでそれまで着ていた鎧が剥がれ落ちるように、体中から地面へと流れていく。同時に、あの日の激しい吐き気が彼を襲った。絶望が吐瀉物となって口からあふれ出る感覚。彼はすぐに両手で口を押さえようとするが、ガスマスク型の装備が邪魔をして手が届かない。そして口元を覆うマスクすら彼の呼吸を阻害し、嘔吐感を加速させる。

 そしてついに決壊。ガスマスクも液状になって崩れ落ち、解放された口からは大量の液体が流れ出た。

 やがて、漆黒の鎧は肋骨と背骨の白いラインだけを残して、那珂畑の全身から水たまりのようになって離れた。その後も、彼は口からあふれ出る液体を止められないでいた。ただの吐瀉物ではない。黒い。その口からは、大量に生成されたゼツボーグの合金がとめどなく流れ続けていた。

 ゼツボーグは、本人の絶望を反映する。死にたいはずの那珂畑に、ゼツボーグは死から遠ざける鎧を授けた。そして今、何人もの身代わりをもって生き残ってしまった絶望に対し、ゼツボーグは、最高の身代わりを作り始めた。

 那珂畑は朦朧とする意識の中、目の前に何者かが立っていることに気がついた。うっすらと見える後ろ姿は、全身が黒いが加山ではない。帽子をかぶり、口元をガスマスクのようなもので覆っている。そして、右手はドリルの形。彼は一瞬それが夢か幻かと思った。なぜなら、先ほどまで立ち尽くしていた自分の姿が目の前にあるのだから。しかし、まだ完治していない右腕のわずかな痛みが、彼の意識を正常に戻した。

 現実だった。現実に、那珂畑とまったく同じ姿のゼツボーグが、彼の目の前に立っていた。そのゼツボーグは、那珂畑の指示を待つように、目も鼻もない真っ黒な頭部を彼に向け続ける。まるで那珂畑の分身体。いや、そばに並び立つという意味からスタンドとでも呼ぶべきだろうか。

 那珂畑はそのゼツボーグを一旦さておき、その向こうにいるジュニアに目をやった。彼女はまだ息を切らしたまま、戦う素振りを見せない。おそらく栄養にならない加山の肉体を消化するのにエネルギーを使っているのだろう。

 那珂畑がもしかしたら、と思ったその瞬間。ゼツボーグが突然走り出した。中身がないからだろうか、そのスピードは那珂畑を大きく上回り、一瞬でジュニアに間合いを詰める。

 突然の挙動に那珂畑はわずかに遅れて驚いた。するとゼツボーグは、攻撃準備の姿勢で静止する。

 ここでようやく、那珂畑はこのゼツボーグの正体に気がついた。これは、ゼツボーグ98号の抜け殻。本体の意志に呼応して素早く動く鎧だけの存在。かつて彼は自滅や【ネガティヴ・スパイラル】の自傷対策のため、ゼツボーグの部分発動を目標に訓練していた。しかしその答えはもうひとつあった。

 ゼツボーグに変身した状態で、ゼツボーグを脱げばいい。

 それまで思いつきもしなかったことに、那珂畑は視界が開けるような感覚がした。実際に、まだ変身が解除されたわけではない。ゼツボーグを身に纏っていた時の気分の悪さはまだ続いている。そして中身がなければドリルの回転で怪我をすることもないし、合金の多くを分身体に使ったことで、本体の防御力が弱くなっている。すべての答えが、この分身体につながった。

『那珂畑君、聞こえるかい? 返事をしてくれ那珂畑君!』

 驚きのあまり気づかなかったが、インカムからは何度も小堀の呼ぶ声がした。那珂畑は言葉を失ったままだが、インカムに手を当ててサインを返す。

『よかった、とりあえず意識は正常みたいだ。いいか。ジュニアが動き出すまで時間がない。落ち着いて聞くんだ』

 その声は先ほどまでより焦りに満ちていた。しかし今度は中断することなく、深呼吸してから話は続く。

『君自身には気づけないかもしれないけど、今君の体はとても危険な状態にある』

 危険な状態というのは、鎧を脱ぎ捨てた無防備な姿もそうだが、それと同時にアンチネガリアンの大量生成で免疫系に多大な負担がかかったということでもある。

『だが、君がそのゼツボーグを使いこなせるなら、どうか……』

『戦うんだ』

 攻撃か防御か、あるいは別の選択肢か指示に迷う小堀を押しのけるように、羽崎の声が入ってきた。

『羽崎君!』

『大悟ちゃんの仇だ! 今倒すんだ! 戦えるなら戦え! 大悟ちゃんならそうしてた!』

 怒りか悲しみか、羽崎の声はかなり感傷的に荒れていた。戦えという指示もおそらく彼女の独断だろう。インカムの向こうでは小堀たちが彼女を説得するような声が続いていた。

 司令中枢がこうなってしまえば、残るは現場の判断。那珂畑はこの未知の力をどう使うか考えた。しかし、内容は違えど互いにある意味の極限状態。彼はラジオの電源を切り、戦うことよりも自分の目的を優先させた。

「話をしよう」

 それは、ふたりをつなぐ言葉。ゼツボーグを脱いで視界が晴れたせいか、彼は自分の思いにようやく気づきつつあった。

 だが、その前に必要な確認事項がある。

「……どうして、どうして加山さんを殺したんだ。もうお前にとって大した栄養にもならない相手を、どうして!」

 口に出すたびに、怒りがこみあげてくる。那珂畑の声は、最後には叩きつけるような叫びにも似ていた。

 対してジュニアはようやく体が落ち着いたのか、ゆっくりと立ち上がって答える。

「そもそも彼は死刑囚だ。いつ誰が殺しても、とやかく言われる相手じゃない」

 至って冷酷。その答えはこの人間社会を生き続けたネガトロンらしいものだった。

「……それに、あそこまで魅せられて生かしておくのも、なんだかかわいそうな気がしてね。あの人は、自分でも死ぬことをゴールにしていた。だからちゃんと殺してあげたんだ」

 ネガトロンなりの思いやりとでも言いたいのだろうか。彼女は加山を笑うことなく、彼を尊重した上でその命を絶った。

「まあ最初から、君の目の前で誰か殺す予定だったんだ。そうでもしなければ、僕たちは敵同士でいられない。お互いのために、戦う理由を作らないとね」

 そのために、たかがきっかけ作りのために、よりによって加山を殺してしまったと言うのか。話をしようとは言ったが、那珂畑の怒りはついに限界点に到達した。

「わかった。だったら俺も、これからお前を倒す!」

 言い終えると同時に、ジュニアに接近したまま止まっていたゼツボーグが動き出す。しかし今度は先ほどまでの俊敏な動きではなく、ゆっくりとドリルを振り上げていた。

 那珂畑は怒りながらも、殺意に心を静められながらも、まだ冷静に迷っていた。今の状態なら、ジュニアに殺してもらえるのではないだろうか。ジュニアがゼツボーグの攻撃を避けて本体まで距離を詰めてくれれば、そのまま無防備に死ねるのではないだろうか。その迷いが、ゼツボーグの動きを格段に鈍らせた。

 しかし、やはりつり合わない。これまで殺した無数の人間に加えて、加山をも目の前で殺した。そんな相手を自殺のために見逃すことは、那珂畑にはできなかった。

 結果、ゼツボーグのドリルは激しく回転しながらも震えを伴い、まるで歯科医が虫歯を削り取るような遅さでジュニアに接近した。

 だが、ドリルが当たる寸前でジュニアの体は力なく地面に倒れた。

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