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Episode 2 魂を宿す歯車
「……これが魔法?」
詩織が小さく息を呑んだ。
「魔導数式よ。“数”で魔を定義し、“式”で物理を書き換える。
わたしの得意分野は――《存在再構築》」
レンが指を鳴らす。
机の上の箱が震え、青白い光が継ぎ目から洩れた。
封印が解けると、静かな音を立てて蓋が開く。
中にあったのは、青みがかったガラス製の心臓。
内部には、きらめく歯車と、金色の魔導配線が絡んでいた。
「これは……まだ動いてる?」
「ええ。かすかに鼓動してる。中に、“魂の断片”が残ってるわ」
「魂?」
「医者のあなたなら、魂を信じないかもしれない。でも――これは“意志の残響”。
この人工心臓を作った者は、生き延びるためではなく、自分自身を封じたのよ。
名もなき“魔導霊機”……記録と再生の機械心臓」
詩織は絶句した。医学では説明のつかない“在り方”が、そこにあった。