2。錆びた過去
あれが起きたのは、暑い夏の中学の水泳の時間だった。
太陽が激しく水に飢えた大地を照らし、凡ゆる光線を放っていた。しかし、その光線は水面に届くや否や、あらゆる方向に屈折させ、キラキラと輝き、心の底で安心感を与えさせるようなものだった。
僕たちは、クラスでその日はたまたま男女混合で水泳が行われていた。僕はそんな中で、水中で足を捻ってしまった。あまりに気持ちよく、気持ちが浮ついていたからであることは疑いようがなかった。
僕は、保健室に行くため、通路をいつものように歩いた。その時、ふと女子更衣室が目に入った。
心臓がドクドクっと、人を鈍器で殺すような鈍い音を立てながら、何かが僕に行動させた。
僕はその女子更衣室にこっそりと侵入した。心臓の鼓動音がさらに不気味に早くなり、すべての感覚が研ぎ澄まされる。
僕は周りを確認するや否や、スッと、、その部屋に入った。
ただ周りを見渡して、一つの名前が書いてあったカバンが目に入る。
『『七瀬奏』』
とある・・・
僕は彼女、七瀬奏が好きだった。出会ったときに、一目惚した以来ずっと好きだった。彼女の姿を見るだけで、心臓が締め付けられるような感覚に襲われる。今でも彼女のことをどこか気にしているんだ。それでも、これは許されるべきことではないということはよくわかっていた。彼女の幸せが一番大事なはずだった。彼女をそうした汚い欲望の目で見てはいけないこともよく分かっていた、はずだった。
それでも、僕は・・・
こっそりと、乱さないようにそのカバンに手をやり、奥を、何よりも暗くかつ華やかな深淵を覗き見ようとした。その時の欲情は、ああ、なんと汚い。清純な愛情だと思い込んでいたあの気持ちは、この汚い気持ちに支配されていたのだろうか。
その間、僕の心は無だった。ただ、それは、吠え方も知らないのに吠える犬のように、無意識だった。
僕はついにあるものを取り出した。
彼女の「ほのかなピンク色の下着・・・」、を。もっと奥には、もっと何かがあったかもしれない。しかし、僕はその華やかな下着を見て、何も考えられなくなった。その布地の感覚が、僕を更なる闇への窮地へと誘った。
それを手にして、ただ佇んでいると、その時初めて僕は罪悪感と言えるかもわからない感情がその姿を一瞬見せた。けれど、それが僕の心を支配することはなかった。僕は更衣室を抜け出して、急いで、その水泳場の裏へそれを隠した。七瀬さんのものを。足の怪我のことなんて、とっくに忘れていた。
その後、僕は何事もなかったかのように保健室で手当てをしてもらった。心は激しく動揺し、それは心理的なものだけでなく、物理的にも激しく動揺していた。嬉しさ?焦り?そのどちらでもない。
「哀しみ」
だった。
授業後、すぐに騒がしくなってきた。女子更衣室の方から何やら大きな声が聞こえる。男子たちも何かあったのかと考察し始めている中、僕はただ、平然を装うことしかできなかった。
その後すぐに教室に集められ、体育の先生、担任、副担任が教室へ集まり、彼女の水着がなくなったと生徒に伝えた。男子は動揺する中、僕はただじっと下を見つめた。彼女の席の方を見ると、いなかった。
そして、生徒たちが騒いでいる中、先ほどの治療してもらった保健室の先生とともに彼女が、その重い足取りで、席へ戻った。
彼女は・・・泣いていた。
初めて、暗い彼女を見た。
あの彼女の顔を、僕は二度と忘れることはできないだろう。
どうやら、このことは公式的に全校生徒に伝えられたわけではなかったようだが、噂はそれ以上に伝わる。しかし、その日が経つにつれて、次第にその話題には触れなくなるものが多くなった。
僕は、一日たりとも忘れたことはない。忘れることなんて、できようか。
七瀬さんの・・・僕の汚い醜い醜悪な凄惨な惨劇なものは、その日の夜学校に忍び込み、再び手に取り、家の棚の奥底に、箱にいれてしまっている。あれは、焦り、哀しみ、怒り、全ての感情があった。
僕は犯罪者だ。人としての犯罪者だ。
あの事件をして、彼女と話せることなんて、できるわけがない。
その日を境に、僕は彼女を見ることができなかった。盗まれた直後、後の彼女なんて、見れるはずがないんだ。
あんなに、できなかったことが、こんなにも容易くできるとは、皮肉だった。
結局、卒業まで、僕話すどころか、見ることも・・・いや、見たとしても、見なかったように振る舞い続けた。
僕は、人として、犯罪者だ。
少し重くなってきましたが、読んでいただきありがとうございます!こうした要素もちょいちょい混じってくるので、どうか気をつけて!