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寝言を装い告白してみた

「スー……スー」


 放課後の部室。部員は俺と先輩の二人だけ。やる気のない緩い部活だ。


 机に突っ伏し、準備万端。俺のミッションは先輩への告白。ただし、普通に言ったら絶対断られる。だからこそ寝言作戦。寝たふりして、先輩の本心を引き出す。断られる心配もない、完璧な計画だ。

 ――のはずが、遅い。先輩、今日は来るのが遅いぞ。


 顔を上げようとした瞬間、ガラッと勢いよく扉が開いた。慌てて寝たふりを続ける。


「ごめーん、遅くなった!進路のことで先生に捕まってさ……あれ、寝てるの?」


 先輩の足音が近づいてくる。目を閉じたまま、じっと気配を探る。ふと足音が止まり、彼女が隣の席に腰掛けた気配。


「ほんとに寝てるの?おーい」


 耳元で声がする。あまりの近さに声を聞いただけで心臓が跳ねそうになる。だがここで起きたら台無しだ。必死で寝息を装う。


「スー……スー……」


 先輩は俺の肩を軽く揺らしたが、すぐに諦めたのか席に戻った。


「はぁ、せっかくの部活なのに後輩くんは寝ちゃうなんて…信じられない」


 すみません、先輩。これは俺なりの全力なんです。だけど、寝言でどうやって告白すればいい?不自然にならない言い回しってなんだ?


「そうだ!せっかくだから、いたずらしちゃおっかな♪」


 その言葉に、全身が強張った。机がきしむ音。息遣いがどんどん近づいてくる。


「ふふふ、後輩くんへのいたずら、楽しみだなぁ~」


 先輩のいたずら好きな性格は知っている。でも、顔を近づけられるとか反則だ。息が耳元にかかりそうなほど近い!


「よし……まずは『先輩はえらい、かわいい、完璧だ』って洗脳してみよっかな」


「……は?」


 真剣な声でそんなことを囁かれ、思わず笑いそうになる。先輩、何してんだよ。かわいすぎるだろ。


「……先輩、好きです」


 不意に口から漏れた言葉。ハッとして目を見開く。


「……え?」


 驚きの声。先輩の動きが止まり、静寂が降りた。しまった、作戦が全部台無しだ。


「私も……」


 え、今、何て?


 焦って先輩を見ると、彼女は腕を枕代わりに寝息を立てていた。いやいや、このタイミングで本当に寝るか?寝たふりなのか?それとも……。


「さっきの『私も』って、どっちの意味ですかーーー!」


 空が茜色に染まる中、俺の叫びと先輩の穏やかな寝息だけが部室に響き渡った。

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― 新着の感想 ―
うわああ、これはどっちなのー。気になります先輩のお返事ィィ。
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