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8話 楽しい楽しいエキストラ大募集!


 そんなわけで屋敷に入った僕は、まず手始めに近くの人物を皆殺しにすることにした。


「ひっ、た、助けてくれ…っ! 俺はもうお前に敵対しなーー」


 とりあえず斬って斬って斬って。入り口付近にいる人物は大体斬り終わった。


 中には命乞いをし始めた人もいるけど、お構いなしに斬る。


 おかげで周囲はどんちゃん騒ぎになった。


 そろそろ騒ぎを聞きつけた人物も出てくるだろう。何人かは僕の手を逃れ、どこか他の部屋に逃げ込んでいる。応援を呼ばれるのも時間の問題だ。


「さて、ゆっくりしてる時間はないし、そろそろ広間のほうに行こうかな」


 門から見えた最も広い部屋と思われるドアを、僕は蹴り飛ばし中に入った。



 ◇◆◇



 中は大勢人がいた。見た目からしておそらく光の住民だ。


 服装としてはドレスコードを着た女性にスーツを着た男性が9割。ウェイターと思われる人が1割と言ったところだった。全員顔を隠しているため仮面舞踏会のような雰囲気を感じる。


 机にはいくつかのワインと食事があって、ステージには若い女性がダンスを披露しているのが目に入った。おそらく彼女らはただ雇えわれただけなのだろう。殺す必要はなさそうだ。


「ふむ。意外と多いな」


 なんにせよだ、周囲を見ると百名ほどの人がいるのが見える。何の行事をやっているのかは知らないが、思いのほか数が多い。


「だ、誰だ貴様! なぜドアをけ破ってきた!」


 ドアを蹴破って入ってきた僕に数名の兵士が取り囲んだ。


 先ほどまでのただの荒くれ者とは違い、こっちはちゃんと甲冑を被った兵士達だ。闇のスカイピアでもなければ荒くれものという雰囲気もない。れっきとした光のスカイピアの警備兵。そんな印象を受ける。


 ともあれ、僕はゼノンとしてのスイッチを入れた。


「用件があってきた」


「用件だと!?」


 兵士の疑問形が耳に響く。


 僕はわずかに頷いた。


「今より三日後。ここにいる人物は我の言う通りに動いてもらう」


 三日後。つまり作戦が始まる日だ。アルデバランには今頃伝達がいっている頃だろう。


「ふざけたことを! 侵入者は全員排除だ! 全員構えろ!」


 兵士の誰かがそう言うと槍が一斉に構えられた。どうやら侵入者の話を聞くつもりはないらしい。当たり前の反応だ。


「少し予定と違うな」


 僕はボソッとそう言ってしばらく間立ち尽くした。


 さっきも思ったが、てっきりここは荒くれ者だらけの短気な人ばかりだと思っていた。だけど蓋を開けてみればまともそうな兵士がちらほらいる。


 案外、常識人も紛れ込んでいるのかもしれない。


 となれば、力でいうことを聞かせるというのは難しいのではないだろうか。


 だとすると結構困るんだけど……


「何の用件か知らねえが、用があるなら正面からゆっくり入ってくるのが礼儀ってもんじゃねえか?」


 そう思っていると一人、群衆から知らない人が出てきた。


 そいつはハゲ頭にスーツをビシッと決めた男だった。吊り目で背丈は僕より高く、顔もイカつい。当たり前ののように図体もデカかった。


 兵士は自然と彼に道を開ける。


 見た目からしてどっかの騎士団の副団長とかだろうか。甲冑を被っていないところを見るとボディガードのような雰囲気を感じさせる。


「礼儀か」


「部下から話は聞いたぜ。お前ここに襲撃してきたらしいな」


 男はそう言うと僕を怪訝な目で見た。


「随分と舐めた真似してくれるじゃねえか。お前は分かってねえようだが、ここには国の要人がごまんといる。テメェがここに入ってきたことでこの場の全員から睨まれてるってことを理解したほうがいい」


 男はご機嫌な様子で笑っていた。


 それは僕も承知の上だ。誰かに喧嘩を売ったならその誰かに睨まれるのは当たり前。特に今回は見たところかなりのお偉いさんがいそうだし、相当恨まれるだろう。


 だが、そんなことはどうでもいい。


 それより大事なのは、


 っと色々考えた末、面倒になってきた僕はステージに瞬きの間に跳び、マイクを壇上の女性から奪い取った。


「ちょ、ちょっと…!」


「あー」


 トントンっとマイクを指で突くとちゃんと音が響く。うん、マイクの調子は良さそうだ。普段より低い僕の声がよく響く。


「あ、あの……」


「しっ」


 壇上の女性に向けて僕は口元に指を差した。


 そして体を前へと向ける。


「さて。面倒事は嫌いだ、悪いが先に用件を言わせてもらう。今から三日後、シャインスターの通う学校から南西方向にある平和公園市街地噴水前広場で、我らダークエクスプレスに無惨にも殺されるエキストラを募集している。時刻は11時35分。参加人数は50人以上。参加条件は前科あるもの、または死にたいもの。その他適当だ」


 僕はそこでフードを脱いだ。血のついたそれはゆっくり地面に舞い降りる。


 すると。


『っ! あ、あの黒い星の仮面…まさか…!』


 どっかの誰かが僕の存在について勘付いて声を上げた。


『ダークエクスプレスの黒星……?』


『バカな。ダークエクスプレスがここに攻めてきたっていうのか…!?』


『そ、そんな筈は……! 私は彼らと面識がある。攻めてくるなんてあり得ない』


『それは私も同じよ! こんな話聞いてないわ』


『なら、あれは偽物……?』


 などなど。


 続いて、ダークエクスプレスのことを知っているらしい関係者から驚きの声が聞こえてきた。中にはこちらと繋がっている人物も少なくないようだ。


 こうしてみると社会の闇は深いな。どこの世界も闇の住民はいる。


 しかし、そうなると困った。


 ここにいる奴らを無遠慮に殺すことができない。もし殺せばアルデバランやシリウスが怒りそうだ。


 どうしようか。


 色々と悩んだ末、僕は言った。


「必ず集合するように。もしこの屋敷にいてこの話を聞いていないものにはすぐに知らせろ。エキストラは最悪代役を頼んでもいい。とにかく人だけは集めるように」


 結局、代役はありということで話をまとめ、僕は女性にマイクを返すことにした。これで彼らを殺す理由はもうない。


「話は以上だ」


 そう言って壇上を降りようとした。


 その時。


「舐めやがって!」


 言いたいことを言った僕に先ほどのスキンヘッドの男が頭に血管を浮かべ舌打ちをしたのが聞こえた。


 僕は視線を移す。


 ん? あれ……意外と納得してない人多いのかな。


 周りを見ると、イラついているのか、険しい表情をする人物が一定数いることに気づいた。みんなお前は何様なんだとでも言いたげな顔でこちらを見ている。


 そうか。


 僕はそれを見てちょっと納得した。


 ここは闇の集会、社会の闇に潜む彼らからしてみれば、普段からこの程度のハプニングは日常茶飯事なのだろう。


 多分、また変な奴が出てきた程度に思っているのだ。


「どうやら状況が理解できていないみてぇだな」


 そんな彼らの代弁者、というわけではないが、スキンヘッドの男は星エネルギーを練りながらこちらへとゆっくり歩いてきた。


 そこそこ強い。シャインスターと比べれば天と地ほどの差があるのは見て取れるが、用心棒としてはまあまあの実力を持っている。


「俺が教えてやるよ。テメェみたいな奴が今後どうなっていくか!!」


 彼は走りだすと一気に加速し僕に殴りかかってきた。


「ほう、我に楯突くか」


 その瞬間僕はニヤリと笑い、そいつの拳を避けると腕を掴んだ。


「っ! なに!?」


 拳を避けられたスキンヘッドから驚きの声が出る。そんな彼の腕を掴んだ僕はそのまま背負い投げのようにして彼地面に叩きつけた。


「ぐふっ」


 痛そうに息を漏らすスキンヘッド。


 そんな彼に僕は鋭い眼差を向けた。


「言っておくが我は貴様のような者に無駄なエネルギーは使わない。手間もかけない。時間もかけない。分かったらそのまま黙ってろ」


「…くっ!」


 殺気を込めた瞳で睨みつけてやると男の顔にわずかな畏怖が浮かんだ。


 まぁ、力を使わないのは単にスタリンに勘づかれてシャインスターがここへやってきてしまうから使えないだけなのだが、それは言わないお約束だ。


 今彼女らと戦いたくはない。


 畏怖が足りないと思った僕は先ほど僕を囲んだ兵士たちに向けて手を翳した。


「念の為だ」


 そして手に最低限の極僅かなエネルギーを集中させる。


 すると、その直後。


 兵士たちの真下から黒く鋭利な棘が勢いよく飛び出し彼らを串刺しにした。会場は一瞬静まり返り、次の瞬間誰かの悲鳴が上がる。


「静まれ」


 僕が言うと、それはすぐに収まった。今の殺傷で僕がいつどこでもここにいる全員を殺せることを理解したのだ。


 おかげで先ほどのような殺気も怪訝な瞳も僕に向けられることは無くなった。


 これでエキストラが人材不足ということはないだろう。


「ひっ」


 スキンヘッドに目を向けると彼の瞳には怯えの色が見えた。自分も殺されるとでも思ったのだろうか。


 別に殺す気はないが。


「では、先程の約束が守られることを楽しみにしている。もし守らなかった場合…分かるな?」


 僕の言葉に何人かが頷いた。うん、従順だ。僕がこれ以上長居する必要はなさそうである。


「我からの用件は以上だ。邪魔をした」 


 フードを僅かにたなびかせると、僕は闇に潜み姿を消した。


 会場はしばらく静けさが続いていた。


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