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4話 突然のエンカウント


「さてと」


 とりあえず転移魔法を利用して光のスカイピアに戻ってきたわけだが、欲しい本があったのでそれを買うことにした。


 訪れたのは本の聖地トロピカル。ここは星の力を利用して電気の生成や機械の製作が行われていることで有名な地域だ。


 前世でいう工業地帯、研究所が立ち並ぶ場所と言った方がわかりやすいだろうか。


 もっとも、景色としては工場地帯というよりは華やかで美しい街並みが広がる都市だ。


 近くには公園がいくつもあるし、人も普通に住んで住んでいる。噴水も有名で人々の憩いの場でもある場所だ。


 そんな聖地トロピカルには大きなブックスターと呼ばれる大きな図書館がある。この島一番の図書館で、どんな本も揃っている便利な図書館だ。そこで僕は本を探すことにした。


「では2階へどうぞ」


「どうも」


 受付を済ませると早速本を探す。


 2階は数えきれないほどの本があった。中には本が蝶々のように飛んでいたり、本から少し絵が飛び出しているのも見える。全部ここ独自の魔法だ。


 流石、ブックスター。大きいだけでなく施設も整っている。


 本好きな僕にとってここはまさに聖地だ。


 最高。


「よし、じゃあ探しますか」

 

 僕は目的の本を思い出しながら本棚の間を歩いていった。



 ◇◆◇◇◆



 本は思いの外すぐに見つかった。とりあえず現時点で借りたのは以下3冊だ。


 一つが魔法少女とダークエクスプレスが戦う冒険譚。もう一つが星のエネルギーと魔法少女について。最後に闇のエネルギーとダークエクスプレスについてである。


 他にも色々と読みたい本はあったが、それは今度でいいだろう。ここへは学生証さえあれば入館料もかからないしね。


 じゃあ、あとは適当な本を一冊借りたいところだけど……


「…おっ」


 良さげ本を見つけた。


 少し埃かぶってはいるが、光と闇のスカイピアについての本だ。


 これにしよう。


 ちょうど僕もこの島についてはもう少し知りたかったのだ。


 調べていくうちに光のスカイピアの力も扱えるようになるかもしれないし。


 そうして僕が本を手に取った…その時。


「「あ」」


 僕の手と誰かの手が重なった。


 そこには一人の少女がいた。


 ピンク色のゆるふわな髪を肩下まで伸ばし、丸メガネをした制服姿の少女だ。大きな瞳がキラキラと輝いていて、まるで夜空に散りばめられた星のようだった。可愛げのある顔立ちの美少女だ。


「す、すすすみません! よく見てなくて。ど、どうぞ! この本借りたいんですよね」


 少女はそういうと90度のお辞儀をしながら本を僕に渡してきた。


 ふむ。


 僕は差し出されたそれを思わず取ろうとしてふと自分の手元を見るや否や手を引いた。


 僕の手元には既に三冊の本がある。


 けど彼女の手にはその一冊しか掴まれていなかった。


 三冊借りた僕と。


 まだ一冊も借りていない少女。


 どちらが引き下がるかは言うまでもない。


「別にいいよ。僕はもう三冊も借りてるし。それは君が借りるといい」


「え、で、でも…」


「読んだら適当に返しといてよ。僕もこれ全部読んだらその本読むつもりだからさ」


「…あ、は、はい。そういうことでしたら…分かりました」


 彼女は納得した様子でその本を手提げのカバンにしまった。


 っが、そこで何かに気づいたように顔を上げた。


「あ、あの…その本…もしかして魔法少女のについて書かれた本ですか?」


「ん? これ?」


「はい!」


 彼女の視線が向く先は、僕の持っている一冊の本だった。


 一人の男が島に手を伸ばし、その下に三人の魔法少女が描かれている。比較的新しい新版のとあって見やすい表紙だ。それで彼女も気づいたのだろう。


「そうだよ。これは魔法少女とダークエクスプレスについて書かれた本だ」


「じ、じゃあ、もしかして…」


 っと、頬を少し赤ながら顔を俯かせる彼女。


「魔法少女……好きなんですか?」


「…あぁ」


 その言葉に僕は言葉を詰まらせた。


 この世界では魔法少女が好きな人は沢山いる。


 テレビでも毎週特集が行われているし、直に見たという人も偶に見かける。


 たしか僕の友人もそうだった。直で見てファンになったらしい。


 まぁ何が言いたいかって言うと、大人から子供まで老若男女、魔法少女が好きだということだ。


 だから僕もその一人…。


 と言いたいところだが、そうでもない……。


 ご生憎、僕には前世の記憶があるのだ。素直に「魔法少女が好きなんだよね」っと言うのは流石に恥ずかしい。


「あ、ご、ごめんなさい急にこんな話! き、気持ち悪いですよね……知らない人が急にこんなこと聞くなんて」


 彼女は両手を前で振ると恥ずかしそうに苦笑した。


 その顔を見ていると答えなきゃ僕が悪い気がしてきた。


「いや、そんなことはないよ。僕も魔法少女のことは尊敬している」


「…そ、そうなんですか?」


 彼女の恐る恐るの問いに僕は頷いた。


「あれだけ誰かのために命を張れる人なんてそういないからね。誰が見ても凄い人なのは間違いないと思うよ」


「え、えぇぇ? そ、そうですかぁ〜!? なんか嬉しいですねぇそう言われると…」


 えへへ、と彼女は喜びを隠しきれない様子で相好を崩した。


「なんで君が喜んでるの? 魔法少女でもないのに」


「ハッ。い、いえ! 私も彼女らが好きだったのでつい!」


「そう」


 ま、いっか。


 彼女は魔法少女が好きな普通の女の子だ。熱狂的なファンということだろう。


 うん、そういうことだ。そういうことにしておこう。


「…一応欠点ってほどではなさそうだし…」


「え? 何か言いました?」


「なんでもないよ」


 あまり話していると空も暗くなりそうだ。そろそろ帰ったほうがいいだろう。


「じゃあ僕はそろそろ行くから。また明日ね」


「あ、は、はい! この本譲ってもらってありがとうございます!」


 彼女とはその会話を最後に別れた。


「ん? 明日って…」


 背後からボソッと小さな声が聞こえてきた。


 僕はそれを無視し、誰もいない路地まで足早に歩く。


 そして、周囲に人がいないのをたしかめるとホッと胸を撫で下ろした。

 

「……ふぅ」


 最初に出てきたのはため息だった。思いの外重いため息だ。


 さっき出会った少女。その顔がふと頭に浮かんできたのだ。あの特徴的な神々しさ、近くにいるだけで焦がれそうな活気ある威圧感。


 それは何度も感じたことのある星エネルギーの集合体だ。


 動揺を隠せただけでも十分頑張ったと言っていい。


 ……ふーむ。


「…まさかあんな急に()()()()と鉢合わせることになるとは。流石の僕も予想外…」


 額から出てくる汗を軽く拭い僕は壁に寄りかかった。


 さっき出会った彼女。


 彼女の名前はアストラ・ハート。星空の愛と希望の力を司る魔法少女だ。

 

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